【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 後半

第93話:最強の竜牙兵

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 杏と柚は強い。
 それはもう本当に強い。

 オレは杏と柚と共闘して雑魚を蹴散らしながら、二人と出会った時のことを思い出していた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 まず、彼女らは普通の『ドラゴン・トゥース・ウォリアー』ではない。
 その触媒となっている竜の牙が古代竜の貴重なものだというのもあるが、それだけではなかったりする。

 後で知ったことなのだが、その牙はジルの錬金魔法によって強化され、膨大な魔力を封じ込められていたのだ。
 どうりで他の貰った竜の牙より、気配が禍々しかったわけだ……。

 その、それだけでも普通じゃない竜の牙を使って、そんなことを知らない当時のオレは竜言語魔法の特訓をしていた。

 その特訓を始めてまだ二日目だっただろうか?
 指導してくれていたジルが早くも暇を持て余し、知的好奇心興味本位で竜牙兵に邪竜の加護を与えてしまったのだ。

 するとどうだろう。その場にたまたま漂っていたとある魂・・・・が、ジルの加護の影響で古代竜の牙と同化して定着してしまう。

 すぐにジルのやらかし・・・・に気づけばよかったのだが、すでに竜言語魔法の発動途中だったオレはそのまま竜牙兵を呼び出してしまい……その結果、ジルが支配下においた魂はオレとも絆が間接的に繋がり、特別な竜牙兵が誕生したのだった。

 辺り一面にジルとの契約時にも負けない光が溢れ、その光が収束すると、そこには先ほどまで練習で呼び出していた通常の竜牙兵とは一線を画す二体の竜牙兵の姿があった。

「「カタカタカタ……」」

≪主よ。どうやら契約完了のため、名を授けて欲しいそうだぞ?≫

 シレっと事情を説明もせずに話すジルの言葉に、しばし放心したオレはきっと悪くない。
 なに今の光? 契約完了? 名を授ける? 何言ってんの? って感じである。

 そしてたっぷり放心して現実逃避した我に返ったオレは、契約の完了のために名を授けたのだった……で、終わらない。

「急に名を授けてと言われてもなぁ……じゃぁ、クローとファングでどうだ?」

「「………………………………」」

 色々な名前を言ってみるのだが、どれも気に入らないらしく、すべて拒否されてしまう。

≪主よ。二人は女の子だ。なにか可愛らしい名前を所望しているようだぞ≫

「え? 女の子? それ、早く教えてくれない!?」

 ぜんぶ拒否されるのも当然だ。
 だって、見た目ちょっと不気味な格好いい骸骨兵士だよ? そりゃぁ、男の名前をつけるでしょ?

 ただ、だからといってオレのネーミングセンスがすぐに良くなるわけでもなく、マリンやローラなど女の子らしい名前を考えて提案してみるのだが、どれも気に入って貰えない。

「ん~、いったいどんな感じの名前なら気に入るんだ? そもそも何が気に入らないんだ?」

≪主よ。語呂がもっと可愛いのが良いらしい≫

「ご、語呂って……そ、そんなこと?」

 まさかの語呂。思った以上に女の子だった……。

 しかし、なにか窪みの奥にある眼光から期待に満ちた視線を感じる……。
 目がキラキラと輝いて見える気がするのだが、目の錯覚だろうか。

「じゃ、じゃぁ……あんずゆずってのはどうかな?」

 なんとなく思い付きで和風っぽいものを言ってみると、その反応は劇的だった。

「「カタカタカタ!!!!」」

 オレが名を告げた瞬間、喜ぶようなカタカタという大きな音と共に、契約の光が二人に吸い込まれていく。
 どうやら納得してくれたようだ。

「気に入ってもらえたようで良かったよ」

 いや、ほんと何が良くて何が悪いかわからん……。

「ところでジル……どうしてこの子らはオレと腕を組んでいるんだ?」

 気が付けば両手に花……じゃなくて、両手に骨の状態だった。

≪良い名を授けてくれて嬉しいようだ。「不束者ですがよろしくお願いします」と言っておる≫

 喜んでくれているのはオレも嬉しいんだけど、台詞やらなんやらがすごくひっかかるのは気のせいか?

 え? 転生者の魂とかじゃないよね? 違うよね?
 気のせいだよな? あと、一向に腕を離してくれる様子がないんだが?

 オレが一歩進むと杏と柚も一緒に一歩進む。
 オレが思いっきり駆け出すと杏と柚も一緒に駆け出す……。

 なんだこれ?

「………………。黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ、【月歩げっぽ】!」

 それからいつの間にか竜言語魔法の特訓ではなく、杏と柚との戦闘訓練になってしまったのは仕方ないだろう。
 だって、奥義に追従するすごい速さで追いかけてくる二体の骸骨姿の兵士を想像してみてくれ。怖いって……。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 こうして戦闘を繰り返し友好を深めて仲良くなったオレたちの息はピッタリだ。異論は認める。

黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ! 【漆桶しっつう】」

 とうとう雑魚の殲滅に成功してビフロンスに詰め寄ったオレたちは、杏と柚の魔剣の効果と合わすように次々と剣と槍の攻撃を叩き込んでいく。

「不死の体のようだが、もう限界じゃないのか? 死ななくても壊れはするんだろ?」

 オレの挑発にビフロンスは激昂して得意でないであろう杖術で応戦してくれる。
 なんとも沸点の低いやつだ。

「若造が舐めるな! 壊せるものなら壊してみよ!!」

 叫んで繰り出された杖術の技はなかなかなものだが、ほかの魔将たちと比べれば数段劣る。
 魔枝が空を切った瞬間にヴァジュランダの薙ぎ払いを叩き込むと、とうとう体が半壊した。

 不死だが不壊ではない。

 ジルが念話で教えてくれたことだが、物理的に耐えきれなくなったのだろう。

「終わった……のか? いや、まだ倒し切れていないな……」

 オレたちの攻撃で体が崩れて動けない状態にはなっているが、意識というか存在がそこにまだある・・ように感じる。

「これ……どうすればいいんだ?」

 とりあえず頭を突いてみたが、あまり効果はないようだ。
 砕けた身体がすぐさま再生を始める。
 ビフロンスとの戦いに勝ったのは勝ったが、とどめの刺し方がわからない。

 こちらの状況を理解したのか、ビフロンスが崩れた顔で不気味な笑みを浮かべていた。

「どうした? 儂はバラバラになっても焼かれても復活できるぞ? さぁどうするつもりだ?」

 最悪バラバラにして袋にでも詰めて持ち帰ってやろうかと考え始めたその時、不意に近くから声をかけられた。

≪ねねね~。セイルのこと忘れちゃってな~い~? 絶対忘れてたよね~? ひどいなぁ~。ちょっと魔王が出てきて危なそうだから隠れちゃってた私も悪いけどさぁ~≫

 現れたのは高位妖精のセイル。
 姿が見えなくなったと思ったら隠れていたのか……。

 しかしセイルがなんらかの魔法を発動した瞬間、ビフロンスの体は生命の光に包まれ、声をあげる間もなく一瞬で崩れ去っていった。

 魔王軍六魔将の一人『不死王ビフロンス』の最期は、ひどくあっけないものだった。
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