65 / 165
第四章 自由な旅路
余計なお世話
しおりを挟む
「主様、朝からもう王都に出発とは随分急いでいるようですが、何かあったんですか?」
「それがな、昨日アシェリが寝てからの話なんだが、俺の師匠から呼出があってな」
昨日アシェリが寝て、エディスさんが俺の部屋から出て行ったあとの事だ。
「『アメノじゃ。ヤナ殿かの?』」
「『ヤナだ。こんな時間に何の用だ、アメノ爺さん』」
エディスさんに、おやすみも言えずに若干モヤモヤしていたが、そこは気持ちを切り替えてアメノ爺さんの話を聞く。
「『遅くにすまんのぉ。セアラ様がこの時間になるまで、儂等を中々解放してくれんもんでのぉ。誰かさんの力になりたいと、鬼気迫る勢じゃよ、フォッフォッフォ』」
「『おいおい、あんまり無理させるなよ。セアラが、脳筋になったらどうするんだ…((((;゜Д゜)))))))』」
「『……もう手遅れじゃ……』」
「『ん? なんだって?』」
アメノ爺さんが、不穏な事を呟いたが、聞こえなかった事にした。
「『そんな事よりじゃ、今宵ヤナ殿に呼出したのはの、王都周辺の異変についてじゃ。ヤナ殿は、王都を出発する前に、ギルドでアライにあったであろう?』」
「『あぁ、赤髪のアメノ爺さんみたいな格好した侍モドキだろ?』」
侍モドキと聞いて、アメノ爺さんは笑っていた。どうやらアメノ爺さんもあの口調は、変だと思っているらしい。
「『フォッフォッフォ、あやつは儂の弟子でな。今はドルフィ伯爵の元で士官しておるが、将来的には儂の跡を継がせようかと思っておる程の奴よ』」
「『ほう、やっぱりか。目がアメノ爺さん似てたわ。正に師匠に似て脳筋って感じだったぞ。シーサイのギルドに紛れ込んでいた魔族に、まんまと騙されて厄介払いされていたがな。くっくっく』」
「『誰が脳筋じゃ、ったく……やはり彼奴がシーサイを、離れたのは魔族の策じゃったか。その辺の頭を鍛えてくれれば、申し分ないんじゃがのぉ、はぁ……』」
アメノ爺さんは、弟子が魔族にしてやられた事を知って、落胆している様子だった。
「『それでじゃ、彼奴がヤナ殿とギルドであった後、他の街のギルド支部に駆け回っての。今日またそっちにに戻る前に、儂の処に尋ねてきてな。王都周辺の様子を話していったのじゃ』」
どうやらアライは、せっせと支部を駆け回り直接指定クエストを上級ランクの冒険者に受けて貰うように交渉していたようだ。
「『彼奴は、最短距離で街から街に移動しておったそうでな。その道中に『管理されていない迷宮』を王都周辺で幾つか見つけおったらしい』」
「『はぁ!? やばいだろそれ! それに迷宮ってのは、人目につくところにしか発生しないんじゃないのか?』」
「『うむ、これまで迷宮というのは、人がいる街や村の近くに分かりやすく発生しておった。だが、今回は人里離れた処で、しかもじゃ、発生した場所というのがどれも、手強い魔物がいる縄張りだったそうじゃ』」
「『王都支部の冒険者は、ランクがまだCランク以下が多いらしいからな。それでこれまで、採集や討伐クエストで冒険者にも発見されなかったのか』」
おそらくCランク以下の冒険者が向かうような場所であれば、とっくに知られている筈だ。
「『ん? という事は、迷宮の規模もわからんという事か』」
「『そのようじゃの。じゃが、規模もそうじゃが一番恐ろしいのは魔物の大氾濫じゃ。いつから管理されていないか、現状ではわからんからの』」
迷宮は誰も中の魔物を間引きしないと、いずれ迷宮から魔物が溢れ出す現象が起きる。この時の魔物の数は大群というには生易しく、正に大氾濫と表現するしかないそうだ。過去管理を怠り、滅びた街は数知れないらしく、今では冒険者ギルドと国が協力して管理している。
「『しかもじゃ、その発見した位置というのが、王都を中心に北、南、西と発見したらしい。この様子だと東にもある可能性が高いのぉ』」
「『は? よくアライは、そんな三つも見つけたな。街から街に最短距離で移動してただけだろ?』」
「『うむ、彼奴はのぉ……最短距離で進んでいたらしいのじゃが、手強そうな魔物の気配を感じるとついでに狩りながら走っておったらしいわ。それでその主のような魔物の近くに偶然見つけたらしくてな。流石に、迷宮探索は我慢したらしいがの』」
「『えっと……アライって、結構急ぎの用件で走り回ってたよな?』」
「『そうじゃのぉ』」
「『……まぁ、そのおかげで管理さていない迷宮が見つかった訳だが……今度会ったら、しっかり躾とけよ師匠として』」
「『うむ、中々結果だけみれば上々じゃったがの……既にその話を聞いた今日、大説教したったわ』」
既にアライは、アメノ爺さんにこってりしぼられたらしい。
「『それと、王都に戻ったら一度城にお忍びできてくれんかの。ヤナ殿と一緒に旅をしたいという、冒険者志望者が一名おるのじゃが?』」
「『お! 結構早かったな。もう大丈夫なのか?』」
俺と旅をしたい冒険者志望者とは、セアラの事だろう。まだ一ヶ月も経っていないというのに、城を出て旅をしても大丈夫な程に、この間までお姫様だった女の子が強くなったというのだろうか。
「『うむ……えげつない戦い方をする様になってしまったがの……』」
「『おい……何したんだよ……』」
「『……兎に角じゃ、王都に戻ったらすぐ城きて、セアラ様を早く引き取りに来るのじゃ! でないと、儂の刀達が……』」
何やらアメノ爺さんが半べそかいてる気がしたが、まさかこの間までお姫様だった女の子に泣かされる様な事は無いだろうと、スルーした。
「『お……おう、分かった。すぐ行く』」
アメノ爺さんは最後もう一度『必ずじゃぞぉ!』と謎の慟哭をしながら回線切断した。
「なんだったんだ? だが、まぁいよいよセアラと一緒に冒険か」
俺は、きっと今か今かと待っているだろうセアラを想像して少し笑った。そして、早く迎えに行ってやるかと決めて眠った。
そして、翌朝になり、出発の日となった。
「エディスさんは、まだ起きてないかな?」
「主様……まだ夜明け前ですよ……」
「そらそうか。ならいつも通り走るか。あっ、そうそう帰りは寝るとき以外は俺たちは走りながら鍛錬な。倒れたら馬車の中で休憩して、回復したらまた鍛錬の繰り返しで王都まで行こうな?」
「……鬼ぃいいい!」
まだ夜明け前の街に、アシェリの叫びが響いた。その為、周りの住人から怒られる前に二人で逃げ出した。
「分かりましたよ。こちらのギルドに王都へ戻る旨を伝えてから、出発しましょう」
朝飯の時に、エディスさんと合流し昨日の通話の事を話した。王都に戻る旨をシーサイ支部に伝えておけば、もし王都支部から何かしら連絡があったとしても、王都へ向かっている事を伝えられるとの事だ。
三人でシーサイ支部ギルドへ向かい、受付で王都に向かう旨を伝えた。エドリック支部長にも一言ぐらい言っておこうかと思ったが、朝から復旧作業やら活性化している海の魔物の掃討の指示を現場で出しているらしい。その為、王都に向かうことを言付けして貰いギルドを後にする事にした。
「勇者達は……まぁいっか、通話もあるし」
勇者達は通話も登録してあるし、別に合わなくて良いだろうということで、街の外に向かった。
「……えぇ……酷くない? この男……」
「主様……それはちょっと……酷いですね」
何が酷いか理解出来ないため、酷く失礼な事を言われてる気がするがスルーだ。あとで通話で誰かにでもすればいいんだろ? いいよな? 間違ってるの?
若干の不安を感じながらも、少し歩き門から離れ人目のつかないところで『神火の馬車』『神火の騎馬』『 神火の神兵』を創りだし、全てに神出鬼没で偽装を施した。勿論馬車の中には魔道具も配置済みだ。
「こうやって創ってたのね……改めて目の当たりにすると変態ね」
「はい、そもそも魔法の形を変えるとか、変態ですよね」
「……エディスさんも走っていくか? アシェリは寝るとき以外、休憩なしで鍛錬な?」
「ヤナ君って、かっこいいわ!」
「主様は、とても頭良さそうです!」
「よし! アシェリ、お前が普段俺をどう思ってるか今ので分かった……ほら、斬り合おうか?」
「なんで私だけぇええええ!」
「本当にエディスさん走らせたら、俺の頭が潰されるだろうがぁあああ!」
俺は、正直に本音を叫んだ。
「主様のヘタレぇええええ!」
「うるせぇええええ!」
「二人とも五月蝿い」
こうして賑やかに王都までの道中を進む一行であった。
その日の夜にエディスは一人自分のベッドから起き上がり、馬車の窓から外を眺めていた。
「明日には、もう着いちゃうんだよね……」
その呟きは、とても切なそうに、とても寂しそうで、それでいて愛おしさを含んでいた。
移動中は常に死神の慟哭を発動しているヤナは、エディスがベッドから起き上がった時点で、目を覚ましていた。
しかし、エディスの儚げな表情を見て、寝たふりを続けた。
そして、馬車は少しゆっくりに速度を落としたのであった。
次の日の夜に、馬車は王都に到着した。
「ヤナ君、帰る時の方が大分時間かかったわね」
「ん? あぁ、帰りくらいゆっくりでいいだろ」
「その分……私の鍛錬が……伸びました……が……げふ」
夜も遅くなったので、馬車内で食事を済ませた後に、城へは明日行くとセアラには伝えた。
「『明日ですね!? 朝ですよね! えぇ! 朝ですとも! 朝日が昇る前ですか? それとも明るくなる前ですか!』」
「『落ち着け! どっちもそれ一緒の意味だ! 深呼吸しろ!……そうだ……すーはーすーはー……よし、明日の朝飯食べたぐらいに、城へ行くからな』」
「『わかりました! ちゃんと勝負下着も履いて、準備してます!』」
「『どんな勝負で何の準備だよ……不安だ……とても……兎に角明日な、おやすみ』」
俺たちは馬車で食事を済ませ、城門から少し離れたところで魔法の馬車を解除して、歩いて向かった。
「ギルドには明日、仲間と合流してから向かうわ」
「分かりましたよ。ガストフ支部長には今回のことは、先に報告しておきますから慌てなくていいですよ」
そして、ギルドの前でエディスさんと別れ、宿屋向かおうと歩き出した。ふと振り返り、ギルドの扉を開けて中に入ろうとしたエディスさんに、声をかけた。
「エディスさん!」
エディスさんは、振り返り俺を見た。
「また一緒に旅に出ような。Aランクの試験受ければ、またエディスさんが俺の評価者なんだろ?」
それを聞いて、エディスさんは少し困ったような顔をした後に、微笑んだ。
「ふふ、なら早くAランクに上がれるように頑張って」
それだけ言うと、エディスさんはギルドに入っていった。
俺はその閉まったギルドの扉を、見ながらアシェリに話しかける。
「エディスさんは、何に縛られているんだろうな」
「主様?」
今の俺の顔は、どんな顔をしているのだろう。
あんなにも『外』に対して憧れと諦めの目をした人を、何も出来ずにまた俺は『中』へと送り届けた。
「余計なお世話……なんだろうな」
俺は踵を返し、宿屋へ向かい予約しておいた部屋へと戻り、明日のセアラの事を考えながら目を閉じた。ただ意識の片隅に、去り際のエディスさんの微笑みが、寝るまで離れなかった。
エディスはギルドに到着後、ガストフ支部長室に向かったが、報告は明日で良いと言われ自分の部屋へと戻った。
「明日、ヤナ君の担当から外してもらおう……」
一人しかいない部屋で、エディスは頬に濡れるものを感じながら、そう呟いた。
其々の想いを募らせ
夜は更けていく
災厄と絶望の歯車は
狂り狂りと回り出す
「それがな、昨日アシェリが寝てからの話なんだが、俺の師匠から呼出があってな」
昨日アシェリが寝て、エディスさんが俺の部屋から出て行ったあとの事だ。
「『アメノじゃ。ヤナ殿かの?』」
「『ヤナだ。こんな時間に何の用だ、アメノ爺さん』」
エディスさんに、おやすみも言えずに若干モヤモヤしていたが、そこは気持ちを切り替えてアメノ爺さんの話を聞く。
「『遅くにすまんのぉ。セアラ様がこの時間になるまで、儂等を中々解放してくれんもんでのぉ。誰かさんの力になりたいと、鬼気迫る勢じゃよ、フォッフォッフォ』」
「『おいおい、あんまり無理させるなよ。セアラが、脳筋になったらどうするんだ…((((;゜Д゜)))))))』」
「『……もう手遅れじゃ……』」
「『ん? なんだって?』」
アメノ爺さんが、不穏な事を呟いたが、聞こえなかった事にした。
「『そんな事よりじゃ、今宵ヤナ殿に呼出したのはの、王都周辺の異変についてじゃ。ヤナ殿は、王都を出発する前に、ギルドでアライにあったであろう?』」
「『あぁ、赤髪のアメノ爺さんみたいな格好した侍モドキだろ?』」
侍モドキと聞いて、アメノ爺さんは笑っていた。どうやらアメノ爺さんもあの口調は、変だと思っているらしい。
「『フォッフォッフォ、あやつは儂の弟子でな。今はドルフィ伯爵の元で士官しておるが、将来的には儂の跡を継がせようかと思っておる程の奴よ』」
「『ほう、やっぱりか。目がアメノ爺さん似てたわ。正に師匠に似て脳筋って感じだったぞ。シーサイのギルドに紛れ込んでいた魔族に、まんまと騙されて厄介払いされていたがな。くっくっく』」
「『誰が脳筋じゃ、ったく……やはり彼奴がシーサイを、離れたのは魔族の策じゃったか。その辺の頭を鍛えてくれれば、申し分ないんじゃがのぉ、はぁ……』」
アメノ爺さんは、弟子が魔族にしてやられた事を知って、落胆している様子だった。
「『それでじゃ、彼奴がヤナ殿とギルドであった後、他の街のギルド支部に駆け回っての。今日またそっちにに戻る前に、儂の処に尋ねてきてな。王都周辺の様子を話していったのじゃ』」
どうやらアライは、せっせと支部を駆け回り直接指定クエストを上級ランクの冒険者に受けて貰うように交渉していたようだ。
「『彼奴は、最短距離で街から街に移動しておったそうでな。その道中に『管理されていない迷宮』を王都周辺で幾つか見つけおったらしい』」
「『はぁ!? やばいだろそれ! それに迷宮ってのは、人目につくところにしか発生しないんじゃないのか?』」
「『うむ、これまで迷宮というのは、人がいる街や村の近くに分かりやすく発生しておった。だが、今回は人里離れた処で、しかもじゃ、発生した場所というのがどれも、手強い魔物がいる縄張りだったそうじゃ』」
「『王都支部の冒険者は、ランクがまだCランク以下が多いらしいからな。それでこれまで、採集や討伐クエストで冒険者にも発見されなかったのか』」
おそらくCランク以下の冒険者が向かうような場所であれば、とっくに知られている筈だ。
「『ん? という事は、迷宮の規模もわからんという事か』」
「『そのようじゃの。じゃが、規模もそうじゃが一番恐ろしいのは魔物の大氾濫じゃ。いつから管理されていないか、現状ではわからんからの』」
迷宮は誰も中の魔物を間引きしないと、いずれ迷宮から魔物が溢れ出す現象が起きる。この時の魔物の数は大群というには生易しく、正に大氾濫と表現するしかないそうだ。過去管理を怠り、滅びた街は数知れないらしく、今では冒険者ギルドと国が協力して管理している。
「『しかもじゃ、その発見した位置というのが、王都を中心に北、南、西と発見したらしい。この様子だと東にもある可能性が高いのぉ』」
「『は? よくアライは、そんな三つも見つけたな。街から街に最短距離で移動してただけだろ?』」
「『うむ、彼奴はのぉ……最短距離で進んでいたらしいのじゃが、手強そうな魔物の気配を感じるとついでに狩りながら走っておったらしいわ。それでその主のような魔物の近くに偶然見つけたらしくてな。流石に、迷宮探索は我慢したらしいがの』」
「『えっと……アライって、結構急ぎの用件で走り回ってたよな?』」
「『そうじゃのぉ』」
「『……まぁ、そのおかげで管理さていない迷宮が見つかった訳だが……今度会ったら、しっかり躾とけよ師匠として』」
「『うむ、中々結果だけみれば上々じゃったがの……既にその話を聞いた今日、大説教したったわ』」
既にアライは、アメノ爺さんにこってりしぼられたらしい。
「『それと、王都に戻ったら一度城にお忍びできてくれんかの。ヤナ殿と一緒に旅をしたいという、冒険者志望者が一名おるのじゃが?』」
「『お! 結構早かったな。もう大丈夫なのか?』」
俺と旅をしたい冒険者志望者とは、セアラの事だろう。まだ一ヶ月も経っていないというのに、城を出て旅をしても大丈夫な程に、この間までお姫様だった女の子が強くなったというのだろうか。
「『うむ……えげつない戦い方をする様になってしまったがの……』」
「『おい……何したんだよ……』」
「『……兎に角じゃ、王都に戻ったらすぐ城きて、セアラ様を早く引き取りに来るのじゃ! でないと、儂の刀達が……』」
何やらアメノ爺さんが半べそかいてる気がしたが、まさかこの間までお姫様だった女の子に泣かされる様な事は無いだろうと、スルーした。
「『お……おう、分かった。すぐ行く』」
アメノ爺さんは最後もう一度『必ずじゃぞぉ!』と謎の慟哭をしながら回線切断した。
「なんだったんだ? だが、まぁいよいよセアラと一緒に冒険か」
俺は、きっと今か今かと待っているだろうセアラを想像して少し笑った。そして、早く迎えに行ってやるかと決めて眠った。
そして、翌朝になり、出発の日となった。
「エディスさんは、まだ起きてないかな?」
「主様……まだ夜明け前ですよ……」
「そらそうか。ならいつも通り走るか。あっ、そうそう帰りは寝るとき以外は俺たちは走りながら鍛錬な。倒れたら馬車の中で休憩して、回復したらまた鍛錬の繰り返しで王都まで行こうな?」
「……鬼ぃいいい!」
まだ夜明け前の街に、アシェリの叫びが響いた。その為、周りの住人から怒られる前に二人で逃げ出した。
「分かりましたよ。こちらのギルドに王都へ戻る旨を伝えてから、出発しましょう」
朝飯の時に、エディスさんと合流し昨日の通話の事を話した。王都に戻る旨をシーサイ支部に伝えておけば、もし王都支部から何かしら連絡があったとしても、王都へ向かっている事を伝えられるとの事だ。
三人でシーサイ支部ギルドへ向かい、受付で王都に向かう旨を伝えた。エドリック支部長にも一言ぐらい言っておこうかと思ったが、朝から復旧作業やら活性化している海の魔物の掃討の指示を現場で出しているらしい。その為、王都に向かうことを言付けして貰いギルドを後にする事にした。
「勇者達は……まぁいっか、通話もあるし」
勇者達は通話も登録してあるし、別に合わなくて良いだろうということで、街の外に向かった。
「……えぇ……酷くない? この男……」
「主様……それはちょっと……酷いですね」
何が酷いか理解出来ないため、酷く失礼な事を言われてる気がするがスルーだ。あとで通話で誰かにでもすればいいんだろ? いいよな? 間違ってるの?
若干の不安を感じながらも、少し歩き門から離れ人目のつかないところで『神火の馬車』『神火の騎馬』『 神火の神兵』を創りだし、全てに神出鬼没で偽装を施した。勿論馬車の中には魔道具も配置済みだ。
「こうやって創ってたのね……改めて目の当たりにすると変態ね」
「はい、そもそも魔法の形を変えるとか、変態ですよね」
「……エディスさんも走っていくか? アシェリは寝るとき以外、休憩なしで鍛錬な?」
「ヤナ君って、かっこいいわ!」
「主様は、とても頭良さそうです!」
「よし! アシェリ、お前が普段俺をどう思ってるか今ので分かった……ほら、斬り合おうか?」
「なんで私だけぇええええ!」
「本当にエディスさん走らせたら、俺の頭が潰されるだろうがぁあああ!」
俺は、正直に本音を叫んだ。
「主様のヘタレぇええええ!」
「うるせぇええええ!」
「二人とも五月蝿い」
こうして賑やかに王都までの道中を進む一行であった。
その日の夜にエディスは一人自分のベッドから起き上がり、馬車の窓から外を眺めていた。
「明日には、もう着いちゃうんだよね……」
その呟きは、とても切なそうに、とても寂しそうで、それでいて愛おしさを含んでいた。
移動中は常に死神の慟哭を発動しているヤナは、エディスがベッドから起き上がった時点で、目を覚ましていた。
しかし、エディスの儚げな表情を見て、寝たふりを続けた。
そして、馬車は少しゆっくりに速度を落としたのであった。
次の日の夜に、馬車は王都に到着した。
「ヤナ君、帰る時の方が大分時間かかったわね」
「ん? あぁ、帰りくらいゆっくりでいいだろ」
「その分……私の鍛錬が……伸びました……が……げふ」
夜も遅くなったので、馬車内で食事を済ませた後に、城へは明日行くとセアラには伝えた。
「『明日ですね!? 朝ですよね! えぇ! 朝ですとも! 朝日が昇る前ですか? それとも明るくなる前ですか!』」
「『落ち着け! どっちもそれ一緒の意味だ! 深呼吸しろ!……そうだ……すーはーすーはー……よし、明日の朝飯食べたぐらいに、城へ行くからな』」
「『わかりました! ちゃんと勝負下着も履いて、準備してます!』」
「『どんな勝負で何の準備だよ……不安だ……とても……兎に角明日な、おやすみ』」
俺たちは馬車で食事を済ませ、城門から少し離れたところで魔法の馬車を解除して、歩いて向かった。
「ギルドには明日、仲間と合流してから向かうわ」
「分かりましたよ。ガストフ支部長には今回のことは、先に報告しておきますから慌てなくていいですよ」
そして、ギルドの前でエディスさんと別れ、宿屋向かおうと歩き出した。ふと振り返り、ギルドの扉を開けて中に入ろうとしたエディスさんに、声をかけた。
「エディスさん!」
エディスさんは、振り返り俺を見た。
「また一緒に旅に出ような。Aランクの試験受ければ、またエディスさんが俺の評価者なんだろ?」
それを聞いて、エディスさんは少し困ったような顔をした後に、微笑んだ。
「ふふ、なら早くAランクに上がれるように頑張って」
それだけ言うと、エディスさんはギルドに入っていった。
俺はその閉まったギルドの扉を、見ながらアシェリに話しかける。
「エディスさんは、何に縛られているんだろうな」
「主様?」
今の俺の顔は、どんな顔をしているのだろう。
あんなにも『外』に対して憧れと諦めの目をした人を、何も出来ずにまた俺は『中』へと送り届けた。
「余計なお世話……なんだろうな」
俺は踵を返し、宿屋へ向かい予約しておいた部屋へと戻り、明日のセアラの事を考えながら目を閉じた。ただ意識の片隅に、去り際のエディスさんの微笑みが、寝るまで離れなかった。
エディスはギルドに到着後、ガストフ支部長室に向かったが、報告は明日で良いと言われ自分の部屋へと戻った。
「明日、ヤナ君の担当から外してもらおう……」
一人しかいない部屋で、エディスは頬に濡れるものを感じながら、そう呟いた。
其々の想いを募らせ
夜は更けていく
災厄と絶望の歯車は
狂り狂りと回り出す
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる