要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人

イチ力ハチ力

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第七章 悠久

土砂降り

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「ふん! は! それで! 怪しい! 探索者の事は! 何か! わかったのか! ふん! は!」

 俺は、壁一面に設置された鏡の前でブーメランパンツ一丁になりながら、見様見真似でポージングをしながら、二人に問い掛けた。

「ギルドの! 情報では! はん! やはり! 一週間! 以上前の! ふんは! 情報はありません! ふぬは!」

 ゴーンベ室長は細身だが、その代わりに余分な脂肪が付いていない引き締まった身体をしていた。身体には数々の傷跡が残っており、実は脱いだら凄いんです的な格好良さだった。

「HAHAHAHA! 二人とも! ふん! 良いキレだヨ! その調子で筋肉と会話をすれば! ふぬは! 自ずと答えが! でてくるヨ!」

 世界大会で優勝でもしていそうな見事な筋肉をバンプアップさせながら、コイス管理局長が白い歯を輝かせていた。

「ふん! そうか! 筋肉と会話! それが俺には足りなかった! と言うと思うかぁあああ! ポージングしてたら、喋りにくいわ!」

「HAHAHAHA! 当たり前だヨ!」

「知ってるなら何故させた!?」

「筋肉はウソつかないって言うダロ! 筋肉を見れば、どんな話かわかるじゃないかヨ! HAHAHAHA!」

 俺は、既に隣でそそくさと着替え始めていたゴーンベ室長に、答えを求める視線を投げた。

「本当です。何故かコイス管理局長は、お互いポージングをすると言わなくても要件が分かるのです」

「いやいやいや、別に要件分かるだけなら別に話せば分かるだろ? 何故に面倒な筋肉で、語り合わなきゃならんのだ」

「ヤナ殿は、アレと落ち着いて会話出来るとでも?」

「HAHAHAHA!」

「……すまん、無理だ」

 俺は、常にポージングを決めているコイス管理局長を見て、きっと人種が色んな意味で違うのだろうと結論付けた。

「よく、こんな感じで事務方のトップなんて出来るよな? 会議とかどうしてるんだ?」

「話の分かる担当局員が出てきていますね。あくまでコイス管理局長は、コレですので」

「話の分かる人は、ちゃんといるんだな……」

 俺もブーメランパンツ一丁から、さっさと元の装備に着替え終わると、ゴーンベ室長が次の段取りを教えてくれた。

「コイス管理局長には、こちらの要件等伝えましたので、後は秘書の方が今回の担当局員にコイス管理局長の指示を伝える事なりますね」

「へぇ、秘書がいるんだな……まさか?」

「……もうすぐ来ると思いますよ」

 俺は、ゴーンベ室長の反応を見て予想が現実になる事を確信した。

 そして、扉がノックされ、リンダと名乗る女性の声がした。

「HAHAHAHA! リンダ! 入ってきなヨ!」

 コイス管理局長が入室を許可すると、リンダと呼ばれたが扉を開けて入ってきた。

 逞しい褐色のボディに編み込みドレッドヘアの女性が、肩で風を切りながらコイス管理局長と同じく真っ白い歯を輝かせ、眩しいほどの笑顔で入ってきた。

「HAHAHAHA! ふんは! 任せたヨ!」

「HAHAHAHA! ふぬは! 了解デス!」

「これが、この世界の事務方か……」

 お互いにタダポージングを見せ合っている様にしか見えなかったが、どうやら意思疎通は出来ているらしい。俺とゴーンベ室長は、リンダ秘書に手招きされコイス管理局長から解放された。

 そして、次の部屋へと行くと、何故か金髪のグラビアアイドルが水着ビキニを着て待っていた。

「えっと……一応聞くけど、どうゆうこと?」

「……見てれば、わかります……」

 ゴーンベ室長に、困惑の目線を投げかけると取り敢えず静観しておくのが正解だと返してきた。

「HAHAHAHA! デス!」

「承知致しました」

「普通に返した!? しかも、伝わった!?」

 水着ビキニを着た金髪グラビアアイドル風の女性は、リンダからコイス管理局長の指示ポージングを理解したらしい。しかも、驚くべき事に普通に返事を返していた。リンダは、白い歯を輝かせながら百万ドルの笑顔を俺たちに向けると部屋を出て行った。

「私は、ビキニアと申します。ゴーンベ室長からの要件は、私の方で担当する事になりましたので、以後よろしくお願い致します」

「……普通に喋ってる……何故だろう、ただそれだけの事なのに物凄く感動してしまうのは……」

「私も始めてここを訪れた時は、そうでした……」

 俺とゴーンベ室長が遠い目をしていると、早速ビキニアは例の探索者についてや、現状の迷宮の事について話をしようとしているので、一旦止めた・・・・・

「ちょっと、待ってくれるか?」

「何か?」

「ビキニアさんは、着替えないのか?」

 ビキニアさんは、水着ビキニのまま席に着き、机の上に資料を広げ始めていた。

「これが私の制服ですが、何か問題でも?」

「……ゴーンベ室長……」

「……だから、此処迷宮管理局に来たくないのです……」


 結局、変態しかいなかった。



 妾は、デキスが迷宮への何者かからの侵略に対して対応している様を見ながら、あの人の事考えていた。

「お主なら……どうするのじゃ……」



「なんか、付いて来てないか?」

「ん? そんな気配なぞ、何も感じぬぞ?」

 妾は、あの人に言われ、周囲を見渡すも、何者かが付いて来ている様な気配はしなかった。

「気の所為……じゃないな。そこにいるんだろ? 別に取って食おうって訳じゃないから、出てこいよ」

 あの人が何もない空間に向かって、話しかけると声だけ・・・・が聞こえた。

『あなた、私の存在を感じるの?』

「ん? まぁ、何となくだがな。それで、何か用なのか? 少し前から付いて来てただろ」

「何じゃと? 妾に全く悟られずに付いてくるなど、一体何者なのじゃ」

 妾は、声が聞こえるて来る方向に向かって、思わず呟いてしまった。今も声が聞こえてこなければ、存在を怪しむほどに気配は感じられなかったからだ。

『あなたでも・・今の私の気配を感じるのは無理よ。普通は絶対にあり得ない、生まれる前の存在を感じる事が出来るなんて。寧ろ私が一番驚いているわ』

「生まれる前? ならあんたは、誰かの魂や幽霊なのか?」

『ユーレイってのが何か知らないけれど、『魂』という事は合っているわ。ただし、まだ形ある・・・"器"を得ていないけれど』

「魂だけの存在が、語りかける事が出来るじゃと? お主、本当に何者じゃ」

 妾は、魂だけであるにも関わらず、意思疎通を取ることが出来ているこの者を警戒した。

「シェンラ、そう身構えるなって、ここはファンタジーの世界だぞ? 俺やお前が知らない事など山程あるさ」

 あの人が、本当に楽しそうに笑って話していた。

「お主は、事あるごとにファンタジー、ファンタジーと言いよって、全く……ただ、それと警戒する事は別物じゃろ」

「ははは、まぁいいだろう。俺のスキルも反応していないし、害はないだろう。それで、改めて聞くが、何の用で、誰なんだ?」

『私は、形ある器を持つ前の迷宮ダンジョン妖精フェアリー。名前は形ある器を持った時に、始めて得られるから、今は名は無いわ。用って言うほどでないんだけど、あなたに惹かれて思わず付いて来ちゃったって感じね』

 妾は、迷宮ダンジョン妖精フェアリーと言う名乗りに絶句した。存在としては知っていたが、生まれる前・・・・・迷宮核ダンジョンコアが意思を持っているなど、悠久の刻を生きていて始めて知ったからだ。

「へぇ、迷宮ダンジョン妖精フェアリーってのがこの世界にはいるんだな。どんな妖精フェアリーなんだ?」

『……あなた、あまり驚かないのね? そちらは、大層驚いて固まっているけど』

「ん? あぁ、俺はこの世界の人間じゃないからな。大概知らない事ばかりだから、今のがどれくらい珍しい事なのか、そもそも判断出来ん」

『……えぇえええええ!?』

「うぉ! そっちが驚くのかよ!」

「いや、普通は異世界から来たと言われれば、驚くに決まっているのじゃ」

 妾は、あの人に呆れながら、苦笑していた。

『……私としたことが、生まれる前から取り乱すなんて……』

「まぁ、そう言う事だから。さっきから話が進まんのだが、付いて来て何かする気なのか?」

『……結構、そこはサラッと流していくのね……何かするって言うか、私達迷宮ダンジョン妖精フェアリーは人が集まる場所の近くに迷宮を創り、始めて存在する様になるの』

 この妖精ダンジョン妖精フェアリー説明を聞くに、どうやら自分の生まれる場所を探している所に、あの人が通りかかり、不思議と惹かれて付いて来たという事だった。

「あぁ、そう言う事か。だったら、あんたが何故、俺に惹かれて付いて来たのも分かるぞ」

『そうなの? 何で?』

「俺は、今から街を作るつもりだからだ! ファンタジーの世界で、ファンタジーな街づくりをするのだ!」

 あの人は天高く拳を掲げ、さも得意気な顔ドヤ顔をして叫んでいた。

『……』

「お主がよく言う『ドヤ顔』とやらをしておる所悪いが、迷宮ダンジョン妖精フェアリーが、話に付いて来て居らぬぞ?」

「なぬ! この俺の熱く燃えるパッションが、伝わっていないだと!」

『寧ろ何で伝わると思ったか、教えて欲しいわ』

 それからあなたは、自分の想い描いている街の形を、姿も見えないこの世界まだ存在もしていない相手に真剣に語っていた。



「この街は、デキスを中心に据えた街。デキスが覚悟を決め、妾は街を護ると決めたのじゃ……じゃが、あの人が此処にいたら……何を護ると言うのじゃろう」

 妾は、意味の無い仮定を考えては、頭を振ってその考えを追い出そうとした。

『シェンラ、来たわ。瘴気が開けられた空間の歪みから、最下層付近に侵入してきたわ。浅い階層を中心にかなりの数が動いているわね。恐らく貴方が此処にいる事を警戒して、地上に近い所から、仕掛けて来てるわ』

「腰抜けどもめ! 妾が、地上から回り込み殲滅してくれるわ! デキス地上へ転送するのじゃ!」

 妾がデキスへとそう叫ぶが、デキスはそれに従わなかった。

『ダメよシェンラ、あなたには私を最後に破壊する役目があるもの、貴方ぐらいじゃ無いと私を壊せない。それに、貴方にもお客様はいるみたいよ』

「妾に客じゃと?」

 デキスに言われ、現在の最深階層である五百階層ボス部屋の映像をデキスが妾に見せた。

「何じゃこいつは?」

 剣に瘴気を纏わせた十数人の魔族と思われる者達が、最深階層ボスを撃破しようとしていた。

『突然、この一つ前の階層に現れて、すぐ五百階層のボス部屋にやってきたわ。そして、そのまま今の様に、階層ボスに攻撃を仕掛けて、もうすぐ突破されるわね』

 最深階層ボスを突破されるという事は、ここの迷宮核ダンジョンコアがある部屋へと通じる扉が開くという事だ。

「狙いはデキスじゃな……そうであれば、妾が真のボスという者になってやろうではないか」

 妾は、あの男の様に不敵に嗤いながら、ボス部屋へと通じる道を歩き出した。

『気をつけてね』

「ふふ……クハハハ! を誰だと思っている! 古より悠久の刻を生きる古代エインシェントドラゴン天空の覇者シェンラ』であるぞ!」

 そして我は、ボス部屋扉を開け、元の姿へと戻り悪神の手先共を迎え撃ったのだった。



「『マスター! 五十階層以下の階層に、多数の不明アンノウンマーカーが、突如現れました!』」

 俺は迷宮管理局の屋上・・で、ヤナビからの報告を聞きながら、空を見上げていた。

「『そっちもやっぱり・・・・来たか』」

「『こっちも? という事は、地上で何か起きたのですか?』」

「『あぁ、夕暮れ時のカラスかってぐらいのドラゴン達が、上空を飛び回っているぞ。あそこまで、飛び回っているとせっかくのファンタジー代表選手のドラゴンを見ても、全く感動が湧かないな』」

 俺は、一匹の紅蓮に燃え盛るような馬鹿でかい身体持つ竜を見据えながら、ヤナビにこっちの現状を話した。

「『確かに、それだと感動も何もあったものでありませんね』」

「『あぁ、その上全てのカラスが瘴気を纏ってやがるからな。完全な害竜だ』」

「『それは……では、マスターは如何されるのですか?』」

「『決まっているだろう?』」

 俺を遥か上空から睨みつけてくる紅蓮の竜に向けて、嗤いながら答える。



「一匹残らず、素材として回収してやるよ」



 そして、紅蓮の竜の咆哮と同時に、瘴気纏い竜達が街に向かって下降し始めた。



 悪意が形を持ち、土砂降りの如く街へと降り注ぎ始める

 空を見上げる人々には、まさに絶望が降り注ぐかのようだった

 そして今まさに、絶望が街へとたどり着くといった瞬間

 街は優しい光に包まれた



「女神様の御加護がある限り、邪悪なるモノがこれより先に立ち入る事は許しません」

 凛とした透き通る声が、大聖堂の礼拝堂に響き渡った。
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