クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる

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【sideキャロル】秘めた想い

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 ――初めてあの人を見た時、悪い人じゃない、と思った。
 お父さんは、異世界から来た転移者はほとんど乱暴者だって言ってた。
 私も近くの町で見かけたことはあったけど、スキルを使って大暴れして、最後は王都騎士団に捕まって連れていかれてたなあ。

『おいおい、本気か!? 俺っちだってかわいそうだと思うがな、転移者だぜ!?』
『……この人は、多分、悪い人じゃないよ』

 だけど、私――キャロル・グラントの勘はあんまり外れない。
 お父さんが何かしでかした時はたいてい当たってるし、アイテム合成の成功と失敗を、お父さんよりずっと確実に言い当てられる。
 そう知っているから、お父さんはイオリさんを連れ帰ってくれた。
 何日か世話をしている間に、イオリさんは目を覚まして、スキルを見せてくれた。

 ――今思うと、あの時からかも。
 ――私がイオリさんを、目で追いかけていたのは。

 どうしてか恥ずかしくて、他の人よりずっと声をかけられなかったけど。
 お父さんのお仕事を手伝うって決めてからも、物置でスキルのすごい力を見せてくれた時も、私はずっとイオリさんのスキルじゃなくて、イオリさんを見てた。

 その目が、とっても明るくて真面目で。
 その笑顔が、温かくて優しくて。

 目で追いかけるのが、少しだけ近づくようになるようになるまで時間はかからなかった。
 それだけで満足だった。
 だけど、満足できなくなっちゃった。

 ――お兄さんイオリさんが、私を助けてくれたから。

 ブリーウッズの森でオークに出会って、必死に逃げる私を、お兄さんとお父さんが助けてくれなかったどうなっていたんだろう。
 今でも想像するだけで、背筋がぞっとする。
 私が今もこうして無事でいるのは、ふたりが助けてくれたおかげなんだ。

『ハイエナは群れで獲物を狩る、しかも狡猾だ! 1匹だって逃がさない!』

 SSランクの【生命付与】スキルを使って、オークをちっとも怯えずに戦った。

『俺っちのかわいい娘に手ェ出したんだ、一発ぶん殴ってやらねえと気が済まねえぜ!』

 オークをパンチだけでやっつけた。
 お父さんが強い人だって見直すのと同じくらい、イオリさんが私を守ってくれるのが嬉しくて、心臓のどきどきが止まらなくて。

『これから先、ふたりは俺が絶対に守る。だから、俺と家族になってほしい』

 ベッドの上で手を握られた時に、その想いは爆発した。

 ――ああ、この人が私の一番身近な人お兄さんだったらよかったのに。
 ――お父さんと私と、ずっと一緒にいてくれる家族ならいいのに。

 思わず反射的にパンチをしちゃって、お兄さんが壁を貫いて吹っ飛んじゃった時は何度も謝ったけど、もう自分の気持ちに嘘はつけないって確信もした。
 私のそばにいてほしい、お兄さんになってほしいって、心から思うようになった。
 もちろん、想うのはお兄さんにバレないように、こっそりと。

『キャロル、イオリと話さねえのか?』

 こっそりしてたつもりだったんだけど。
 私がこっそりイオリさんを見てるのは、すぐにばれちゃった。
 お父さんにはいつも、隠し事を見透かされちゃうの、なんでかなあ。

『ふぇ!? な、何言ってるの!』

 あわあわと顔を真っ赤にして手を振る私の前で、お父さんが大笑いする。
 お兄さんが町のお手伝いで店の外に出ててよかった!
 そうじゃなきゃ、お兄さんの記憶がなくなるまで頭を叩かないといけなかったかも!

『ごまかさなくていいぜ、父親にゃあ娘の気持ちなんて丸分かりだからよ! イオリもきっと仲良くなりたがってるさ!』
『むっ……』

 本当にそう思ってるの、お父さん?

『でも、お父さん、お兄さんにヘンなこと言ったでしょ』

 私が距離を詰められない理由は、お父さんにもあるのに。
 お父さんの顔を、たちまち滝みたいな汗が流れる。

『へ、ヘンなことって?』
『とぼけないで! 鉄の球をちっさくして、お前もこうするぞって言ってたの、聞こえてたんだからね!』
『いやいやいや、聞いてたのか!? 俺っち、てっきりキャロルがもう出てったもんかと……』

 やっぱり。
 いくらオークの事件の前だからって、お兄さんを怖がらせるなんてよくないよ。

『お兄さんは悪い人じゃないって知ってるよね?』
『わ、分かってる、分かってるって! 森でキャロルを助けてからは大丈夫だって知ってるけどよ、あの時はまだ付き合いも浅いし、念のためってわけでな……』
『あの人を、怖がらせないでね、絶・対・に!』
『は、はい……』

 お父さんを叱ると、縮こまりながら納得してくれた。
 私を心配してくれるのは嬉しいんだけど、たまに過保護だって感じてしまう。
 王都の『魔道具』を作る学校に通いたいって何度も言ってるのに、「魔道具は危険だ」って言って話を聞いてくれないのも、やだなって思うな。
 少なくとも、ここで造ってるのよりはずっと安全なのに。

『じゃ、じゃあ俺っちは昨日の売り上げをまとめてくるから、キャロルはイオリの様子を見に行ってくれ! 今日の頼まれごとは、大変そうだからな!』
『そうなの?』
『なんでも丘の上の道の整備を手伝ってるらしいぜ! お前が行くとイオリも嬉しそうだし、お弁当のひとつでも作ってってやったらどうだ?』
『お父さん!』
『冗談だっての、ははは……!』

 お父さんが店の奥に消えていくのを見つめる私の頬が、少し熱いのに気づく。

『……お弁当、作っていこうかな』

 家族なんだから、お弁当を持っていくのも、お手伝いをするのもおかしくないよね。
 今はまだちょっとだけ緊張しながら渡すだろうけど、それが当たり前になって、お兄さんがもっと欲しいって言ってくれたなら。
 ずっと一緒にいれば、いつか私のキモチに気付いてくれるかな。

 赤茶けた髪も。
 初対面の人に「怖い」って言われる、牛角うしつの族でもとびきり太い角も。
 町の女の子よりもふた回りくらい大きくて、うずくまって隠したくなるような胸も。
 引っ込み思案な性格も、アイテム造りが好きなところも。
 全部、全部、好きになってもらいたいっていう、私のキモチに。

 ――大好きです、お兄さん。
 ――助けてもらったあの日から、ずっと。

 いつか胸に秘めたものを、あなたに打ち明けられたらいいな。
 そんな風に想いながら、私は今日も、お兄さんの仕事を手伝いに行った。
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