秘伝賜ります

紫南

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第二章 秘伝の当主

063 若いからこそ苦労しています

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2018. 7. 11

**********

歓談しながらお茶を済ませた優希と父母が部屋に案内されていく。

高耶の部屋はすでに決まっている上、部屋には滞在用の衣服などが既に置きっ放しになっているので、部屋には行かずに瑶迦と話しを続けていた。

「鬼と交戦されたそうですね」
「ええ……」
「随分と酷い怪我もされたとか。あまり一人で仕事を抱え込んではいけませんよ?」
「分かってはいるのですが、俺もまだ若輩です。任されたとなればやるしかないでしょう」

秘伝家の当主として実力もあり、連盟の代表の一人となってはいるが、年は圧倒的に他の代表や陰陽師として働いている者達よりも下だ。

実力重視とはいえ、動けるならば請け負うべきだろうと高耶は思っている。

「断りづらいことも、誰かと一緒にとはいかないことも分かっているつもりですが、こちらとしては心配なのです」
「すみません……」
「責めているわけではないのですよ? それはそうと、充雪殿はどうしたのですか?」

高耶に憑いているはずの充雪の姿が確認できないことを不審に思った瑶迦は、更に眉根を寄せて心配そうに高耶を見つめた。

「今は霊界の方で情報を集めてもらっているんです。その……鬼を倒した時に見えたのです……鬼の住んでいた世界を……彼らは霊界からやって来たもの。ですが、俺が見た世界は今の霊界からは想像できないものだったので……」

陰陽師として、高耶は霊界を見たことがある。暗雲が立ち込め、荒れた荒野が広がる。魑魅魍魎が跋扈し、地獄かと思えるような場所だった。

けれど、鬼が最期に見せたあの場所は、美しく、清廉な空気に満ちているようだった。とても霊界とは思えない。しかし、霊界は広いと聞いている。そんな場所が、どこかにあるのかもしれない。そこを、充雪に探させているのだ。

「霊界ですか……そう……私もかつて聞いたことがあります。霊界には、鬼の里があったと。そこは地上よりも美しく、まるで神が作った庭のようだったと……」

高耶は目を見開いた。そして、身を乗り出して瑶迦に尋ねる。

「っ!? それはどこにあるかわかりますか?」

なぜか、高耶はそこに行かなくてはならないような気がしているのだ。何より、あの時に見た光景をもう一度見たいと焦がれている。

だが瑶迦は静かに首を横に振った。

「申し訳ありません。場所までは分かりません」
「そうですか……」

落胆は隠せない。けれど、瑶迦が言うのならば、それは幻ではなく、確かに存在した場所なのだと思えた。

そして、高耶が調べて推測した鬼に関しての話を口にした。

「……鬼達は、その場所を取り戻そうとしているようです。こちら側へ出てきた理由は、この地上に生きる者達に復讐するため。その場所を奪ったこちら側の者達を消すためにやってきたのだと」

鬼達の姿は、美しい子どもの姿だったという。復讐を誓い、地上へと出たことで穢れ、あの鬼らしい姿に変わってしまった。それが、高耶の調べて得た情報だった。

「復讐ですか……確かに、あれらからは怨む思いが感じられました。敵対しているわけではないということですか」
「ええ」

陰陽師達は、長年に渡り鬼と戦ってきた。鬼とは悪しき存在であり、人々に害なすものなのだと信じて。けれど、鬼達にも敵対する理由があった。一方的に害悪だとされてきた鬼が、実は人々のせいで敵対していたと分かったのだ。

「……それを公表しますか?」
「迷っています……まだ確実ではないですし、鬼の里の位置もはっきりしません。全てを明らかにし、証拠も揃えなければ納得しないでしょうから」
「そうでしょうね……その時は、協力しますから、教えてくださいね」
「はい。お願いします」

瑶迦が心配しているのが高耶には分かった。唐突にこちら側が仕掛けたために鬼が敵に回ったのだと説いても、頭の固い者達は納得しないだろう。

代表の一人であっても、高耶は自身で言った通り、若輩なのだ。変化に寛容な若者とは違い、年輩の者はそれを嫌う。

当たり前だと思っていたものが覆ったならば、反発されるのは必至だ。

「どうかここでは、お仕事の事を忘れてのんびりしてくださいね」
「そうさせてもらいます」

瑶迦が優しく微笑む。それを見て、高耶も難しいことは忘れて休日を楽しもうと決めたのだ。
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