秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
258 / 463
第六章 秘伝と知己の集い

258 親の気持ち

しおりを挟む
食事会のある日曜日の朝。

美咲や樹は起きてからずっとソワソワしていた。

「なんだか、ドキドキしてきたわ……息子の仕事仲間や友達との食事会なんて……どうしましょう……っ」
「デキる息子の父親として見られるんだよね……怖いなあ……」

父母の心配は、分からなくもない。

「アレよ……子どもの結婚式に参加する親の気持ち……」
「そうだよっ。それだっ。す、スピーチとかはやらなくていいよね!? 結婚式じゃないもんね!?  あっ、た、高耶君の彼女とか紹介されたり……」
「高耶が彼女……」

『あるの? あったりするの?』と、少しの期待と不安を込めた目を向けてきた。

「……ねえから……」
「そ、そうっ……それはそれで残念なような……」
「高耶君が選んだ人なら、僕は文句言わないからねっ」
「……当分ないので、大丈夫です……」

緊張のし過ぎか、テンションがおかしい。

そんな中、優希はそろそろ来るという可奈と美由を、玄関先で待っていた。

「優希。そんな所にいると、寒いぞ」
「だって、もうすぐくるもん。ねえ、お兄ちゃん。ドレス、なにいろがいい?」
「可奈ちゃん達と決めるんだろ?」
「うん。けど、お兄ちゃん、ダンスおどってくれるでしょ?」
「……ダンス……」

なんだそれと高耶は思考を停止させる。

「まだちょっとしかおどれないけど、きょう、お兄ちゃんとおどったらいいって、ヨウカ姉がいってた! ルリ先生も、お兄ちゃんならリード? が上手だから、だいじょぶだって。いいきかいだって」

高耶は項垂れるようにして屈み込んだ。

「……マジか……確かに、今日のメンバーなら踊れるのがいるが……」

エルラントはもちろん、イスティアやキルティスも問題なく踊れる。かつての夜会、舞踏会も知っている人たちだ。

「なにごとも、けいけん! でしょ?」
「……そうだな……」

間違っていない。ただ、先に言っておいて欲しかった。高耶は、一度覚えたことは忘れない。だから、いつでもエルラントにでもあちらの夜会に誘われれば、出られるだけの技術も持っている。

だが、これを知っていたら、誘わなかった者もいた。

「……俊哉とか……迅さんとか、後で煩そうだな……」

二日前、修と月子を誘ったと瑶迦に連絡を入れた時、瑶迦にお願いされたのだ。高耶と仕事でもなんでも、親しくしている人は沢山呼んでほしいと。こんな機会でもないと、こちらに呼べないからと。

そこで急遽、可奈、美由の家族全員に声を掛け、時島や校長の那津も呼ぶ事になった。更に迅や不動産屋の稲船陽、彼と修の共通の友人である野木崎仁、いづきやその孫である瀬良智世と誠、雛柏教授などにも声をかけたのだ。その全員が参加すると手を挙げた。

食事会は夕方から夜にかけて。そのあと、泊まって行っても良い。それらを見越して、次の月曜が祝日である日を選んだらしい。

見て回れる所も沢山あるので、今日も、来られるなら朝からで良いと話してある。可奈、美由の家族は、それで早く来ると約束しているようだ。

そして時刻は九時。可奈、美由の家族がやって来た。

「おはようございま~す。今日はよろしくお願いします!」
「お邪魔します」

美奈深と由香理が元気にやって来た。

「おはようございます。突然誘ってすみませんでした」

そう伝えたのは、彼女たちの夫である智紀と浩司にだ。休みの日はゴルフに行ったりすると聞いているので、気になっていたのだ。

「そんなっ。最近は出来ればこっちに来たいな~と思ってたんだよ」
「けど、そうすると、社長にバレるだろう? ものすごい葛藤がね……」
「ああ……陽さんにバレないようにしてもらっていましたね……」

ゴルフは陽に誘われてということもあったのだろう。断ってこちらに来ているなんてバレたらマズイ。

「ありがとうございます。ただ……今回、陽さんも誘ってるんです。なので……」
「「……やばい……?」」
「いや、あの……俺から伝えますから」
「「お願いします!!」」

抜け駆けしていたなんて知られたらと、二人は泣きそうな顔になった。

そこに、まさにこのタイミングで、陽と仁、修と月子がやって来たのだ。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

処理中です...