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第五章 封印の黒い魔人
051 侵入者
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理修は、その時の事をよく覚えている。
その日は朝から、嫌な予感がしていた。
「じぃさま……」
「どうした、理修」
「うん。なんか、へんな感じがする」
「変?」
理修自身、何がいつもと違うのかがわからない。だが、確かに何かが違うと感じていた。
「あぁ……成る程。これか……」
リュートリールは、少しの間何かを感じ取ろうと意識を集中すると、引っかかるものを見つけた。
「? じぃさま?」
リュートリールには分かった。しかし、本来ならばそれは、ほとんど気付かない類のものだった。それを感知した理修に内心驚きながら、すぐに対応するべく、オルバルトに手紙をしたためる。
「理修は凄いなぁ。これは、守護の魔女達の領域だ」
「シュゴ?」
その魔女達は、この次元に五人存在している。
主に、悪意を持って侵入しようとする者を排除する役目を持ち、強力な結界によって守護しているのだ。
これは、世界の理を守る事でもある。
その世界を滅ぼせるのは、その世界に生きる者でなくてはならない。これが世界の理の一つだ。その為の役割だった。
「守護の魔女の一人が行方不明だと聞いていたからな……そのせいか……」
ここ数十年、姿を現さない魔女がいるとリュートリールは聞いていた。しかし、それが守護の魔女の一人だったとしても、特に捜索されずにいた。
他人の干渉を嫌う魔女は多い。結界の維持は、何処にいても問題なくできる。その上、絶大な力を持つ魔女が死ねば、他の魔女達はそれが分かるのはずなのだ。
「手引きしたか……」
次第に鋭くなるリュートリールの目に、理修は不安になる。
理修の感じたものは、結界の揺らぎ。綻びまではいかないまでも、強固な結界にはあり得ない変化だった。これは、意図して何かを招き入れなければ起こりえない事だったのだ。
「………」
「あぁ、すまんな。大丈夫だ。魔女達も気づいているだろうからな」
そう言いながらも、リュートリールは不安気に思案顔を続けていたのだ。
◆ ◆ ◆
ウィルバートは、その気配を一瞬だけ捉えていた。
「これは……っ」
その気配を忘れるはずがない。それが直接的ではなかったとは言え、親友であったリュートリールを死にいたらしめたのだ。
「……早くケリをつけるか」
今は、目の前の問題を対処しなくてはならない。
理修ならば気付いているだろう。無茶はしないだろうが、最強と呼ばれたリュートリールを殺した相手だ。心配になるのは仕方が無い。
「気を付けて……」
理修を止めることはできない。この事に関しては、構うなとは言えない。
ウィルバートは、早急に問題を解決する為、ダグストへと駆けるのだった。
◆ ◆ ◆
「オルバルトっ。オルバルトは何処にいる!!」
シャドーフィールドでは、ジェスラートが総帥であるオルバルトの執務室へと突撃していた。
「……ジェスラート……扉が壊れたぞ……」
何をどうしたらそうなるのか分からないほど粉々に砕け散った扉に、オルバルトがショックを受けた。
「そんなことはどうでもいいっ。あいつだ。リュートリールにちょっかいをかけたあの女が現れた」
「なに!!どこにだっ!」
この瞬間、オルバルトの中から扉を破壊された衝撃は消えた。次なる衝撃に飛び上がるように椅子から立ち上がる。
「よりにもよって、トゥルーベルだ」
「なっ……っ、まさか、理修を狙って……」
「わからん。だが、あの時もリュートリールを直接狙ってはいない。本当は誰を狙ったのか、それが分からずじまいだがな……」
かつて、その女が狙ったのはリュートリールの妻と娘だった。何が目的なのか、それを究明できていない。強さや能力も分からない。それが女である事が、その声から辛うじて分かっているだけだ。リュートリールでさえ妻を救えなかったのだ。
「オルバルト。許可を出せ。私が出る」
「……いいだろう。理修を頼む」
「言われるまでもない」
ジェスラートにとっても理修は家族であり、娘のような存在だ。絶対に守らなくてはならない。
こうして、ジェスラートがトゥルーベルへと向かう事になったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
その日は朝から、嫌な予感がしていた。
「じぃさま……」
「どうした、理修」
「うん。なんか、へんな感じがする」
「変?」
理修自身、何がいつもと違うのかがわからない。だが、確かに何かが違うと感じていた。
「あぁ……成る程。これか……」
リュートリールは、少しの間何かを感じ取ろうと意識を集中すると、引っかかるものを見つけた。
「? じぃさま?」
リュートリールには分かった。しかし、本来ならばそれは、ほとんど気付かない類のものだった。それを感知した理修に内心驚きながら、すぐに対応するべく、オルバルトに手紙をしたためる。
「理修は凄いなぁ。これは、守護の魔女達の領域だ」
「シュゴ?」
その魔女達は、この次元に五人存在している。
主に、悪意を持って侵入しようとする者を排除する役目を持ち、強力な結界によって守護しているのだ。
これは、世界の理を守る事でもある。
その世界を滅ぼせるのは、その世界に生きる者でなくてはならない。これが世界の理の一つだ。その為の役割だった。
「守護の魔女の一人が行方不明だと聞いていたからな……そのせいか……」
ここ数十年、姿を現さない魔女がいるとリュートリールは聞いていた。しかし、それが守護の魔女の一人だったとしても、特に捜索されずにいた。
他人の干渉を嫌う魔女は多い。結界の維持は、何処にいても問題なくできる。その上、絶大な力を持つ魔女が死ねば、他の魔女達はそれが分かるのはずなのだ。
「手引きしたか……」
次第に鋭くなるリュートリールの目に、理修は不安になる。
理修の感じたものは、結界の揺らぎ。綻びまではいかないまでも、強固な結界にはあり得ない変化だった。これは、意図して何かを招き入れなければ起こりえない事だったのだ。
「………」
「あぁ、すまんな。大丈夫だ。魔女達も気づいているだろうからな」
そう言いながらも、リュートリールは不安気に思案顔を続けていたのだ。
◆ ◆ ◆
ウィルバートは、その気配を一瞬だけ捉えていた。
「これは……っ」
その気配を忘れるはずがない。それが直接的ではなかったとは言え、親友であったリュートリールを死にいたらしめたのだ。
「……早くケリをつけるか」
今は、目の前の問題を対処しなくてはならない。
理修ならば気付いているだろう。無茶はしないだろうが、最強と呼ばれたリュートリールを殺した相手だ。心配になるのは仕方が無い。
「気を付けて……」
理修を止めることはできない。この事に関しては、構うなとは言えない。
ウィルバートは、早急に問題を解決する為、ダグストへと駆けるのだった。
◆ ◆ ◆
「オルバルトっ。オルバルトは何処にいる!!」
シャドーフィールドでは、ジェスラートが総帥であるオルバルトの執務室へと突撃していた。
「……ジェスラート……扉が壊れたぞ……」
何をどうしたらそうなるのか分からないほど粉々に砕け散った扉に、オルバルトがショックを受けた。
「そんなことはどうでもいいっ。あいつだ。リュートリールにちょっかいをかけたあの女が現れた」
「なに!!どこにだっ!」
この瞬間、オルバルトの中から扉を破壊された衝撃は消えた。次なる衝撃に飛び上がるように椅子から立ち上がる。
「よりにもよって、トゥルーベルだ」
「なっ……っ、まさか、理修を狙って……」
「わからん。だが、あの時もリュートリールを直接狙ってはいない。本当は誰を狙ったのか、それが分からずじまいだがな……」
かつて、その女が狙ったのはリュートリールの妻と娘だった。何が目的なのか、それを究明できていない。強さや能力も分からない。それが女である事が、その声から辛うじて分かっているだけだ。リュートリールでさえ妻を救えなかったのだ。
「オルバルト。許可を出せ。私が出る」
「……いいだろう。理修を頼む」
「言われるまでもない」
ジェスラートにとっても理修は家族であり、娘のような存在だ。絶対に守らなくてはならない。
こうして、ジェスラートがトゥルーベルへと向かう事になったのだ。
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