女神なんてお断りですっ。

紫南

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283 努力の成果です

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2015. 11 17
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ティアは、この後の予定を考えていた。

「キルシュのお母様の方も、眠らせてるなら、今すぐにどうこうなる事はないけど……もう二年なんだよね?」
「あぁ……だが実際、この毒が原因だとすれば、後どれだけ保つのだろう……」

キルシュは、開かれている本のページを見つめて不安そうに言う。

「そうだねぇ……私も実際にそんな症状の人を診た事はないし……う~ん……」

そう言って、ティアは『新毒薬大全』を引き寄せ、記憶にあるページをめくる。

「確か……あ、あった。これだね。『幻惑の言の葉』」

それが、キルシュが推測した毒の名称だ。

「症状としては、こっちの『幻遊唱歌』と似てるけど、眠らせて二年経っても生きていられるって事は、言の葉の方で間違いない」

『幻遊唱歌』は『幻惑の言の葉』とは違い、幻覚の症状が出る前に身体的な症状も出る。そして、何より違うのが眠る事。この毒の場合、眠らせる事は逆効果となる。一度眠りにつけば、そのまま一日と保たず、死という深い眠りに移行する事になるのだ。

「運が良かったね」
「……そうだな……」

キルシュも、最初この記述を見つけた時、ヒヤリとした。一歩間違えれば、あの日に母親は亡くなっていたのだから。

「シェリーに正確に診断してもらわなきゃ分からないけど、体力と精神力の問題になるだろうね。メイドの二人の報告だと、呼吸はしっかりしてたみたいだし、眠りから覚めて正気を保ってる間に食事とかも少しはさせてるみたいだから、今日明日でどうにかなるとかはないと思う」
「そうか……だが、早急にマスターにお願いするべきだな」
「うん。まぁ、今日中に侯爵に手紙で指示出しとくよ。次の週末までには、シェリーに直接会ってお願いしてもらわないとね」
「……頼む……」

キルシュは既に侯爵へのティアの対応には全て口を出すつもりはないようだ。

「それじゃぁ、キルシュの方はこれで良いとして……今後、あいつらと事を構える対策を考えておかなきゃね……」

次に問題になるのは、神の王国。相手は神具を持っているのだ。そして、ティアだけで動くのは、保護者達が許さないだろう。

「こっちに手を出さないとも限らないし……戦力は上げておかなきゃ駄目か。うん。キルシュ。もう調べ物も終わったし、外出るよ」
「……わかった」

不審に思いながらも、確かにもう調べる事はないので、問題はないとティアと共にキルシュは家を出た。

相変わらずそこだけ空間が違うのではないかと思わせるベリアローズとユフィアの様子を確認したティアとキルシュは、すぐに他のメンバーの方へと目を向けて歩き出す。

「そろそろ終わるかな」
「な、なぁ、ティア。あれはどうなっているんだ……?」
「うん?どうって……最強決定戦?みたいな?」
「……アデルも混じっているんだが……」
「そうだね」
「……」

キルシュが絶句するのも仕方がない。本当にてんでバラバラに、乱闘状態なのだ。それも、全員そこそこ本気だった。

「大丈夫。アデルにはハンデで、体力温存させての途中参加だから。ただ……必要なかったかもだけど……」
「そのようだな……」

そして、今まさに決着がつき始めていた。それも、アデルによってだ。

先ずは小さなサイズのままのフラムが、アデルに向けて火の弾を吐き出した。それを、アデルは風弾によって弾き返し、更には風の力で威力を倍増させたのだ。

これにはフラムも驚いて、そのまま弾き飛ばされる。これにより、設定された範囲から外れ、場外となった。

その間に、マティとエルヴァストが魔術を放つ。それはゲイルやゼノスバートを狙ったものだったのだが、またもアデルがそれらを正確に弾き返したのだ。

「あ~……マティとエル兄様まで場外かぁ……あれはうっかりしてたね」
「魔術を弾き返すなんて……そんな事出来る筈が……」

キルシュは、自分の目が信じられないと、目を見開いていた。それに得意気にティアが答える。

「ふっふっふっ。これこそが、マティとの特訓の真の成果だよ」
「……確かに、マティ相手にアデルが何やらやっていたのは知っているが……それでどうやって……」

ティアがアデルに与えた特訓の課題は、マティが放つ魔術攻撃を完全に避けきる事だった。そして、その中で、避けきれない魔術を自らの魔術で打ち消す事も含まれていた。

「アデルは、身体能力だけじゃなく、目も良いし、感覚も良い。だから、放たれた魔術に込められた魔力量と威力を瞬時に感じ取って、それを相殺する魔術を放つ事が出来るの。殆ど直感みたいにね」

アデルは、魔力のコントロールも、天性の勘を発揮し、天才的な早さで修得していった。

身体能力の高さも、着弾するまでの距離を稼ぐ為に必要となる。これらを上手く使い、何度も魔術を受ける事で、放たれた魔術と同質の魔術を瞬時に導き出し、放つ事ができるようになっていった。

「今じゃ、相殺されるギリギリを見極めて、跳ね返す事が出来るようになったんだよ。これは、意表も突けるし、使い様によっては相手の力を利用できるから。最強でしょ?」
「……いつの間に……」

自分が調べものに夢中になっているうちに、アデルはとんでもない進化を遂げてしまっていたと知ったキルシュは、少々焦りを感じながらも、呆れてしまった。

「けど、まだまだ実戦経験は足りないかな」

順調に見えたアデルも、多くの経験を持つ大人達には勝てない。

「あっ」

キルシュが思わず声を出した時には、アデルはルクスの剣から放たれた風によって、場外へと吹き飛ばされていた。

「あれは弾じゃないからね……弾く事ばかりに気を取られたアデルの負けだ」
「アデルっ」

キルシュが思わず駆け寄っていくのを、ティアは苦笑しながら見送る。

「ただの風圧みたいなもんだから大丈夫なのに」

そう言って、ティアはルクスを見つめた。ルクスは、魔術を上手く剣へ纏わせて武器としていた。その威力は当然ただの剣よりも上がる。これによって、その威力に驚いたゼノスバートが倒れた。

勿論、ただの剣ではないとはいえ、百戦錬磨のゲイルや、剣技に優れたクロノスがそれを恐れる筈もなく、苦戦は必至だ。

「ルクス……出来るようになったんだ……」

それは、ティアが編み出した戦術の一つ。魔工師が魔石に魔術を付与させるのを応用した戦術だった。

ルクスには恐らく、今はまだ最も相性の良い風の魔術しか纏わせる事は出来ないのだろう。だが、それでも誰もが出来る訳ではない。魔工師であっても難しいのだ。

完全に付与させる訳ではないのだからそれは当然で、魔術を留め続ける事には、集中力と強い精神力が必要となる。そして、一定に魔力を放出し続ける感覚も養わなくてはならない。

ルクスは、ティアにその技を教えられてから、密かに訓練を続けてきた。これは全て努力の賜物だろう。

ここまで出来ているのだ。精霊視力を持つルクスならば、そう遠くないうちに風以外の魔術でもこれが出来るようになる。

「これなら……」

そして、ティアがこの戦術をルクスへと教えたのには理由があった。

「そろそろ、探してみようかな……」

何かを企むような笑みを浮かべたティアは、今後の為にも、とっておきの武器を手に入れようと考えていたのだった。

************************************************
舞台裏のお話。

リジット「奥様……またお屋敷に穴を……」

シアン「ねぇ、リジット。ここはなぁに?とってもキレイだわ」

リジット「奥様……少しは反省を……」

シアン「黄色や青?橙もステキね」

ア・べ「「……」」

リジット「奥様……」

シアン「あら。どうしたの?リジット?なんだか疲れているみたいよ?」

リジット「い、いいえ。ご心配には及びません」

シアン「そうよね。リジットだもの」

リジット「……はい……」

ア・べ「「……」」

シアン「ねぇ、それで、ここは何なのかしら?」

リジット「……」

アリシア「リジット様。リジット様。お気を確かにっ」

ベティ「解説をお願いします。このまま居座ってしまってはいけませんから」

リジット「そうですね……奥様」

シアン「ふふっ、ステキ。なんだか可愛いわ」

アリシア「お、奥様。聞いてください……」

ベティ「さぁ、リジット様」

リジット「ええ……奥様。ここは、精霊達の寝床です」

シアン「お家?」

リジット「そうですね。ここでは、精霊達の力も増します。それで、こうして光として見ることができるのです」

シアン「まぁっ。すてきねぇ。これがティアちゃんが言ってた精霊ちゃん達なのねっ」

アリシア「ど、どうすれば良いのですか?なんだか、まるで……」

ベティ「これってどうなの?色んな光がシアン様の周りを囲んで……まるで物語かなにかの……」

リジット「……奥様が少女にしか見えませんね……」

シアン「うふふっ」

ア・べ・リ「「「純粋過ぎですから……」」」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


精霊達と戯れる少女です。
天然が持つ要素の一つ。
永遠の……いくつでしょう……。


またも侯爵への課題が用意されました。
今度の試験官はシェリスですね。
そして、アデルは逞しく育っている様子。
ティアちゃんの友人としては良いレベルまできています。
キルシュ君にも頑張ってもらわねば。
そして、やっとルクスにも進化が。
ただ、ティアちゃんはまた何やら企んでいるようです。


では次回、一日空けて19日です。
よろしくお願いします◎
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