9 / 101
9 帰り道
しおりを挟む
放課後、教室に入ると、そこには帰り支度をする礼央だけが居た。
……これは……、声をかけるべき、なのか?
昼も一緒に居たし、まあ……無視するのも変か。
「れおくん」
声を掛けると、あからさまにびっくりされた。
肩がビクッと動く。
こっちがそれにびっくりしてしまいそうだ。
緊張と期待が入り混じった瞳が、こちらを向く。
「……みかみくん」
絞り出すような声。
そして、礼央は、にっこりと微笑む。
平静を装ってはいるけど。
窓からの逆光でもわかるくらいに。
……顔、真っ赤じゃんか……。
けど……、普通にしてるってことは、普通にしたいってことで……。
普通以上は求めてないってことで。
普通にしてて、いいんだよな。
「今帰り?」
「うん。用事済ませたら、ちょっと遅くなって」
言いながら、礼央が軽く苦笑する。
緊張の混じった、笑顔。
「電車?」
「うん。……みかみくんも?」
「そ。さっさと帰ろ」
亮太が軽く微笑む。
「…………っ!」
すると礼央は一瞬嬉しそうな顔をして、
「うん」
と小さく頷いた。
学校から駅までは、ほんの10分くらいだ。
駅前はそこそこ発展していて、買い物するのには困らないくらい店があったりするんだけど、学校から駅までの道は、そんな賑やかな場所は通らない。
静かな、公園が広がるだけだ。
公園を通らずに駅まで行った方が実は早いのだけど、時間がある時は大抵、公園を通る。
小さな池があり、木漏れ日で溢れる小道があり、遠くの草原では、大抵小学生くらいの子供達がわぁわぁと遊んでいる。
毎日決まった時間に犬と散歩をしているおばちゃんとか、ジョギングしているおじさんとか。
とても長閑な場所だ。
この日も、俺は公園を抜けた。
礼央も、それに着いてくる。
「部活は?やってないの?」
「うん。委員会だけ」
「週1?」
「うん。みかみくんは?」
「俺は~……、幽霊部員、かな」
と言いにくそうに言うと、礼央が「ははっ」と笑った。
「ケントと一緒に入ったんだけどさ、なんか、あんま合わなくて」
「じゃあ、ケントは部活なんだ?」
「そうそう。ほぼ毎日行ってるよ。そんなにやることもないんだけどな。サクは週4で部活だし、全員一緒に帰ることなんてないだろうな」
言ってから気付く。
これは……殆ど二人で帰ろうと言っているようなものなんじゃないかと。
そんな意味にとられると、正直困るわけだけど。
そんな事で、好かれてるんじゃないかなんて、……脈があるんじゃないかなんて思わせたら……。
亮太は少しビクついてしまったけれど、礼央の様子を見たところ大丈夫なようだった。
礼央の横顔は、まだ緊張しているものの、そんなことは考えていないようだった。
駅のプラットホームは、線路を挟んで真ん中に一つだけ。
「れおくんは、どっち?」
「あっち」
礼央が指さすと、
「俺はあっち」
亮太は礼央とは逆の方向を指差した。
ふぅん……。
逆側なんだ。
亮太は少しつまらない顔をする。
亮太の側の電車が、ホームに入ってくる。
風に煽られ、亮太の少し色素の薄い髪と、礼央の黒いくりくりとした髪が靡く。
「じゃあな」
「うん。……また明日」
礼央が、その言葉を、まるで大事な言葉のように言った。
◇◇◇◇◇
もうこれはデートでは?
……これは……、声をかけるべき、なのか?
昼も一緒に居たし、まあ……無視するのも変か。
「れおくん」
声を掛けると、あからさまにびっくりされた。
肩がビクッと動く。
こっちがそれにびっくりしてしまいそうだ。
緊張と期待が入り混じった瞳が、こちらを向く。
「……みかみくん」
絞り出すような声。
そして、礼央は、にっこりと微笑む。
平静を装ってはいるけど。
窓からの逆光でもわかるくらいに。
……顔、真っ赤じゃんか……。
けど……、普通にしてるってことは、普通にしたいってことで……。
普通以上は求めてないってことで。
普通にしてて、いいんだよな。
「今帰り?」
「うん。用事済ませたら、ちょっと遅くなって」
言いながら、礼央が軽く苦笑する。
緊張の混じった、笑顔。
「電車?」
「うん。……みかみくんも?」
「そ。さっさと帰ろ」
亮太が軽く微笑む。
「…………っ!」
すると礼央は一瞬嬉しそうな顔をして、
「うん」
と小さく頷いた。
学校から駅までは、ほんの10分くらいだ。
駅前はそこそこ発展していて、買い物するのには困らないくらい店があったりするんだけど、学校から駅までの道は、そんな賑やかな場所は通らない。
静かな、公園が広がるだけだ。
公園を通らずに駅まで行った方が実は早いのだけど、時間がある時は大抵、公園を通る。
小さな池があり、木漏れ日で溢れる小道があり、遠くの草原では、大抵小学生くらいの子供達がわぁわぁと遊んでいる。
毎日決まった時間に犬と散歩をしているおばちゃんとか、ジョギングしているおじさんとか。
とても長閑な場所だ。
この日も、俺は公園を抜けた。
礼央も、それに着いてくる。
「部活は?やってないの?」
「うん。委員会だけ」
「週1?」
「うん。みかみくんは?」
「俺は~……、幽霊部員、かな」
と言いにくそうに言うと、礼央が「ははっ」と笑った。
「ケントと一緒に入ったんだけどさ、なんか、あんま合わなくて」
「じゃあ、ケントは部活なんだ?」
「そうそう。ほぼ毎日行ってるよ。そんなにやることもないんだけどな。サクは週4で部活だし、全員一緒に帰ることなんてないだろうな」
言ってから気付く。
これは……殆ど二人で帰ろうと言っているようなものなんじゃないかと。
そんな意味にとられると、正直困るわけだけど。
そんな事で、好かれてるんじゃないかなんて、……脈があるんじゃないかなんて思わせたら……。
亮太は少しビクついてしまったけれど、礼央の様子を見たところ大丈夫なようだった。
礼央の横顔は、まだ緊張しているものの、そんなことは考えていないようだった。
駅のプラットホームは、線路を挟んで真ん中に一つだけ。
「れおくんは、どっち?」
「あっち」
礼央が指さすと、
「俺はあっち」
亮太は礼央とは逆の方向を指差した。
ふぅん……。
逆側なんだ。
亮太は少しつまらない顔をする。
亮太の側の電車が、ホームに入ってくる。
風に煽られ、亮太の少し色素の薄い髪と、礼央の黒いくりくりとした髪が靡く。
「じゃあな」
「うん。……また明日」
礼央が、その言葉を、まるで大事な言葉のように言った。
◇◇◇◇◇
もうこれはデートでは?
2
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
幼なじみの友達に突然キスされました
光野凜
BL
『素直になれない、幼なじみの恋』
平凡な俺、浅野蒼にはイケメンでクラスの人気者な幼なじみ、佐伯瑛斗がいる。
家族ぐるみの付き合いのせいか、瑛斗は昔から距離感がおかしくて、何かと蒼にベッタリ。けれど、蒼はそれを“ただの友情”だと思っていた。
ある日、初めての告白に浮かれていると、瑛斗から突然キスされて......!?
「蒼のことが好きだ」
「お前が他の奴と付き合うのは耐えられない」
友達だと思っていた関係が一気に変わり、戸惑いながらも瑛人の一途で甘い想いに少しずつ心が揺れていく。
しかし、素直になれない蒼は最後の一歩が踏み出せずにいた。
そんなとき、ふたりの関係に”あるトラブル”が訪れて......。
じれったくて、思わず応援したくなるふたりのピュアな青春ラブストーリー。
「......蒼も、俺のこと好きになってよ」
「好きだ。好きだよ、蒼」
「俺は、蒼さえいればいい」
どんどん甘く、独占欲を隠さなくなる瑛斗に、戸惑いながらも心が揺れていく。
【一途で独占欲強めな攻め × 不器用で素直になれない受け】
君と過ごした最後の一年、どの季節でも君の傍にいた
七瀬京
BL
廃校が決まった田舎の高校。
「うん。思いついたんだ。写真を撮って、アルバムを作ろう。消えちゃう校舎の思い出のアルバム作り!!」
悠真の提案で、廃校になる校舎のアルバムを作ることになった。
悠真の指名で、写真担当になった僕、成瀬陽翔。
カメラを構える僕の横で、彼は笑いながらペンを走らせる。
ページが増えるたび、距離も少しずつ近くなる。
僕の恋心を隠したまま――。
君とめくる、最後のページ。
それは、僕たちだけの一年間の物語。
運命なんて知らない[完結]
ななな
BL
Ω×Ω
ずっと2人だった。
起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。
唇を隠して,それでも君に恋したい。
初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。
大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる