12 / 13
【15歳 春】
11、【15歳 夏】挨拶は五度目のあとに
しおりを挟む
「魔女様! 魔女様、朝です! おはようございます!」
五回目になる朝の挨拶を済ませ、すうっと息を吸う。
「それでは、失礼しま……」
言い終わる前に、バンっと勢いよく扉が開き、前か後ろかわからない長い長い髪の毛を振り乱した彼女が飛び出してくる。
「魔女様、おはようございます」
視線を合わせようと腰を折るも、弾かれたように反応した彼女はさっと俺の脇を通り、奥の部屋へと駆けていく。
慌てて起きたのか布団は乱れていてカーテンも中途半端に開かれている。
入ります、とだけ小さく告げ、いつものように室内を整え、彼女が朝の準備を終えておずおずとやってくるのを朝食を並べて待つ。
ルールを作った。
朝の挨拶を五回しても彼女が出てこない場合は起こすことを目的にそのまま入室させてもらうということ。
暗い室内では気持ちが滅入ってしまうだろうから、朝目覚めたらカーテンを開けること。
まぁ、開けたところで灰色の世界が永遠と広がっているだけなのだけど、何もしないよりはいい。
強行突破を行い、実行を続けていたらしぶしぶながら彼女も従ってくれるようになった。
季節が変わり始めたころには自ら出てきてくれるようにもなった。
こんな扱いをして、絶対に祖母である王宮の魔女にバレたら殺されるだろうなと思いながらも、少しずつ変化を見せてくれるようになった彼女の様子が嬉しかった。
「魔女様、改めましておはようございます」
ぐっとスカートの裾を握りしめ、現れた彼女は朝の準備を終えたのだろう。
自分の中で一番いい笑顔を作る。
「今日もいい朝ですね。お顔を見せてください」
触れようとすると、またさっとかわされて思わず笑ってしまいそうになるのを必死に堪える。
「朝ご飯です!」
どうぞ!と威張るほどのものではないけど、彼女が出てきてくれるようになってからはできるだけ多くの情報を集め、美味しいものが作れるように努力している。
ちょこんと椅子に腰掛けた彼女は小さく何かを呟いたあと、用意したパンにそっと手を伸ばす。
彼女はあまりたくさんは食べられない。
好きなものだけを食べてくれればいいと思う。
サラダの野菜をカラフルに盛り付けて彩ればちょっとはお洒落に見えるかと試みるも定期的に送られてくるのを待ち、使用する野菜は新鮮かと言われればそうではなく、直接この地で栽培することは可能かとこの頃試行錯誤を繰り返している。
一体何を目指しているのかと兄たちからは呆れられてしまいそうだけど、彼女にだけ無理な生活を強いるわけにはいかない。
ちょっとずつ野菜を口に運ぶ彼女に、
「美味しいですか?」
と尋ねると、こくりと頷いてくれる。
「あなたの好きなものがわかればもっとたくさん美味しいものを準備できますよ」
次は返答がない。
必要なことだけ聞ければいい。
彼女がどう思ってくれているかはわからないものの、それでも少しずつ、少しずつでも前進していればいいなと願いながら、今日も変化を感じられる朝のひとときをゆったりと堪能した。
五回目になる朝の挨拶を済ませ、すうっと息を吸う。
「それでは、失礼しま……」
言い終わる前に、バンっと勢いよく扉が開き、前か後ろかわからない長い長い髪の毛を振り乱した彼女が飛び出してくる。
「魔女様、おはようございます」
視線を合わせようと腰を折るも、弾かれたように反応した彼女はさっと俺の脇を通り、奥の部屋へと駆けていく。
慌てて起きたのか布団は乱れていてカーテンも中途半端に開かれている。
入ります、とだけ小さく告げ、いつものように室内を整え、彼女が朝の準備を終えておずおずとやってくるのを朝食を並べて待つ。
ルールを作った。
朝の挨拶を五回しても彼女が出てこない場合は起こすことを目的にそのまま入室させてもらうということ。
暗い室内では気持ちが滅入ってしまうだろうから、朝目覚めたらカーテンを開けること。
まぁ、開けたところで灰色の世界が永遠と広がっているだけなのだけど、何もしないよりはいい。
強行突破を行い、実行を続けていたらしぶしぶながら彼女も従ってくれるようになった。
季節が変わり始めたころには自ら出てきてくれるようにもなった。
こんな扱いをして、絶対に祖母である王宮の魔女にバレたら殺されるだろうなと思いながらも、少しずつ変化を見せてくれるようになった彼女の様子が嬉しかった。
「魔女様、改めましておはようございます」
ぐっとスカートの裾を握りしめ、現れた彼女は朝の準備を終えたのだろう。
自分の中で一番いい笑顔を作る。
「今日もいい朝ですね。お顔を見せてください」
触れようとすると、またさっとかわされて思わず笑ってしまいそうになるのを必死に堪える。
「朝ご飯です!」
どうぞ!と威張るほどのものではないけど、彼女が出てきてくれるようになってからはできるだけ多くの情報を集め、美味しいものが作れるように努力している。
ちょこんと椅子に腰掛けた彼女は小さく何かを呟いたあと、用意したパンにそっと手を伸ばす。
彼女はあまりたくさんは食べられない。
好きなものだけを食べてくれればいいと思う。
サラダの野菜をカラフルに盛り付けて彩ればちょっとはお洒落に見えるかと試みるも定期的に送られてくるのを待ち、使用する野菜は新鮮かと言われればそうではなく、直接この地で栽培することは可能かとこの頃試行錯誤を繰り返している。
一体何を目指しているのかと兄たちからは呆れられてしまいそうだけど、彼女にだけ無理な生活を強いるわけにはいかない。
ちょっとずつ野菜を口に運ぶ彼女に、
「美味しいですか?」
と尋ねると、こくりと頷いてくれる。
「あなたの好きなものがわかればもっとたくさん美味しいものを準備できますよ」
次は返答がない。
必要なことだけ聞ければいい。
彼女がどう思ってくれているかはわからないものの、それでも少しずつ、少しずつでも前進していればいいなと願いながら、今日も変化を感じられる朝のひとときをゆったりと堪能した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる