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【15歳 春】
10、【15歳 春】囚われた騎士と新しい朝
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懐かしい香りがした。
柔らかな色合いがあたりを包み、ふと手を伸ばしたくなる。
夢の中だとわかっているのに、不思議と幸せな気持ちになれた。
胸元で何が動く気配がして、深い眠りから覚める予感がした。
いつもよりぐっすり眠れたであろうのに、もっとこのままでいたい。目覚めたくない。
「きゃっ……」
腕の中の温もりを確かめるように無意識に力を込めた先でさらにじたばたする何かに目を開くしかなかった。
ぼんやりした視界の先には見慣れない光景が広がっていた。
朝が来たことを悟るのは、漆黒の闇が去り、灰色の空を運んできたからだ。
「えっ……」
また何か胸元でもぞもぞと動く存在に今度こそ意識をせざるを得なかった。
長い長い前髪の下から困惑した瞳を大きく揺らしす彼女と目が合ったからだ。
俺の腕の中で必死に動こう動こうと試みていた。
「おはようございます、魔女様。ご気分はいかがですか?」
ずいぶん昨日はうなされているようだったからな……と寝ぼけた頭で思い、彼女の長い髪に手を触れると、
「なっ……ど、どうして……こんな……」
とみるみる頬を真っ赤に染めた彼女に飛び上がった。
「わっ、す、すみません!」
ここへ来てから初めて声を聞いたはずなのに、それどころではない。
あのまま彼女に寄り添い、そのまま自分の眠ってしまうとは……完全にたるんでいる。
「……お久しぶりですね」
それでも、数日ぶりに見た彼女はやっぱり小さくて可愛くて、久しぶりに顔が見られたことを嬉しく思ってしまう。重症だ。
「なかなかお会いできなかったから心配していたんですよ」
「………」
すうっと息を吸うと意外と落ち着くことができたため、そのまま続けることにした。
きっとそれどころではないことは重々承知の上だ。
なぜここに?というような瞳でこちらを見つめる彼女に今しかない向き直る。
「うなされているようでしたので、あなたが落ち着かれるまでと思い、昨晩はお供いたしました」
「……っ」
「その他は誓って何もしていません」
華奢な体は思ったよりもか弱くて、ふるふると揺れるその愛らしい様子に今にもまた抱きしめてしまいそうになるのをぐっとこらえる。
彼女に何かあったら、間違いなく俺は伝説の魔女の怒りを買うことになる。
加えて即刻緊急送還されることであろう。
「怖い夢を見られたようでした。あなたと俺はこうしてともに過ごしていくのですから、つらいときや怖くなったときはひとりで苦しまずに頼ってほしいんです」
「……」
「苦手なものはありますか? 嵐の夜や雷の鳴る夜もこうしてあなたとともに夜を過ごせたらと思います」
「なっ!」
小さなうめき声と共にまたみるみる顔を赤くさせる彼女に自然と笑みが浮かんだ。
かすかにも表情が動き出したことが嬉しい。
「一応、これでもお年頃なので、あまり可愛い行動をされると自制が効かないと思うのでほどほどにお願いします」
「ええっ!」
「あなた様と同じ年です。……魔女様?」
「………」
細い指先で真っ赤な顔を覆い、身をさらに小さくしようと丸くなる彼女は本当に可愛い。
「それに、まずはもう少し太ってください」
「っ!」
そのまま持ち上げると、ふわっと背中に羽が生えているように軽々しく彼女は持ち上がった。
「ほら。すごく軽い」
「!!!!!!」
「こんなの悪い奴らに攫われようものならすぐに連れて行かれてしまう」
ここでの悪いやつは言われるまでもなく俺だけど。
「さぁ、これからはちゃんとご飯の時間はご一緒していただきます。俺もあなたが食べたくなるものを作りますので、あなたもしっかり食べてください」
有無を言わせず抱きかかえ、語りかけるも彼女は反応を返してくれることはない。
両手で顔を覆い、ぐっと力を込めているのがわかる。
「あなたを守ると約束します」
味方であるのだと何度だって伝えたい。
「今さらですが……」
俺は無神経で空気の読めない人間であることを心に決め、笑顔を作った。
「おはようございます、魔女様」
守っていきたいんだ。
あなたも。あなたの笑顔も。
柔らかな色合いがあたりを包み、ふと手を伸ばしたくなる。
夢の中だとわかっているのに、不思議と幸せな気持ちになれた。
胸元で何が動く気配がして、深い眠りから覚める予感がした。
いつもよりぐっすり眠れたであろうのに、もっとこのままでいたい。目覚めたくない。
「きゃっ……」
腕の中の温もりを確かめるように無意識に力を込めた先でさらにじたばたする何かに目を開くしかなかった。
ぼんやりした視界の先には見慣れない光景が広がっていた。
朝が来たことを悟るのは、漆黒の闇が去り、灰色の空を運んできたからだ。
「えっ……」
また何か胸元でもぞもぞと動く存在に今度こそ意識をせざるを得なかった。
長い長い前髪の下から困惑した瞳を大きく揺らしす彼女と目が合ったからだ。
俺の腕の中で必死に動こう動こうと試みていた。
「おはようございます、魔女様。ご気分はいかがですか?」
ずいぶん昨日はうなされているようだったからな……と寝ぼけた頭で思い、彼女の長い髪に手を触れると、
「なっ……ど、どうして……こんな……」
とみるみる頬を真っ赤に染めた彼女に飛び上がった。
「わっ、す、すみません!」
ここへ来てから初めて声を聞いたはずなのに、それどころではない。
あのまま彼女に寄り添い、そのまま自分の眠ってしまうとは……完全にたるんでいる。
「……お久しぶりですね」
それでも、数日ぶりに見た彼女はやっぱり小さくて可愛くて、久しぶりに顔が見られたことを嬉しく思ってしまう。重症だ。
「なかなかお会いできなかったから心配していたんですよ」
「………」
すうっと息を吸うと意外と落ち着くことができたため、そのまま続けることにした。
きっとそれどころではないことは重々承知の上だ。
なぜここに?というような瞳でこちらを見つめる彼女に今しかない向き直る。
「うなされているようでしたので、あなたが落ち着かれるまでと思い、昨晩はお供いたしました」
「……っ」
「その他は誓って何もしていません」
華奢な体は思ったよりもか弱くて、ふるふると揺れるその愛らしい様子に今にもまた抱きしめてしまいそうになるのをぐっとこらえる。
彼女に何かあったら、間違いなく俺は伝説の魔女の怒りを買うことになる。
加えて即刻緊急送還されることであろう。
「怖い夢を見られたようでした。あなたと俺はこうしてともに過ごしていくのですから、つらいときや怖くなったときはひとりで苦しまずに頼ってほしいんです」
「……」
「苦手なものはありますか? 嵐の夜や雷の鳴る夜もこうしてあなたとともに夜を過ごせたらと思います」
「なっ!」
小さなうめき声と共にまたみるみる顔を赤くさせる彼女に自然と笑みが浮かんだ。
かすかにも表情が動き出したことが嬉しい。
「一応、これでもお年頃なので、あまり可愛い行動をされると自制が効かないと思うのでほどほどにお願いします」
「ええっ!」
「あなた様と同じ年です。……魔女様?」
「………」
細い指先で真っ赤な顔を覆い、身をさらに小さくしようと丸くなる彼女は本当に可愛い。
「それに、まずはもう少し太ってください」
「っ!」
そのまま持ち上げると、ふわっと背中に羽が生えているように軽々しく彼女は持ち上がった。
「ほら。すごく軽い」
「!!!!!!」
「こんなの悪い奴らに攫われようものならすぐに連れて行かれてしまう」
ここでの悪いやつは言われるまでもなく俺だけど。
「さぁ、これからはちゃんとご飯の時間はご一緒していただきます。俺もあなたが食べたくなるものを作りますので、あなたもしっかり食べてください」
有無を言わせず抱きかかえ、語りかけるも彼女は反応を返してくれることはない。
両手で顔を覆い、ぐっと力を込めているのがわかる。
「あなたを守ると約束します」
味方であるのだと何度だって伝えたい。
「今さらですが……」
俺は無神経で空気の読めない人間であることを心に決め、笑顔を作った。
「おはようございます、魔女様」
守っていきたいんだ。
あなたも。あなたの笑顔も。
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