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番外編② R
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閨教育というものは、貴族の家ならば大抵が行っているものだ。
スマートというものが時に金銭よりも重要視される社交界で、夜を滞りなく終えることが出来ないというのはその人物、ひいては家の汚点に繋がるからだという。
今の時代の貴族たちは家に特別講師を招いてでも、彼らの子供たちに教育を惜しまない。
ウィリム・エヴァンズも例外ではない。
というより、兄弟の中で最も多くの講義を受けてきた自信がある。
それはあの強烈な家訓のせいだ。
誰かへと嫁ぐ運命を背負わされた三男は、攻め側と受け側どちらのやり方も教わる。
スマートに事が成されないために夫と離縁、実家に戻ってきた三男がいきなり家督を継ぎたいなどと狂ったことを言わないよう、エヴァンズ家の三男はじっくりゆっくり夜の知識を蓄えさせられる。
ということで、ウィリムはそっち方面は結構な頭でっかちだった。
実践で教われるギリギリのラインまでは知っていたおかげで、セドリックといざそうしようとした時に意外と平静だったりもした。
主導権を握ろうなんていう考えはないにしても、初めて同士だから、共に歩み寄っていけたら良いななんて無邪気なことを考えていたりもした。
「今はだめ…あぁぁ、揺すらない、で……待って、あ、あ」
ベッドに座ったセドリックの足を跨いで、上に座らされているウィリム。
その奥の窄まりには既に硬いセドリックを受け入れている。
受ける側の慣らし方や快感の拾い方は習得済みだから、と少し気負って臨んだ初夜、ウィリムは本当に何も出来なかった。
いや、その言い方は正しいようで正しくない。
正確には、快感に流される以外に出来ることが何もなかった。
初めて同士だからと高を括っていたウィリムをセドリックは、あまりにもスマートな作法で何度も高みへと連れて行った。
明け透けな一言で表現するなら、婚約者は本当に童貞かと疑ったほどだ。
閨教育を受けるとはいえ挿入まで経験するのは珍しいので、セドリックが童貞なのは紛いもない事実だったが、それを心底疑問に思ってしまいたくなるほどに上手だった。
気持ち快すぎておかしくなるかと思った。
それが初夜を無事に終えたウィリムの感想だった。
そして、数回目の夜、今日。
ウィリムは相も変わらず同じ感想を抱いている。
「奥…おく、は擦らないで……やぁ、」
「さっきは真ん中はやだって泣いたから奥に挿れたんだよ? ここもやだ?」
「っ、っ、……ひっかかってる、ひっかけないで、っ……あ、あーっ」
長い前戯でとろとろに溶かされて、気がつけばセドリックの太腿に座らされていた。
「自分で挿れてみて」とねだる婚約者の甘い眼差しに負けて、羞恥に身体を赤く染めながらウィリムは膝立ちになった。
凹凸を合わせて腰を下ろす。
硬くて大きな亀頭がくぷん、と入口に潜り込むと、それだけで身体は震えた。
勝手に痙攣する括約筋に悶えていると、セドリックに腰を掴まれた。
小刻みに上下させられる。
「ぅく…、あぅ……そこ、しないで……入口、拡げないでっ」
「進んでくれないから、てっきりここを弄ってほしいんだと思った。それならほら、もっと中まで挿れて」
「うぅぅ……」
脚の付け根を揉まれて、怪しい場所への刺激に腰が跳ねた。
びくん、となった拍子に力が抜けて、セドリックを深く飲み込んでいく。
貫かれる怖さと隘路を満たされる快感がない交ぜになる。
中間地点にたどり着いたとき、ウィリムは一際大きく啼いた。
「やぁ、セド、そこは優しくしてほし……っ、あん!」
前立腺だと分かっていて、弱点だと分かっていて、動く腰を止められた。
むしろそこは快感を最小限にして通過してしまいたかったのに、というウィリムの願いはあっけなく打ち砕かれる。
狙いを定めて一点を、張り出した雁の部分で抉られた。
「あぁ、締まるね。ウィリムは本当にここが好きだ」
「ぐりぐり、やぁぁ……許して、許して……」
「すごい、絡みついてくる……もしかしてイきそう?」
「分かんない、分かんないのが来そう…っ、なんか来ちゃう、待って、これなに?」
「中でイっちゃいそうなの、可愛い……」
こんなの閨教育で習わなかった。
中でイくってどういうこと?
男は精液を出すのがそうなることではないの?
困惑する頭とは裏腹に、身体は見たこともない高みを目指して駆け上っていく。
あと少し、もう少し。
目の前が白く染まった瞬間――。
「…あ? ……え、なんで…?」
無意識に動かしていた腰を容赦なく掴まれた。
その場に強制的に留められた快感は、下腹部を強烈に苛んでいる。
「セドリック、や、なんで? これつらいぃぃ……」
「さっき、やだって言ってたから。許してって。だからやめてあげた」
あまりの言葉に目を見開くウィリム。
意地悪だ、すごくすごく。
快いところを的確に責めて啼かせるのに、最後の最後で与えてくれないなんて。
意地悪だ。
「睨まれて怖いな……でも、潤んだ瞳が可愛くて愛しくて、食べちゃいたいくらいに綺麗だ」
うっとりと呟くセドリックの、その極上なまでに色気を纏った眼差し。
それに射抜かれてしまっては、ウィリムの抗議も弱くなる。
近づいてくる端正な顔に、瞼を閉じた。
「…ふ、んん……あふ……」
唇を嬲られて、表面も中も舐められて甘やかされる。
「可愛い、ウィリム。もっと気持ち快くなろうね。もっと奥まで、もう入らないってところまで開いて」
「っっっ、やぁぁぁ!」
変わってしまった婚約者。
ベッドの上では絶対王者だ。
スマートというものが時に金銭よりも重要視される社交界で、夜を滞りなく終えることが出来ないというのはその人物、ひいては家の汚点に繋がるからだという。
今の時代の貴族たちは家に特別講師を招いてでも、彼らの子供たちに教育を惜しまない。
ウィリム・エヴァンズも例外ではない。
というより、兄弟の中で最も多くの講義を受けてきた自信がある。
それはあの強烈な家訓のせいだ。
誰かへと嫁ぐ運命を背負わされた三男は、攻め側と受け側どちらのやり方も教わる。
スマートに事が成されないために夫と離縁、実家に戻ってきた三男がいきなり家督を継ぎたいなどと狂ったことを言わないよう、エヴァンズ家の三男はじっくりゆっくり夜の知識を蓄えさせられる。
ということで、ウィリムはそっち方面は結構な頭でっかちだった。
実践で教われるギリギリのラインまでは知っていたおかげで、セドリックといざそうしようとした時に意外と平静だったりもした。
主導権を握ろうなんていう考えはないにしても、初めて同士だから、共に歩み寄っていけたら良いななんて無邪気なことを考えていたりもした。
「今はだめ…あぁぁ、揺すらない、で……待って、あ、あ」
ベッドに座ったセドリックの足を跨いで、上に座らされているウィリム。
その奥の窄まりには既に硬いセドリックを受け入れている。
受ける側の慣らし方や快感の拾い方は習得済みだから、と少し気負って臨んだ初夜、ウィリムは本当に何も出来なかった。
いや、その言い方は正しいようで正しくない。
正確には、快感に流される以外に出来ることが何もなかった。
初めて同士だからと高を括っていたウィリムをセドリックは、あまりにもスマートな作法で何度も高みへと連れて行った。
明け透けな一言で表現するなら、婚約者は本当に童貞かと疑ったほどだ。
閨教育を受けるとはいえ挿入まで経験するのは珍しいので、セドリックが童貞なのは紛いもない事実だったが、それを心底疑問に思ってしまいたくなるほどに上手だった。
気持ち快すぎておかしくなるかと思った。
それが初夜を無事に終えたウィリムの感想だった。
そして、数回目の夜、今日。
ウィリムは相も変わらず同じ感想を抱いている。
「奥…おく、は擦らないで……やぁ、」
「さっきは真ん中はやだって泣いたから奥に挿れたんだよ? ここもやだ?」
「っ、っ、……ひっかかってる、ひっかけないで、っ……あ、あーっ」
長い前戯でとろとろに溶かされて、気がつけばセドリックの太腿に座らされていた。
「自分で挿れてみて」とねだる婚約者の甘い眼差しに負けて、羞恥に身体を赤く染めながらウィリムは膝立ちになった。
凹凸を合わせて腰を下ろす。
硬くて大きな亀頭がくぷん、と入口に潜り込むと、それだけで身体は震えた。
勝手に痙攣する括約筋に悶えていると、セドリックに腰を掴まれた。
小刻みに上下させられる。
「ぅく…、あぅ……そこ、しないで……入口、拡げないでっ」
「進んでくれないから、てっきりここを弄ってほしいんだと思った。それならほら、もっと中まで挿れて」
「うぅぅ……」
脚の付け根を揉まれて、怪しい場所への刺激に腰が跳ねた。
びくん、となった拍子に力が抜けて、セドリックを深く飲み込んでいく。
貫かれる怖さと隘路を満たされる快感がない交ぜになる。
中間地点にたどり着いたとき、ウィリムは一際大きく啼いた。
「やぁ、セド、そこは優しくしてほし……っ、あん!」
前立腺だと分かっていて、弱点だと分かっていて、動く腰を止められた。
むしろそこは快感を最小限にして通過してしまいたかったのに、というウィリムの願いはあっけなく打ち砕かれる。
狙いを定めて一点を、張り出した雁の部分で抉られた。
「あぁ、締まるね。ウィリムは本当にここが好きだ」
「ぐりぐり、やぁぁ……許して、許して……」
「すごい、絡みついてくる……もしかしてイきそう?」
「分かんない、分かんないのが来そう…っ、なんか来ちゃう、待って、これなに?」
「中でイっちゃいそうなの、可愛い……」
こんなの閨教育で習わなかった。
中でイくってどういうこと?
男は精液を出すのがそうなることではないの?
困惑する頭とは裏腹に、身体は見たこともない高みを目指して駆け上っていく。
あと少し、もう少し。
目の前が白く染まった瞬間――。
「…あ? ……え、なんで…?」
無意識に動かしていた腰を容赦なく掴まれた。
その場に強制的に留められた快感は、下腹部を強烈に苛んでいる。
「セドリック、や、なんで? これつらいぃぃ……」
「さっき、やだって言ってたから。許してって。だからやめてあげた」
あまりの言葉に目を見開くウィリム。
意地悪だ、すごくすごく。
快いところを的確に責めて啼かせるのに、最後の最後で与えてくれないなんて。
意地悪だ。
「睨まれて怖いな……でも、潤んだ瞳が可愛くて愛しくて、食べちゃいたいくらいに綺麗だ」
うっとりと呟くセドリックの、その極上なまでに色気を纏った眼差し。
それに射抜かれてしまっては、ウィリムの抗議も弱くなる。
近づいてくる端正な顔に、瞼を閉じた。
「…ふ、んん……あふ……」
唇を嬲られて、表面も中も舐められて甘やかされる。
「可愛い、ウィリム。もっと気持ち快くなろうね。もっと奥まで、もう入らないってところまで開いて」
「っっっ、やぁぁぁ!」
変わってしまった婚約者。
ベッドの上では絶対王者だ。
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こちらこそ、読んでいただいただけでなく嬉しい感想までありがとうございます!
感謝しかありません!!!
新作楽しみにしていました!溺愛系楽しみです!これからどんなふうにかっこよくなっていくのかワクワクです!
わー!新しいのも読んでくださり、ありがとうございますー!!
短くて明日には終わっちゃうんですが、楽しんでいただければ嬉しいです☌ᴗ☌