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グレアム邸の客人2
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「……ひまねえ」
セシリアがぽつりとこぼすと忙しなく動いていた使用人の一人が慌てて飛んでくる。
「なにか本などお持ちいたしましょうか」
「いえ、少し歩きたいわ。お屋敷を案内してくれる?」
「はい!」
案内と言ってもグレアム邸はそう広くはない。
近くのレイクガーデンに行った方がまだ時間が潰せるだろう。
全員がマリオンとブリジットに注目しているなかで小さな庭に出ると、喧騒は遠い。
「お屋敷は以上になります」
「あら、そう? 私気になるところがあるのだけれど、案内して頂けるかしら」
「気になるところ……ですか?」
セシリアは使用人の手を握った。
ちゃり。
その手のなかに、金貨を握らせて。
グレアム家のパーティーのことはすぐさま社交界の話題になった。
あのマリオンがグレアム家に出向いたからだ。
目撃情報はすぐさま噂になり、ぱっとしない家だったグレアム家はマリオンを呼べるほどの格を手に入れた。
さらにハウンドが出席の返事をしたのだから当然皆注目していた。
ハウンドと言えばステラと仲がいいことで有名ではあったので、参加自体は不思議ではない。
しかし、奇妙なことがあった。
「最近ステラ嬢をお見掛けしませんね」
「パーティーの準備に忙しいのでは?」
「私もそう思ったんだが、どうもグレアム家のパーティーの主催はブリジット嬢らしい。グレアム家の使用人の話では、マリオンのドレスもブリジット嬢のためのものだとか」
「まあ! それは確かな話ですの? だとしたら話が変わってきますわ」
うわさ話に目がない貴族達が目配せをする。
皆脳裏に同じことを思っていた。
「あ……ブリジット嬢とデリック殿の婚約発表パーティー……!」
「そう、そうですわ。ステラ嬢は一度ブリジット嬢に婚約者を奪われていますわよね。これってもしかして」
「ステラ嬢は『また』男性を奪われた……?」
わあっと下品な声が上がる。
どこのサロンもパーティーも、その話題で大盛り上がりだ。
グレアム家の使用人たちがやさぐれてどんどん愚痴という名の情報を漏らすものだから、噂もヒートアップしていく。
ステラが閉じ込められていることやブリジットがハウンドを襲おうとしていることは秘密なため、奇妙な情報の抜けがかえって貴族たちの好奇心を煽った。
「私はパーティーに招待いただきましたわ。ブリジット嬢とは懇意にさせていただいていましたから」
「おや私もです。それにしてもブリジット嬢はとても多くの方を呼んでいるようですな」
「かなり力が入った大規模なパーティーということでしょう。招待状は名義こそグレアム家ですが、明らかにブリジット嬢のパーティーです。ファーストネームは彼女のものしかありませんでしたから」
「では、ハウンド殿が彼女の招待を受けたということは……?」
その場にいた貴族たちは目を見合わせる。
一人が内緒話のように声を潜めて全員の考えを口にした。
「またあの時のような光景が再現されるのではないかしら」
あの時。それはステラがどん底に落ち、ハウンドが社交界に現れた鮮烈なパーティーがあった日だ。
「ステラ嬢もおいたわしい。彼女と少しお話をしましたが、噂と違って知的な才媛でしたよ」
「以前はブリジット嬢の美貌ばかり届いていましたが、最近はステラ嬢もお美しくなられましたよね。どちらかというと、ステラ嬢の方がご令嬢の憧れになりつつあるとか」
「ステラ嬢は長く社交界にいらっしゃらなかったもの。昔はあまり……ぼんやりとした印象で特徴もない方でした。あの枯葉色の髪だけ目立っていて」
今は違っても、多くの人がステラを思い出すときぼさぼさの枯葉色の髪が多くの割合を占める。
少なくともブリジットのパーティーに呼ばれた人の多くはそうだった。
「ま、ハウンド殿も男ということですな。蝶になったところで虫は虫。ステラ嬢には女性らしさが足りんからな」
「あらいやですわ女性を虫だなんて」
グレアム家のパーティーに注目していない貴族はもはやいないようなものだった。
セシリアがぽつりとこぼすと忙しなく動いていた使用人の一人が慌てて飛んでくる。
「なにか本などお持ちいたしましょうか」
「いえ、少し歩きたいわ。お屋敷を案内してくれる?」
「はい!」
案内と言ってもグレアム邸はそう広くはない。
近くのレイクガーデンに行った方がまだ時間が潰せるだろう。
全員がマリオンとブリジットに注目しているなかで小さな庭に出ると、喧騒は遠い。
「お屋敷は以上になります」
「あら、そう? 私気になるところがあるのだけれど、案内して頂けるかしら」
「気になるところ……ですか?」
セシリアは使用人の手を握った。
ちゃり。
その手のなかに、金貨を握らせて。
グレアム家のパーティーのことはすぐさま社交界の話題になった。
あのマリオンがグレアム家に出向いたからだ。
目撃情報はすぐさま噂になり、ぱっとしない家だったグレアム家はマリオンを呼べるほどの格を手に入れた。
さらにハウンドが出席の返事をしたのだから当然皆注目していた。
ハウンドと言えばステラと仲がいいことで有名ではあったので、参加自体は不思議ではない。
しかし、奇妙なことがあった。
「最近ステラ嬢をお見掛けしませんね」
「パーティーの準備に忙しいのでは?」
「私もそう思ったんだが、どうもグレアム家のパーティーの主催はブリジット嬢らしい。グレアム家の使用人の話では、マリオンのドレスもブリジット嬢のためのものだとか」
「まあ! それは確かな話ですの? だとしたら話が変わってきますわ」
うわさ話に目がない貴族達が目配せをする。
皆脳裏に同じことを思っていた。
「あ……ブリジット嬢とデリック殿の婚約発表パーティー……!」
「そう、そうですわ。ステラ嬢は一度ブリジット嬢に婚約者を奪われていますわよね。これってもしかして」
「ステラ嬢は『また』男性を奪われた……?」
わあっと下品な声が上がる。
どこのサロンもパーティーも、その話題で大盛り上がりだ。
グレアム家の使用人たちがやさぐれてどんどん愚痴という名の情報を漏らすものだから、噂もヒートアップしていく。
ステラが閉じ込められていることやブリジットがハウンドを襲おうとしていることは秘密なため、奇妙な情報の抜けがかえって貴族たちの好奇心を煽った。
「私はパーティーに招待いただきましたわ。ブリジット嬢とは懇意にさせていただいていましたから」
「おや私もです。それにしてもブリジット嬢はとても多くの方を呼んでいるようですな」
「かなり力が入った大規模なパーティーということでしょう。招待状は名義こそグレアム家ですが、明らかにブリジット嬢のパーティーです。ファーストネームは彼女のものしかありませんでしたから」
「では、ハウンド殿が彼女の招待を受けたということは……?」
その場にいた貴族たちは目を見合わせる。
一人が内緒話のように声を潜めて全員の考えを口にした。
「またあの時のような光景が再現されるのではないかしら」
あの時。それはステラがどん底に落ち、ハウンドが社交界に現れた鮮烈なパーティーがあった日だ。
「ステラ嬢もおいたわしい。彼女と少しお話をしましたが、噂と違って知的な才媛でしたよ」
「以前はブリジット嬢の美貌ばかり届いていましたが、最近はステラ嬢もお美しくなられましたよね。どちらかというと、ステラ嬢の方がご令嬢の憧れになりつつあるとか」
「ステラ嬢は長く社交界にいらっしゃらなかったもの。昔はあまり……ぼんやりとした印象で特徴もない方でした。あの枯葉色の髪だけ目立っていて」
今は違っても、多くの人がステラを思い出すときぼさぼさの枯葉色の髪が多くの割合を占める。
少なくともブリジットのパーティーに呼ばれた人の多くはそうだった。
「ま、ハウンド殿も男ということですな。蝶になったところで虫は虫。ステラ嬢には女性らしさが足りんからな」
「あらいやですわ女性を虫だなんて」
グレアム家のパーティーに注目していない貴族はもはやいないようなものだった。
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