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グレアム邸の客人
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「マリオンが来たわ!」
その日のグレアム邸は朝から騒々しかった。
使用人の誰もが絶対無理だと思ったマリオンが訪問するというのだ。
仕立屋は貴族ではないため貴族であるグレアム家が恭しく迎える必要は本来ないのだが、実質マリオンの腕次第で今後の社交界での地位が決まるようなものなのだ。
最高のドレスを仕立てるために、グレアム家一丸となってマリオンを歓迎するのだった。
そしてその選択は、結果的には大成功だった。
なんとマリオンがセシリアを連れてきたのだ。
手紙で友人を一人連れてくるとはあったものの、まさか侯爵家ご令嬢だとは思わない。
そもそも、連れてくるとしたら「逆」なのだ。
セシリアがマリオンを連れてくるのが普通で、マリオンがセシリアを連れてくる、なんて普通ならありえないことだった。
しかしグレアム家はそんな当然のことにも気が回らず、侯爵家令嬢との繋がりが出来ると舞い上がった。
セシリアが「マリオンに無理言って連れてきてもらったの。ステラがブリジットのこと良いお姉さんだと話していたから気になっていて。今日お会いできてうれしいわ」と言えば、誰もそれを疑わなかった。
今日はあくまでマリオンの仕事がメインで、セシリアはたまたま近くで会って寄っただけだから気にしないでほしいという。
言葉のとおりセシリアはソファに座ったままじっとしていた。
「すばらしい歓待をありがとうございます。私マリオン、誠心誠意こめてグレアム家の為に働きますわ」
「やったわ! ありがとうマリオン! 私、あなたのドレスが大好きなの!」
グレアム家で一番の部屋、最高級のお茶、流行のお菓子。
マリオン相手に貴族相手のもてなしに、マリオンはうっすらと微笑む。
「ところで私にお手紙をくださったのはステラ嬢だと思っていたのですが……」
「あ……ああ、ステラね。今はちょっと出かけているわ。彼女から言われてるかもしれないけれど今日は……」
「ええ。今日はブリジット嬢のドレスのために参りました。お手紙を頂いたのでご挨拶をと思ったのですけれどいらっしゃらないのなら仕方ありません」
マリオンがすんなり引き下がるとブリジットはあからさまにほっとした。
まさか手紙はなりすましで、本人は地下室にいるとは言えない。
「ほ、本当に不出来な娘で。お客様もお出迎え出来ないんですもの。お恥ずかしいですわ。ですが代わりにブリジットが立派に努めさせていただきます」
母親が焦って口を出す。
マリオンはしばらく黙ったあと、にこりと笑った。
「私などに気を遣っていただいてありがとうございます。さっそくブリジット様の採寸に入ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんです!」
仕事モードに入ったマリオンに母娘は目を輝かせた。
マリオンは既製品でも入手困難。ドレスを作る場合も、実作業はお針子の仕事でありマリオンはデザインに勤しんでいるという。
それなのに採寸からマリオン自ら行うとは思ってもいなかった。
もはやブリジットと母親は舞い上がっていた。
頭からすっぽりとステラのことも、セシリアのことも抜け落ちるほどに。
その日のグレアム邸は朝から騒々しかった。
使用人の誰もが絶対無理だと思ったマリオンが訪問するというのだ。
仕立屋は貴族ではないため貴族であるグレアム家が恭しく迎える必要は本来ないのだが、実質マリオンの腕次第で今後の社交界での地位が決まるようなものなのだ。
最高のドレスを仕立てるために、グレアム家一丸となってマリオンを歓迎するのだった。
そしてその選択は、結果的には大成功だった。
なんとマリオンがセシリアを連れてきたのだ。
手紙で友人を一人連れてくるとはあったものの、まさか侯爵家ご令嬢だとは思わない。
そもそも、連れてくるとしたら「逆」なのだ。
セシリアがマリオンを連れてくるのが普通で、マリオンがセシリアを連れてくる、なんて普通ならありえないことだった。
しかしグレアム家はそんな当然のことにも気が回らず、侯爵家令嬢との繋がりが出来ると舞い上がった。
セシリアが「マリオンに無理言って連れてきてもらったの。ステラがブリジットのこと良いお姉さんだと話していたから気になっていて。今日お会いできてうれしいわ」と言えば、誰もそれを疑わなかった。
今日はあくまでマリオンの仕事がメインで、セシリアはたまたま近くで会って寄っただけだから気にしないでほしいという。
言葉のとおりセシリアはソファに座ったままじっとしていた。
「すばらしい歓待をありがとうございます。私マリオン、誠心誠意こめてグレアム家の為に働きますわ」
「やったわ! ありがとうマリオン! 私、あなたのドレスが大好きなの!」
グレアム家で一番の部屋、最高級のお茶、流行のお菓子。
マリオン相手に貴族相手のもてなしに、マリオンはうっすらと微笑む。
「ところで私にお手紙をくださったのはステラ嬢だと思っていたのですが……」
「あ……ああ、ステラね。今はちょっと出かけているわ。彼女から言われてるかもしれないけれど今日は……」
「ええ。今日はブリジット嬢のドレスのために参りました。お手紙を頂いたのでご挨拶をと思ったのですけれどいらっしゃらないのなら仕方ありません」
マリオンがすんなり引き下がるとブリジットはあからさまにほっとした。
まさか手紙はなりすましで、本人は地下室にいるとは言えない。
「ほ、本当に不出来な娘で。お客様もお出迎え出来ないんですもの。お恥ずかしいですわ。ですが代わりにブリジットが立派に努めさせていただきます」
母親が焦って口を出す。
マリオンはしばらく黙ったあと、にこりと笑った。
「私などに気を遣っていただいてありがとうございます。さっそくブリジット様の採寸に入ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんです!」
仕事モードに入ったマリオンに母娘は目を輝かせた。
マリオンは既製品でも入手困難。ドレスを作る場合も、実作業はお針子の仕事でありマリオンはデザインに勤しんでいるという。
それなのに採寸からマリオン自ら行うとは思ってもいなかった。
もはやブリジットと母親は舞い上がっていた。
頭からすっぽりとステラのことも、セシリアのことも抜け落ちるほどに。
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