婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

文字の大きさ
71 / 83

パーティの開始

しおりを挟む
 パーティーの日はやってきた。

 何日もかけて準備したものの、やはり経験と時間、資金不足はごまかせない。
 料理は簡単なものばかりなうえに足りないし、出迎えや案内の使用人は見当たらないレベルなので客同士で情報交換をしている始末だ。

 集まる人々もグレアム家が呼べる人数より大幅に多く、ダンスフロアどころか階段までぎゅうぎゅうだ。
 それでも集まった人々が文句を言いながらもとどまっているのは、噂があったからである。

『ハウンドとブリジットの婚約発表がある』

 すさまじい事件だ。
 ブリジットは社交界では妹に婚約者デリックを譲ったもののじっと秘めた思いを抱え、最近やっと真実愛するデリックと結ばれ婚約をした……という話である。
 長年想いの邪魔をしてきたステラに対するデリックの怒りはすさまじく、パーティーで頭を床につけての謝罪を要求したことはかなり有名だ。

 そこで出てきたのがハウンドである。
 ハウンドはシャンデリアの光の下に現れるや否やあっという間に社交界の中心になった。

 いったいどうして、そんな二人が婚約することになったのだろう。
 デリックは? ステラはどうなる? 皆の興味は尽きない。


「……」

 デリックもこのパーティーに招待されていた。
 ハウンドに殴られたパーティーから久しぶりに出席したパーティーで、ブリジットとハウンドの婚約が噂されているので穏やかではいられない。
 しかし、あらゆる好奇の目と口さがないおしゃべりの前に大人しくしているしかなかった。

(ブリジットならたしかにハウンドに乗り換えることもあるかもしれないな)

 ステラが婚約者だった時は二人で禁じられた恋だのなんだのと盛り上がっていたが、ブリジットの興味はもはや完全にハウンドに移っている。
 見舞いにもめっきり訪れなくなった。
 そしてデリックも、美しく花開いたステラのことばかり考えていたのだった。

(だがハウンドの方はブリジットに興味があるように思えない……ステラのことしか考えてなかった。あいつがブリジットに近づくための演技か? いや、そんなことする必要はないしな。そういえばステラはどこにいったんだ? ブリジットにとっては邪魔ものだろうがブリジットなら)

「ブリジット嬢であればきっとステラをこの場によんで、立場を分からせるはず。ちがうかしら? お怪我がよくなったようでなによりですわ」

「……っバーンズ家の」

「うふふセシリアですわ。ごきげんよう。ああ警戒なさらないで。この人込みですもの。あなたを見つけたのは本当に偶然です。考えていらっしゃることが全部お顔に出ていたのでご忠告をと思ったの。そんなに素直に情報をだしていると、化け物たちの餌になっちゃうわよ。まあでも、余計なお世話だったかしら」

 セシリアがデリックを見つけたのは意図しない事であった。
 正直どうでもいい相手ではあったのだが、このあと起こることを考えれば少しの同情心もある。
 内心は「今まで多くのパーティーを経験しておいてその体たらくってどういうこと」と呆れかえってはいたが。

「……いえ。ご忠告ありがとうございます。たしかにステラがいないことが気になっていました。いや、それどころかブリジットもハウンドもいない……」

 口にして改めてぞっとする。

(パーティーにホストがいないなんて異常事態だ。どういうことだ?)

 使用人は働いているようだが、家主も噂の相手も見当たらない。
 その使用人の数も妙に少ない。
 グレアム家が金銭に余裕がないとはいえ、少なすぎる。

「いったいなにが」

 セシリアならなにか知っているかと横を向くと、彼女はもうドレスの華やぎに紛れてしまっていた。

(ハウンドがきたらどうやっても目立つはずだ。まだ来ていないのか?)

 セシリアの忠告はすぐに頭から抜け、きょろきょろと周囲を見渡す。
 招待客ばかりであの目立つ長身と顔は見当たらない。
 突然、周囲が不安定な崖で出来ているような心地になった。
 今にでも崩れそうで、不安になったデリックは俯いてしまう。

 そんなデリックを数人が扇の下で笑っている。
 彼はもはや、家主不在で暇になったゲストたちの恰好の前菜でしかなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!

aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。 そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。 それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。 淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。 古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。 知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。 これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。

処理中です...