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パーティの開始
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パーティーの日はやってきた。
何日もかけて準備したものの、やはり経験と時間、資金不足はごまかせない。
料理は簡単なものばかりなうえに足りないし、出迎えや案内の使用人は見当たらないレベルなので客同士で情報交換をしている始末だ。
集まる人々もグレアム家が呼べる人数より大幅に多く、ダンスフロアどころか階段までぎゅうぎゅうだ。
それでも集まった人々が文句を言いながらもとどまっているのは、噂があったからである。
『ハウンドとブリジットの婚約発表がある』
すさまじい事件だ。
ブリジットは社交界では妹に婚約者デリックを譲ったもののじっと秘めた思いを抱え、最近やっと真実愛するデリックと結ばれ婚約をした……という話である。
長年想いの邪魔をしてきたステラに対するデリックの怒りはすさまじく、パーティーで頭を床につけての謝罪を要求したことはかなり有名だ。
そこで出てきたのがハウンドである。
ハウンドはシャンデリアの光の下に現れるや否やあっという間に社交界の中心になった。
いったいどうして、そんな二人が婚約することになったのだろう。
デリックは? ステラはどうなる? 皆の興味は尽きない。
「……」
デリックもこのパーティーに招待されていた。
ハウンドに殴られたパーティーから久しぶりに出席したパーティーで、ブリジットとハウンドの婚約が噂されているので穏やかではいられない。
しかし、あらゆる好奇の目と口さがないおしゃべりの前に大人しくしているしかなかった。
(ブリジットならたしかにハウンドに乗り換えることもあるかもしれないな)
ステラが婚約者だった時は二人で禁じられた恋だのなんだのと盛り上がっていたが、ブリジットの興味はもはや完全にハウンドに移っている。
見舞いにもめっきり訪れなくなった。
そしてデリックも、美しく花開いたステラのことばかり考えていたのだった。
(だがハウンドの方はブリジットに興味があるように思えない……ステラのことしか考えてなかった。あいつがブリジットに近づくための演技か? いや、そんなことする必要はないしな。そういえばステラはどこにいったんだ? ブリジットにとっては邪魔ものだろうがブリジットなら)
「ブリジット嬢であればきっとステラをこの場によんで、立場を分からせるはず。ちがうかしら? お怪我がよくなったようでなによりですわ」
「……っバーンズ家の」
「うふふセシリアですわ。ごきげんよう。ああ警戒なさらないで。この人込みですもの。あなたを見つけたのは本当に偶然です。考えていらっしゃることが全部お顔に出ていたのでご忠告をと思ったの。そんなに素直に情報をだしていると、化け物たちの餌になっちゃうわよ。まあでも、余計なお世話だったかしら」
セシリアがデリックを見つけたのは意図しない事であった。
正直どうでもいい相手ではあったのだが、このあと起こることを考えれば少しの同情心もある。
内心は「今まで多くのパーティーを経験しておいてその体たらくってどういうこと」と呆れかえってはいたが。
「……いえ。ご忠告ありがとうございます。たしかにステラがいないことが気になっていました。いや、それどころかブリジットもハウンドもいない……」
口にして改めてぞっとする。
(パーティーにホストがいないなんて異常事態だ。どういうことだ?)
使用人は働いているようだが、家主も噂の相手も見当たらない。
その使用人の数も妙に少ない。
グレアム家が金銭に余裕がないとはいえ、少なすぎる。
「いったいなにが」
セシリアならなにか知っているかと横を向くと、彼女はもうドレスの華やぎに紛れてしまっていた。
(ハウンドがきたらどうやっても目立つはずだ。まだ来ていないのか?)
セシリアの忠告はすぐに頭から抜け、きょろきょろと周囲を見渡す。
招待客ばかりであの目立つ長身と顔は見当たらない。
突然、周囲が不安定な崖で出来ているような心地になった。
今にでも崩れそうで、不安になったデリックは俯いてしまう。
そんなデリックを数人が扇の下で笑っている。
彼はもはや、家主不在で暇になったゲストたちの恰好の前菜でしかなった。
何日もかけて準備したものの、やはり経験と時間、資金不足はごまかせない。
料理は簡単なものばかりなうえに足りないし、出迎えや案内の使用人は見当たらないレベルなので客同士で情報交換をしている始末だ。
集まる人々もグレアム家が呼べる人数より大幅に多く、ダンスフロアどころか階段までぎゅうぎゅうだ。
それでも集まった人々が文句を言いながらもとどまっているのは、噂があったからである。
『ハウンドとブリジットの婚約発表がある』
すさまじい事件だ。
ブリジットは社交界では妹に婚約者デリックを譲ったもののじっと秘めた思いを抱え、最近やっと真実愛するデリックと結ばれ婚約をした……という話である。
長年想いの邪魔をしてきたステラに対するデリックの怒りはすさまじく、パーティーで頭を床につけての謝罪を要求したことはかなり有名だ。
そこで出てきたのがハウンドである。
ハウンドはシャンデリアの光の下に現れるや否やあっという間に社交界の中心になった。
いったいどうして、そんな二人が婚約することになったのだろう。
デリックは? ステラはどうなる? 皆の興味は尽きない。
「……」
デリックもこのパーティーに招待されていた。
ハウンドに殴られたパーティーから久しぶりに出席したパーティーで、ブリジットとハウンドの婚約が噂されているので穏やかではいられない。
しかし、あらゆる好奇の目と口さがないおしゃべりの前に大人しくしているしかなかった。
(ブリジットならたしかにハウンドに乗り換えることもあるかもしれないな)
ステラが婚約者だった時は二人で禁じられた恋だのなんだのと盛り上がっていたが、ブリジットの興味はもはや完全にハウンドに移っている。
見舞いにもめっきり訪れなくなった。
そしてデリックも、美しく花開いたステラのことばかり考えていたのだった。
(だがハウンドの方はブリジットに興味があるように思えない……ステラのことしか考えてなかった。あいつがブリジットに近づくための演技か? いや、そんなことする必要はないしな。そういえばステラはどこにいったんだ? ブリジットにとっては邪魔ものだろうがブリジットなら)
「ブリジット嬢であればきっとステラをこの場によんで、立場を分からせるはず。ちがうかしら? お怪我がよくなったようでなによりですわ」
「……っバーンズ家の」
「うふふセシリアですわ。ごきげんよう。ああ警戒なさらないで。この人込みですもの。あなたを見つけたのは本当に偶然です。考えていらっしゃることが全部お顔に出ていたのでご忠告をと思ったの。そんなに素直に情報をだしていると、化け物たちの餌になっちゃうわよ。まあでも、余計なお世話だったかしら」
セシリアがデリックを見つけたのは意図しない事であった。
正直どうでもいい相手ではあったのだが、このあと起こることを考えれば少しの同情心もある。
内心は「今まで多くのパーティーを経験しておいてその体たらくってどういうこと」と呆れかえってはいたが。
「……いえ。ご忠告ありがとうございます。たしかにステラがいないことが気になっていました。いや、それどころかブリジットもハウンドもいない……」
口にして改めてぞっとする。
(パーティーにホストがいないなんて異常事態だ。どういうことだ?)
使用人は働いているようだが、家主も噂の相手も見当たらない。
その使用人の数も妙に少ない。
グレアム家が金銭に余裕がないとはいえ、少なすぎる。
「いったいなにが」
セシリアならなにか知っているかと横を向くと、彼女はもうドレスの華やぎに紛れてしまっていた。
(ハウンドがきたらどうやっても目立つはずだ。まだ来ていないのか?)
セシリアの忠告はすぐに頭から抜け、きょろきょろと周囲を見渡す。
招待客ばかりであの目立つ長身と顔は見当たらない。
突然、周囲が不安定な崖で出来ているような心地になった。
今にでも崩れそうで、不安になったデリックは俯いてしまう。
そんなデリックを数人が扇の下で笑っている。
彼はもはや、家主不在で暇になったゲストたちの恰好の前菜でしかなった。
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