婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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地下牢にて

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 グレアム家の使用人の証言、当主の発言、地下室の調査で殺人未遂の罪は確定した。
 ブリジットは子供だということで少しだけ減刑されただけで、それぞれ囚人が行う労働場へ送られることになった。
 当主は鉱山。夫人とブリジットは麻畑だ。

「私が奴隷労働!? 嫌よ! っていうかこんなとこ、はやく出して……!」

 ブリジットが入れられたのは地下牢だった。
 家族を一緒に収容するのは逃亡の可能性があるとしてそれぞれ別の場所に入れられている。
 誰がどこにいるのか分からず、ブリジットは心細さに怯えていた。
 その内それが怒りに代わり、静かな地下牢で時折叫んでいる。

(ここは家の地下室に似てて嫌ったらないわ。狭さといい暗さといい、じめっとした感じとか……)

 ブリジットもほんの幼いころ、いたずらの反省として地下室に入れられたことがある。
 あまりにも嫌で狭いところが苦手になったほどだ。
 だからこそ執拗にステラを地下室に押し込めた。

「おや、思ったより元気そうですね」

「ハウンド様……!」

 地下室に不釣り合いな美青年。
 まるで彼の周りだけ湿度が消えているかのようだった。

「やっぱりあれは嘘だったんですね! 助けてくださいハウンド様! デリックは全然助けに来ないし、なんか働かされるみたいだし! 私、こんなところいたくないんです!」

 ハウンドは返事もない。
 不審に思ったブリジットは、逆光になっているハウンドの顔を確認しようとした。

「ひっ」

 彼はいつだって光の中で鮮やかに微笑んでいた。
 しかし今はどうだ。
 影の落ちた顔はまったく笑っておらず酷薄な色だけが瞳に合った。
 ブリジットをゴミだと言わんばかりである。

「ハ、ハウンド様……?」

「はあ、あの時理解いただけたと思ったんですが……。あなたは本当にステラ様と似ていないんですね」

 そうだ。
 ブリジットはステラと似ていないことが自慢だった。
 あの見すぼらしいステラと違って、ブリジットは艶やかで美しい。
 みんなステラじゃなくブリジットを褒めたたえた。

「そういえばさっきデリックの名を口にしましたね。あなたはご両親と違って多少減刑されているはずですが、まだ逃げようとしているのですか?」

 ガンッ! と牢の鉄柱を蹴り上げる。
 鉄柱を掴んでいたブリジットはびくりと身体を震わせる。

「で、でも! ここは嫌!」

 見るとブリジットはずっと微かに震えていた。演技ではない。
 そんな姿を見て、すぐにハウンドはブリジットのトラウマを察した。

「ああ……ステラ様の気持ちが分かるかと思って似た牢を探したのですが、思った以上に効果的だったみたいですね。ステラ様は特に暗所も閉所も怖くないらしいですよ。さすがに入りたいとは仰いませんでしたが。労役となると麻畑は広い場所になるので、あなたにはここでずっと過ごしていただきましょう」

 乙女を一瞬で虜にする笑顔を浮かべてハウンドはブリジットに背中を向ける。

「え、待って! 嫌! イヤ! 助けて! 助けなさいよ!! た……助けてください……お願いします……」

 ブリジットの願いは虚しく暗闇に反響する。
 ハウンドの足音は止まることなく遠ざかり、ついにはなんの牢の隅で水滴が落ちる音だけが響いていた。
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