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その後の彼ら① side シューザ
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自分が両親から引き継ぎなしに丸投げされた仕事に悪戦苦闘する中、クロードを甘やかす二人の姿に苛立ちと共に弟が哀れだった。ろくに教育もされず婿養子の意味すら理解せず遊び歩き、相手の家で苦労する事は目に見えていた。
学校を卒業後、クロードに家の仕事を手伝わせると何も出来ず、学校の成績と評価と全く一致しない。不信に思い調査をすれば賄賂で成績を保ち仕事すら教えていなかった事実を知った時、私の中にあった感情は"無"だった。家族としての愛情も怒りも何も浮かばない自分に驚くと同時に、この五年の間に私の家族はリリアンとヴォルフだけになっていたのだ。
「何時までこんな所に閉じ込める気か!」
父が煩くて困ると言う使用人の訴えを聞いて館に顔を出せば、開口一番に言った言葉がコレとは本当にこれが一度は当主を勤めた男か?
いまだに自分の愚かさを自覚しない父を聞こえる様にため息を吐くと、後ろに控えていた使用人に合図をして猿轡をはめて黙らせた。それでも体を捻り呻く父を無視して私は言葉を続けた。
「まだ分かっていない様なので説明します。貴方はこれから逮捕されます。息子の成績を金で買っていたのですから当然ですよね?」
私が賄賂の件を口に出せば、目を見開き動きを止める。やっと自分の状況を理解したのか目に涙を溜めて顔を横に振った。
「貴方が否定しようが拒否しようが逮捕は免れません。当主の仕事を息子である私に丸投げしていた事も報告済みです」
私がそこまで説明したと同時に館の呼び鈴がなった。窓の外に視線を向けると、騎士団が護送様の馬車まで準備して迎えに来た様だ。
「貴方がクロードの教育を放棄したツケです。罰を受けて頂きますよ」
「うぅぅ!うー!」
猿轡のお陰で騒がしくされずに済んでいると、ドアのノックと共に騎士が部屋に入って来る。猿轡に驚きながらも、私に頭を下げた騎士はヴォルフの元同僚だった。
「罪状は贈収賄と公文書偽造と育児放棄の3つで間違い無いでしょうか?」
「はい。具体的には、学園教師の買収と息子に作成させた書類を自分の名前に書き換えた公文書偽造。そして、三男に対する教育の義務を怠った育児放棄です」
騎士の罪状の頷くと彼が敬礼をした後、後ろについて来ていた若い騎士と共に父を拘束した。暴れながら私に何か言う父が鬱陶しくて視線を向けると、期待の籠る眼差しを向けられた。
「気持ち悪い顔をしないで頂きたい。貴族特例の減刑は貴方には適用されません。この五年ほど仕事をしていたのは私なのですから」
「うぅぅ!」
私の言葉を聞いて更に大きな唸り声を上げた父に、騎士の拘束が強くなった。痛いのか大人しくなった父に、一つ伝え忘れていた事を思い出す。
「あぁ、そうでした。母も一緒に逮捕されますから安心して下さい。お二人仲良く労役について罪を償い二度と顔を見せないで下さい」
そう言ったと同時に項垂れ抵抗を止め力が抜けた父を、騎士が引きずる様に護送馬車に乗せてドアを閉めた。もう一度、私に頭を下げた騎士はゆっくりと馬車を走らせ徐々に視界から消えていった。我が家のお荷物が片付いた事に安堵の息を吐き出すと、建物の影からリリアンが出てきて私を抱き締めた。
「お疲れ様」
その一言が虚しさで重い心を軽くする。布越しに伝わる彼女の体温に、強張っていた肩の力が抜けた。
「ありがとう」
学校を卒業後、クロードに家の仕事を手伝わせると何も出来ず、学校の成績と評価と全く一致しない。不信に思い調査をすれば賄賂で成績を保ち仕事すら教えていなかった事実を知った時、私の中にあった感情は"無"だった。家族としての愛情も怒りも何も浮かばない自分に驚くと同時に、この五年の間に私の家族はリリアンとヴォルフだけになっていたのだ。
「何時までこんな所に閉じ込める気か!」
父が煩くて困ると言う使用人の訴えを聞いて館に顔を出せば、開口一番に言った言葉がコレとは本当にこれが一度は当主を勤めた男か?
いまだに自分の愚かさを自覚しない父を聞こえる様にため息を吐くと、後ろに控えていた使用人に合図をして猿轡をはめて黙らせた。それでも体を捻り呻く父を無視して私は言葉を続けた。
「まだ分かっていない様なので説明します。貴方はこれから逮捕されます。息子の成績を金で買っていたのですから当然ですよね?」
私が賄賂の件を口に出せば、目を見開き動きを止める。やっと自分の状況を理解したのか目に涙を溜めて顔を横に振った。
「貴方が否定しようが拒否しようが逮捕は免れません。当主の仕事を息子である私に丸投げしていた事も報告済みです」
私がそこまで説明したと同時に館の呼び鈴がなった。窓の外に視線を向けると、騎士団が護送様の馬車まで準備して迎えに来た様だ。
「貴方がクロードの教育を放棄したツケです。罰を受けて頂きますよ」
「うぅぅ!うー!」
猿轡のお陰で騒がしくされずに済んでいると、ドアのノックと共に騎士が部屋に入って来る。猿轡に驚きながらも、私に頭を下げた騎士はヴォルフの元同僚だった。
「罪状は贈収賄と公文書偽造と育児放棄の3つで間違い無いでしょうか?」
「はい。具体的には、学園教師の買収と息子に作成させた書類を自分の名前に書き換えた公文書偽造。そして、三男に対する教育の義務を怠った育児放棄です」
騎士の罪状の頷くと彼が敬礼をした後、後ろについて来ていた若い騎士と共に父を拘束した。暴れながら私に何か言う父が鬱陶しくて視線を向けると、期待の籠る眼差しを向けられた。
「気持ち悪い顔をしないで頂きたい。貴族特例の減刑は貴方には適用されません。この五年ほど仕事をしていたのは私なのですから」
「うぅぅ!」
私の言葉を聞いて更に大きな唸り声を上げた父に、騎士の拘束が強くなった。痛いのか大人しくなった父に、一つ伝え忘れていた事を思い出す。
「あぁ、そうでした。母も一緒に逮捕されますから安心して下さい。お二人仲良く労役について罪を償い二度と顔を見せないで下さい」
そう言ったと同時に項垂れ抵抗を止め力が抜けた父を、騎士が引きずる様に護送馬車に乗せてドアを閉めた。もう一度、私に頭を下げた騎士はゆっくりと馬車を走らせ徐々に視界から消えていった。我が家のお荷物が片付いた事に安堵の息を吐き出すと、建物の影からリリアンが出てきて私を抱き締めた。
「お疲れ様」
その一言が虚しさで重い心を軽くする。布越しに伝わる彼女の体温に、強張っていた肩の力が抜けた。
「ありがとう」
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