[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
4 / 107
本編

危うい存在 side ランバート

しおりを挟む
 世間では勇者だの最強の戦士だと騒がれている俺だが、幼い頃から悩まされている事が一つだけあった。

 それは自分から溢れる魔力で、人や物に触れるだけでダメージを与えてしまう事。人によって違いはあるが、僅かな痺れを感じる程度の人から、気絶する人まで千差万別。触っただけでドアや家具を壊した事もあった。
人伝いに話を聞いたカイン師匠が、教育と修行をしてくれたお陰で物を壊す事は無くなったが、今でも人にダメージを与えてしまう。そんな俺が触っても変化が無い。彼女は一体、何者なんだ?

「師匠、この子は?」

「はぁ……そいつを寝かせてから話す。ここの二階が部屋だ」

 ここに住んでる?家族は……

「家族は死んだ。その理由も込みで厄介な事になってる」

 疑問は口にする前に師匠が答えた。その言葉が重くのし掛かる。人を死に追いやる程の理由は、厄介な事の一言では片付くはず無かった。

 師匠に頼まれて彼女を二階に運び、ドアを開けて入ったその部屋は本以外ほぼ無かった。これが若い女の子の部屋か?まるで宿屋の様な生活感の無い部屋に見えて違和感しかない。彼女をベッドに寝かして布団を掛け一階の店へ戻ると、俺を見た師匠は大きなため息を吐いた。

「師匠」

「ああ、分かってる。リナとの出会いは偶然だった……」

 そして、師匠から語られた彼女の過去は壮絶と言える。7年前に彼女を狙った人身売買の組織からの襲撃と両親の死。その上、親族からの引き取り拒否され、師匠と暮らし出すまでの話を聞いて俺は何も言えなくなる。

「当時、取り逃がした連中に見付かった。ここには住めなくなるかもな」

「呼び出の理由は、連中が厄介な相手なのですか?」

「それだけじゃない……リナは魔法が使えない特異魔力だ」

 その魔力は珍しく世界でも数人程度だと聞いた事がある。世界中を旅していても詳しい話は聞いた事も無いし、その力の持ち主に会った事も無い。その存在自体、一般的には知られていない。

「特異魔力には魔石を甦らせる力がある」

「魔石が甦る!?そんな事が……使い捨ての魔石が甦る……巨万の富が手に入ると言う事ですか」

 『魔石は使い捨て』が常識の世界で、貴重な大きな魔石やレア装備の魔石を甦らせれば、幾ら稼げるだろうか?狙いは魔力か金か……悪い奴らの手に落ちれば、世界が混沌とする危うい存在になるな。

「ああ……今夜は新月だ。奴らが動き出すだろう。リナを護ってくれ」

「……その相手とは?」

「マガユダ帝国……国が相手だ。私だけでは危険だ」

 戦闘狂が治める国の名前だな。あの国は闇組織と手を組んで、自国だけでなく他国からも奴隷を集めているとの噂がある。今、世界中で一番大きな話題の国であり、全ての国が要注意としているそんな所から狙われれば、安息の日など無いに等しいだろう。

「よく七年も隠れてましたね」

「最悪、ナダルの世話になるかもな。だが今は……」

 そこで言葉を切った師匠が、天井を見上げる。その場所は彼女が眠る部屋だ。

「可愛い娘の為にも、目の前のクズどもを捕まえるのが先だ」

 その言葉に黙って頷き返すと、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた師匠が、店の回りに一瞬で強力な結界を張った。

「さて、遊びの時間は終わりだ」

「その顔では、どちらが悪者か分かりませんよ」

 俺の言葉を鼻で笑った師匠は、今夜の予定を話し始めた。騎士団への根回しは分かるが、最後の一言に頭が痛い。

「普通に考えて俺が、彼女の部屋の中で護るって問題ありでしょう。せめてドアの前ですよ」

「お前は、ここの騎士団に面識がないし、奴らが何処からくるか分からんから仕方ないだろう?」

 ……師匠に丸め込まれた気もするが仕方ない、今夜は彼女の部屋の中で護るか。渋々、俺が了承すると師匠は店の入口に休業の看板を掛けてから騎士団に向かった。

 ……しまった!俺が触っても、彼女が平気な理由を聞いていなかった。仕方ないな……クズを片付けてから、ゆっくり聞くか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...