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本編
目の前にいるのは止めて
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う~ん、気持ち悪い……グルグルグルグル回る
『イリーナ』
だれ?
『リナ、起きて』
だれよ……まだ気持ち悪いの。もう少し待ってよ。あと5分。
『早く起きて、危ないわ』
は?危ないって何ですか?えー、起きないとダメなの?仕方ないなぁ……分かったわよ。今……起きるから
「……うわ!!!!」
誰かに呼ばれて目を覚ますと、目の前には勇者様の寝顔。私のベッドの端に伏せる様に寝ていた。驚き過ぎて口から心臓が飛び出るかと思ったよ。
一度、視線を反らして呼吸を整える。落ち着いてから窓を見ると、空は暗く月明かりも見えなかった。枕元の台に置かれたランプの薄明かりの中で、勇者様の長い睫毛が頬に影を落としている。勇者様を起こそうか迷っている時、外から物音が聞こえた。
うん?気のせい?でも……多分、今は夜中だよね……おかしくない?
確認しようと身体を起こすと、いつの間にか起きた勇者様が無言のまま手で止めた。
「静かに……動くな……良いな?」
小さな声でそう言った勇者様は、初対面の時の優しい雰囲気は消え、剥き出しの鋭い剣の様なピリピリと刺す様な空気が辺りを包む。私が黙って頷くと、勇者様も頷いた。
「……見てくる……」
そう言い残した勇者様が、右手に青い魔石の付いた長剣を握り締め、そっと部屋のドアを開け廊下に出る。お店の二階が私の部屋で一階には師匠が住んでるから、滅多な事は起きないけど、身体は強ばりベッドから動けなくなった。
ガッ!ゴン……ドサッ
「そっち行ったぞ!」
「捕まえた」
師匠と勇者様の声が聞こえる。外から聞こえる物音が、あの日の夜のようで、怖くて布団に隠れて震えていた。
こんな時、魔法が使えたら……魔力があるのに……何も出来ない……役立たずだ
コンコン
ドアを叩く軽い音にビクッと身体が飛び上がる。ジッと外からの音に耳を済ますと、そっとドアが開いた。
「……あ、すまない。返事が無かったから寝たのかと……どうした?」
ドアを開けて入って来たのは勇者様だった。長剣は鞘に納められ、さっきまでのピリピリした空気はもう無い。
無言の私に困惑した表情の勇者様が、そっと手を伸ばし目元に触れた。なに?それよりも気になるのは……
「怪我は無いですか?」
「あ、あぁ、大丈夫。外にいた奴らも全て捕まえた」
「良かった」
安堵がドッと押し寄せると、ポロポロと涙が止まらなくなった。身体が震えて涙が上手く拭けない。もどかしくなった私は、枕で顔を擦って拭くけど何故が勇者様が慌てて止めた。
「そんなもので拭くな。傷がつくぞ」
「……だって止まんない……怖かった」
勇者様が私の頭をガシガシと乱暴に撫でると、そのまま自分の肩に押し付けた。力強すぎて首が痛いよ。
「……どうしたら良いか分からないから泣くなよ」
「……鎧が痛い」
「……文句、多いな」
ぶっきらぼうに言われた言葉が嬉しいけど照れ臭くて、私は可愛くない事を言ってまた泣いた。そのまま寝てしまったらしく、目を覚まして何時もの天井が見えてホッとする。何時もの日常に戻ってきたんだ。
ちょっと目がヒリヒリする。泣いてそのまま寝たから腫れたかな?顔を洗って、ご飯にしよう。そう思って身体の向きを変えた私は、絶句して動けなくなる。な……な……なんで勇者様が私の部屋の椅子で寝てんの?
心臓に悪いから、目の前にいるのは止めて下さい!
『イリーナ』
だれ?
『リナ、起きて』
だれよ……まだ気持ち悪いの。もう少し待ってよ。あと5分。
『早く起きて、危ないわ』
は?危ないって何ですか?えー、起きないとダメなの?仕方ないなぁ……分かったわよ。今……起きるから
「……うわ!!!!」
誰かに呼ばれて目を覚ますと、目の前には勇者様の寝顔。私のベッドの端に伏せる様に寝ていた。驚き過ぎて口から心臓が飛び出るかと思ったよ。
一度、視線を反らして呼吸を整える。落ち着いてから窓を見ると、空は暗く月明かりも見えなかった。枕元の台に置かれたランプの薄明かりの中で、勇者様の長い睫毛が頬に影を落としている。勇者様を起こそうか迷っている時、外から物音が聞こえた。
うん?気のせい?でも……多分、今は夜中だよね……おかしくない?
確認しようと身体を起こすと、いつの間にか起きた勇者様が無言のまま手で止めた。
「静かに……動くな……良いな?」
小さな声でそう言った勇者様は、初対面の時の優しい雰囲気は消え、剥き出しの鋭い剣の様なピリピリと刺す様な空気が辺りを包む。私が黙って頷くと、勇者様も頷いた。
「……見てくる……」
そう言い残した勇者様が、右手に青い魔石の付いた長剣を握り締め、そっと部屋のドアを開け廊下に出る。お店の二階が私の部屋で一階には師匠が住んでるから、滅多な事は起きないけど、身体は強ばりベッドから動けなくなった。
ガッ!ゴン……ドサッ
「そっち行ったぞ!」
「捕まえた」
師匠と勇者様の声が聞こえる。外から聞こえる物音が、あの日の夜のようで、怖くて布団に隠れて震えていた。
こんな時、魔法が使えたら……魔力があるのに……何も出来ない……役立たずだ
コンコン
ドアを叩く軽い音にビクッと身体が飛び上がる。ジッと外からの音に耳を済ますと、そっとドアが開いた。
「……あ、すまない。返事が無かったから寝たのかと……どうした?」
ドアを開けて入って来たのは勇者様だった。長剣は鞘に納められ、さっきまでのピリピリした空気はもう無い。
無言の私に困惑した表情の勇者様が、そっと手を伸ばし目元に触れた。なに?それよりも気になるのは……
「怪我は無いですか?」
「あ、あぁ、大丈夫。外にいた奴らも全て捕まえた」
「良かった」
安堵がドッと押し寄せると、ポロポロと涙が止まらなくなった。身体が震えて涙が上手く拭けない。もどかしくなった私は、枕で顔を擦って拭くけど何故が勇者様が慌てて止めた。
「そんなもので拭くな。傷がつくぞ」
「……だって止まんない……怖かった」
勇者様が私の頭をガシガシと乱暴に撫でると、そのまま自分の肩に押し付けた。力強すぎて首が痛いよ。
「……どうしたら良いか分からないから泣くなよ」
「……鎧が痛い」
「……文句、多いな」
ぶっきらぼうに言われた言葉が嬉しいけど照れ臭くて、私は可愛くない事を言ってまた泣いた。そのまま寝てしまったらしく、目を覚まして何時もの天井が見えてホッとする。何時もの日常に戻ってきたんだ。
ちょっと目がヒリヒリする。泣いてそのまま寝たから腫れたかな?顔を洗って、ご飯にしよう。そう思って身体の向きを変えた私は、絶句して動けなくなる。な……な……なんで勇者様が私の部屋の椅子で寝てんの?
心臓に悪いから、目の前にいるのは止めて下さい!
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