[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
14 / 107
本編

魔力の暴走 side カイン

しおりを挟む
「イリーナ!」

 ランディーの叫びと、ほぼ同時にリナが倒れる。地面に頭を打ち付けるより速く、アイツの腕が彼女の身体を捕まえた。

「リナ!聞こえるか!」

 自分の声に反応して、リナが顔を動かしたのが最後だった。そのまま意識を失った彼女の魔力が暴走し始めた。ガタガタと身体を震わし、オレンジ色の髪が炎の様に揺れる。ランディーも事態に気付いて名前を呼んでいた。

「クソ!何だって急に」

 ランディーが無意識に暴れるリナを抑える。その間に薬を取り出すと、リナの口元に近付けた。

「リナ!飲め!早く飲むんだ!」

 魔力の暴走は、この娘を保護したあの日から時々起きていた。更に今が魔力の成長期である彼女は、魔力バランスが酷く不安定で薬を常時持ち歩かないと危険な状態だった。しかし、この一年は何事もなく油断していた。クソ!暴れて口に入らない!

「貸して!!」

 自分の手から薬を引ったくる様に奪ったランディーが自分の口に薬を含むと、口移しで無理矢理リナに飲ませる。彼女が嫌がり首を叛けようとするが、大きな手でしっかり固定して全て飲ませた。
……いや、助かったんだが……コレ非常事態とは言え不味くないか?お前、普段の冷静沈着な判断力は何処へいった?いや、冷静だからこその判断だろうが……

「全部、飲みましたね」

 何事もなかった様に言うランディーに頭が痛い。油断して薬を持たせなかった自分も悪いが、年頃の娘にする事では無いと思うぞ。

「ランディー」

「はい、何ですか?」

 名前を呼ばれて普通に返事をする弟子に、将来が心配になった。コイツ、男女の機微というか気遣いが、全くない気がする。

「お前、今の不味いだろう」

「へ?」

 何が不味いのか全く分かっていない様子の弟子の頭を、一発殴ってしまうのは仕方ない。殴られた理由が分からず不満気な表情のまま、リナを抱えて放さないバカ弟子に、彼女を荷台に寝かせる様に指示した。

「寝かせてきましたよ」

「ちょっと座れ」

 焚き火の横に座る様に言えば、ランディーは素直に座った。リナが気になるのか時々、視線を荷馬車に向けるが仕方ないと諦めてそのまま話し始めた。

「お前、彼女が年頃の娘だって分かってるか?」

「急に何ですか?分かってますよ」

「……じゃあ、さっきの行動は?」

 自分の言葉を聞いて首を傾げたが、やっと自分の行動を振り返り顔を赤くして慌て始めた。……コイツ、こんなに鈍感だったか?

「じ、人命救助!」

 不味いと理解してから、言い訳を探している姿は年相応に見える。二人共、子供の頃から苦労をしているせいか、歳の割に大人びていて、こんな姿は久しぶりに見た気がする。そんな年寄り臭い事を考えた時、荷馬車の中で寝ていたはずのリナがフラフラしながら降りてきた。起きたのかと思ったが様子が可笑しい。ランディーが近付いた時、また、フラリと倒れて彼の腕の中に収まった。

「イリーナ、もう起きて大丈夫か?」

 ランディーが声を掛けても反応が無い。夢遊病か、再暴走か。暴走は不味いな。

「あ……つい」

 暴走に備えて薬のポーチに視線を向けた時、リナがボソッと言った。熱い?もう辺りも暗くなり気温も落ちてきている。暴走の影響で熱が出たか?反動熱は薬では治らないから、氷で冷やす方が良い。

「氷嚢を作るからリナを!?」

 薬のポーチから視線をリナに戻すと、服を脱ごうとして暴れる彼女を慌てて止めるランディーの姿があった。

「イリーナ!ちょっと待て!服を脱ぐな!!!!」

 なんて日だ。最悪だ。自分は、弟子の育て方を何処で間違えた?年頃の娘が、何で服を脱ごうとしているんだよ!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...