[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

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本編

目を覚ませば

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 目を覚ました私の手を誰が握っている。相手の顔を見ようと、顔を動かすとランバートさんがベッドに伏せて寝ていて彼の長い睫毛が見えた。

「……ラ……バ……さ……ゴホッ」

 起こそうと思って名前を呼んだけど、声が掠れて言葉にならない。咳の音で目を覚ました彼は、目が溢れそうな程開いていた。え?私の咳に驚いたの?

「イ……イリーナ?」

「は…ゴホッ、ゴホッ」

「無理に喋るな……四日も寝込んでいたんだ」

 四日と聞いて驚いた。身体を起こそうとすると、彼が背中を支えてくれた。後ろにクッションを入れて凭れる様に座ると、少しだけ身体が楽になる。フーと息を吐いて姿勢を整えている間に、彼がドアの外にいた人に何か伝えると直ぐに戻ってきた。

「今、師匠達に連絡を頼んだ。食べ物も頼んだから、少しでも食べた方が良い」

 彼の言葉に頷くと、ホッとしたように笑った。どうして四日も寝込んでいたのか、気になったけど、喉が痛くて口を開けるだけで咳が出そう。水が飲みたくて首を動かした時、自分の髪が伸びていることに気付いた。ナニコレ……肩ぐらいだったよね?なんで四日で腰まで伸びるの?
 驚いて髪を触る私に、ランバートさんが小さく笑う声が聞こえた。顔を上げると、彼も私の髪を触る。

「枯渇していた魔力が回復した影響らしい。後で詳しい説明があるさ。それより、水は飲めそうか?」

 水が飲みたくて頷いたけど、気になる言葉がある。魔力が枯渇してた?魔力切れになってないのに?回復薬で戻ってコレ?
 混乱する私をよそに、彼はコップに入った水を渡してくれた。受け取って飲むと、喉がヒリヒリと痛んだ。染みる気がするけど、四日も寝てたなら仕方ない?

「顔色も良さそうだな……額に触れても良いか?」

 頷いた私を確認してから彼が額に手を伸ばす。熱も下がった様だと、彼が言った。更に聞きたい事が増えた。だけど一番聞きたい事は別にあった。

「ランバートさん……寝て……ないの?」

 咳が出ない様にゆっくりと話ながら、彼の目元の隈に手を伸ばした。目の下にくっきり浮かぶ黒い影と、少し頬も落ちた気がする。自分の身体の事より、彼の方が心配だった。

「ッ……君が……イリーナが……居なくなるような気がして……離れたくなかったんだ」

 伸ばした私の手を両手で握り締めた彼が、震える声で言った。呪詛の元を消して私に集まっていた悪意の闇を祓ったのに、彼が目を覚ましても私が寝ていたから怖かったと言った。

「君が……生きる事に後ろ向きな様に感じる事があった……その上、高熱が出て……」

「ね……つ……?」

 呪詛を払った次の日から四十度を越える熱が続いて、うわ言を言っていたらしい。それを聞いて更に心配で、私の側から離れたく無かったって言われて困惑する。どうして分かったんだろう?……そう言えばお母さんがよく見てるって言った?

 グルグルと考えては消える。考えが纏まらない中、部屋にノックの音が響いた。その音で彼が、弾かれた様に手を離して慌ててドアへ行く。包み込む温もりが消えた事が寂しくて、手を布団の中に入れて誤魔化した。
 ドアの外には師匠とオーウェンさんが食事を持って入ってくる。オーウェンさんが魔法で私の状態確認をすると、もう大丈夫と大きく頷いた。
 少しでも食べてから薬を飲む様にと言うと、オーウェンさんだけ部屋を出て行く。師匠がベッドの脇にある椅子に座ると、急に謝った。驚いて理由を尋ねると、オーウェンさんから怒られたらしい。その理由が……

「暴走を止める薬の影響で魔力が枯渇してた?」

「あぁ、リナの魔力が不安定だった原因も薬の副作用だそうだ」

 師匠が教えてくれたのは魔力を吸収する効果が身体に残ったままで、次の薬を飲んでしまっていたから常に魔力不足の状態で不安定だった。てことは……

「もう暴走……しない?」

「そうだ。エルフの薬で完全回復したから大丈夫だ」

 暴走の心配がない事にホッとした私は、二人に勧められるままにスープとフルーツを少し食べてから薬を飲む。解熱と体力の回復目的の薬だから次に目を覚ます時には、動けるだろうと教えてくれた。頷いた私は再びベッドに潜ると瞼が重くなる。でも……

「眠るまで……側に……いて」

 大きな手が頭を撫でる。側にいると言う返事を聞いた私は、そのまま意識を手放した。

『お休みイリーナ……良い夢を』



お休みなさい


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