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本編
闇の中で
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フッと引っ張られる感じがして目を開けると、私は闇の中にいた。あれ?オーウェンさんから薬を貰って飲んだら、眠くなってベッドで寝たよね?ここ……どこ?
キョロキョロと視線を動かしても見えるのは闇。炭で塗り潰した様な闇に、ジワリと不安が沸き上がる。
「ランバートさん」
最初に浮かんだ彼の名前を呼んでみたけど、自分の声すら分からない。溶け込んでしまいそうな闇の中で、一人フラフラと歩いて出口を探す。あれ?さっきより暗い?えっと……ここは歩いた場所?
「やだ……何これ……ここは何処なの?」
自分の存在まで塗り潰す様な感覚に、身体が徐々に震えてきた。怖いよ、助けて
「ランバートさん!師匠!何処なの!」
叫んでも返ってこない返事。不安が一気に沸き上がる。でも、二人共、偉い人で一般人の私何かを構ってる場合じゃなくて……早く自立しなかきゃ……早く離れなきゃ……そうじゃないと私……堪えられない。
『リナ』
俯いて涙を堪えていると、耳元に女性の声が届いて顔を上げた。今のは……
「お母さんよね?お母さん!私も一緒に連れてって!」
『……本当にそれで良いの?』
何処からか聞こえた返事は、了承ではなく私を落胆させた。
「だって……二人を巻き込みたくないし……巻き込まれるのも嫌よ」
そう私……巻き込まれるのが嫌だった。同情で私と一緒いると思えて、だって同情だったら……いつか……嫌われたら……怖い!!
「私を一人にしないで……嫌だよ……寂しいよ」
『大丈夫。貴女は一人じゃないわ』
嘘、だって誰も迎えになんて来てくれないもの。 悲しくて涙が溢れるけど、頬に触れる前に闇に溶ける。このまま……溶けたら……お母さんと一緒にいられるかなぁ……
『イリーナ!』
え?ランバートさん?……気のせい?
彼の声が聞こえた気がして回りを探すけど何も見えない。彼がいない事が悲しくて、止めどなく涙が溢れた。
三人で旅をした時……楽しかったなぁ。目の前で山盛りのご飯が消えて、師匠が一人で食べるなって怒って……
『リナ……貴女を待ってる人がいるわ』
「誰が待ってるの?」
分からなくて首を振った私に、温かい手が触れた。誰の手?見えないのに大きな手がある事が分かる……私の手を包み込む様に握る手の感触に、さっきとは別の涙が溢れる。……温かい……
『まだ、分からない?』
「…………ランバートさん?」
彼の名前を呼んだ瞬間、急に目の前が明るくなった。暗い部屋から外に出たような感覚になって目が痛い。瞬きを繰り返して目をならすと、透ける身体のお母さんがいた。
「その身体、どうしたの!?」
『ごめんね……お母さん、そろそろ限界かも。ずっと側にいるって約束したのに……』
約束通りずっと側で見守っていてくれた母が、嬉しそうに笑う。
『心配だったのよ……誰にも頼らないから、見てて危なっかしいんだもの』
「そんな事、ないよ」
『でも、彼は気付いたわ』
母の言葉に、彼がよく無理し過ぎ、我慢し過ぎと言う事を思い出した。
『ほら、自分でも分かるでしょう?貴女をよく見てる彼なら任せても、お母さんは安心よ』
「でも、勇者様だよ?ずっと一緒には居られないよ」
『そうかしら?誰がそう決めたの?』
誰が決めた……誰って、あれ?誰って……自分?
首を傾げる私を見て母が鈴を転がした様に笑う。えー、そんなに笑う事?
『鈍感で臆病なんだから』
グッ、その通りですね。怖くて二人にはっきりと聞いた事ないよ。だって、拒否されたら嫌だもの。
『女は度胸も大事よ』
母は、そう言ってウインクすると、優しく私の背中を押して光の先を指した。
『向こうで彼らが待ってるわ。行ってらっしゃい』
「……行ってきます。お母さん、ありがとう!」
私が笑顔で返事をすると、母は笑って手を振る。
『愛してるわ、私達の可愛い子』
私は大きく手を振った後、振り返ることなく、母が指した先へと走り出した。もう会えないし、声を聞く事は出来ないと思ったけど、振り返ると泣きそうだったから前だけを見て走った。
どれくらい走ったか分からないけど、急に目の前で光が弾けて眩しくて目を閉じる。再び、目を開けると木目の天井が見えた。
お母さん、帰り着いたよ
キョロキョロと視線を動かしても見えるのは闇。炭で塗り潰した様な闇に、ジワリと不安が沸き上がる。
「ランバートさん」
最初に浮かんだ彼の名前を呼んでみたけど、自分の声すら分からない。溶け込んでしまいそうな闇の中で、一人フラフラと歩いて出口を探す。あれ?さっきより暗い?えっと……ここは歩いた場所?
「やだ……何これ……ここは何処なの?」
自分の存在まで塗り潰す様な感覚に、身体が徐々に震えてきた。怖いよ、助けて
「ランバートさん!師匠!何処なの!」
叫んでも返ってこない返事。不安が一気に沸き上がる。でも、二人共、偉い人で一般人の私何かを構ってる場合じゃなくて……早く自立しなかきゃ……早く離れなきゃ……そうじゃないと私……堪えられない。
『リナ』
俯いて涙を堪えていると、耳元に女性の声が届いて顔を上げた。今のは……
「お母さんよね?お母さん!私も一緒に連れてって!」
『……本当にそれで良いの?』
何処からか聞こえた返事は、了承ではなく私を落胆させた。
「だって……二人を巻き込みたくないし……巻き込まれるのも嫌よ」
そう私……巻き込まれるのが嫌だった。同情で私と一緒いると思えて、だって同情だったら……いつか……嫌われたら……怖い!!
「私を一人にしないで……嫌だよ……寂しいよ」
『大丈夫。貴女は一人じゃないわ』
嘘、だって誰も迎えになんて来てくれないもの。 悲しくて涙が溢れるけど、頬に触れる前に闇に溶ける。このまま……溶けたら……お母さんと一緒にいられるかなぁ……
『イリーナ!』
え?ランバートさん?……気のせい?
彼の声が聞こえた気がして回りを探すけど何も見えない。彼がいない事が悲しくて、止めどなく涙が溢れた。
三人で旅をした時……楽しかったなぁ。目の前で山盛りのご飯が消えて、師匠が一人で食べるなって怒って……
『リナ……貴女を待ってる人がいるわ』
「誰が待ってるの?」
分からなくて首を振った私に、温かい手が触れた。誰の手?見えないのに大きな手がある事が分かる……私の手を包み込む様に握る手の感触に、さっきとは別の涙が溢れる。……温かい……
『まだ、分からない?』
「…………ランバートさん?」
彼の名前を呼んだ瞬間、急に目の前が明るくなった。暗い部屋から外に出たような感覚になって目が痛い。瞬きを繰り返して目をならすと、透ける身体のお母さんがいた。
「その身体、どうしたの!?」
『ごめんね……お母さん、そろそろ限界かも。ずっと側にいるって約束したのに……』
約束通りずっと側で見守っていてくれた母が、嬉しそうに笑う。
『心配だったのよ……誰にも頼らないから、見てて危なっかしいんだもの』
「そんな事、ないよ」
『でも、彼は気付いたわ』
母の言葉に、彼がよく無理し過ぎ、我慢し過ぎと言う事を思い出した。
『ほら、自分でも分かるでしょう?貴女をよく見てる彼なら任せても、お母さんは安心よ』
「でも、勇者様だよ?ずっと一緒には居られないよ」
『そうかしら?誰がそう決めたの?』
誰が決めた……誰って、あれ?誰って……自分?
首を傾げる私を見て母が鈴を転がした様に笑う。えー、そんなに笑う事?
『鈍感で臆病なんだから』
グッ、その通りですね。怖くて二人にはっきりと聞いた事ないよ。だって、拒否されたら嫌だもの。
『女は度胸も大事よ』
母は、そう言ってウインクすると、優しく私の背中を押して光の先を指した。
『向こうで彼らが待ってるわ。行ってらっしゃい』
「……行ってきます。お母さん、ありがとう!」
私が笑顔で返事をすると、母は笑って手を振る。
『愛してるわ、私達の可愛い子』
私は大きく手を振った後、振り返ることなく、母が指した先へと走り出した。もう会えないし、声を聞く事は出来ないと思ったけど、振り返ると泣きそうだったから前だけを見て走った。
どれくらい走ったか分からないけど、急に目の前で光が弾けて眩しくて目を閉じる。再び、目を開けると木目の天井が見えた。
お母さん、帰り着いたよ
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