[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
105 / 107
エピローグ

私を巻き込まないで下さい!!

しおりを挟む
 ランバートさんと二人で旅に出て三度目の春がきた。久しぶりに王都へ戻った私達。お義父様達に会いに行く前に見せたい所があると言った彼の案内で庭付きの一軒家に着いた。その一軒家は、街の中心から少し外れた場所にあり静かな所だった。誰の家だろう……知り合いでもいるの?でも、窓に板が打ち付けてあるから誰も住んでない感じだけど……

「リナ」

 改めて名前を呼ぶ彼は何処か落ち着かない感じだった。

「……ここで一緒に暮らさないか?」

「え?」

 そう言った彼が驚いている私の手の上に小さな箱を乗せた。箱と彼の顔を交互に見ると頬を赤くしていた。

「俺と結婚して下さい」

「よ……よろしくお願い致します」

 驚いて変な言葉使いになった私の指に箱から出した指輪を着けてくれた。いつの間に準備してたの?……私、知らなかったよ。

「……泣くなよ」

「だって……嬉しい……」

 そうかと小さい声と共に彼は私を抱き締めてくれた。その温もりに更に涙が溢れてきてなかなか涙が止まらなかった。

「もう……大丈夫」

 やっと涙は止まったけど、泣きすぎて恥ずかしい。そっと腕で彼を押し返したけど、離してくれなかった。ちょっと待って!!本当に恥ずかしいから離してぇぇ!

「赤い顔も可愛いな」

「は……恥ずかしいから見ないでよ」

 頭の上からクスクスと笑い声が聞こえる。楽しげな彼に私がむくれていると、修理しないと住めないかもなんて言っていた。そうだね、暫く、誰も住んで無さそうだもんね。

「今日は、師匠に……」

 彼が言葉を途中で切るとジッと遠くを見詰めた。

「どうしたの?」

「いや……誰か来る」

 人が来るだけでこんなに警戒しないはず。彼の態度に違和感を感じていると、大きな怒鳴り声だけが聞こえた。

『こっちに行ったのは確かだ!!探せ!勇者を倒して名を上げるぞ!!』

『『はい!』』

 聞こえたのは男性の複数の男性の声。勇者を倒すって言ってると言う事は、ここに来るよね?
 そう思って彼の顔に視線を向けると、片手で顔を覆って深いため息を吐いた。

「後をつけられていなかった筈なんだが……」

「街で見掛けて追い掛けてきたとか?」

 彼と一緒にいると嫌でも事件に巻き込まれる。以前も自称最強を名乗る格闘家に決闘を申し込まれて大騒ぎになった。それと同じ事が王都でも起きるとは思って無かった私達は二人揃って肩を落とした。ここにも居たかぁ……

「面倒だな」

 確かに見付かると面倒だよね。また、戦えとか奇襲だとか言って襲われるのは……うん?なんで私を横抱きで持ち上げるのかなぁ?なんで自分の足に強化魔法を掛けるのかなぁ……

「跳ぶぞ」

「はぁ!?」

「大丈夫。人は避けるから」

 大丈夫を繰り返しながら、トンと軽く跳び上がると木々を越えて二つ先の道に移動した。

「うーん、追い付かれると煩いから、このまま師匠の所まで行くか」

 え?お義父様の所に?王都の中心を通る?……このままで?………はぁ!?揺れるし、そんな目立つ事はムリ!

「ムリムリムリムリ」

「大丈夫、大丈夫」

「言い方かる!?」

 私が驚いているとランバートさんは笑いながら、私の身体が落ちない様に抱え直すと再び跳び上がった。普通に歩けば絶対に見ることの無い住宅街の屋根を見下ろし、街の人達の注目を浴びながら、そのまま進んでお城の門の前にたどり着いた。……やっぱり揺れた……目が回る……気持ち悪い……

「もう追い掛けて来ないだろう」

 満足気な笑顔でそう言った彼は、やっと私を地面に下ろす。追い掛けて来ない?……そりゃね。歩けば一時間は掛かる距離を十五分で移動したものね……でもさぁ……元を辿れば……

「リナ、どうした?具合が悪いのか?」

 お城に着いてから黙り込んだ私を心配して、ランバートさんが顔を覗き込んだり額に触れて熱を測る。……そうじゃない……そうじゃない

「私を巻き込まないで下さい!!」

「え?」

「もう、知らない!」

「リナ、待って!」

 


 慌てふためく彼が騒ぎを起こすなって、お義父様から怒られるまであと五分。






end


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...