幽霊じゃありません!足だってありますから‼

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王子と私①

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ここは乙女ゲームの世界。私はトバルズ国イソラ公爵家長女 アーリス18歳。

8歳の時、木の根に引っかかって頭をぶつけた拍子に前世の記憶を思い出した。
前世は日本のOLで、27歳の時に交通事故で亡くなった。その1年前に一大ブームとなった「いつか必ず貴方を振り向かせてみせる!」という乙女ゲームがあり、わたしも嵌っていたのだが、その悪役令嬢に転生してしまったのだ。

最初は自分でも半信半疑だったが、お母様が7歳で亡くなり、そのあと直ぐにお父様が再婚したこと、何よりアーリスの名前と容姿が一致していることから乙女ゲームに転生してしまったことを確信した。

現在、公爵家では年の離れた異母弟とお父様と義母が家族で、私だけが孤立しているような雰囲気になっている。私と義母&お父様との仲はギクシャクとしていて、お父様へは我儘やお願いごとがある時くらいしか会話がない。自分がアーリスになってみると、乙女ゲームのアーリス悪役令嬢は寂しかったんだなと思う。
だが、今の私は27歳の前世の記憶があるため、家族との確執が悪役令嬢となるきっかけトラウマとはならなかった。

だが、此処が乙女ゲームの世界ならば、シナリオ通りに断罪されることになるだろう。乙女ゲームのストーリーを思い出してみると、悪役令嬢と言っても他国への追放処分か修道院行きかの2択しかない緩い断罪設定だった。根が庶民の私は貴族より平民の方が性に合っている。ならば、平民の生活ができるようにスキルを磨き、悪役令嬢ではなく当て馬になって追放処分を受けよう!と決意したのだ。

年の離れた異母弟がいるし、私が平民になってもイソラ公爵家は揺るぎないだろう。

幸いエメラルドのような碧瞳とプラチナブロンドのビスクドール顔負けの滑らかな白い肌、妖精のような容姿に物憂げで儚げな庇護欲を掻き立てる美幼女だった。平民になってどこかの小金持ちと結婚して平凡に暮らせれば満足だ。

元々、使用人や出入りの商人平民達に横暴な振る舞いや言動はしたことが無かった。虐げる前に前世を思い出して本当に良かったと胸を撫で下ろした。

 以後は使用人の子供が病気と聞けば、薬を用意してあげたり、領地に行けば孤児院に慰問に行くなど模範的な令嬢であるように心掛けていった。

乙女ゲームに出てくる私の婚約者は、攻略対象でありこの国の第1王子であるクリストファー王子だ。透き通るような紫の瞳、輝くブロンドの髪。何かのエフェクトがかかってる?と思うほどのキラキラの美少年だ。初めて出会ったのは10歳の春、王家主催のお茶会婚約者選定のお見合いの時。ゲームでは、私が王子に一目惚れしてお茶会後何かとつきまとい、最終的にお父様に婚約者にねじ込んでもらうストーリーシナリオだった。

しかし、なんといっても私は27歳+10歳のアラフォー女。ショタの趣味はない。ギラギラした目で王子を取り囲む令嬢達を尻目に自席で優雅にお茶を飲んでいた。今思えば、アピールしまくる令嬢達の中で悪目立ちしていたと言える。

「ご機嫌よう。本日は来てくれてありがとう。」

早く終わらないかなー。眠くなってきた・・・とぼっーとしてたら、突然声がしてビクッとしてしまう。王子だ!と気づいて慌てて立ち上がりカーテンシーをしながら

「本日は、お招きいただきありがとうございます。とても光栄でございましゅ!」

噛んだ!ましゅってなんだましゅって‼
恥ずかしくて真っ赤になってしまう。
俯いて顔が上げられないでいると、王子が優しく座るように促してくれた。


「あなたとはまだ話ができていなかったね。少し座って話をしてもいいかな?」
「はい。(いや、なんでだよ!)」
「退屈してはいないかな?先程、皆が集まって来た時、あなただけ来ていなかったから気になってたんだ。」
「退屈ではありませんわ。美味しいお紅茶をいただいておりますし・・・。先程は、皆様の勢いが凄くて私ついて行けませんでしたの。(退屈とか言えるわけないじゃん、ショタ取り合う女の争いに巻き込まれたく無かっただけだよ)」

深窓の令嬢?のようにハニカミ笑顔になるよう微笑んでみる。そんな私を王子が優しい目で見つめ返してくれたのだった。

お茶会から数日後、お父様から王子の意向で婚約者に選ばれたことを知らされた。ゲームの強制力って怖いな!と思ったが、なってしまったなら仕方がない。大人しく過ごして平民になっても問題ないようにスキルを磨こうと決心した。 

早速、お父様におねだりをして薬草調合を学ぶことの了解を得た。平民になって、女でも暮らして行く為に薬師になろうと密かに考えていたからだ。その為には薬草調合のスキルは欠かせない。
おねだりをした時お父様からは薬草調合?と言う怪訝な視線を受けたが、いつか役に立つかと思いましてと表面上は恥じらうような微笑みを湛えただけでスルーした。王妃教育の合間に薬草調合のスキルを習得して行った。

王妃教育はかなり厳しかったが、前世の知識があるおかげで、ダンスと語学以外は余り苦労しなかった。元日本人の知識はチートレベルで教師からは絶賛された。しかし、追放処分=他国の語学が必須。語学習得に必死になってたら、真面目で賢く立派な淑女として高い評価を受けるようになっていった。

王子は、週に2回王妃教育の為王宮に行くと、必ず会いに来てくれた。顔を見せるだけの時も、お茶を飲む時もあるがいつも優しく穏やかだった。私をアーリーと呼び、クリスと愛称で呼ぶようにと仰ってくださる
(でも、今はかなり私がお気に入りのようだけど、ヒロインに会ったらコロッと堕ちるのよね。それを知ってて王子に恋とかありえない。)
そう思うと複雑だったが、どうせヒロインに会うまでの仲なら、徹底的に甘やかしてやろう。ギスギスした関係よりもひと時でも仲良く過ごしたい!と心に決めた。


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