幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな

文字の大きさ
31 / 44

親友からの手紙

しおりを挟む
そんなある日”プチバトゥ”に訪問者が現れた。
訪問者は、イルギアス様だった。

彼はかつての親友、オリヴィエ・メシアン様からの手紙を届けてくださったのだ。

「イルギアス様、お手数をおかけして申し訳ございません。」
「いえいえ、オリヴィエ様が用心の為に魔法で封印を掛けられたので私が開封しないと開けませんので問題ございません。また、このお手紙の内容に関してお話がございます。不躾で申し訳ございませんが、この場でお手紙をお読み頂いてもよろしいでしょうか?」
「構いませんが、魔法の封印とは?」
「そのままお持ち頂いて大丈夫です。”フラム”」
”フラム”の言葉と共に手に持った手紙がボゥと暖かくなったが、すぐに暖かさは消えた。
「封印を解きました。開封して問題ございません。」
「ありがとうございます。」
手紙を開くと懐かしい親友の文字が見えた。

ーーーーーーーーーー
アーリス・イソラ様へ

アーリス様、こうして貴女宛にお手紙がかける日が来るなんて、思いもしませんでした。
3年前貴女を失ったと思った時から、私の胸にはぽっかり穴が空いてしまった気がしていました。
貴女が生きていると知ってから、その穴は塞がり今では喜びでいっぱいです。

本当は、駆けつけて直接お会いしたかったのだけど、ダルタス国へ嫁ぐ準備があり父上メシアン国王から許可を取ることが出来ませんでした。この手紙が届く頃には、もしかしたらダルタス国へ既に嫁いでいるかもしれません。

アレン殿下から、3年前の出来事の顛末やクリストファー殿下と共に北の離宮で過ごされていることを手紙で聞きました。特にクリストファー殿下のご様子を聞き、貴女が苦労されているのではないかと心配しています。

クリストファー殿下のことですが、アレン殿下からの手紙から症状を聞き、以前、古書で見た症状と同じだと気づきました。対処方法があるのですが、これは魔法を使うので通常の医者では対応できません。また、光と闇の魔法を使える魔法使いである必要があります。
通常、光と闇を共に操れる魔法使いはなのですが・・・イルギアスはどちらも操れる魔法使いなのです。それに安心してください。イルギアスはメシアン国の前魔術師団長なのです。なのでクリストファー殿下を危険にさらす可能性は低いです。少し時間はかかりますが、イルギアスを信じて任せてください。

私はこの手紙をしたためると同時に、イルギアスと父上メシアン国王叔父上トバルズ国王、メシアン国魔術師団などの各所に調整の連絡をします。
全ての調整が済んだら、イルギアスにこの手紙を貴女に渡して貰うように依頼します。
この手紙をご覧になっているということは、全ての準備が整ったということです。

この方法が、貴女の役に立てるよう、救いの一助になりますように祈っています。

オリヴィエ・メシアン

ーーーーーーーーーーーー

「オリヴィエ様!」
私を気遣う優しい手紙に涙が止まらなかった。彼女への手紙を書こうと幾度か思ったが、激動の日々に流され手付かずじまいだった。
「オリヴィエ様、ありがとうございます。ありがとうございます!」うわ言のようにそう言っては泣く私が落ち着くまで、イルギアス様は黙って見守ってくれていた。

「落ち着かれましたでしょうか?」
ようやく激情が収まった頃、イルギアス様が声をかけてくれた。
「はい。取り乱して申し訳ございません。」
「大丈夫でございます。オリヴィエ様のお手紙にクリストファー殿下への対処方法が書いてありましたか?」
「いえ、詳しくは何も。”古書で見た症状と同じ”、”対処方法には光と闇の魔法使い”が必要としか書かれていませんでした。」
「・・・そうですか・・・恐らく私からご説明をした方が良いというご判断だったのでしょう。」

イルギアス様は、顎に手を当てて少し考え込むように黙った。
「あの?」
「いや、今、どの様にご説明すべきか考え込んでしまって失礼致しました。お手紙を魔法で封印していたので、もっと踏み込んだ説明をされているのだとばかり思っていたもので。流石に禁書の内容まではお手紙にしたためられなかったのでしょう。」
「えっ!禁書ですか」
「はい。禁書です。ただ、光と闇を同時に操る魔法使いでなければ、扱うことはできないのですが。今回は禁書に書かれた魔法を使用する為、各所に調整が必要だったのです。」
だからメシアン国王、トバルズ国王、メシアン魔術師団の調整が必要だったんだ!と思い至る。

「私は魔術師団長の時代、禁書を研究しておりました。オリヴィエ様が禁書を読まれたのも、私が国王様へ提出した研究レポートを読まれたことがきっかけではないかと思います。」
「そんなことが・・・だからオリヴィエ様はイルギアス様を信頼する様にと仰られたのですね。」

イルギアス様は、頷くと真剣な表情で制約を求めた。
「これからのお話は、他言禁止となります。公爵家の方々にも詳細は厳禁です。他の方々に何か尋ねられたら、”また、イルギアスに闇の魔法を使ってもらった”と言っていただければと思います。よろしいですね。」
「はい。」
私は力強く頷いた。

「これからかける魔法について説明いたします。クリストファー殿下とアーリス様には”アノーのテーブル”に着いていただくことになります。」
「アノーのテーブルですか?」
 「はい。現実から目を背けて逃避している意識を、話し合いのテーブルに着けさせるという意味です。」
現実逃避・・・まさにクリス様のことだと気づいた。

「アノーとは”輪”という意味です。人は身体だけの存在ではなく、身体の中心に”核”、核を包む卵型の”魂”、魂を包む”身体”、身体を包む卵型の”オーラ”があると言われています。クリストファー殿下はこの”魂”と”核”に傷がつき、歪になってしまっている状況です。この状況で闇魔法を掛けると、さらに傷が広がり廃人になってしまう恐れがあります。その為、このような状況の場合、通常は闇魔法は厳禁となります。ここまでよろしいでしょうか。」
「闇魔法は本来は厳禁なんですね。ですが、私は『夢渡り』を行っていただきましたが。」
「はい。アーリス様におかけした『夢渡り』はクリストファー殿下まで状態が悪くなければ、問題はございません。クリストファー殿下のように深い傷を負っている場合は、厳禁なのです。
ただし、闇と光の魔法を同時に操れる魔法使いであれば話しは別です。闇魔法で接触し、光で癒します。そして、妄想に逃避出来ない空間で接触者と会話が可能となります。禁書では、同じ症状の方がこの方法を用いて症状が改善した過程が書かれていました。ただし、劇的な効果は望めません。何故ならば、性急に進めると闇魔法の力が強くなり、廃人になってしまう恐れが有るからです。」
廃人!その言葉に背筋が一瞬凍る。

「イルギアス様、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「はい。私はまず相手の状況を把握してからことを進めますので、魔力は調整するので問題ございません。ただ、クリストファー殿下の状況によっては長くかかるかもしれません。」
「長くとはどれくらいですか?」
「半年から1年。長引けばもっと時間はかかるかと」
「そんなに・・・でも、イルギアス様はメシアン国に戻らなければならないですよね。」
「本来なら先々週戻る予定でしたが、オリヴィエ様が各所に掛け合って調整されて滞在が延長となりました。とりあえずメシアン国とトバルズ国のとなるようにと1年の任務を命じられました。」
「そうでしたか。イルギアス様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
「いえ、アーリス様は何も悪くはございませんので、謝罪は不要です。私はオリヴィエ様の命を受けたのですからお気になさらないでください。」
そういうと光と闇の魔法使いイルギアスはニッコリと穏やかに微笑んだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

処理中です...