魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

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とある国の、小さな恋の昔話

1.

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昔々、とある国が天から聖女様を召喚しました。
それは数百年に一度しかできないと言われる、とても貴重なものです。
黒髪黒目の聖女様は、人々に幸福と癒しと奇跡を与えます。

時が来て、神殿にある聖なる泉は、眩い光を放ちました。
パァァアと、見たこともない眩しさに人々は目を瞑り、開きます。
するとどうでしょう。なんとその泉には聖女様が2人いたのです。
1人は言い伝え通りの黒髪黒目の少女。もう1人は茶色い髪をした女性でした。
人々が騒めく中、その国の第二王子が声を上げます。

「この者を森に連れて行け!」

茶色い髪をした女性は兵士に連れられ魔獣の森に連れて行かれました。
病気を患っていた彼女は、聖女でもないと見切られたのでしょう。
しかし、運の良い事に女性は森を彷徨った後、その国の騎士に保護されました。
病気が治った彼女は今までのことを話します。
それを聞いた騎士は彼女が大変なことになっていると思いました。
さて、どうするか。騎士が悩んでいると1人の男が現れます。
なんと、その国の第一王子ではありませんか!
事情を聞いた王子は彼女に謝ります。

「弟がすまなかった」

周りは驚きます。
彼は一国の王子です。簡単に謝罪の言葉を吐いてはなりません。
彼女は言いました。

「もうあなた達に会うこともない。だから気にする必要もない」

だが、王子はそれを許しません。
彼女は“あの”聖女召喚でこちらに”来た“のです。この“貴重な存在”をみすみす逃すわけがありません。
彼女は王都に戻ってきました。
数日後、騎士の元で過ごしていた彼女は、第一王子により魔力検査を受けることになりました。
国1番の魔術師を連れてきた王子は、彼女の魔力を確認するように指示を出します。
するとどうでしょう。
彼女の魔力は、見たこともないほど真っ黒だったのです。
それと同時に、髪が黒くなり、瞳も灰色になりました。
聖女様の魔力は純白。彼女の魔力は漆黒。これも何か意味があるのだろうか。
みんなは考えます。
ある日、魔術師様が彼女に魔石を渡します。彼女は言われるがまま魔石に力を込めました。

「もういいよ」

そう言われた彼女は握っていた手を広げます。ほんのりと暖かさの残る魔石は、綺麗な漆黒に色を変えていました。
魔術師様は試します。魔法石となったその石がどう反応するのかを。
魔術師様は驚きます。その石は、なんと全属性使える奇跡の石だったのです!
魔術師様は調べました。そこで、ひとつの答えにたどり着きます。

『闇属性』

魔力の原初。今はなくなってしまった属性
彼女はとても貴重なモノを持っていました。
しかし、彼女自身はその強大な力ゆえか、魔法が使えませんでした。
でも、彼女は前を向きます。

それからの彼女は魔術師様と過ごします。
楽しい時間を過ごします。

とある日。
彼女は名前を呼ばれました。
黒い髪に黒い目。
それを持っているのはこの世界に1人しかいません。そう、聖女様だったのです。
そして、その聖女様は彼女の唯一の親友でもあったのです。
異界の地で感動の再会を果たした彼女は衝撃の事実を知ります。
なんと、あの時の王子の言葉は私を助けるためだったというのです。
その話を聞いた彼女は悩みます。苦しみます。悲しみます。ほんのちょっと、温かい気持ちにもなります。

それからの彼女の日々は怒涛の展開を告げます。
なんと、この国の国王にお会いすることになったのです。
彼女は、第一王子と話します。
その時に、彼の生涯が呪いにより残り僅かなことを知ります。
王子は、彼女にお願いをしました。
彼女は、王子の話を承諾しました。

そして明くる日。
彼女はたくさんの人に見守られながら話をします。
彼女は、存外お人好しな人でした。
前いた世界でも、来た世界でも、酷い扱いをされたというのに、彼女はみんなを赦しました。
そして、仲間の手を借り、第一王子の呪いを解きました。
第一王子は思いました。彼女こそが私の“聖女”だと。


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