おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第03章 コルマベイント王国

04 こんなことになるなんて

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前書き

 かつてのシュンナの仲間の数を3人と思いこんで書いていましたが、以前書いた”第二章 02 長年追い求めてきたもの”を読み返したところ、(女ばかり4人)と書いていたことが判明しました。
 しかし、こちらはかなりの数3人組と書いてしまっていたために、ここは楽な以前書いたほうを変更することにしました。
 もちろん、話は全く影響はないのでご安心を。


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ここから本編

 カリブリンから王都へ向かう、隣の大きな街であるクラーブンにやってきた俺たちは、適当に過ごしながら街を見てみようということで街をぶらつきながら過ごしていた。
 そんなとき、シュンナが突如ダンクスの巨体の陰に隠れた。
 ダンクスは巨体で、シュンナは小柄だけあって、隠れるとすっぽりと見えなくなる。
 そう思いながらもどうしたのかと聞いたところ、シュンナは俺たちの前方を歩く3人の冒険者を指さした。
 その状況と以前シュンナから聞いたことを合わせて考えた結果、ある答えが導き出された。
 それは、かつてシュンナが冒険者だったころパーティーを組んでいたが、ある依頼で失敗し多額の違約金を支払うことになった。
 しかし、その時以前の仕事で武器防具を破損していたために新調したばかり、つまり多額の借金を抱えることになった。シュンナはみんなで頑張って返していこうと思っていたところ、なんと仲間たちはシュンナに借金のすべてを押し付けて逃亡。
 これにより、シュンナは借金奴隷となり俺たちと出会ったわけだ。

 んで、そんなシュンナの元仲間が俺たちの前にいるあの3人ということらしい。
 人は見かけによらないとはまさにこのことだよな。見た目はかわいいんだけど、その中身は平気で仲間を裏切るんだからな。
 もしかしたら、俺が昨日見かけたとき妙に気になったのはこれか?
 なんてことを考えつつシュンナを見ると、ダンクスの陰から3人の様子を眺めている。

「どうするんだ? あいつら」

 俺は隠れているシュンナに聞いてみた。
 復讐するなら手伝うつもりだ。

「そ、そうね。確かに思うことがないって言ったらうそになるけど、いまさら何かをしたいってわけじゃないのよね。一応、一緒にいたときは楽しかったし。それに……」

 楽しかった分裏切られたときは本当に悲しかったと、シュンナは言った。

「まぁ、そうだよなぁ。俺も奴らに復讐したいとは思ってないからな」
「うん、おかげでスニルやダンクスに会えたわけだしね」
「ああ、そうだな」
「そういうもんか」
「ああ」

 俺は奴隷に売った奴らにはちゃんと落とし前はつけたからな。
 ま、俺も場合は幼いころからずっとだったし、楽しかったことなんてなに一つなかったから、そういう意味では2人とは違うのかもな。

「そうか」

 そう言ったことを話していると、3人組は街の外に出ていった。

「でも、顔は合わせづらいから、なるべく早くこの街は出たいかな」
「それがいいか、なら、今日はあいつら街の外に出たみたいだし、今日は予定取り街を見て回って、明日街を出るか」
「だな」
「ええ、そうしましょ」

 そうと決まればとそのあと、俺たちは昨日巡れなかった場所んをめぐって、それなりに街を楽しんだのだった。
 尤も、時たまシュンナが浮かない顔をしていたのは、仕方ないだろう。


 そうして、翌日。

 朝といっても少し遅い時間に宿を引き払った。
 この時間になったもは別に寝坊したからではなく、この街にあの3人がいるなら、あまり朝早いと出くわす可能性があったからだ。
 そのために少し遅めに出ることにしたってわけだ。

「この時間になると、少し人の数が落ち着くな」
「そうだな。朝はどこも人が多いからな」
「そうよね。このぐらい人が少ないと、歩くのも楽だよね」

 俺たちはのんびりと街中を歩いていた。
 シュンナも昨日のことがなかったかのようにすっきりとした顔をしているので、まぁよかったよ。

「んっ、なんだ?」

 歩いているとダンクスが門のほうを見てそういった。
 なんだろうかとそのほうを見るが、俺の前に数人人がいたために何も見えない。

「人だかりができてるわね」
「ああ、なんかあんのか?」
「さぁ」

 よくわからないので、とりあえず行ってみることにした。
 というか、ちょうど俺たちも門を通るためにそこに向かうからついでだな。


 そんなわけで、やってきた人だかり、ほんとなんだろうか、なんだか何かを囲っているように集まっているな。

「おいっ、だれかっ、回復魔法使える奴いないか? おいっ、しっかりしろっ、しっか……おいっ」

 そんな声が聞こえてきた。どうやら、誰かが瀕死の重傷を負っているようだ。
 だが、誰も前に出ない、なら俺がと思ったところで、様子が変わったらしい。

「くそっ!」

 どうやら、間に合わなかったようだ。

「間に合わなかったみたいね」
「そのようだな」
「もう少し早く宿を出てればよかったな」
「そうね」

 俺たちがもう少し早く宿を出ていれば、もしかしたら今息を引き取ったと思われる人物は助かったかもしれないと悔やまれる。
 尤も、俺がやるといってやらせてもらえたかどうかは別だけどな……。

「せめて、祈るか」
「だな。冥福は違うから、来世を祈ろう」
「そうね」

 俺たちは静かに今命を落とした人物が来世では、幸ある人生を迎えられるよう祈りをささげた。
 ちなみに、この世界での祈り方は、キリスト教のように手を組む祈り方となるため、シュンナとダンクスはそれを行っているが、俺は日本人だからな、どうしても合掌になってしまう。

 そうしていると、俺たちの前にいた人たちが徐々に減っていき、中心の人物たちが見えてきた。
 あれっ?

「リック?」
「それに、エリー、レントたちじゃねぇか」
「えっ!!」

 なんと中心にいたのは、クラーブンに来る途中で知り合った冒険者パーティーだった。
 そういえば、さっきの声聞き覚えがあると思ったらリックだったようだな。
 えっ、じゃぁ誰かまさか奴らが……ともったが違ったらしいリックのパーティーは全員そばにいた。
 あれっ? じゃぁ、一体だれが?
 そう思いつつも、リックのそばで横たわっている人物を見た……まじっ!

 俺は驚愕のあまり、隣に居たシュンナを見た。
 すると、シュンナもまた目を見開き固まっていた。
 それはそうだろう、なにせたった今息を引き取ったのは女性冒険者、そしてシュンナのかつての仲間である3人組の1人だったのだから。
 なぜ、リックたちがかかわっているのかはわからない。
 しかし、まぎれもなくこの横たわっているのは3人の1人、それによく見たらほかの2人も同様に横たわっている。しかも、その2人はすでに息を引き取っているのか身動きもしないし治療行為も行われていない。

「まじかよっ!」

 ダンクスも俺と同様3人組に気が付いたようで絶句している。

「ダンクスさん? それに、スニル君とシュンナ」

 エリーが俺たちに気が付いた。

「お、おう、えっと、これは一体?」

 シュンナが固まってしまっているためにダンクスが尋ねた。

「あっ、はい、それがブラッドベアです」
「なにっ?」

 ブラッドベアってあれだよな。俺たちが出会うきっかけになったあの熊だよな。
 それが、どうしたって、まさか!

「この3人、ブラッドベアの討伐を受けたんだけど、返り討ちに……」

 エリーは悲痛な表情をしながら、詳細を語ってくれた。

 事の始まりは昨日の朝、掲示板で依頼を眺めていた時だった。
 そこに3人が現れたという、そこまでは特に変わったことがなかったが、例によってレントが3人に絡んでしまった。
 というのも、レントは女性蔑視をする傾向が多少あり、女性冒険者を下に見ることがあるらしい。
 これには、エリーたちも思うところがあるがレントとは幼馴染でもあり、こういう奴だとあきらめているらしい。
 なんでも、レントの親父さんがそういう人物らしいからその影響だろうという。
 まぁ、それはいいとして、討伐依頼が貼ってある掲示板の前にいた3人に向かって、討伐の依頼はやめておけと言ったそうだ。
 言われた3人としては余計なお世話だろう、だからこそ言い争いに発展した。
 そうして、その結果として3人は意地になり討伐依頼を受けることになった。

 その依頼内容こそ、ブラッドベアの討伐。

 ブラッドベアというのは、以前も説明したと思うがオークと同等の力を持つといわれている。
 つまり、普通の平均的な冒険者レベルでは5~6人ほどが必要になるだろう。
 そして、俺の見立てでは3人はその平均、リックたちはというと、若干平均より下ってところだ。
 つまり、3人だけではブラッドベアを討伐することは不可能ってわけではないが、かなり厳しいものとなるのは間違いない。
 ギルドもそれを考えて普通なら止める。リックたちもそうなるだろうと考えていた。
 だが、そんなリックたちの予想は外れ受理されてしまった。
 というのも、3人は以前ブラッドベアに相当する魔物を討伐した経験を持っていたからだった。
 一体、どこでそんなことにと思ったが、よく考えてみれば3人はかつてシュンナが所属していたメンバー、つまりいや、間違いなくその討伐時にシュンナがいたんだろう。

 なにせ、シュンナの強さはいうなれば異常だ。
 今では俺が作った魔道具で装備を固めているためまさに敵なしだと思うが、あの出会った時点でさえダンクスとともに俺がこれまで出会ったものたちの中で最も強い、ていうか2人の次に強かったのがシエリルとワイエノであり、この2人掛かりだとしてもシュンナには勝てない。それほどに強いんだよな。
 まぁ、そんなシュンナを仲間としていたんだから、自分も強いのかもと勘違いしてしまうかもしれないな。
 なにせ、どんな敵もあっさりと倒せてしまうんだからな。
 そんな勘違いをしたまま、3人は勢いでブラッドベアの討伐を引き受けてしまった。

 昨日の朝、俺たちが見た3人はまさにこの討伐に向かうところだったんだろう。
 ここで、悔やまれるのはもしあの時声をかけていて、ブラッドベアを討伐するつもりだということを聞いていれば、もしかしたら止められるかもしれなかったことと、もし無理でも尾行して危なくなったところで手助けはできただろうということだろう。
 多分今シュンナの頭にはこれがめぐっているかもしれないが、結局はたらればの話でしかない。
 事実として、3人は向かい俺たちはそれを見送った。

 んで、そこでなぜリックたちが3人を連れて街まで戻ってきたのかという疑問だが。
 これは、単純にたまたまリックたちが受けた採取と討伐依頼の場所が3人とほど近い場所だったという。
 要は、リックたちが依頼をこなしているとそこまで遠くない場所で聞こえた咆哮、気になり様子を見に行ったら、そこにブラッドベアと戦う3人がいた。
 しかも、その様子は決して善戦しているとは見えずどう見ても苦戦、いやかなりやばい状況だった。
 それはそうだろう、あの3人の実力ではブラッドベアに勝つことはほとんど不可能といってもいいと思う。
 やばいと感じたリックたちは、すぐさま助けに入ったそうだ。
 もちろん、リックたちだってブラッドベアを相手にした場合、かなりまずい実力しかない。
 でも、だからといって放ってはおけない、なにせ彼女たちがブラッドベアと戦うきっかけはレントなんだからな。
 そんなわけで、リックたちも参戦、幸いというべきか3人もかなり頑張ったようでブラッドベアもまたかなりのダメージを負っていた。
 そのおかげか、リックたちが加わったことで、何とかこれを討伐することに成功した。
 しかし、一歩遅かったというべきか3人は瀕死の重傷を負ってしまった。
 当然だが、リックたちも持てる回復アイテムをすべて使い、魔法使いであるカリンが回復魔法を使ったがそれでも応急処置にもならないぐらいしかできず、リックの決断により3人を背負って街まで走って帰ってきた。
 それは、夜中もずっとだったそうだ。
 そうして、ようやく街にたどり着いたがほどなくして2人が死亡、最後に残った1人も俺たちが到着する少し前に亡くなったという。
 なるほど、そういうことだったか。
 俺はそう思いながらちらっとシュンナを見た。
 シュンナはまだ固まっているようだな。

「そうか、話は分かったよ。そいつらは手厚く葬ってやってくれ、これはその足しにしてくれ」

 固まったままのシュンナに代わり、ダンクスがシュンナが持つ財布から金貨を3枚取り出してリックに渡した。

「こ、こんなに!」
「ああ、頼めるか」
「ああ、任せてくれ」

 ダンクスが頼むと、リックは胸をたたいて請け負ってくれた。頼むぞ。
 俺もまた、心の中でそうつぶやいた。

「それじゃ、俺たちは行くぜ」
「街を出るのか?」
「ああ、俺たちは旅人だからな」
「それじゃ」

 こうして俺たちは、リックたちと別れて、クラーブンの街を出たのだった。




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 街を出て、小一時間ほどしたところで、それまで俺たちの後をとぼとぼとついてきていたシュンナが、少しずつ言葉を紡ぎだした。

「……あたしが、冒険者になった時一緒にパーティーを組もうって、誘ってくれて……」

 それは、あの3人とシュンナの出会いから、裏切られるまでの物語だった。

「あたし、冒険者になりたいって、ただそれだけを思って街に出たけど、ほんとは街が怖くて、だから、声をかけてくれたことがすごくうれしくて」

 シュンナのいうことは分かる、確かに小さな村しか知らない者が、いきなり街なんて怖いよなぁ。
 現代日本ですら、地方から東京に出るものの中には怖いと思うものがいるっていうしな。
 日本ならネットとかテレビとかを通して、東京とはどういうところかはわかると思うんだけど、それでも初めての街ってやつは怖いもんだ。
 そういえば、俺は生まれも育ちも東京の近くで子供ころからたまに行っていたから、それほど怖さはなかったっけ。

「あの子たちに、いろいろ教わったわ。街のこと、冒険者のことお酒のことも男を落とす方法まで……」

 シュンナが冒険者になった時、すでに3人は冒険者だった。つまり人生の先輩でもあり、いいことから悪いことことまで教わったそうだ。
 今、こうして俺はシュンナにいろいろ教わっているが、それをシュンナに教えたのが3人だったということだ。
 ちなみに、シュンナは酒のことを言ったが、この国では15から酒を飲むことができる。
 まぁ、厳密にそうと決まっているわけではないので、大体そのぐらい程度だが。

「結局、誰一人彼氏はいなかったけどね」

 そう言って、少し笑うシュンナ。
 ふっ、男を落とす方法までシュンナに教えていたが、本人たちは誰一人落とせていなったらしい。まぁ、よくある話だよな。

「それでも、楽しかった。いつも4人で、喧嘩もしたけどよく一緒に笑いあってたの」

 喧嘩はしても、仲のいい4人だったそうだ。
 だからこそなんだろうな。

「それにね。あたしの村がはやり病になった時も、支えてくれたし、励ましてくれた」

 シュンナが生まれた村ははやり病で両親とともに失っている。
 そんなつらいときにも支えてくれた仲間だった。

「だから、あたしはあの時一緒に頑張って借金を返そうと思ったのよ」

 シュンナは悲しそうにそういった。
 そう、シュンナはそう思っていたのに、当の3人はそのシュンナにすべての借金を押し付けて逃亡した。

「あたし、なんでって、すごく悲しくて、混乱して、意味が分からなくて」

 そうだよな、仲良くやっていると思っていたのに、いきなり裏切りを受ければ混乱もするよな。

「でも、あなたたちに出会って、あたし今、すごく幸せで……」

 そういうシュンナの目には大粒の涙があふれていた。

「あれ? あれ?」

 なぜ、自分の目から涙があふれるのか、シュンナは分からないようだ。

「あたし、涙が……あ、あああ、ううわぁぁぁぁ!」

 その瞬間シュンナが泣き出した。
 それを見たダンクスが、静かにシュンナをその分厚い胸板で抱いた。
 残念ながら、俺ではその役は無理だから、ダンクスに任せる。
 きっと、シュンナにとってあの3人との日々はかけがえのないものだったんだろう。
 だからこそ、それを失ったことであふれてきたんだろうな。
 情けねぇが、俺たちにはそれを受け止めることしかできねぇ。
 ということで、俺もダンクスもそのままシュンナが落ち着くのを待つことにしたのだった。
 幸い、今は誰も街道を歩いていない。

 でも、せめて結界を張っておくか。
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