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第04章 奴隷狩り
12 さらわれた冒険者
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エイルードで行われた料理大会は盛況のもとに終わったわけだが、優勝者であるオクトの店は大変なことになった。
そこで、翌日俺たちもいろいろと手伝う羽目になったが、その翌日にはギルドからさらなる応援がやってきたことで何とか落ち着いたところだ。
そんな優勝のオクトで大変なことになっていたのだから、準優勝のリーラもまた大変なことになっているようだ。
尤も、こちらはあくまで屋台、決勝で出した料理を出せと言われてすぐに出せるものではない。
なにせ、屋台というものは毎朝、自分が許されている場所に設置し、毎夜片づけなければならない。
そうなると、ピザを焼くための窯などは設置ができない。そういったものはまだこの世界にはないからな。
窯となると、どうしても据え置きしかないんだよなぁ。
ちなみに、料理大会の時は料理人の中には窯を使いたいというものがいたこともあり、臨時で設置され大会が終わった現在は取り壊されているために使えない。
かといって、ピザを作り置きしておくというわけにもいかず、どうしようもないのが現状だ。
ということを説明した立札をかいて屋台の隣に設置して対処していた。
まぁ、それでも食わせろと言って来る奴らもいるらしいけど、そっちは料理人ギルドの職員やギルドが雇った冒険者が対処しているようだ。
「思っていた以上の反響だったな」
「そうね。これで、オクトの借金もすぐに返せるんじゃない」
「だろうな。リーラのほうもあれは無理でも、元から出しているほうはそれはそれで売れているみたいだしな」
ピザは無理でもリーラの料理は食えるわけだからな。
「俺たちもそろそろ出るか?」
「そうね。結構長居しちゃったしね」
「だな、ここについたのって、確か5月の頭だったよな。今は六月末だぜ」
大体2か月近くいたことになる。
2か月って、確かカリブリンでもそのぐらいいた気がするが、本当に長居したな。
となると、やはりそろそろ潮時って奴だろう。
「ずいぶんと長居したわよね。まぁ、楽しかったからいいけど、それで次はどこに行く?」
シュンナが次の目的地を聞いてきた。
「一応、王都を目指すってことで歩ているからな、予定通り北だな」
エイルードから王都に行くには北へ向かっていけばいい。
「確か、王都ってここから3つか4つ先だったよな」
俺たちも正確に王都の場所が分かるわけではない。
なにせ、現代地球みたいにどの町でも詳細な地図で表示されているわけではないからな。
ていうか、地図自体が一般的には極秘だしな。
俺の”マップ”でも行ったところしか詳細に出てないし。
「ああ、そう聞いてるな」
街の人に聞いてだいたいそのあたりだろうといわれていた。
「今度の王都では平和に過ごせるといいけど」
「はははっ、あれはあれがおかしいだけだろ」
「全くだな」
シュンナが心配しているのは、コルマベイント王国王都で、真夜中にいきなり襲撃をされて、その後手配されたことだが、あんなことそうそうあってたまるかよ。
というわけで、翌日。
一応バネッサとオクトには別れを告げてエイルードを出る俺たちであった。
ちなみに、バネッサは送りたいといってきたが、店がまだ大変なので身動きができなかったために、今回見送りはなくなった。まぁ、派手に見送られるよりは誰もいないほうが気が楽だしな。
「そんじゃ、行くか」
「おう」
「ええ」
俺の号令を受けて、街道を歩き出す俺たちであった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
街道をひたすらに歩くこと2日、隣の町テリートへとやってきた。
「ここはどのくらいいるつもりだ」
「そうだな、話ではそれほど特徴のある町ってわけじゃないみたいだし、いつも通りでいいんじゃないか」
いつも通りというのは、大体2~3日滞在するという意味だ。
俺たちは基本どの街でも大体このぐらい滞在し、街のあちこちを見て回ることにしている。
そんなわけで、いつも通り宿を取り、2日間街に滞在したのち、次の街へと旅立ったのであった。
そうして同じようにその隣の街であるリクラーナを通り抜けた2日後の今、俺たちは街道を歩いていた。
「この分だと、明日にはラハイエートまで行けそうだな」
「だねぇ。その次はやっと王都だよね」
「確か、そう聞いたな」
リクラーナで聞きこんだところ、王都はラハイエートの次の街だそうだ。
「今度はまともな王様だといいけど」
シュンナが思い出しげんなりしながらそう言ったのは、やはりコルマベント王都で起きた夜中の襲撃と指名手配のことだろう。
俺も思い出してげんなりしてきた。あれは、ほんと面倒だった。
王都付近では騎士たちや兵士たちから隠れ、やっとこさ王都を離れたと思ったら今度は賞金稼ぎ、それがコルマベイントを出るまで続いたんだからな。あんなのは二度とごめんだ。
「さすがに、大丈夫だろ。あんな王があちこちにいたら、ぞっとするぜ」
「全くな」
女好きの王があちこちに、ダンクスの言う通りぞっとしないな。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぅ」
俺たちがそれぞれ鳥肌を立てていると、突如そんな叫び声とともに1人の男がダンクスめがけてとびかかってきた。
「……なんか、以前も似たような光景見なかった」
「デジャブだな」
「なにそれ?」
「わかりやすく言うと、既視感、以前にも同じ光景を見たという感覚のことだな」
この世界にはデジャブという言葉はないために、どうしても日本語で発した言葉のため、シュンナには分からなかったようだ。
「いや、お前らそんなことより助けろよ」
俺とシュンナがのんきに話していると、当人のダンクスから抗議が入った。
「必要ないでしょ」
シュンナが言うように、襲撃者の攻撃を難なくさばいているダンクスだった。
「ふざけやがって、弟をどこにやりやがったぁ」
ますますどこかで見た光景だな。
「前の時は、確か娘だったわよね」
「だな」
「ちょっといいか?」
シュンナと変わらずのんびりと話していると、ふいにそんな声がかけられた。
「なに?」
「あっ、おう、ちょっと聞きたいんだが、あんたらもしかして誘拐犯じゃないのか?」
いうに事欠いて俺たちに誘拐犯じゃないのかと聞いてきやがった。
「そんなもの、見ればわかるでしょ」
シュンナもやはり少し怒っているようで少し強めに言う。
そりゃぁ、いくらのんきに会話していても、ダンクスは仲間でありいうなれば家族みたいなものだ。そのダンクスがいきなり誘拐犯みたいな言われ方をしたら、そりゃあ怒る。
「す、す、すまない」
シュンナのような美少女に強めに言われたことで、聞いてきた男はかなりしどろもどろとなっている。
「それより、あれ止めてくれないの?」
違うとわかったというのになおも襲われているダンクス、俺とシュンナもこれ以上はさすがに黙ってみていられないんだけど。
そもそも、俺たちがのんびり放っておいているのは、ひとえにあの程度の実力ではダンクスに攻撃が当たるとは思えないからだった。
ダンクスだって、ただあしらっているだけなのは、ただ単にそこまでの脅威を感じないからである。
でも、さすがにこれ以上は俺たちもダンクスも耐えられるかどうか。
「わ、わかった、おいやめろ、パルマー、その人は違う」
「るせぇ、こいつに決まってらぁ。お前らも手伝いやがれっ!」
パルマーと呼ばれた襲撃者は一向に収めようとはしない。
「はぁ、しかたないダンクス」
「おう」
ため息を吐いたシュンナがダンクスの名を呼んだ。
俺たちの付き合いはまだ一年にも満たないが、それでもこれで通じるぐらいにはわかりあっている。
つまり、シュンナはダンクスに対して無力化しろと言ったわけだ。もちろん思いっきり手加減してという条件付きだけどな。
というわけで、ダンクスは素早くパルマーの攻撃をかわしつつ、その腹部にあて身を食らわせた。
「パルマー!?」
「大丈夫よ。手加減してるから、それよりどういうことか説明してくれる?」
シュンナが笑顔で尋ねた。
こういう時の美少女の笑顔ってやつは、心底震えが来るようで俺たちの周りにいた男たちは震えだした。
「わ、わかった、説明させてくれ」
そうしてパルマーを横目に説明を始めた男たちであった。
まず、彼らは冒険者でシルムスの矢という4人のパーティーで活動しているそうで、シュンナに話しかけた男はディームというパーティーのリーダという。
んで、事の起こりは数時間前彼らが夜営を行っていた時だった。
その時見張りをしていたパルマーの弟のアルムという奴が突然さらわれたそうだ。
実はパルマーがその現場を目撃していた。
というのも、パルマーはたまたま目が覚めて弟の様子を見に行こうとしたからだそうだ。
そう聞くと実に仲のいい兄弟だな。
まぁ、そんなパルマーが現場を見たんだから当然大声を張り上げて犯人を追った。
しかし、どこからともなく現れた奴にあっさりと気絶させられたという、それは、まぁ、相当に悔しいだろうな。
「俺たちが駆け付けた時、パルマーが気絶していて、ほかには誰もいなかったんだ」
というのはディームだった。
ていうか、こいつら先ほどはこの程度と評価したが、それはあくまで俺たち基準で考えたらということで、世間一般レベルで考えるとそれなりに高い。
そうだな両親の仇を基準にするのは気が引けるが、こいつら3人もいればオークを討伐はできるだろう。
「ていうか、なんでアルムなんだよ。こういうのって普通ぼくじゃないの」
そう言ったのは、シルムスの矢の最後のメンバーでショートカットで自身をぼくと呼ぶ、一見すると男に見えてしまういわゆるぼくっ娘だった。
というか、俺たちも最初女だって気が付かなかった。
「ジェニスはがさつだから、気が付かなかったんじゃないか」
「なんだとっ、誰ががさつだディーム」
ディームがそう言ったことでますます憤慨するジェニス。
ていうか、名前はすげぇ女っぽいんだよな。
だから、名乗った時俺たちは3人そろってえっ、って驚いたわけだ。
まぁ、それはいいとしてその後、ディームたちはパルマーから聞き出した犯人の向かった方角へ進んだその先にいたのが俺たちで、ダンクスの凶悪な顔を見てこいつに違いないと襲い掛かったという。
「……なるほどね。それにしても、あなたたちのような実力者をあっさりさらうなんてね」
「相当できるな」
「……」
余人の目があるために俺は無言でうなずいた。
これはただ事ではないかもしれないな。
「これだけ探しても見つからないとなると、もしかしたら奴隷狩りかもしれない」
ディームがそうつぶやくように言った。
「おいっ、それじゃアルムは、どうなるんだよ?」
「わからねぇ。最悪……」
あきらめるしかない、ディームは暗にそういった。
ていうか奴隷狩りってなんだ。
「奴隷狩り? なんだそれは」
ダンクスが聞いた。
「ああ、あんたらは旅人だったな。もしかして出身は遠いのか?」
「ええ、コルマベイントよ」
「なるほど、隣国か、なら知らないのも無理はないか」
「んで、なんなんだその奴隷狩りって」
元奴隷として気になるし、そういえば以前モニカだったっけ、キエリーヴで見つけたあの娘、あの時も同じことを聞いた気がする。
「ああ、奴隷狩りってのはこの国で古くからある噂でな。なんでもそこらへんで人をかっさらって奴隷にしてうっぱらうって連中がいるらしいんだ。だからそいつらに捕まったら最後二度と戻っては来ないらしい」
なんともざっくりとした説明だったが、ディームたちもこれ以上は知らないそうだ。
「奴隷にして売るっていうけどどうやって、奴隷の首輪って国が管理しているんじゃないの、コルマベイントではそうだったわよ」
「それは、ウルベキナでも同じだ。でも、昔からそう言われているんだ」
「そういえば、あれえっと、モニカだったっけ、あの娘も拉致られて奴隷の首輪をつけられてたよな」
ダンクスが俺と同じようにモニカのことを思い出した。
確かにモニカの証言でもさらわれた後、奴隷商でもない連中に奴隷の首輪をつけられて、奴隷商に売られたといっていた。
「それ、ほんとか!」
「ああ、本人から聞いたからな」
「うそでしょ。ほんとに奴隷狩り、あれ、でもなんで本人から?」
ジェニスが青ざめながらも奴隷にされた本人から、どうして聞けたのかと疑問を投げかけてきた。
「あたしたち、旅の途中でさっきみたいなことがあってね。さらわれた女の子を探してほしいって言われて探したのよ。それで、一応ってことで奴隷商を巡ったら見つけたのよその子。それで、あたしたちお金には余裕があったから、その場で買ってあげたってわけ」
「まじかよ」
「なぁ、それじゃ、もしかしてアルムも?」
「ありうるな。おいっ、パルマーいつまで寝てんだ。起きろ!」
ディームがいつまでも気絶しているパルマーをたたき起こし事情を説明。
パルマーはそれを聞いて、街まで飛んでいく勢いで走り出した。
「すまねぇ」
「わるい」
ディームたちもそれを追いかけて行ってしまった。
「どうする?」
「どうもこうも、気にはなるし、そもそも俺たちもこっちだろ」
「それもそうね」
「追いかけてみるか?」
「ああ」
「ええ」
そんなわけで、俺たちもディームたちの後を追いかけるために走ることにした。
といっても、俺の足では追いつけないのでダンクスの肩に飛び乗っただけだけどな。
そこで、翌日俺たちもいろいろと手伝う羽目になったが、その翌日にはギルドからさらなる応援がやってきたことで何とか落ち着いたところだ。
そんな優勝のオクトで大変なことになっていたのだから、準優勝のリーラもまた大変なことになっているようだ。
尤も、こちらはあくまで屋台、決勝で出した料理を出せと言われてすぐに出せるものではない。
なにせ、屋台というものは毎朝、自分が許されている場所に設置し、毎夜片づけなければならない。
そうなると、ピザを焼くための窯などは設置ができない。そういったものはまだこの世界にはないからな。
窯となると、どうしても据え置きしかないんだよなぁ。
ちなみに、料理大会の時は料理人の中には窯を使いたいというものがいたこともあり、臨時で設置され大会が終わった現在は取り壊されているために使えない。
かといって、ピザを作り置きしておくというわけにもいかず、どうしようもないのが現状だ。
ということを説明した立札をかいて屋台の隣に設置して対処していた。
まぁ、それでも食わせろと言って来る奴らもいるらしいけど、そっちは料理人ギルドの職員やギルドが雇った冒険者が対処しているようだ。
「思っていた以上の反響だったな」
「そうね。これで、オクトの借金もすぐに返せるんじゃない」
「だろうな。リーラのほうもあれは無理でも、元から出しているほうはそれはそれで売れているみたいだしな」
ピザは無理でもリーラの料理は食えるわけだからな。
「俺たちもそろそろ出るか?」
「そうね。結構長居しちゃったしね」
「だな、ここについたのって、確か5月の頭だったよな。今は六月末だぜ」
大体2か月近くいたことになる。
2か月って、確かカリブリンでもそのぐらいいた気がするが、本当に長居したな。
となると、やはりそろそろ潮時って奴だろう。
「ずいぶんと長居したわよね。まぁ、楽しかったからいいけど、それで次はどこに行く?」
シュンナが次の目的地を聞いてきた。
「一応、王都を目指すってことで歩ているからな、予定通り北だな」
エイルードから王都に行くには北へ向かっていけばいい。
「確か、王都ってここから3つか4つ先だったよな」
俺たちも正確に王都の場所が分かるわけではない。
なにせ、現代地球みたいにどの町でも詳細な地図で表示されているわけではないからな。
ていうか、地図自体が一般的には極秘だしな。
俺の”マップ”でも行ったところしか詳細に出てないし。
「ああ、そう聞いてるな」
街の人に聞いてだいたいそのあたりだろうといわれていた。
「今度の王都では平和に過ごせるといいけど」
「はははっ、あれはあれがおかしいだけだろ」
「全くだな」
シュンナが心配しているのは、コルマベイント王国王都で、真夜中にいきなり襲撃をされて、その後手配されたことだが、あんなことそうそうあってたまるかよ。
というわけで、翌日。
一応バネッサとオクトには別れを告げてエイルードを出る俺たちであった。
ちなみに、バネッサは送りたいといってきたが、店がまだ大変なので身動きができなかったために、今回見送りはなくなった。まぁ、派手に見送られるよりは誰もいないほうが気が楽だしな。
「そんじゃ、行くか」
「おう」
「ええ」
俺の号令を受けて、街道を歩き出す俺たちであった。
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街道をひたすらに歩くこと2日、隣の町テリートへとやってきた。
「ここはどのくらいいるつもりだ」
「そうだな、話ではそれほど特徴のある町ってわけじゃないみたいだし、いつも通りでいいんじゃないか」
いつも通りというのは、大体2~3日滞在するという意味だ。
俺たちは基本どの街でも大体このぐらい滞在し、街のあちこちを見て回ることにしている。
そんなわけで、いつも通り宿を取り、2日間街に滞在したのち、次の街へと旅立ったのであった。
そうして同じようにその隣の街であるリクラーナを通り抜けた2日後の今、俺たちは街道を歩いていた。
「この分だと、明日にはラハイエートまで行けそうだな」
「だねぇ。その次はやっと王都だよね」
「確か、そう聞いたな」
リクラーナで聞きこんだところ、王都はラハイエートの次の街だそうだ。
「今度はまともな王様だといいけど」
シュンナが思い出しげんなりしながらそう言ったのは、やはりコルマベント王都で起きた夜中の襲撃と指名手配のことだろう。
俺も思い出してげんなりしてきた。あれは、ほんと面倒だった。
王都付近では騎士たちや兵士たちから隠れ、やっとこさ王都を離れたと思ったら今度は賞金稼ぎ、それがコルマベイントを出るまで続いたんだからな。あんなのは二度とごめんだ。
「さすがに、大丈夫だろ。あんな王があちこちにいたら、ぞっとするぜ」
「全くな」
女好きの王があちこちに、ダンクスの言う通りぞっとしないな。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぅ」
俺たちがそれぞれ鳥肌を立てていると、突如そんな叫び声とともに1人の男がダンクスめがけてとびかかってきた。
「……なんか、以前も似たような光景見なかった」
「デジャブだな」
「なにそれ?」
「わかりやすく言うと、既視感、以前にも同じ光景を見たという感覚のことだな」
この世界にはデジャブという言葉はないために、どうしても日本語で発した言葉のため、シュンナには分からなかったようだ。
「いや、お前らそんなことより助けろよ」
俺とシュンナがのんきに話していると、当人のダンクスから抗議が入った。
「必要ないでしょ」
シュンナが言うように、襲撃者の攻撃を難なくさばいているダンクスだった。
「ふざけやがって、弟をどこにやりやがったぁ」
ますますどこかで見た光景だな。
「前の時は、確か娘だったわよね」
「だな」
「ちょっといいか?」
シュンナと変わらずのんびりと話していると、ふいにそんな声がかけられた。
「なに?」
「あっ、おう、ちょっと聞きたいんだが、あんたらもしかして誘拐犯じゃないのか?」
いうに事欠いて俺たちに誘拐犯じゃないのかと聞いてきやがった。
「そんなもの、見ればわかるでしょ」
シュンナもやはり少し怒っているようで少し強めに言う。
そりゃぁ、いくらのんきに会話していても、ダンクスは仲間でありいうなれば家族みたいなものだ。そのダンクスがいきなり誘拐犯みたいな言われ方をしたら、そりゃあ怒る。
「す、す、すまない」
シュンナのような美少女に強めに言われたことで、聞いてきた男はかなりしどろもどろとなっている。
「それより、あれ止めてくれないの?」
違うとわかったというのになおも襲われているダンクス、俺とシュンナもこれ以上はさすがに黙ってみていられないんだけど。
そもそも、俺たちがのんびり放っておいているのは、ひとえにあの程度の実力ではダンクスに攻撃が当たるとは思えないからだった。
ダンクスだって、ただあしらっているだけなのは、ただ単にそこまでの脅威を感じないからである。
でも、さすがにこれ以上は俺たちもダンクスも耐えられるかどうか。
「わ、わかった、おいやめろ、パルマー、その人は違う」
「るせぇ、こいつに決まってらぁ。お前らも手伝いやがれっ!」
パルマーと呼ばれた襲撃者は一向に収めようとはしない。
「はぁ、しかたないダンクス」
「おう」
ため息を吐いたシュンナがダンクスの名を呼んだ。
俺たちの付き合いはまだ一年にも満たないが、それでもこれで通じるぐらいにはわかりあっている。
つまり、シュンナはダンクスに対して無力化しろと言ったわけだ。もちろん思いっきり手加減してという条件付きだけどな。
というわけで、ダンクスは素早くパルマーの攻撃をかわしつつ、その腹部にあて身を食らわせた。
「パルマー!?」
「大丈夫よ。手加減してるから、それよりどういうことか説明してくれる?」
シュンナが笑顔で尋ねた。
こういう時の美少女の笑顔ってやつは、心底震えが来るようで俺たちの周りにいた男たちは震えだした。
「わ、わかった、説明させてくれ」
そうしてパルマーを横目に説明を始めた男たちであった。
まず、彼らは冒険者でシルムスの矢という4人のパーティーで活動しているそうで、シュンナに話しかけた男はディームというパーティーのリーダという。
んで、事の起こりは数時間前彼らが夜営を行っていた時だった。
その時見張りをしていたパルマーの弟のアルムという奴が突然さらわれたそうだ。
実はパルマーがその現場を目撃していた。
というのも、パルマーはたまたま目が覚めて弟の様子を見に行こうとしたからだそうだ。
そう聞くと実に仲のいい兄弟だな。
まぁ、そんなパルマーが現場を見たんだから当然大声を張り上げて犯人を追った。
しかし、どこからともなく現れた奴にあっさりと気絶させられたという、それは、まぁ、相当に悔しいだろうな。
「俺たちが駆け付けた時、パルマーが気絶していて、ほかには誰もいなかったんだ」
というのはディームだった。
ていうか、こいつら先ほどはこの程度と評価したが、それはあくまで俺たち基準で考えたらということで、世間一般レベルで考えるとそれなりに高い。
そうだな両親の仇を基準にするのは気が引けるが、こいつら3人もいればオークを討伐はできるだろう。
「ていうか、なんでアルムなんだよ。こういうのって普通ぼくじゃないの」
そう言ったのは、シルムスの矢の最後のメンバーでショートカットで自身をぼくと呼ぶ、一見すると男に見えてしまういわゆるぼくっ娘だった。
というか、俺たちも最初女だって気が付かなかった。
「ジェニスはがさつだから、気が付かなかったんじゃないか」
「なんだとっ、誰ががさつだディーム」
ディームがそう言ったことでますます憤慨するジェニス。
ていうか、名前はすげぇ女っぽいんだよな。
だから、名乗った時俺たちは3人そろってえっ、って驚いたわけだ。
まぁ、それはいいとしてその後、ディームたちはパルマーから聞き出した犯人の向かった方角へ進んだその先にいたのが俺たちで、ダンクスの凶悪な顔を見てこいつに違いないと襲い掛かったという。
「……なるほどね。それにしても、あなたたちのような実力者をあっさりさらうなんてね」
「相当できるな」
「……」
余人の目があるために俺は無言でうなずいた。
これはただ事ではないかもしれないな。
「これだけ探しても見つからないとなると、もしかしたら奴隷狩りかもしれない」
ディームがそうつぶやくように言った。
「おいっ、それじゃアルムは、どうなるんだよ?」
「わからねぇ。最悪……」
あきらめるしかない、ディームは暗にそういった。
ていうか奴隷狩りってなんだ。
「奴隷狩り? なんだそれは」
ダンクスが聞いた。
「ああ、あんたらは旅人だったな。もしかして出身は遠いのか?」
「ええ、コルマベイントよ」
「なるほど、隣国か、なら知らないのも無理はないか」
「んで、なんなんだその奴隷狩りって」
元奴隷として気になるし、そういえば以前モニカだったっけ、キエリーヴで見つけたあの娘、あの時も同じことを聞いた気がする。
「ああ、奴隷狩りってのはこの国で古くからある噂でな。なんでもそこらへんで人をかっさらって奴隷にしてうっぱらうって連中がいるらしいんだ。だからそいつらに捕まったら最後二度と戻っては来ないらしい」
なんともざっくりとした説明だったが、ディームたちもこれ以上は知らないそうだ。
「奴隷にして売るっていうけどどうやって、奴隷の首輪って国が管理しているんじゃないの、コルマベイントではそうだったわよ」
「それは、ウルベキナでも同じだ。でも、昔からそう言われているんだ」
「そういえば、あれえっと、モニカだったっけ、あの娘も拉致られて奴隷の首輪をつけられてたよな」
ダンクスが俺と同じようにモニカのことを思い出した。
確かにモニカの証言でもさらわれた後、奴隷商でもない連中に奴隷の首輪をつけられて、奴隷商に売られたといっていた。
「それ、ほんとか!」
「ああ、本人から聞いたからな」
「うそでしょ。ほんとに奴隷狩り、あれ、でもなんで本人から?」
ジェニスが青ざめながらも奴隷にされた本人から、どうして聞けたのかと疑問を投げかけてきた。
「あたしたち、旅の途中でさっきみたいなことがあってね。さらわれた女の子を探してほしいって言われて探したのよ。それで、一応ってことで奴隷商を巡ったら見つけたのよその子。それで、あたしたちお金には余裕があったから、その場で買ってあげたってわけ」
「まじかよ」
「なぁ、それじゃ、もしかしてアルムも?」
「ありうるな。おいっ、パルマーいつまで寝てんだ。起きろ!」
ディームがいつまでも気絶しているパルマーをたたき起こし事情を説明。
パルマーはそれを聞いて、街まで飛んでいく勢いで走り出した。
「すまねぇ」
「わるい」
ディームたちもそれを追いかけて行ってしまった。
「どうする?」
「どうもこうも、気にはなるし、そもそも俺たちもこっちだろ」
「それもそうね」
「追いかけてみるか?」
「ああ」
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そんなわけで、俺たちもディームたちの後を追いかけるために走ることにした。
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