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第04章 奴隷狩り

13 アルムを探せ!

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 ラハイエートへの道中、ダンクスが誘拐犯と間違えられた。
 その際に聞いた話が少々気になったので、ディームたちシルムスの矢を追いかけていくことにした。

「あれ? あんたら」

 俺たちが追いつくと、ディームがこちらを見ていった。

「ちょいと気になったからな」
「協力するわよ」
「すまねぇ」

 ということで、俺たちは同道しラハイエートに向かうこととなった。
 尤も、その足は速く俺には追いつけないので、相も変わらずダンクスの肩に乗っていたが……

「そこ、楽そうだな」

 ジェニスがふと俺を見てそういった。もちろん走りながらなんだけど、よく話せるよな。俺もある程度持久力がつて生きたとは思うけれど、さすがに走りながら話すほどではない。

「こいつは体力がまだついてないからな」
「まぁ、小さいし当たり前ではあるけどな」
「そういえば、スニルって何歳?」

 ジェニスがそう聞いてきたが、俺は相変わらずの人見知りが発動してなかなか答えることができない。

「5、6歳あたりか」

 ディームも話に加わり俺が答えない年齢を当てようとそういってきた。
 確かに、俺の身長は最近やっと1mを超えたところだから、そう考えるのもわかる。

「こう見えて、スニルは12歳なのよ」
「えっ!」
「まじか!」
「12って、小さすぎないか」

 俺の代わりにシュンナが答えると、ジェニスとディームが驚き、弟であるアルムを探そうと必死になっているパルマーもまた驚愕に声を上げた。

「そうなんだよな。まぁ、スニルもいろいろあったからなぁ」
「へぇ、色々ねぇ。まぁ、旅をしているって時点で、何かあったってことか」

 この世界はいろいろと物騒だからな、こいつらも何かを悟ったようでそれ以上何も聞いてこなくなった。

「それにしても、いくら12って言ってもそんな小さい奴と旅って大丈夫なのか」
「そうだよなぁ。魔物とか盗賊とかも結構いるし、それに……」

 ジェニスはちらっとパルマーを見た。

「それなら大丈夫だぜ」
「そうそう」
「どういうことだ。まぁ、お前らなら守りながらでも十分戦えるんだろうけど、足を引っ張るのは事実だろ」

 パルマーは俺を見てそういった。まぁ、言いたいことは分かる俺みたいな小さい奴が、戦えるとは思えないからな。

「そうは言うけど、スニルってこう見えてかなり強いわよ」
「総合的に言えば、俺たちよりも強いからな」

 ダンクスの言う通り、剣技に絞るとまだ2人のほうが圧倒的に強いが、そこに魔法を絡めると俺に分があるのも事実である。

「まじで! そうは見えないんだが」
「ああ、全然見えねぇ」
「嘘だろ!!」

 これにも3人とも驚愕した。
 さっきから驚いてばかりだなこいつら、って、俺が原因か。

 そんなやり取りを走りながらやりつつ俺たちはその日の夜にはラハイエートに到着した。
 本来は歩くつもりだったから、明日到着予定としてたが走ったために早く着いてしまった。

「どうするお前ら」

 ダンクスがディームたちに予定を聞いた。

「俺たちはこのままアルムを探す」
「そうか、まぁまだ店は開いているだろうからな。俺たちも手分けして探すか」
「そうね」
「ああ」

 時刻はまだ夕方あたり、店が閉まるのは大体暗くなるころのために俺たちは手分けして奴隷商を巡ってみることとなった。

 しかし、時間的に回れるのは1軒のみ、そしてその結果は残念ながら外れ、まぁさすがにあの時のようにこうすぐに見つかるとは思えないからな。
 その後、俺たちはそれぞれ宿に戻り翌日再び手分けして探すことになった。

「ほんと悪いな」
「気にしないで、あたしたちも気になるだけだし」
「そうそう、なんというかまぁいろいろとな」

 まさか俺たちが元奴隷だとは言えないために、ダンクスはそう言って語ました。

「そうか、すまない」

 ディームたちも俺たちの事情をそこまで聞くということはしないようだ。
 そこらへんは実にありがたい。
 というわけで、それぞれ分かれて奴隷商を巡りアルムを探して歩いたのであったが、奴隷商も数十とあるわけではなく、数軒程度午前中ですべて周ったわけだが、どこにもアルムの姿はなかった。

「くそっ、どこにいんだ!」

 パルマーが苛立たし気にテーブルをたたいた。
 まぁ、家族が行方不明とあれば苛立ちもするか。

「落ち着けって、確かにこの街にはいないみたいだが、収穫もないわけじゃないだろ」

 ダンクスが言ったように確かにこの街にはアルムは居なかった。しかし、探索する上で情報は得ていた。
 それはアルムのってわけではないが、なんでも近々王都でオークションが行われるらしくそれには奴隷も出品されるらしい。
 そのため、少しでも金になる奴隷ならオークションに出品される可能性が高いということを奴隷商から聞いた。
 ちなみに、アルムは値になるのかというと正直なるらしい。
 というのも、アルムは若い男であり現役の冒険者というわけで頑丈で実力もある。こういった手合いというものは奴隷商としても高値で買い取るという。

「くそっ、そんなことさせねぇ!」

 パルマーはさらに憤慨している。

「だなっ、どうする。王都に向かうか」
「それしかないだろ」
「まっ、それがいいだろうな。んで、今から行くのか?」
「当然だ」

 パルマーはさも当然のように力強くそう言った。

「そうか。っで、俺たちはどうするスニル」
「ここまで来たら一蓮托生、行こう」
「そうね。そうしましょ」
「そうすっか」

 というわけで俺たちもディームたちの同行し王都へ向かうことになった。
 尤も、ここで王都に向かったところでアルムがいるとは限らないんだけど、まぁ、それはこの場でいうのはやめておこう。こういう時人見知りで助かる。余計なことを言わずに済むからな。

 そうして、さっそく旅支度を整えた俺たちは早々にラハイエートを出発することになった。

「早くいこうぜ」
「待てって」

 パルマーがせかしてきたが、ディームがそれを制した。
 パルマーとそては早く弟を見つけ救い出してやりたいんだろう、いい兄ちゃんだな。
 まぁ、聞いた話だと普段パルマーはアルムのことをそれほど大事にはしていないらしい。
 というかしょっちゅう喧嘩しているって話だ。
 まぁ、男兄弟ってやつはそういうものだと思う、姉妹みたいにべったりしていたら逆に気持ち悪いからな。

「なんだよ。早くしねぇと」
「だから待てって、そんなに焦んなくたって結局オークションまで手が出せねぇだろ」

 ディームたちの中ではすでにアルムがオークションに出品されると考えているようだ。
 まぁ、俺たちもその可能性が高いとは思ってはいるけどな。

「でもさ。早く言えばその分情報も集まるんじゃないか」
「そうだな。そもそもオークションがいつ行われるかぐらいは知っておく必要があるな」
「そうね。あたしたちが得た情報ではあくまで近々って話だからね。まぁ、さすがに今日明日ってことはないと思うけど」

 そうなんだよな。俺たちが得た情報は近々行われるらしいというものだけ。

「しゃぁねぇ。また走っていくか」
「そうするか」

 そういうことになり俺たちは再び走って王都へ向かうことになった。
 もちろん俺はダンクスの肩に乗っての移動となる。いいかげん俺も走って移動できるぐらいの体力を身に着けたいものだ。といっても、その先は長そうだ。

 王都までの距離は歩いた場合2日はかかる計算となっていて、走った場合はさすがに今日中には無理でも明日の午前中には王都に着くだろうと思われる。



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 翌日、今日も朝から走ってことで、思っていたよりも早めに王都にたどり着いていた。

 ちなみに、昨日の夜は夜営をしたわけだが俺たちはディームたちの前でいつものテントを使うわけにはいかないので、こういう時のために用意していた普通の3人用のテントを広げ見張りもおくという、ごくごく当たり前の夜営をした。まだ、ディームたちにあのテントを見せるほど信用していないからな。
 しかし、一応以前に体験はしているがそれでも普通の夜営ってやつはちょっと大変で、あまり眠れなかった。
 まぁ、その分ダンクスの肩の上でうつらうつらと寝てしまったけどな。

「さてと、王都に着いたわけだが、まずはお前らはギルドに行ってオークションのこと聞いてくるんだろ」

 王都で開かれるオークションには冒険者ギルドからも魔物素材などが出品されたり、冒険者が参加したりすることもあるために、ギルドはそれを情報として当然知っている。
 だから、ディームたちはギルドへ行き日取りなどを聞いてくるというわけだ。

「ああ、そのつもりだ。あんたらはどうすんだ」
「そうだな。俺たちはその間街をぶらついていることにするさ」
「そうね。そもそもあたしたちの目的は街を見て回ることだしね」
「そうか、それじゃ、昼にまた会おう」
「おう」
「それじゃ、あとで」

 ということで別れた俺たちは街をぶらつきつつオークションの情報を集めて回ることにした。

「いらっしゃい」

 俺たちが入ったのは近くにあった武器やだった。

「結構いいものがそろってるな。さすが王都だぜ」
「ほんとね。あっ、これミスリルじゃない」
「ほんとだ」

 王都の武器やというものは、コルマベイントでは立ち寄れなかったので今回が初めてとなるが、さすが王都いい武器がそろっているようだ。

「ほぉ、お客さんらよくわかってるじゃないか、冒険者か?」
「いや、旅人だ。でも武器の良し悪しは分かるぜ」
「そうかい、ってお客さらもずいぶんといい武器を持っているようだな。その大剣だって魔鋼とミスリルじゃないか」
「わかるか。さすがだな。こいつは以前作った特別製でな」
「ちょっと見せてくれるか」
「おう、いいぜ」

 ダンクスはなんだか店主と気が合ったのか自身の大剣を見せていた。

「んっ、なんだこのくぼみは?」

 武器屋が見れば当然、ダンクスの剣についているくぼみに気が付くのは当然だな。

「ああ、こいつかこいつは俺たちオリジナルでな。まぁどういうもんかってのは話せねぇがな」
「あいや、そうだろうな。でも、なんとなくすげぇもんだってことは分かるぜ」

 ダンクスもさすがにくぼみのことは説明しなかったようだ。まぁ、切り札みたいなもんだしな。

「ところで、隣の街で聞いたんだけどよ。近々オークションが行われるってホントか?」

 ダンクスが話の流れをで店主からオークションのことを聞き出している。こういうことは俺にはまだ当然できないんだよな。

「おう、5日後にあるな。そう言えば珍しい剣が出品されるって聞いたぜ」
「へぇ、剣かそいつは楽しみだな。でも、俺たちみたいな旅人でも行けるのか?」

 これは俺たちが知りたい情報でもあるたとえアルムが出品されようと俺たちが参加しないと意味がないからな。

「ああ、確か一般参加ができるはずだぜ。まぁ、その分参加料は取られるけどな」
「なるほどなぁ。話は分かったぜ」
「なに、いいってことよ」

 こうして俺たちはあっさりオークションの情報と参加方法を知ることができた。

 その後、ディームたちと合流した俺たちはお互いの情報をすり合わせたが、どうやら間違いなく5日後、場所は東地区劇場となるようだ。

「ちっ、5日って待てるかよ」
「落ち着けって」

 パルマーが今にも飛び出していきそうだったが、それを何とか抑えつつさらなる情報収集をすることなった。

「とはいえ、どこで聞けばいいんだ」
「ああ、それなら会場で一覧を買えばいいらしい、といってもかなり高いけどな」

 ディームたちが言うにはその一覧は分厚い本であり、それを買うには金貨1枚とかなりの高額なんだそうだ。

「金貨一枚か、まぁそれは確かに高いな」
「そうね。でも、あたしたちなら買えそうじゃない」
「まじかよ!」
「ホントか! 頼む買ってくれないか」

 ダンクスとシュンナが俺たちなら問題なく買えるといったことにディームたちは驚きつつも、ぜひ一覧を買ってほしいと頼んできた。
 確かに、その一覧があれば奴隷たちの中にアルムがいるかが一目瞭然となるであろうからな。

「いいぜ、俺たちもアルムはともかく普通の商品とか興味あるしな」
「そうね」


 というわけで、俺たちはまず参加登録をするためと一覧を買うために会場となる東地区劇場へ向かうこととなった。

「オークションに参加したいんだけど」
「……はい、では参加料はお1人150万ドリアスとなっておりす」

 参加受付へ行くと、受付嬢は俺たちを一瞥しさげすむような眼をしながらも仕事だからか一応と言わんばかりに値段を言った。
 ていうかこの受付嬢明らかに俺たちを馬鹿にしているな。金だって払えるもんなら払ってみろと言わんばかりの表情で値段を言ってきたわけだが、ほんとに高いな。俺たちじゃなかったら払えないぞ。

 ちなみに、ディームたちは銀貨5枚で参加できるらしい。というのも彼らは冒険者であり実績もそれなりにあるとのことで、ギルドが参加を認めたからだ。
 これが可能なのはギルドがオークションに少なくない出資をしているからなんだそうだ。
 まぁ、さすがに一覧の本に関しては自腹で買えってことだそうだ。

 とまぁ、それはいいとしてシュンナが財布から金貨4枚と大銀貨5枚を何事もないようにさっと出した。
 これには、受付嬢も驚愕している。

「えっ、あっ、そのすみません。えっと、確かに450万ドリアス、ご参加ありがとうございます」

 シュンナがあっさりと金を出したことで、受付嬢の態度が明らかに変わった。

「ご一緒に出品商品一覧はいかがでしょうか?」

 俺たちが金を持っているとわかった受付嬢は態度を一変して一覧を進めてきた。

「ええ、お願い、確か金貨一枚だったわよね」
「はい」
「じゃぁ、これね」
「ありがとうございます。では、こちらをどうぞ」

 こうして、俺たちはオークション参加と出品商品一覧という本を手に入れたんだけど、でかいな。
 シュンナが受け取った一覧は、A2程の大きさがある上に厚さも10cmはありそうだ。

「おっ、重っ、ちょっと、ダンクス」
「お、おう」

 受け取ったシュンナでは持ちきれずダンクスを呼んだ。それはそうだろういくらシュンナが強いといっても、通常の力は女のそれなんだからな。
 多分だけど俺だったら持ち上げることすら無理だろうな。
 まぁ、ダンクスなら片手でひょいっと持ったけど。ていうかなんでこんなにでかいんだ。

 ここで1つ、この世界の文明は神様もつまらないと断言するほどの進化がないが、紙だけは進化しているようで、重要書類などは昔ながらの羊皮紙を使うそうだが、それ以外は地球のように植物の繊維を使った製紙業が発展しているようで、以前俺が奴隷商からパクった冊子もその紙でできているしこの本もその紙できているようだ。
 しかし、まだこの世界には印刷技術はできていないようで、すべて手書きなんだよな。

 閑話休題。


 一覧を手に入れた俺たちはさっそく宿に戻りディームたちと合流した。

「おう、買ってきたぜ」
「見せてくれ!」

 ダンクスが手に持った一覧を見せると案の定パルマーがすぐさま見せろと手を伸ばしてきたので、ダンクスも何も言わずにそれを手渡した。

「うぉ、お、おめぇ」

 頭に血が上っているパルマーでさえ重いと感じるものだそうだ。
 だがまぁ、それをぱらぱらとめくり奴隷一覧が表示されているページにたどり着いた。

「どうだ?」

 ディームも当然気になるようにパルマーが開く一覧を覗き込むようにして聞いた。
 俺ものぞいてみたが、この一覧はかなり細かく書かれているようで、奴隷の姿絵までしっかり描かれていた。
 そして、その中に。

「いたっ、アルム」

 そう、その中にパルマーそっくりの男の姿絵が描かれていた。
 どうやら、本当にオークションに出品されるようだな。はてさて、いったいどうなることやら……
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