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第05章 家族
03 神様の贈り物
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ルンボーテに到着したその日の夜、寝ていると夢に神様が出てきた。何事かと思っていると、神様がいきなりの謝罪、これに困惑するなというほうが無理だ。さらに、神様は詫びとして俺に贈り物があると言い出した。すでにめったに病気にならない丈夫さとメティスルというとんでもスキルをすでにもらっている。その上に新たに贈り物をもらっていいのだろうか。
「それに関しては気にすんな。こいつは詫びとして用意したものだからな」
俺が恐縮していると神様が俺の心を読んでそういった。
「詫び、ですか」
「おう、そういうこったから、気にすんな」
「は、はい、わかりました」
「おう、んで、その場所なんだがお前がいる街あんだろ。そこから東に1日ってとこにあるアリナスって村だ。行ってみてくれ」
神様はいい笑顔で言ってから、贈り物のある場所を教えてくれた。そこはルンボーテから東に1日か、確かに近いな。
「わかりました、行ってみます」
「ああそうしてくれ、それよりどうだこの世界、ほんとつまらねぇ世界だろ」
話は変わってこの世界について神様から聞かれた。
「ははっ、俺にとってはそれほどつまらなくはないですよ。まさに異世界ファンタジーって感じですし」
「そうか、まぁ、楽しんでんならいいけどよ。でも、あの首輪の改造はよかったぞ。俺もあれは気に入らなかったからな。それに、あの赤子、サーナだったか。ふっ、それにして俺が伝えた言葉からとはな」
「ええ、つけておいてなんですがいい名前だと思います」
「ああ、そうだな。そういえば生前の妻の名がサーナだったのを覚えているな」
「そうなんですか、となるとその名をもらうとは、すみません」
「なに、気にすんな。あいつの名もこうして生きることができたんだ。あいつも喜んでいるさ」
「そうですか、ならよかったです」
「おう」
神様はなんとも懐かしいような顔をしている。
「まぁ、なんにせよ。名前の通り幸せになるように祈ってるぜ。俺もな」
「はい、ありがとうございます。俺たちもそれを願ってこうつけましたから」
「そうだったな。ああ、そうそう、お前も少しは気になっていると思うから言っておくが、お前を虐待していた一家だが……」
ここで神様はあのクソ一家の顛末について語りだしたが、正直俺にはどうでもいいことだった。まぁ、それでもあの両親の仇がすでに死んでいるという話を聞けたのはよかったと思う。しかし、どうやら俺を売り飛ばした奴だけはまだ生きているらしい。まぁ、どうでもいいが……
「そうですか。ありがとうございます」
「なに、構わねぇよ。さて、そろそろ時間だな。スニル、最後になるがこの世界、お前なりに楽しめ。俺がこの世界にお前を呼んだのは、確かにつまらねぇ世界に面白みを入れたかったからだが、そんなもんは俺の都合だ。お前はお前としてやりたいようにやれ。たとえお前がこの世界を破壊しようが俺は止める気はねぇからよ」
なんだか過激なことを言い出した神様だが、要は好きに生きろってことか、まぁ、最初からそのつもりではあるが……。
「はい、そのつもりです。でも、世界を破壊するつもりはないですよ」
「そうか、おっとそれじゃな、スニル」
「はい」
こうして、突然訪れた神様との邂逅は終わりを遂げたのだった。
朝になり目が覚めた。
「おう、スニル起きたか?」
起き抜けにいつものごとく、ダンクスの声が聞こえてきた。
「あ、ああ、おう?」
「んっ、どうした? 寝ぼけてんのか? 珍しいな」
俺は目覚めはいいので寝ぼけることは今まで一度もないから、ダンクスも珍しがっている。
「い、いや、ちょっと夢でな……」
俺は夢で神様にあったことと、言われたことなどをダンクスへと話して聞かせた。
「はぁ! 神様? まじか、いや、お前ならありうるのか。でも、贈り物ってなんだよ」
「さぁ、それは知らねぇけどな、それは神様も言わなかったし」
「んっ? どうしたの?」
ダンクスと話しているとシュンナが起きてきて、何の話をしているのかと聞いてきた。
「ああ、起きたのか、実はな……」
シュンナに対して、改めて神様の話をした。
「へぇ、贈り物ねぇ。それで、スニル行くの?」
「そりゃぁ、まぁ、神様の言うことだしな。一応行ってみるよ」
「そうだな。俺たちの旅も特に目的地があるわけじゃねぇし、ちょっと寄り道ぐらい全く問題ないな」
「そうね。あっ、起きたっ、サーナちゃん、起きたねぇ」
話が一段落したところでサーナが起きたようで、シュンナがすぐに駆け寄り抱き上げた。
「あうあぁ、だっ、あぅ」
そのあとサーナにミルクを飲ませたり、おむつの交換をしたりしたのち、俺たちは自分の身支度を整えてルンボーテの街を出たのだった。
街の東門から出たところで、行き先の確認をした。
「ここから東に1日ってことだが、それって歩いてってことだよな」
「みたいだな。確かアリナスって名前の村だった」
「アリナスか、一応ちょっと聞いてみるか」
「そうね。あたし聞いてくるわ」
シュンナがそう言って近くにいた商人へ聞きに行った。そうして帰ってきたシュンナによれば確かに歩いて1日ぐらいの場所にアリナスって村があるようだ。
「それじゃ、行くか」
「だな」
「ええ」
というわけで俺たちは街道を1日かけて歩いたのだった。そうして翌日午前中の段階で小さな村が見えてきた。
「あそこかな」
「みたいだな」
「あうぁー、だっ」
「聞いてみようか?」
シュンナがそう言って、村人へ近づき何かを聞いてから戻ってきた。
「間違いないみたい」
「そっか、それじゃ行ってみるか」
「だな。さて、贈り物ってのは一体なんだろうか」
「さぁな。わからねぇが、神様からの贈り物だ、そうそう妙なもんじゃねぇだろ」
だといいなと思いながら俺たちはアリナス村へと入ったのだった。
「なんだお前ら、敵か?」
「違うでしょ。すみません」
俺たちが村に入ると少年がやって来て身構えたと思ったら、背後からやって来た少女に背後からはたかれている。仲がよさそうだな。
「いや、気にしなくていいぜ。こういう村に俺たちみたいなのが来ること自体がそうそうないことだからな」
ダンクスが言うように俺たちのような旅人が村に立ち寄ることはほぼない。実際俺たちもこれまで村へは招待された以外は立ち寄っていない。だから、こうして警戒するのはいいとは思う。それにダンクスの顔を見て警戒しないやつもいないだろうし。
「え、えっと」
「ああ、大丈夫よ。この人はこんな顔だけど、怖くはないから」
「は、はぁ」
「そ、そんなことより何の用だよ。お前ら」
シュンナの言葉に少し納得した少女と、俺たちをいまだ警戒している少年が用事を尋ねてきた。
「俺たちは、ちょいとこの村に用事があるんだが、まぁそれが何かはよくわかってないんだけどな」
「なんだよそれ」
ダンクスの答えに呆れの表情を見せる少年であった。うん、その気持ちはわかる。俺たちだって言ってて、ちょっと意味が分からないからな。でも、さすがに神様の贈り物を探しに来たとは言えない。まぁ、それはともかくまずは、村へ滞在するために村長に許可をもらう必要がある。
「ところで、村長に挨拶したいんだけど、いるかな?」
「はい、こっちです」
2人の案内で俺たちは村の中心当たりの建つ家へと向かった。どうやら村長は家にいるようだ。
「おや、ロリッタにヘイゲルじゃないか、どうしたんだ2人とも」
そう言えば2人の名前を聞いていなかったことに、ここにきて気が付いた。
「この人たちを案内してきたの。おじいちゃんに用があるって」
「? おやおや、客人ですかな。このような小さな村へようこそ、しかし、どのようなご用件ですかな」
やはり村に旅人が立ち寄ることがないために村長も警戒心をあらわにしている。
「こんにちは、あたしはシュンナ、この子がサーナでこっちがスニル、そっちの怖い顔したのがダンクスよ。言っておくけど、ダンクスは顔が怖いだけだから安心して、それから、あたしたちがここに来た理由だけど、ちょっと事情があってね。ただ、少しの間この村に滞在させてもらえると嬉しいんだけど、いいかしら」
シュンナは当然神様云々などは話さずに滞在したいとだけ伝えた。
「ふむ、私たちとしてはそれは構いませんが……」
そう言って村長はダンクスを見てから、そのダンクスに抱かれ静かに寝息を立てているサーナを見てから少し考えている。
「わかりました、赤ちゃんもいるようですし、どうぞご滞在ください。残念ながら村に宿はありませんが我が家に空き室がありますから、そちらをお使いください。ですが、一部屋しかありませんがよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。あたしたちは家族だし、いつも宿でも同じ部屋だし」
「そうですか、では部屋を用意いたしましょう」
ということで俺たちは無事に村への滞在を許されたのだった。
「なぁなぁ、あんたら旅をしてんだよな」
ここで少年、ヘイゲルが俺たちに何やらキラキラした目で向けてきた。
「ああ、まぁな。それがどうしたんだ」
「旅の話聞かせてくれよ」
この世界に娯楽はない。ヘイゲルも俺たちから旅の話を聞いて娯楽としたいのかもしれない。
「あっ、私も聞きたい。実は私たち、明日で12歳になるんですけど、そうしたら2人で旅をしようって話をしてて」
「こらこら、お前たちその話はまだちゃんと決着がついていないだろう」
「大丈夫だってじいちゃん。俺たちの強さ知ってんだろ」
「知ってはおるが、それはあくまで村ではの話だろう。村の外に行けばお前たちより強いものなどたくさんいるんだぞ」
「わかってるって、なっロリッタ」
「ええ、もちろん」
「なぁ、だから話聞かせてくれよ」
「まぁ、いいぜ話ぐらいならいくらでもな」
「おっ、やった」
それから、俺たちはヘイゲルとロリッタの2人にこれまで旅の話すをしていくのだった。その話を聞き2人は本当に目を輝かせていたのは言うまでもないだろう。
「これが年相応ってやつよね」
「悪かったな。中身おっさんで」
そんな2人の様子を見ていたシュンナがぽつりとそう言った。これは俺に対する当てつけだ。いくら見た目が小さくとも俺の中身は40過ぎのおっさん。一応童心は忘れていないが、2人のように目をキラキラさせるなんてことはない。
「……へぇ、あんたらすげぇな。それってすげぇつえぇんだろ」
「普通はな。でも俺たちにかかっちゃ簡単だったぜ」
ダンクスはヘイゲルに合わせているのか、自慢げに話している。ああいうところはさすがとおもえる。人見知りがある俺にはできないことだ。でも、なんだろうな、不思議なんだが、ヘイゲルとロリッタを見ているとなんとも懐かしさを覚えるんだよな。それに、2人相手だと人見知り特有の緊張というか恐怖というかそういったことを感じない。これはシュンナやダンクス相手にした時と似ている。
「あぎゃぁ、おぎゃぁ」
「あらら、そうかそろそろか。サーナちゃん、おなかすいたかな」
とここでサーナが空腹を訴えてきた。
「ええと、あたしちょっとこの子に……」
「ふむ、では部屋へ案内しよう。コニー」
村長も悟ったのかすぐにシュンナを近くにいた奥さんに案内を頼んだ。赤ん坊であるサーナの空腹を満たすには通常授乳が必要になる。家族であれば側にいても問題ないかもしれないが、村長などの他人がいる中では無理があるからな。尤も、俺たちの場合はちょっと違うが、それでも他人には見せられないのは確かだ。
「それじゃ、あたしちょっと行ってくる」
「おう」
シュンナはそう言ってサーナを抱きかかえてコニーさんの後をついて2階へ上がっていったわけだが、そのあとをロリッタがじっと見つめていた。
「いいなぁ、赤ちゃん」
なにかうらやましそうにしている。まぁ、12歳とはいえ女の子、赤ん坊が好きなんだろう。
「お前、ほんと赤ん坊好きだよな」
「うん、だってかわいいじゃない。それに赤ちゃんを見てるとなんだか、ここら辺がムズムズするのよ」
そう言ってロリッタは自身の胸に手を当てる。もしかしたらロリッタは母性が強いのかもしれないな。だから、もし将来子供ができたら、変な心配が出てきそうだ。どんな子供でも甘やかしそうな、そんな危険性が……。
「まぁ、それは分かるがな。俺としてはなんかちょっと嫌な気分になるんだけど、でもまっ、別に嫌いではないな」
「でしょ」
ヘイゲルもなんだかんだといって赤ん坊は結構好きらしい。まぁ、俺たちが村にいる間はサーナをかわいがってくれればいいさ。
「そんなに、気になるんなら俺たちが村にいる間、サーナと遊んでやってくれ」
「いいんですか?」
ロリッタが食い気味で聞いてきた。
「ああいいぜ。なぁ、スニル」
「そうだな。むしろこっちから頼みたいぐらいだ」
「ありがとうございます」
本当にうれしそうにしているロリッタの表情を見ていると、なんだか妙な気分になるな。同じようにサーナをかわいがっていたポリーはどちらかというと妹を見るような眼でサーナを見ていたが、ロリッタはなんだか娘を見るような眼をしているんだよな。うーむ、わからん。と、そうこうしているうちに、シュンナがサーナを抱えて戻ってきた。
「ついでにおむつも変えておいたわ」
「お疲れ」
「あっ、あの……」
ロリッタがシュンナに向けて言いよどむ。
「どうしたの?」
「サーナと遊びたいそうだ」
「ああ、そういう、それじゃお願いしようかな」
「はい」
「抱き方わかる?」
「はい、わかります」
そう言ってロリッタはシュンナから受け取ったサーナを自然に抱き上げる。あれっ? 俺たちよりうまくない?
「へぇ、上手いのね。ロリッタちゃんこれまで赤ちゃんを抱っこしたことあるの」
「いえ、初めてです。でも、なぜかわかるんです」
ちょっと意味が分からないが、本能的なものだろうか。
それから、村人たちに歓迎されて、俺たちはその日アリナス村で過ごしたのだった。神様の贈り物って一体なんだろうか、それについてはまださっぱりわからない。
とまぁ、そんなこんなで翌日も、ロリッタはサーナと遊んだり世話をしたりと、心底楽しそうにしている。本当に赤ん坊が好きなんだな。そう思える光景だ。ちなみにヘイゲルもいつの間にか加わっている。そうして、昼を食べ、午後時間的に3時頃だろうか、まぁこの世界に3時のおやつなんてものはないんだけど、そんな小腹のすいてくる時間だ。
「うっ、うががぁぁぁぁ!!」
「いっ、うぎゃぁぁぁ!!!」
サーナと遊んでいたヘイゲルとロリッタが急に頭を抱えてもがきだした。
「お、おい、どうした?」
「ちょ、ちょっと、どうしたの、スニル、村長さん、村長さん呼んで!」
「どうした、一体なんの……ヘイゲル、ロリッタ、どうした?」
ちょっとしたパニックだが、ほんとどうしたんだ。俺までかなり焦っている。いや、そんなことより、鑑定、もしかしたらそれでわかるかもしれねぇ。そう思って俺はすぐに2人に対して鑑定をかけた。
「へぁ?!」
鑑定をしたところ変な声が出た。どういうことだ?! ちょっと意味が分からないんだけど……。
俺はさらに混乱の極みとなった。その理由は2人の名前。昨日鑑定をかけた時は、それぞれ〈ヘイゲル〉〈ロリッタ〉とだけ表示されていた。それは間違いない。しかし、今確認してみると、〈ヘイゲル=ヒュリック〉〈ロリッタ=ミリア〉となっていた。
「それに関しては気にすんな。こいつは詫びとして用意したものだからな」
俺が恐縮していると神様が俺の心を読んでそういった。
「詫び、ですか」
「おう、そういうこったから、気にすんな」
「は、はい、わかりました」
「おう、んで、その場所なんだがお前がいる街あんだろ。そこから東に1日ってとこにあるアリナスって村だ。行ってみてくれ」
神様はいい笑顔で言ってから、贈り物のある場所を教えてくれた。そこはルンボーテから東に1日か、確かに近いな。
「わかりました、行ってみます」
「ああそうしてくれ、それよりどうだこの世界、ほんとつまらねぇ世界だろ」
話は変わってこの世界について神様から聞かれた。
「ははっ、俺にとってはそれほどつまらなくはないですよ。まさに異世界ファンタジーって感じですし」
「そうか、まぁ、楽しんでんならいいけどよ。でも、あの首輪の改造はよかったぞ。俺もあれは気に入らなかったからな。それに、あの赤子、サーナだったか。ふっ、それにして俺が伝えた言葉からとはな」
「ええ、つけておいてなんですがいい名前だと思います」
「ああ、そうだな。そういえば生前の妻の名がサーナだったのを覚えているな」
「そうなんですか、となるとその名をもらうとは、すみません」
「なに、気にすんな。あいつの名もこうして生きることができたんだ。あいつも喜んでいるさ」
「そうですか、ならよかったです」
「おう」
神様はなんとも懐かしいような顔をしている。
「まぁ、なんにせよ。名前の通り幸せになるように祈ってるぜ。俺もな」
「はい、ありがとうございます。俺たちもそれを願ってこうつけましたから」
「そうだったな。ああ、そうそう、お前も少しは気になっていると思うから言っておくが、お前を虐待していた一家だが……」
ここで神様はあのクソ一家の顛末について語りだしたが、正直俺にはどうでもいいことだった。まぁ、それでもあの両親の仇がすでに死んでいるという話を聞けたのはよかったと思う。しかし、どうやら俺を売り飛ばした奴だけはまだ生きているらしい。まぁ、どうでもいいが……
「そうですか。ありがとうございます」
「なに、構わねぇよ。さて、そろそろ時間だな。スニル、最後になるがこの世界、お前なりに楽しめ。俺がこの世界にお前を呼んだのは、確かにつまらねぇ世界に面白みを入れたかったからだが、そんなもんは俺の都合だ。お前はお前としてやりたいようにやれ。たとえお前がこの世界を破壊しようが俺は止める気はねぇからよ」
なんだか過激なことを言い出した神様だが、要は好きに生きろってことか、まぁ、最初からそのつもりではあるが……。
「はい、そのつもりです。でも、世界を破壊するつもりはないですよ」
「そうか、おっとそれじゃな、スニル」
「はい」
こうして、突然訪れた神様との邂逅は終わりを遂げたのだった。
朝になり目が覚めた。
「おう、スニル起きたか?」
起き抜けにいつものごとく、ダンクスの声が聞こえてきた。
「あ、ああ、おう?」
「んっ、どうした? 寝ぼけてんのか? 珍しいな」
俺は目覚めはいいので寝ぼけることは今まで一度もないから、ダンクスも珍しがっている。
「い、いや、ちょっと夢でな……」
俺は夢で神様にあったことと、言われたことなどをダンクスへと話して聞かせた。
「はぁ! 神様? まじか、いや、お前ならありうるのか。でも、贈り物ってなんだよ」
「さぁ、それは知らねぇけどな、それは神様も言わなかったし」
「んっ? どうしたの?」
ダンクスと話しているとシュンナが起きてきて、何の話をしているのかと聞いてきた。
「ああ、起きたのか、実はな……」
シュンナに対して、改めて神様の話をした。
「へぇ、贈り物ねぇ。それで、スニル行くの?」
「そりゃぁ、まぁ、神様の言うことだしな。一応行ってみるよ」
「そうだな。俺たちの旅も特に目的地があるわけじゃねぇし、ちょっと寄り道ぐらい全く問題ないな」
「そうね。あっ、起きたっ、サーナちゃん、起きたねぇ」
話が一段落したところでサーナが起きたようで、シュンナがすぐに駆け寄り抱き上げた。
「あうあぁ、だっ、あぅ」
そのあとサーナにミルクを飲ませたり、おむつの交換をしたりしたのち、俺たちは自分の身支度を整えてルンボーテの街を出たのだった。
街の東門から出たところで、行き先の確認をした。
「ここから東に1日ってことだが、それって歩いてってことだよな」
「みたいだな。確かアリナスって名前の村だった」
「アリナスか、一応ちょっと聞いてみるか」
「そうね。あたし聞いてくるわ」
シュンナがそう言って近くにいた商人へ聞きに行った。そうして帰ってきたシュンナによれば確かに歩いて1日ぐらいの場所にアリナスって村があるようだ。
「それじゃ、行くか」
「だな」
「ええ」
というわけで俺たちは街道を1日かけて歩いたのだった。そうして翌日午前中の段階で小さな村が見えてきた。
「あそこかな」
「みたいだな」
「あうぁー、だっ」
「聞いてみようか?」
シュンナがそう言って、村人へ近づき何かを聞いてから戻ってきた。
「間違いないみたい」
「そっか、それじゃ行ってみるか」
「だな。さて、贈り物ってのは一体なんだろうか」
「さぁな。わからねぇが、神様からの贈り物だ、そうそう妙なもんじゃねぇだろ」
だといいなと思いながら俺たちはアリナス村へと入ったのだった。
「なんだお前ら、敵か?」
「違うでしょ。すみません」
俺たちが村に入ると少年がやって来て身構えたと思ったら、背後からやって来た少女に背後からはたかれている。仲がよさそうだな。
「いや、気にしなくていいぜ。こういう村に俺たちみたいなのが来ること自体がそうそうないことだからな」
ダンクスが言うように俺たちのような旅人が村に立ち寄ることはほぼない。実際俺たちもこれまで村へは招待された以外は立ち寄っていない。だから、こうして警戒するのはいいとは思う。それにダンクスの顔を見て警戒しないやつもいないだろうし。
「え、えっと」
「ああ、大丈夫よ。この人はこんな顔だけど、怖くはないから」
「は、はぁ」
「そ、そんなことより何の用だよ。お前ら」
シュンナの言葉に少し納得した少女と、俺たちをいまだ警戒している少年が用事を尋ねてきた。
「俺たちは、ちょいとこの村に用事があるんだが、まぁそれが何かはよくわかってないんだけどな」
「なんだよそれ」
ダンクスの答えに呆れの表情を見せる少年であった。うん、その気持ちはわかる。俺たちだって言ってて、ちょっと意味が分からないからな。でも、さすがに神様の贈り物を探しに来たとは言えない。まぁ、それはともかくまずは、村へ滞在するために村長に許可をもらう必要がある。
「ところで、村長に挨拶したいんだけど、いるかな?」
「はい、こっちです」
2人の案内で俺たちは村の中心当たりの建つ家へと向かった。どうやら村長は家にいるようだ。
「おや、ロリッタにヘイゲルじゃないか、どうしたんだ2人とも」
そう言えば2人の名前を聞いていなかったことに、ここにきて気が付いた。
「この人たちを案内してきたの。おじいちゃんに用があるって」
「? おやおや、客人ですかな。このような小さな村へようこそ、しかし、どのようなご用件ですかな」
やはり村に旅人が立ち寄ることがないために村長も警戒心をあらわにしている。
「こんにちは、あたしはシュンナ、この子がサーナでこっちがスニル、そっちの怖い顔したのがダンクスよ。言っておくけど、ダンクスは顔が怖いだけだから安心して、それから、あたしたちがここに来た理由だけど、ちょっと事情があってね。ただ、少しの間この村に滞在させてもらえると嬉しいんだけど、いいかしら」
シュンナは当然神様云々などは話さずに滞在したいとだけ伝えた。
「ふむ、私たちとしてはそれは構いませんが……」
そう言って村長はダンクスを見てから、そのダンクスに抱かれ静かに寝息を立てているサーナを見てから少し考えている。
「わかりました、赤ちゃんもいるようですし、どうぞご滞在ください。残念ながら村に宿はありませんが我が家に空き室がありますから、そちらをお使いください。ですが、一部屋しかありませんがよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。あたしたちは家族だし、いつも宿でも同じ部屋だし」
「そうですか、では部屋を用意いたしましょう」
ということで俺たちは無事に村への滞在を許されたのだった。
「なぁなぁ、あんたら旅をしてんだよな」
ここで少年、ヘイゲルが俺たちに何やらキラキラした目で向けてきた。
「ああ、まぁな。それがどうしたんだ」
「旅の話聞かせてくれよ」
この世界に娯楽はない。ヘイゲルも俺たちから旅の話を聞いて娯楽としたいのかもしれない。
「あっ、私も聞きたい。実は私たち、明日で12歳になるんですけど、そうしたら2人で旅をしようって話をしてて」
「こらこら、お前たちその話はまだちゃんと決着がついていないだろう」
「大丈夫だってじいちゃん。俺たちの強さ知ってんだろ」
「知ってはおるが、それはあくまで村ではの話だろう。村の外に行けばお前たちより強いものなどたくさんいるんだぞ」
「わかってるって、なっロリッタ」
「ええ、もちろん」
「なぁ、だから話聞かせてくれよ」
「まぁ、いいぜ話ぐらいならいくらでもな」
「おっ、やった」
それから、俺たちはヘイゲルとロリッタの2人にこれまで旅の話すをしていくのだった。その話を聞き2人は本当に目を輝かせていたのは言うまでもないだろう。
「これが年相応ってやつよね」
「悪かったな。中身おっさんで」
そんな2人の様子を見ていたシュンナがぽつりとそう言った。これは俺に対する当てつけだ。いくら見た目が小さくとも俺の中身は40過ぎのおっさん。一応童心は忘れていないが、2人のように目をキラキラさせるなんてことはない。
「……へぇ、あんたらすげぇな。それってすげぇつえぇんだろ」
「普通はな。でも俺たちにかかっちゃ簡単だったぜ」
ダンクスはヘイゲルに合わせているのか、自慢げに話している。ああいうところはさすがとおもえる。人見知りがある俺にはできないことだ。でも、なんだろうな、不思議なんだが、ヘイゲルとロリッタを見ているとなんとも懐かしさを覚えるんだよな。それに、2人相手だと人見知り特有の緊張というか恐怖というかそういったことを感じない。これはシュンナやダンクス相手にした時と似ている。
「あぎゃぁ、おぎゃぁ」
「あらら、そうかそろそろか。サーナちゃん、おなかすいたかな」
とここでサーナが空腹を訴えてきた。
「ええと、あたしちょっとこの子に……」
「ふむ、では部屋へ案内しよう。コニー」
村長も悟ったのかすぐにシュンナを近くにいた奥さんに案内を頼んだ。赤ん坊であるサーナの空腹を満たすには通常授乳が必要になる。家族であれば側にいても問題ないかもしれないが、村長などの他人がいる中では無理があるからな。尤も、俺たちの場合はちょっと違うが、それでも他人には見せられないのは確かだ。
「それじゃ、あたしちょっと行ってくる」
「おう」
シュンナはそう言ってサーナを抱きかかえてコニーさんの後をついて2階へ上がっていったわけだが、そのあとをロリッタがじっと見つめていた。
「いいなぁ、赤ちゃん」
なにかうらやましそうにしている。まぁ、12歳とはいえ女の子、赤ん坊が好きなんだろう。
「お前、ほんと赤ん坊好きだよな」
「うん、だってかわいいじゃない。それに赤ちゃんを見てるとなんだか、ここら辺がムズムズするのよ」
そう言ってロリッタは自身の胸に手を当てる。もしかしたらロリッタは母性が強いのかもしれないな。だから、もし将来子供ができたら、変な心配が出てきそうだ。どんな子供でも甘やかしそうな、そんな危険性が……。
「まぁ、それは分かるがな。俺としてはなんかちょっと嫌な気分になるんだけど、でもまっ、別に嫌いではないな」
「でしょ」
ヘイゲルもなんだかんだといって赤ん坊は結構好きらしい。まぁ、俺たちが村にいる間はサーナをかわいがってくれればいいさ。
「そんなに、気になるんなら俺たちが村にいる間、サーナと遊んでやってくれ」
「いいんですか?」
ロリッタが食い気味で聞いてきた。
「ああいいぜ。なぁ、スニル」
「そうだな。むしろこっちから頼みたいぐらいだ」
「ありがとうございます」
本当にうれしそうにしているロリッタの表情を見ていると、なんだか妙な気分になるな。同じようにサーナをかわいがっていたポリーはどちらかというと妹を見るような眼でサーナを見ていたが、ロリッタはなんだか娘を見るような眼をしているんだよな。うーむ、わからん。と、そうこうしているうちに、シュンナがサーナを抱えて戻ってきた。
「ついでにおむつも変えておいたわ」
「お疲れ」
「あっ、あの……」
ロリッタがシュンナに向けて言いよどむ。
「どうしたの?」
「サーナと遊びたいそうだ」
「ああ、そういう、それじゃお願いしようかな」
「はい」
「抱き方わかる?」
「はい、わかります」
そう言ってロリッタはシュンナから受け取ったサーナを自然に抱き上げる。あれっ? 俺たちよりうまくない?
「へぇ、上手いのね。ロリッタちゃんこれまで赤ちゃんを抱っこしたことあるの」
「いえ、初めてです。でも、なぜかわかるんです」
ちょっと意味が分からないが、本能的なものだろうか。
それから、村人たちに歓迎されて、俺たちはその日アリナス村で過ごしたのだった。神様の贈り物って一体なんだろうか、それについてはまださっぱりわからない。
とまぁ、そんなこんなで翌日も、ロリッタはサーナと遊んだり世話をしたりと、心底楽しそうにしている。本当に赤ん坊が好きなんだな。そう思える光景だ。ちなみにヘイゲルもいつの間にか加わっている。そうして、昼を食べ、午後時間的に3時頃だろうか、まぁこの世界に3時のおやつなんてものはないんだけど、そんな小腹のすいてくる時間だ。
「うっ、うががぁぁぁぁ!!」
「いっ、うぎゃぁぁぁ!!!」
サーナと遊んでいたヘイゲルとロリッタが急に頭を抱えてもがきだした。
「お、おい、どうした?」
「ちょ、ちょっと、どうしたの、スニル、村長さん、村長さん呼んで!」
「どうした、一体なんの……ヘイゲル、ロリッタ、どうした?」
ちょっとしたパニックだが、ほんとどうしたんだ。俺までかなり焦っている。いや、そんなことより、鑑定、もしかしたらそれでわかるかもしれねぇ。そう思って俺はすぐに2人に対して鑑定をかけた。
「へぁ?!」
鑑定をしたところ変な声が出た。どういうことだ?! ちょっと意味が分からないんだけど……。
俺はさらに混乱の極みとなった。その理由は2人の名前。昨日鑑定をかけた時は、それぞれ〈ヘイゲル〉〈ロリッタ〉とだけ表示されていた。それは間違いない。しかし、今確認してみると、〈ヘイゲル=ヒュリック〉〈ロリッタ=ミリア〉となっていた。
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