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第09章 勇者召喚
06 公開返還
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パレードの末にようやくたどり着いた王城、そのとたんにどっと疲れた。
「やっと、終わったぁ」
「ははっ、全くだな。すげぇ疲れた」
「うんうん」
ポリーも疲れたようでぐったりしている。まぁ、俺もポリーももともと庶民、こんなこと疲れるに決まっている。
「テレスフィリア魔王陛下、ようこそお待ちしておりました」
重い腰を上げつつ馬車を降りると、そこにいた執事とメイドが深日かと頭を下げてきた。よく見ると執事はこの間も案内をしてくれた人だ。
「……世話になる」
相変わらずの人見知りを発動してしまう、砂金ではなりを潜めていたが、こうした場合は顔を出してくる。
「こちらへ、まずは謁見の間へお連れいたします」
「わかった」
前回来たときはまず控室に通されたが、今回は直接向かうようだ。
そうしてやってきた謁見の間、そこには前回同様多くの貴族が並ぶわけだが、その数は前回より少ない。先ほど執事から聞いたが、今回集まっている貴族はここ王都に常駐している領地を持たない者たちだけだそうだ。
なるほど、確かに周囲を見渡してみるが、ゾーリン村の領主でもあるレミフェリア辺境伯の姿がない。
「ようこそテレスフィリア王」
「ご無沙汰しておりますコルマベイント王」
まずは軽い挨拶を交わすが、もちろん挨拶はこれで終わらない。これだから王侯貴族は面倒だ。
とまぁ、それはいいとしてこれからが本題である。
「さて、テレスフィリア王返還についてだが1つよろしいか?」
「なんでしょう」
「此度の返還については我が民の前で行いたいのだ」
「それはどういう?」
「ふむ、先日貴国との国交を樹立させたことは宣言した。しかし、まだ奴隷法改正については公表していないのだ。そこで今回返還に伴いこれの発表をしたいと考えている」
奴隷法の改正というのは、今までに記載されていなかった獣人族エルフ、ドワーフに関する追記となる。つまり彼らに関しても人族と同様の扱いになるというわけで、犯罪や借金をしていないものを奴隷とすることを禁ずるというものだ。まぁ、どっちみち俺が改造した奴隷の首輪を使えばそもそも奴隷にならないんだけどね。
「改正の公表とともに返還、つまりこの改正を確かなものとするためですね」
「そうだ、そして同時に現在貴国の民に対して不当な扱いをしている者たちに、返還を促すためでもある」
確かに国王が率先して返還を行えば民が従わないわけにはいかないだろう。これが日本のような民主主義であれば、たとえトップである総理大臣が行っても効果は薄い、しかし絶対君主制であるこの国では効果が高い。
「わかりました。私としてはありがたいこと、ぜひお願いしたい」
「ふむ、では明日返還式を行いたいと思う」
こうして、急遽明日王都住人の前で公開で奴隷にされた者たちの返還を行うこととなった。
それからいくらかの話をしたのち俺たちはそろって控室へとやってきたのだった。
「……というわけで明日返還となった」
謁見の間にはいなかったアレウとエンリックに事の経緯を説明した。
「なるほど道理ですな」
「ええ、ですが事前に確認をしたいのですが、それについては?」
俺にとっては奴隷にされた被害者たちは国民の家族でしかないが、アレウとエンリックにとっては同胞であったり身内であったり、はたまた知り合いであったりするわけだ。そんな彼らに今すぐにでも会いたいと思うのは必然だ。
「大丈夫だ。尤もこれも明日になるが、返還式は午後だからな。午前中に会えるようにしてもらっている。といっても民衆に奴隷の返還というのを見せつけるために奴隷の首輪の解除はできないが」
「それは仕方ないでしょう」
「ええ、私もそう考えます。尤もできることなら今すぐにでも解放したいというのが本音ですが」
「そうだな。それ言ついては俺も同意だ」
元奴隷としてもすぐにでも解放してやりたいという思いはある。
「確か陛下も、もとは?」
「まぁな。だからこそ彼らの気持ちもわかるというものだ。あれは決していい気分のするものではないからな」
奴隷の首輪が付いてていい気分のする奴がいるわけがないけど
「とにかくだ。今できることとして、まずは明日の返還式で演説をする羽目になったからその原稿を考えたい。知って通り俺はそういうのが苦手だからな」
「それでしたらお任せください」
というわけでさっそく俺たちは明日の演説原稿を話し合ったのだった。
「まずは言いたいことを上げていきましょう」
「ああ、そうだなぁ。言った方がいいのはやっぱり俺がこの国の出身であることか、あとは魔族が安全nあ種族であることだよな」
「はい、それでよろしいかと」
「陛下、我らに対する認識についてはどうされますか?」
草案を考えている中、エンリックが言う認識というのは当然キリエルタ教が教える彼らの前世が重罪を犯したというものだ。
「それについては、まだ早いだろ。枢機卿がまだ教皇に話していない以上、おいそれというわけにはいかない。まぁ、尤もキリエルタ教がそれを認めるかどうかとなるとわからないが」
コルマベイント王によると枢機卿は先日王都を発ち聖教国へと向かった。そこでようやく教皇に他種族に対する真実を話すことになるわけだが、長年信じ切っていたことをいきなり違うといわれてそれを信じるかといわれると疑問だ。間違いなく地球人なら信じないだろう。下手したら枢機卿は宗教裁判にでもかけられる可能性すらある。もちろん俺は事前に枢機卿にこのことを忠告している。
「枢機卿殿ですか、私も少し会話をしましたが、彼女であれば安心です。ですが、やはり陛下の男馬を聞き心配にはなります」
「何か考えがあるみたいだけどな。まっ、とにかくだ種族のことについてはその殻でいいだろう。今回はあくまで我が国の民として考えたい。それと、俺たちが使う人族という呼称もやめておこう、キリエルタ教にとって人族こそが人間だからな」
「かしこまりました。では、そのように原稿を書きましょう」
という会話をしながら次々に草案を作っていく。
こうしてできた草案をさらに詰めていき、夕方になるころにはようやく原稿が出来上がったのだった。かなり時間を費やしたが、そのおかげかとんでもなく長い原稿が出来上がった。下手したら校長先生よりも長いものになるだろう。聞く側としも話す側としてもこんな長い話は嫌なんだが、短いとそれはそれでだめらしい。こういうのは長く回りくどく、それでもわかりやすく話す必要があるらしい。ていうか、普段ほとんどしゃべらない俺がこんな長ったらしい原稿を話しきることができるんだろうか。
誰か変わってくれ……
そう思うも魔王である俺じゃなければならないし、俺が話すことを前提とした原稿のために代理を立てるわけにはいかない。
「明日で喉がつぶれなきゃいいけど」
思わずため息を漏らしてしまった。
翌日、朝飯を食った俺たちはさっそく執事に連れられて返還予定の者たちの元へと向かった。
「こちらにございます」
「ああ、すまないな」
「もったいなきお言葉にございます」
俺が礼を言うと執事はそういいつつも扉をノックした。すると中から返事したことで俺たちは部屋の中へと入っていったのだった。
「テレスフィリア魔王陛下をお連れしました」
「失礼する」
部屋の中に入るとそこには数人の騎士やメイド、その中には獣人族が22人とエルフが3人周囲をにらみつけるようにたたずんでいる。今は奴隷の首輪があるから立っているだけだが、もしなかったら襲い掛かりそうな雰囲気だ。
「おおっ、んっ! ナーナ、それにボルグ」
獣人族たちを見たエンリックがそういって叫んだ。どうやら知っている者がいたようだ。その証拠にそう言われた者たちだろう2人の男女がこちらを見て目を丸くしている。
「知り合いか?」
「はい、妹の子です」
なんと2人はエンリックの甥と姪なんだそうだ。
「そいつはよかった。さて、話をしても?」
「もちろんでございます」
一応執事に確認をとったのち俺たちは彼らに近づいていく。
「ナーナ、ボルグ、ああ、よかった。まさかこうして再び会えるとは」
「お、伯父上」
「伯父さま、どうして」
「迎えに来たのだ。お前たちだけではない、ここにいる皆を迎えに来た」
「えっ、それじゃ私たち、帰れるんですか?」
「そうだ。本日午後お前たちの返還を大々的に行うが、それを終えれば故郷に帰れる」
「あ、ああ」
「ほんとか、ほんとなのか?」
故郷に帰れると知り、この場にいる被害者たちが歓喜の声を上げた。
「そうだ。それもすべてこちらにおられる魔王陛下のおかげだ」
「マオウ?」
「伯父さま、魔王って、魔族の王様ってことですよね」
「そうだ。こちらはスニルバルド陛下、人族ではあるがわれら獣人族の英雄にして、魔族から魔王の称号を得た方だ。そして、今回お前たちのために尽力してくださった」
「うそだろっ、だって、そいつガキじゃねぇかよ」
エンリックの言葉でもみんな信じられないようだが、これは仕方ない俺は人族でありどう見ても子供だからな。そんな奴がいきなり魔王だといわれても信じられないだろう。俺だって彼らの立場だったら信じないと思う。まぁ、俺の場合めったに人をそもそも信じないんだけどな。
「残念ながら真実だ。俺が獣人族から英雄といわれているのも、魔族から魔王と呼ばれているのもな。それと、今現在アベイルを中心都市としたエルフ族ドワーフ族、魔族はすべて俺が納める国、テレスフィリア魔王国の国民となる」
「その通りだ、我らエルフもまた陛下を魔王様とあがめている」
俺の言葉にアレウもまた太鼓判を押したことでエルフたちもまた目を丸くしている。
「とにかく、お前たちはこれで故郷に帰れる。それがすべてだ」
まだ何か言いたそうな者たちを前にエンリックがそういった。
「だったら、早く帰りたいです。こんなとこすぐに離れたい」
絞り出すように1人の獣人少女が言った。その瞬間ほかの者たちも一斉に帰りたいコールを始める。
「うむ、そうしたいのはやまやまだが、今すぐというわけにはいかない」
「どうしてですか?!」
叫ぶように誰かが言った。やっと帰れると思ったら、まだ待てという叫びたくもな牢だろう。
「お前たちはこれからここコルマベイント王都で、民衆の前で返還されることになっている。帰れるのはそのあととなる」
「なんだよそれ」
「俺たちは見世物かよ」
人前に出ると聞いてそう憤慨する被害者たち。
「そうではない。これにはちゃんとした意味がある。確かにお前たちとしてはすぐにでも帰りたいと思うだろう。私たちも一刻でも早くお前たちを家族の元へと返したい。しかし、民衆の前で王自らお前たちを陛下に返還することで、今現在不当な扱いを受けている同胞たちが返還されやすくなる。そうは思わないか」
この返還式を行うことで民衆たちに王が返したのに、自分たちは返さないのはまずいと思わせるのが目的だ。
「……」
アレウの説明を受けた被害者たちは黙っていしまった。彼らも返還式の意味というものを理解できたのだろう。
「返還式が終わればいったんお前たちの所有は俺もしくはアレウかエンリックになる。それは選んでくれてかまわない。尤も、テレスフィリアにつき次第その首輪は外すから意味はないが」
「えっ!」
「は、ずす?」
奴隷の首輪を外しと聞いて戸惑う被害者たち、まぁ、一度付けたら二度と外せないのが当たり前だからな。
「それができるからこそ魔王様なのだ。実際陛下は多くの者たちの首輪を外している。そして、私の娘レニアはわかるか?」
アレウがその場にいたエルフ被害者たちを見て尋ねると、彼女たちはうなずいた。
「お前たちも知っての通りレニアは奴隷となっていた。しかし、軍善にもコルマベイント王が所有しており、先日私たちのもとに返されたのだ。その際陛下がすぐに首輪を外してくれた」
「ほ、本当に外れるの?」
「そうだ。だからもう少し、もう少しだけ待ってほしい」
アレウがそういったことで、被害者たちは一様に顔を喜色に染めた。
午後となり、俺たちはそろって王都広場にやってきていた。これからここで返還式を執り行うことになっている。
「鎮まれ! これより国王陛下のお言葉がある」
エラそうな騎士がそういって集まった民衆を黙らせると、騎士の後ろからコルマベイント王が顔を出す。
「宣言する。本日より奴隷法を改正し、獣人、エルフ、ドワーフの所有を禁じる」
コルマベイント王はそう宣言し、その後その理由についても説明しだす。つまり新たな国交を結んだテレスフィリアの民だからだということだ。そして最後に俺の紹介をしてから話を締めたのだった。
「今しがたコルマベイント王より紹介を受けたテレスフィリア魔王国初代魔王スニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアである。魔王ということからわかるように、皆が恐れる魔族の王だ。しかし、私はここコルマベイント出身であり魔族ではない。ここで簡単にではあるが魔王となった経緯を話そう……」
それから俺は王都の民衆に旅に出たことから、その結果として魔王の称号を得たことを話した。
「以上となる。また、魔族についてだが、これは多くの者たちが誤解をしており……」
今度は魔族の真実、邪悪な存在ではないということ、先代魔王が行ったことは人間ならおかしくないことだ。
「事実、現在ここより北東に位置する帝国は世界を手に入れようと周囲に派兵している。つまり先代魔王と同じことをしている。もちろんかのものが行ったことは許されることではないだろう。しかし、彼らはすでに召喚された勇者によって討伐され、現在我が国の民である魔族たちはその際の非戦闘員の生き残り、彼らにはすでに戦う力はほとんどなく、最も魔法に長けたものが魔王という規定に合致するものすらいなかった。だからこそ私が魔王となった。そして、先も言ったように私はここコルマベイント王国出身、つまりはここは故国でもある。そのような場所に引く弓など我らには存在しないと理解してもらいたい」
といったようなことを長々と話していった。これで理解してもらえるかどうかはわからない。しかし、ついこの間まで俺もお前たちと同じ存在であったということは伝わったと思う。その証拠に民衆が少しだけ沸いたからな。
とまぁこうして俺のあいさつは終え、ついに拉致被害者たちの返還式に移行することとなった。
「これより、国王陛下による我が国で不当な扱いを受けていたテレスフィリア魔王国の民の返還を行う」
騎士がそういうと、コルマベイント王とその後ろに午前中に会った拉致被害者たちがずらっと並んだ。
「テレスフィリア魔王陛下、こちらへ」
騎士に促されてコルマベイント王の前に立つ。
「テレスフィリア魔王、長らく貴国の民を不当に扱っていたことここに深く、深く詫びる。そして、ごく一部ではあるが獣人22名、エルフ3名ここに貴国へ返還いたす」
コルマベイント王が頭を下げるわけではないが詫びの言葉を述べる。それを見た民衆は衝撃を受けたことだろう。それというのも通常国王たるものが詫びの言葉を述べること自体がないからだ。
「詫びの言葉、ありがたく頂戴します。そして、少ないとはいえ素早い対応痛み入ります」
本来ならもっと多くの民を返せと言いたいが、それでも国交を結んでまだ間もないというのにこうして変換してくれたことは素直にありがたい。
こうして、不当に拉致され奴隷とされた者たちの一部がテレスフィリアに返還されたのであった。
「やっと、終わったぁ」
「ははっ、全くだな。すげぇ疲れた」
「うんうん」
ポリーも疲れたようでぐったりしている。まぁ、俺もポリーももともと庶民、こんなこと疲れるに決まっている。
「テレスフィリア魔王陛下、ようこそお待ちしておりました」
重い腰を上げつつ馬車を降りると、そこにいた執事とメイドが深日かと頭を下げてきた。よく見ると執事はこの間も案内をしてくれた人だ。
「……世話になる」
相変わらずの人見知りを発動してしまう、砂金ではなりを潜めていたが、こうした場合は顔を出してくる。
「こちらへ、まずは謁見の間へお連れいたします」
「わかった」
前回来たときはまず控室に通されたが、今回は直接向かうようだ。
そうしてやってきた謁見の間、そこには前回同様多くの貴族が並ぶわけだが、その数は前回より少ない。先ほど執事から聞いたが、今回集まっている貴族はここ王都に常駐している領地を持たない者たちだけだそうだ。
なるほど、確かに周囲を見渡してみるが、ゾーリン村の領主でもあるレミフェリア辺境伯の姿がない。
「ようこそテレスフィリア王」
「ご無沙汰しておりますコルマベイント王」
まずは軽い挨拶を交わすが、もちろん挨拶はこれで終わらない。これだから王侯貴族は面倒だ。
とまぁ、それはいいとしてこれからが本題である。
「さて、テレスフィリア王返還についてだが1つよろしいか?」
「なんでしょう」
「此度の返還については我が民の前で行いたいのだ」
「それはどういう?」
「ふむ、先日貴国との国交を樹立させたことは宣言した。しかし、まだ奴隷法改正については公表していないのだ。そこで今回返還に伴いこれの発表をしたいと考えている」
奴隷法の改正というのは、今までに記載されていなかった獣人族エルフ、ドワーフに関する追記となる。つまり彼らに関しても人族と同様の扱いになるというわけで、犯罪や借金をしていないものを奴隷とすることを禁ずるというものだ。まぁ、どっちみち俺が改造した奴隷の首輪を使えばそもそも奴隷にならないんだけどね。
「改正の公表とともに返還、つまりこの改正を確かなものとするためですね」
「そうだ、そして同時に現在貴国の民に対して不当な扱いをしている者たちに、返還を促すためでもある」
確かに国王が率先して返還を行えば民が従わないわけにはいかないだろう。これが日本のような民主主義であれば、たとえトップである総理大臣が行っても効果は薄い、しかし絶対君主制であるこの国では効果が高い。
「わかりました。私としてはありがたいこと、ぜひお願いしたい」
「ふむ、では明日返還式を行いたいと思う」
こうして、急遽明日王都住人の前で公開で奴隷にされた者たちの返還を行うこととなった。
それからいくらかの話をしたのち俺たちはそろって控室へとやってきたのだった。
「……というわけで明日返還となった」
謁見の間にはいなかったアレウとエンリックに事の経緯を説明した。
「なるほど道理ですな」
「ええ、ですが事前に確認をしたいのですが、それについては?」
俺にとっては奴隷にされた被害者たちは国民の家族でしかないが、アレウとエンリックにとっては同胞であったり身内であったり、はたまた知り合いであったりするわけだ。そんな彼らに今すぐにでも会いたいと思うのは必然だ。
「大丈夫だ。尤もこれも明日になるが、返還式は午後だからな。午前中に会えるようにしてもらっている。といっても民衆に奴隷の返還というのを見せつけるために奴隷の首輪の解除はできないが」
「それは仕方ないでしょう」
「ええ、私もそう考えます。尤もできることなら今すぐにでも解放したいというのが本音ですが」
「そうだな。それ言ついては俺も同意だ」
元奴隷としてもすぐにでも解放してやりたいという思いはある。
「確か陛下も、もとは?」
「まぁな。だからこそ彼らの気持ちもわかるというものだ。あれは決していい気分のするものではないからな」
奴隷の首輪が付いてていい気分のする奴がいるわけがないけど
「とにかくだ。今できることとして、まずは明日の返還式で演説をする羽目になったからその原稿を考えたい。知って通り俺はそういうのが苦手だからな」
「それでしたらお任せください」
というわけでさっそく俺たちは明日の演説原稿を話し合ったのだった。
「まずは言いたいことを上げていきましょう」
「ああ、そうだなぁ。言った方がいいのはやっぱり俺がこの国の出身であることか、あとは魔族が安全nあ種族であることだよな」
「はい、それでよろしいかと」
「陛下、我らに対する認識についてはどうされますか?」
草案を考えている中、エンリックが言う認識というのは当然キリエルタ教が教える彼らの前世が重罪を犯したというものだ。
「それについては、まだ早いだろ。枢機卿がまだ教皇に話していない以上、おいそれというわけにはいかない。まぁ、尤もキリエルタ教がそれを認めるかどうかとなるとわからないが」
コルマベイント王によると枢機卿は先日王都を発ち聖教国へと向かった。そこでようやく教皇に他種族に対する真実を話すことになるわけだが、長年信じ切っていたことをいきなり違うといわれてそれを信じるかといわれると疑問だ。間違いなく地球人なら信じないだろう。下手したら枢機卿は宗教裁判にでもかけられる可能性すらある。もちろん俺は事前に枢機卿にこのことを忠告している。
「枢機卿殿ですか、私も少し会話をしましたが、彼女であれば安心です。ですが、やはり陛下の男馬を聞き心配にはなります」
「何か考えがあるみたいだけどな。まっ、とにかくだ種族のことについてはその殻でいいだろう。今回はあくまで我が国の民として考えたい。それと、俺たちが使う人族という呼称もやめておこう、キリエルタ教にとって人族こそが人間だからな」
「かしこまりました。では、そのように原稿を書きましょう」
という会話をしながら次々に草案を作っていく。
こうしてできた草案をさらに詰めていき、夕方になるころにはようやく原稿が出来上がったのだった。かなり時間を費やしたが、そのおかげかとんでもなく長い原稿が出来上がった。下手したら校長先生よりも長いものになるだろう。聞く側としも話す側としてもこんな長い話は嫌なんだが、短いとそれはそれでだめらしい。こういうのは長く回りくどく、それでもわかりやすく話す必要があるらしい。ていうか、普段ほとんどしゃべらない俺がこんな長ったらしい原稿を話しきることができるんだろうか。
誰か変わってくれ……
そう思うも魔王である俺じゃなければならないし、俺が話すことを前提とした原稿のために代理を立てるわけにはいかない。
「明日で喉がつぶれなきゃいいけど」
思わずため息を漏らしてしまった。
翌日、朝飯を食った俺たちはさっそく執事に連れられて返還予定の者たちの元へと向かった。
「こちらにございます」
「ああ、すまないな」
「もったいなきお言葉にございます」
俺が礼を言うと執事はそういいつつも扉をノックした。すると中から返事したことで俺たちは部屋の中へと入っていったのだった。
「テレスフィリア魔王陛下をお連れしました」
「失礼する」
部屋の中に入るとそこには数人の騎士やメイド、その中には獣人族が22人とエルフが3人周囲をにらみつけるようにたたずんでいる。今は奴隷の首輪があるから立っているだけだが、もしなかったら襲い掛かりそうな雰囲気だ。
「おおっ、んっ! ナーナ、それにボルグ」
獣人族たちを見たエンリックがそういって叫んだ。どうやら知っている者がいたようだ。その証拠にそう言われた者たちだろう2人の男女がこちらを見て目を丸くしている。
「知り合いか?」
「はい、妹の子です」
なんと2人はエンリックの甥と姪なんだそうだ。
「そいつはよかった。さて、話をしても?」
「もちろんでございます」
一応執事に確認をとったのち俺たちは彼らに近づいていく。
「ナーナ、ボルグ、ああ、よかった。まさかこうして再び会えるとは」
「お、伯父上」
「伯父さま、どうして」
「迎えに来たのだ。お前たちだけではない、ここにいる皆を迎えに来た」
「えっ、それじゃ私たち、帰れるんですか?」
「そうだ。本日午後お前たちの返還を大々的に行うが、それを終えれば故郷に帰れる」
「あ、ああ」
「ほんとか、ほんとなのか?」
故郷に帰れると知り、この場にいる被害者たちが歓喜の声を上げた。
「そうだ。それもすべてこちらにおられる魔王陛下のおかげだ」
「マオウ?」
「伯父さま、魔王って、魔族の王様ってことですよね」
「そうだ。こちらはスニルバルド陛下、人族ではあるがわれら獣人族の英雄にして、魔族から魔王の称号を得た方だ。そして、今回お前たちのために尽力してくださった」
「うそだろっ、だって、そいつガキじゃねぇかよ」
エンリックの言葉でもみんな信じられないようだが、これは仕方ない俺は人族でありどう見ても子供だからな。そんな奴がいきなり魔王だといわれても信じられないだろう。俺だって彼らの立場だったら信じないと思う。まぁ、俺の場合めったに人をそもそも信じないんだけどな。
「残念ながら真実だ。俺が獣人族から英雄といわれているのも、魔族から魔王と呼ばれているのもな。それと、今現在アベイルを中心都市としたエルフ族ドワーフ族、魔族はすべて俺が納める国、テレスフィリア魔王国の国民となる」
「その通りだ、我らエルフもまた陛下を魔王様とあがめている」
俺の言葉にアレウもまた太鼓判を押したことでエルフたちもまた目を丸くしている。
「とにかく、お前たちはこれで故郷に帰れる。それがすべてだ」
まだ何か言いたそうな者たちを前にエンリックがそういった。
「だったら、早く帰りたいです。こんなとこすぐに離れたい」
絞り出すように1人の獣人少女が言った。その瞬間ほかの者たちも一斉に帰りたいコールを始める。
「うむ、そうしたいのはやまやまだが、今すぐというわけにはいかない」
「どうしてですか?!」
叫ぶように誰かが言った。やっと帰れると思ったら、まだ待てという叫びたくもな牢だろう。
「お前たちはこれからここコルマベイント王都で、民衆の前で返還されることになっている。帰れるのはそのあととなる」
「なんだよそれ」
「俺たちは見世物かよ」
人前に出ると聞いてそう憤慨する被害者たち。
「そうではない。これにはちゃんとした意味がある。確かにお前たちとしてはすぐにでも帰りたいと思うだろう。私たちも一刻でも早くお前たちを家族の元へと返したい。しかし、民衆の前で王自らお前たちを陛下に返還することで、今現在不当な扱いを受けている同胞たちが返還されやすくなる。そうは思わないか」
この返還式を行うことで民衆たちに王が返したのに、自分たちは返さないのはまずいと思わせるのが目的だ。
「……」
アレウの説明を受けた被害者たちは黙っていしまった。彼らも返還式の意味というものを理解できたのだろう。
「返還式が終わればいったんお前たちの所有は俺もしくはアレウかエンリックになる。それは選んでくれてかまわない。尤も、テレスフィリアにつき次第その首輪は外すから意味はないが」
「えっ!」
「は、ずす?」
奴隷の首輪を外しと聞いて戸惑う被害者たち、まぁ、一度付けたら二度と外せないのが当たり前だからな。
「それができるからこそ魔王様なのだ。実際陛下は多くの者たちの首輪を外している。そして、私の娘レニアはわかるか?」
アレウがその場にいたエルフ被害者たちを見て尋ねると、彼女たちはうなずいた。
「お前たちも知っての通りレニアは奴隷となっていた。しかし、軍善にもコルマベイント王が所有しており、先日私たちのもとに返されたのだ。その際陛下がすぐに首輪を外してくれた」
「ほ、本当に外れるの?」
「そうだ。だからもう少し、もう少しだけ待ってほしい」
アレウがそういったことで、被害者たちは一様に顔を喜色に染めた。
午後となり、俺たちはそろって王都広場にやってきていた。これからここで返還式を執り行うことになっている。
「鎮まれ! これより国王陛下のお言葉がある」
エラそうな騎士がそういって集まった民衆を黙らせると、騎士の後ろからコルマベイント王が顔を出す。
「宣言する。本日より奴隷法を改正し、獣人、エルフ、ドワーフの所有を禁じる」
コルマベイント王はそう宣言し、その後その理由についても説明しだす。つまり新たな国交を結んだテレスフィリアの民だからだということだ。そして最後に俺の紹介をしてから話を締めたのだった。
「今しがたコルマベイント王より紹介を受けたテレスフィリア魔王国初代魔王スニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアである。魔王ということからわかるように、皆が恐れる魔族の王だ。しかし、私はここコルマベイント出身であり魔族ではない。ここで簡単にではあるが魔王となった経緯を話そう……」
それから俺は王都の民衆に旅に出たことから、その結果として魔王の称号を得たことを話した。
「以上となる。また、魔族についてだが、これは多くの者たちが誤解をしており……」
今度は魔族の真実、邪悪な存在ではないということ、先代魔王が行ったことは人間ならおかしくないことだ。
「事実、現在ここより北東に位置する帝国は世界を手に入れようと周囲に派兵している。つまり先代魔王と同じことをしている。もちろんかのものが行ったことは許されることではないだろう。しかし、彼らはすでに召喚された勇者によって討伐され、現在我が国の民である魔族たちはその際の非戦闘員の生き残り、彼らにはすでに戦う力はほとんどなく、最も魔法に長けたものが魔王という規定に合致するものすらいなかった。だからこそ私が魔王となった。そして、先も言ったように私はここコルマベイント王国出身、つまりはここは故国でもある。そのような場所に引く弓など我らには存在しないと理解してもらいたい」
といったようなことを長々と話していった。これで理解してもらえるかどうかはわからない。しかし、ついこの間まで俺もお前たちと同じ存在であったということは伝わったと思う。その証拠に民衆が少しだけ沸いたからな。
とまぁこうして俺のあいさつは終え、ついに拉致被害者たちの返還式に移行することとなった。
「これより、国王陛下による我が国で不当な扱いを受けていたテレスフィリア魔王国の民の返還を行う」
騎士がそういうと、コルマベイント王とその後ろに午前中に会った拉致被害者たちがずらっと並んだ。
「テレスフィリア魔王陛下、こちらへ」
騎士に促されてコルマベイント王の前に立つ。
「テレスフィリア魔王、長らく貴国の民を不当に扱っていたことここに深く、深く詫びる。そして、ごく一部ではあるが獣人22名、エルフ3名ここに貴国へ返還いたす」
コルマベイント王が頭を下げるわけではないが詫びの言葉を述べる。それを見た民衆は衝撃を受けたことだろう。それというのも通常国王たるものが詫びの言葉を述べること自体がないからだ。
「詫びの言葉、ありがたく頂戴します。そして、少ないとはいえ素早い対応痛み入ります」
本来ならもっと多くの民を返せと言いたいが、それでも国交を結んでまだ間もないというのにこうして変換してくれたことは素直にありがたい。
こうして、不当に拉致され奴隷とされた者たちの一部がテレスフィリアに返還されたのであった。
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転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
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