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第10章 表舞台へ
11 4か国会談
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新たな経済圏にウルベキナ王国を巻き込もうという手以南をしてみた。それというのもやはりウルベキナ王国は、奴隷狩りの最大の被害を受けているのにも関わらず、抗議文を提示するという消極的な方法しか取れない。
「シムサイトはタグルトゥス王国とかかわりが深いゆえにな」
「はい、私はあまり詳しくはわかりませんが、以前シムサイトに潜伏し調べた結果として、奴隷狩りの被害者たちの送付先にタグルトゥスの名が多くありました。そこでさらに調べた結果としてですが、シムサイトはタグルトゥスより軍事的な支援を始めいくらかな援助を受けているものと思われます」
これはサーナを救出後に村に過ごしていた時に、暇つぶしと嫌がらせとして幾度となく潜入していた際に知ったことだ。
「ええ、元々シムサイトを建国した商業組合はタグルトゥスにおいて起こった組織ですから、いうなれば商業組合とはタグルトゥス王国の一組織といっても過言ではありませんわ」
思っていた以上に深いつながりだった。
「もしウルベキナがシムサイトに戦を仕掛けたなら、タグルトゥスが黙っていないだろう」
そう、これが最大の問題。わかりやすく言うなら、シムサイトは日本みたいなものだよな。日本も自衛隊という防衛特化の存在はあるが彼らは軍ではない。そんな丸腰ともいえる日本に戦争を仕掛けた場合、安全保障条約に基づいてアメリカが出てくる。まぁ、だから日本にアメリカ軍の基地があるんだけどな。これはいうなれば日本から武器を奪った責任を取ってもらっているという形だが、シムサイトも似たようなもの、シムサイトも軍を持たない代わりに、有事の際にはタグルトゥスが軍を動かすことになっているからだ。
ここで、そのタグルトゥスの軍事力について説明すると、先ほどアメリカを例に挙げたように、この大陸においても最大級の国家となる。考えてみてほしい、シムサイトにふざけんなと喧嘩を仕掛けたら、いつの間にか大陸最大級の国家と戦争になっている。さて、これでウルベキナに勝ち目があるだろうか、答えは否となる。
「そうでしょう。しかし、戦争といっても何も軍事だけとは限りません。ここで仕掛けるのは経済戦争です」
「経済戦争?」
「はい、今現在シムサイトは各地に商業ギルドを設置し、巨大な経済圏を築いています」
現在ではコルマベイントやウルベキナもそれに含まれている。
「そこで、それに対抗する形で、我々で新たな経済圏を作り、シムサイトの力を削いでいくのです」
「しかし、どうやって?」
「それこそがフリーズドライをはじめとした保存食や、化粧品各種ですよ」
「ふむ、なるほど、確かにそれらを我々で独占すれば、巨万の富を得ることになるでしょう」
「うむ、しかしフリーズドライならまだしも化粧品となると、これはテレスフィリア王、貴国のものであろう」
コルマベイント王の疑問ももっともだ。確かに化粧品はテレスフィリアの特産品だから。
「実は化粧品の製造にはある地下資源を用いるのですが、我が国では産出量が少ないのです」
「まぁ、それではあまり製造ができないということですか?」
女王が悲壮な表情で言った。一回使用しただけでそこまでになるものなんだな。
「そうなります。ですがご安心を、実はドワーフたちの情報によりウルベキナ王国こそ、その地下資源を多く保有していることが分かっています」
「それはまことですか?」
女王は嬉しそうにしている。
「しかしテレスフィリア王、なぜドワーフがそのようなことを存じているのだ」
「ドワーフというものは以前もご説明した通り新たな技術や鉱石などを求め放浪します。それは人族の地であろうと関係なく世界中となるわけですが、その際に人族に見つかった者たちが奴隷として鍛冶屋にいるわけですが、中には当然うまく回避し故郷に戻ってくるものもおります。その者たちが各地の情報を集約させているのです」
いうなればドワーフの鉱石・技術マップといったところか。
「なるほど、それによりウルベキナにその地下資源があることを知ったというわけか、そしてそれを手に入れるための同盟か」
「はい、それにウルベキナにはエイルードがありますから」
「エイルード? それは一体?」
王とはいえさすがに他国の街までは知らないようだ。
「エイルードとは、ウルベキナの街の1つでして、料理の街として周辺では知られたところです。実際私もかの地へ赴き当時の料理屋すべてを回り、確かめたので間違いありません」
「ほぉ、料理の街とな。それは素晴らしい、いやなに我は食に目がなくてな」
「わたくしも興味がありますわ。さすがにすべてのというわけにはいきませんが」
娯楽の少ないこの世界において食というのは娯楽の一種であり、貴族の中には食にすべてを費やすものもいるとのことだ。残念ながらあまり食に興味のない俺にはわからない話だけど。
「魔王陛下はその街にもフリーズドライを作らせるつもりなのですね」
「その通りです。きっと最高のものができることでしょう」
「それは楽しみではあるな」
「ええ、ぜひとも食したいものです」
それからもさらに会談は続き、ぜひともウルベキナを仲間に引き入れようということになり解散となった。
コルマベイント、ブリザリアとの会談から一月が経過した。俺は相も変わらず魔王城にて議会に参加したり執務室で仕事をしている。
「スニル、ちょっと休憩にしたら」
執務をしているとポリーがメイドとともにやってきた。
「ああ、そうだな。こいつを片づけたら休むか」
考えてみたら朝からずっと執務をしていたから、確かに求刑は必要だな。
「ふぅ、これでよしっと」
ひと段落着いたところで、執務室の中央付近にあるソファーにすでに座っているポリーの正面に座った。
「最近また忙しくなった?」
「だな、ブリザリアとも交易を始めるからその準備が結構厄介だからな」
「恨みとかだよね」
「そうそう、ああいうのは根が深いからなぁ」
「そうだよねぇ」
「それにそろそろ、ウルベキナとも同盟を結ぶことになるだろうし」
「そろそろなんだ。大丈夫かな」
ポリーが心配そうにしている。
「問題ないだろう。あそこは今かなり窮地にいるからな。それに最近代替わりしてるし、王も若いから変化を受け入れやすいはずだ」
「新しい王様ってどんな人なんだろ」
「さぁな。見たことはあるけど、話したことはないからな」
「見たことあるんだ」
「いやいや、ポリーだって見たろ、ほら、料理大会で審査員してた王子がいただろ、あの人だよ」
「あれ? でもあの人って第二王子じゃなかったっけ」
「よく覚えてたな。そう、確かに第二王子なんだけど、先代の王が亡くなる直前、王太子だった第一王子が戦死してるんだ」
会談の際に俺も菱木になって聞いたところ、現在ウルベキナは北東部に隣接するバラキラ王国と仕掛けられた形で戦争をしている。その戦場に総大将として参加していた王太子が、なんと弓の流れ弾が運悪く刺さり治療の甲斐なく命をとしている。先代の王はまさにその悲劇とシムサイト問題が重なったことで心労が重なり病死したという話だ。
「なんか、可哀そうだね」
「だな。第二王子からしたらいきなり父親と兄を失ったわけだしな。だからこそこのタイミングで俺たちとの同盟を結ぶことを受け入れると思えるわけでもあるけどな」
「そっか」
「陛下、ご歓談中失礼いたします」
ポリーとウルベキナについて話していると、執事がやってきた。
「どうした?」
「はい、コルマベイント王陛下より書簡が届いております」
「おう、来たか、見せてくれ」
「はっ」
待ちに待った知らせが届いたようで、珍しくウキウキしながらそれを受け取った。
「なんて書いてあるの?」
俺が所感を呼んでいるとポリーが聞いてきたが、特に隠すような内容でもないので話す。
「コルマベイントにはウルベキナに使者を送ってもらっていたんだが、その使者からの知らせが届いて、ウルベキナも同盟に乗り気らしい。というわけでこれから準備してウルベキナに行ってくる」
「そう、気を付けてね」
「おう」
というわけで、俺はさっそく準備を整えてから、ブリザリアへ飛んだ。ちなみに同行者はジマリートとなっている。なぜかというと、事前の話し合いでブリザリアとコルマベイントが宰相を同行させるという話になり、なら俺も宰相と行きたいが、テレスフィリアに宰相はいない。というわけで似た立部である議長のジマリートを選んだというわけだ。それとブリザリアに向かう理由は、女王を拾っていくからだ。その後コルマベイント王も拾ってからウルベキナへ向かうというわけだ。
「これはこれはテレスフィリア魔王陛下、ようこそお越しくださいました」
「ご無沙汰しておりますブリザリア女王陛下、こちらは我が国で議長の座についておりますジマリートと申します」
「お初にお目にかかります女王陛下、お会いできて光栄に存じます」
ジマリートはそういって恭しく跪く。
「魔族というものは恐ろしいと教わってきましたが、こうして拝見する限り、わたくしたちと同じ人間であると痛感します」
ブリザリア女王には、当然魔族も人族も同じ人間であるということを話しているから、若干の緊張はあるようだが、対峙する分には問題ないようだ。まぁ、周囲はそうはいかないみたいで、騎士に至っては若い奴が剣を抜きかけている。
「どうやら、あまり長居はしない方がよさそうです。女王陛下準備の方は?」
「ふふっ、ええ、問題ありません。よろしくお願いいたしますわ」
ということで、俺は女王と宰相、あとは世話係や護衛騎士を連れてコルマベイントへ飛んだ。
そうして、コルマベイントでも王と宰相、メイドや近衛騎士を数名連れてウルベキナの王都へと飛んできたわけだ。
「しかし、何度経験したとしても信じられぬな。まさにここはウルベキナ王都ではるが」
「ええ、このように簡単に移動が可能とは」
コルマベイント王と女王は改めて”転移”のすごさを実感しているみたいだ。
「確かに便利な魔法ではありますが、これは私自身が一度赴いたことがある場所のみとなっていますからね。幸いというべきか、旅をしていた際にそれぞれの王都へは赴いておりましたからこのように来ることが出来たわけです」
「うむ、なるほどテレスフィリア王はほかにもどこかに?」
「いえ、実は旅をしていたのはそこまで長期間ではありませんから、王都となるとコルマベイント、ウルベキナ、シムサイト、ブリザリアといったところでしょうか、まぁ、シムサイトは王都ではなく首都ですが」
「しかし、魔王陛下、一度でも行ったことがある場所であれば自由に行き来が可能ということでしょうか?」
「はい可能です。また、行った場所と申しましたが、実はその周辺であれば可能となってしまいます。なので、旅のさなか王城に足を踏み入れていなくとも、こうして王城内に”転移”が可能となるわけです」
そう、実は俺たちはウルベキナ王都、ウリアルーカに存在している王城内に直接やってきている。もちろんウルベキナ王に許可は得ている。
「こ、これはこれは、コルマベイント王陛下、ブリザリア女王陛下、お待たせいたしまして申し訳ありません。ようこそお越しくださいました。えっと、そちらが?」
まさにダッシュでやってきましたと言わんばかりに息を切らしながら1人の初老の男がやってきて、コルマベイント王と女王に挨拶をしたが、当然俺にはない。なにせ俺がだれかわからないからな。
「新興国家テレスフィリア魔王国魔王、スニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアだ」
新しい国であることを強調しつつ自己紹介をした。
「こ、これは申し訳ありませんま、魔王陛下」
俺が名乗ったことで男は恭しく頭を下げる。
「気にする必要はない。それより案内頼めるか」
「はっ、ではこちらへ」
というわけで、ぞろぞろと初老の男の後をついていったのだった。
案内を受けてやってきたのは控室、ちなみに隣の部屋にコルマベイント王が案内され、その隣が女王の控室となっている。
「こちらでしばしお待ちください」
それから少しの間待っていると、再び先ほどの男が現れて王の準備が整ったので案内するというので俺とジマリートはそのあとに続いたのだった。そうして、やってきたのは謁見の間、3人の王の中で俺が一番若く王となってからも日が浅いため最初に案内されたようだ。まぁ、俺が到着後すぐに2人の王もやってきたが。
そうして、最後ウルベキナ王国国王が現れて謁見開始である。もちろんジマリートを始め宰相たちは跪き、俺たち3人の王はそのままだ。
「ご無沙汰しております。コルマベイント王陛下、ブリザリア女王陛下、そして、お初にお目にかかりますテレスフィリア魔王陛下、私はウルベキナ王国国王、キャリスポルト・ドエール・ガルド・ウルベキナ5世と申します」
コルマベイント王や女王とは顔なじみのようだが、俺は初めてという挨拶とともに、自己紹介をしてきた。これは、俺だけではなく王としては初めて会う2人に対してのものでもある。
「ご立派になられたな。ウルベキナ王、そして、まずは先代および兄君のご冥福をお祈りする」
「ありがとう存じます。コルマベイント王」
「本当に、以前お会いしたのは、まだ貴君が10の時でしたか、ご立派になられてさぞご先代もお喜びのことでしょう。そして、名君であらせられたご先代とお兄君のご冥福を」
「ありがとうございます。ブリザリア女王陛下、若輩者ですが今後もご指導をお願いします」
コルマベイント王と女王の挨拶が終わり、いよいよ俺の挨拶となる。
「お初にお目にかかりますウルベキナ王陛下、。テレスフィリア魔王国魔王、スニルバルド・ゾーリン。テレスフィリアと申します。見ての通り私もまた若輩であり未熟、御迷惑をおかけすることがあるやもしれんがご指導いただけたらと思います。また、ご先代と兄君のご冥福をお祈りいたします」
「ありがとうございます。魔王陛下とは年も近いと聞きます。そして私は近頃王となった身、王としては貴君が先輩となります故、こちらこそご指導を願います」
とまぁ、こうしてお互いの挨拶を終えたのであった。
「それでは会談の準備をいたします」
ウルベキナ王はそういうと、すぐさま執事たちやメイドが動き出し、あっという間に机などが用意され、まずは年長者であるコルマベイント王が座ったことでブリザリア女王、俺ときて最後、といってもほぼ俺と同時にウルベキナ王が座る。
「それではコルマベイント王国、ブリザリア王国、テレスフィリア魔王国、ウルベキナ王国の4か国首脳会談を始めさせていただきます」
ウルベキナ王の背後に控えているひげ面のおっさん、基ウルベキナ宰相がそう宣言したことで会談が始まったのだった。さて、これもまた正念場、出来ることならさっさと終わらせたいところだが、そうもいかないんだよなぁ。
「シムサイトはタグルトゥス王国とかかわりが深いゆえにな」
「はい、私はあまり詳しくはわかりませんが、以前シムサイトに潜伏し調べた結果として、奴隷狩りの被害者たちの送付先にタグルトゥスの名が多くありました。そこでさらに調べた結果としてですが、シムサイトはタグルトゥスより軍事的な支援を始めいくらかな援助を受けているものと思われます」
これはサーナを救出後に村に過ごしていた時に、暇つぶしと嫌がらせとして幾度となく潜入していた際に知ったことだ。
「ええ、元々シムサイトを建国した商業組合はタグルトゥスにおいて起こった組織ですから、いうなれば商業組合とはタグルトゥス王国の一組織といっても過言ではありませんわ」
思っていた以上に深いつながりだった。
「もしウルベキナがシムサイトに戦を仕掛けたなら、タグルトゥスが黙っていないだろう」
そう、これが最大の問題。わかりやすく言うなら、シムサイトは日本みたいなものだよな。日本も自衛隊という防衛特化の存在はあるが彼らは軍ではない。そんな丸腰ともいえる日本に戦争を仕掛けた場合、安全保障条約に基づいてアメリカが出てくる。まぁ、だから日本にアメリカ軍の基地があるんだけどな。これはいうなれば日本から武器を奪った責任を取ってもらっているという形だが、シムサイトも似たようなもの、シムサイトも軍を持たない代わりに、有事の際にはタグルトゥスが軍を動かすことになっているからだ。
ここで、そのタグルトゥスの軍事力について説明すると、先ほどアメリカを例に挙げたように、この大陸においても最大級の国家となる。考えてみてほしい、シムサイトにふざけんなと喧嘩を仕掛けたら、いつの間にか大陸最大級の国家と戦争になっている。さて、これでウルベキナに勝ち目があるだろうか、答えは否となる。
「そうでしょう。しかし、戦争といっても何も軍事だけとは限りません。ここで仕掛けるのは経済戦争です」
「経済戦争?」
「はい、今現在シムサイトは各地に商業ギルドを設置し、巨大な経済圏を築いています」
現在ではコルマベイントやウルベキナもそれに含まれている。
「そこで、それに対抗する形で、我々で新たな経済圏を作り、シムサイトの力を削いでいくのです」
「しかし、どうやって?」
「それこそがフリーズドライをはじめとした保存食や、化粧品各種ですよ」
「ふむ、なるほど、確かにそれらを我々で独占すれば、巨万の富を得ることになるでしょう」
「うむ、しかしフリーズドライならまだしも化粧品となると、これはテレスフィリア王、貴国のものであろう」
コルマベイント王の疑問ももっともだ。確かに化粧品はテレスフィリアの特産品だから。
「実は化粧品の製造にはある地下資源を用いるのですが、我が国では産出量が少ないのです」
「まぁ、それではあまり製造ができないということですか?」
女王が悲壮な表情で言った。一回使用しただけでそこまでになるものなんだな。
「そうなります。ですがご安心を、実はドワーフたちの情報によりウルベキナ王国こそ、その地下資源を多く保有していることが分かっています」
「それはまことですか?」
女王は嬉しそうにしている。
「しかしテレスフィリア王、なぜドワーフがそのようなことを存じているのだ」
「ドワーフというものは以前もご説明した通り新たな技術や鉱石などを求め放浪します。それは人族の地であろうと関係なく世界中となるわけですが、その際に人族に見つかった者たちが奴隷として鍛冶屋にいるわけですが、中には当然うまく回避し故郷に戻ってくるものもおります。その者たちが各地の情報を集約させているのです」
いうなればドワーフの鉱石・技術マップといったところか。
「なるほど、それによりウルベキナにその地下資源があることを知ったというわけか、そしてそれを手に入れるための同盟か」
「はい、それにウルベキナにはエイルードがありますから」
「エイルード? それは一体?」
王とはいえさすがに他国の街までは知らないようだ。
「エイルードとは、ウルベキナの街の1つでして、料理の街として周辺では知られたところです。実際私もかの地へ赴き当時の料理屋すべてを回り、確かめたので間違いありません」
「ほぉ、料理の街とな。それは素晴らしい、いやなに我は食に目がなくてな」
「わたくしも興味がありますわ。さすがにすべてのというわけにはいきませんが」
娯楽の少ないこの世界において食というのは娯楽の一種であり、貴族の中には食にすべてを費やすものもいるとのことだ。残念ながらあまり食に興味のない俺にはわからない話だけど。
「魔王陛下はその街にもフリーズドライを作らせるつもりなのですね」
「その通りです。きっと最高のものができることでしょう」
「それは楽しみではあるな」
「ええ、ぜひとも食したいものです」
それからもさらに会談は続き、ぜひともウルベキナを仲間に引き入れようということになり解散となった。
コルマベイント、ブリザリアとの会談から一月が経過した。俺は相も変わらず魔王城にて議会に参加したり執務室で仕事をしている。
「スニル、ちょっと休憩にしたら」
執務をしているとポリーがメイドとともにやってきた。
「ああ、そうだな。こいつを片づけたら休むか」
考えてみたら朝からずっと執務をしていたから、確かに求刑は必要だな。
「ふぅ、これでよしっと」
ひと段落着いたところで、執務室の中央付近にあるソファーにすでに座っているポリーの正面に座った。
「最近また忙しくなった?」
「だな、ブリザリアとも交易を始めるからその準備が結構厄介だからな」
「恨みとかだよね」
「そうそう、ああいうのは根が深いからなぁ」
「そうだよねぇ」
「それにそろそろ、ウルベキナとも同盟を結ぶことになるだろうし」
「そろそろなんだ。大丈夫かな」
ポリーが心配そうにしている。
「問題ないだろう。あそこは今かなり窮地にいるからな。それに最近代替わりしてるし、王も若いから変化を受け入れやすいはずだ」
「新しい王様ってどんな人なんだろ」
「さぁな。見たことはあるけど、話したことはないからな」
「見たことあるんだ」
「いやいや、ポリーだって見たろ、ほら、料理大会で審査員してた王子がいただろ、あの人だよ」
「あれ? でもあの人って第二王子じゃなかったっけ」
「よく覚えてたな。そう、確かに第二王子なんだけど、先代の王が亡くなる直前、王太子だった第一王子が戦死してるんだ」
会談の際に俺も菱木になって聞いたところ、現在ウルベキナは北東部に隣接するバラキラ王国と仕掛けられた形で戦争をしている。その戦場に総大将として参加していた王太子が、なんと弓の流れ弾が運悪く刺さり治療の甲斐なく命をとしている。先代の王はまさにその悲劇とシムサイト問題が重なったことで心労が重なり病死したという話だ。
「なんか、可哀そうだね」
「だな。第二王子からしたらいきなり父親と兄を失ったわけだしな。だからこそこのタイミングで俺たちとの同盟を結ぶことを受け入れると思えるわけでもあるけどな」
「そっか」
「陛下、ご歓談中失礼いたします」
ポリーとウルベキナについて話していると、執事がやってきた。
「どうした?」
「はい、コルマベイント王陛下より書簡が届いております」
「おう、来たか、見せてくれ」
「はっ」
待ちに待った知らせが届いたようで、珍しくウキウキしながらそれを受け取った。
「なんて書いてあるの?」
俺が所感を呼んでいるとポリーが聞いてきたが、特に隠すような内容でもないので話す。
「コルマベイントにはウルベキナに使者を送ってもらっていたんだが、その使者からの知らせが届いて、ウルベキナも同盟に乗り気らしい。というわけでこれから準備してウルベキナに行ってくる」
「そう、気を付けてね」
「おう」
というわけで、俺はさっそく準備を整えてから、ブリザリアへ飛んだ。ちなみに同行者はジマリートとなっている。なぜかというと、事前の話し合いでブリザリアとコルマベイントが宰相を同行させるという話になり、なら俺も宰相と行きたいが、テレスフィリアに宰相はいない。というわけで似た立部である議長のジマリートを選んだというわけだ。それとブリザリアに向かう理由は、女王を拾っていくからだ。その後コルマベイント王も拾ってからウルベキナへ向かうというわけだ。
「これはこれはテレスフィリア魔王陛下、ようこそお越しくださいました」
「ご無沙汰しておりますブリザリア女王陛下、こちらは我が国で議長の座についておりますジマリートと申します」
「お初にお目にかかります女王陛下、お会いできて光栄に存じます」
ジマリートはそういって恭しく跪く。
「魔族というものは恐ろしいと教わってきましたが、こうして拝見する限り、わたくしたちと同じ人間であると痛感します」
ブリザリア女王には、当然魔族も人族も同じ人間であるということを話しているから、若干の緊張はあるようだが、対峙する分には問題ないようだ。まぁ、周囲はそうはいかないみたいで、騎士に至っては若い奴が剣を抜きかけている。
「どうやら、あまり長居はしない方がよさそうです。女王陛下準備の方は?」
「ふふっ、ええ、問題ありません。よろしくお願いいたしますわ」
ということで、俺は女王と宰相、あとは世話係や護衛騎士を連れてコルマベイントへ飛んだ。
そうして、コルマベイントでも王と宰相、メイドや近衛騎士を数名連れてウルベキナの王都へと飛んできたわけだ。
「しかし、何度経験したとしても信じられぬな。まさにここはウルベキナ王都ではるが」
「ええ、このように簡単に移動が可能とは」
コルマベイント王と女王は改めて”転移”のすごさを実感しているみたいだ。
「確かに便利な魔法ではありますが、これは私自身が一度赴いたことがある場所のみとなっていますからね。幸いというべきか、旅をしていた際にそれぞれの王都へは赴いておりましたからこのように来ることが出来たわけです」
「うむ、なるほどテレスフィリア王はほかにもどこかに?」
「いえ、実は旅をしていたのはそこまで長期間ではありませんから、王都となるとコルマベイント、ウルベキナ、シムサイト、ブリザリアといったところでしょうか、まぁ、シムサイトは王都ではなく首都ですが」
「しかし、魔王陛下、一度でも行ったことがある場所であれば自由に行き来が可能ということでしょうか?」
「はい可能です。また、行った場所と申しましたが、実はその周辺であれば可能となってしまいます。なので、旅のさなか王城に足を踏み入れていなくとも、こうして王城内に”転移”が可能となるわけです」
そう、実は俺たちはウルベキナ王都、ウリアルーカに存在している王城内に直接やってきている。もちろんウルベキナ王に許可は得ている。
「こ、これはこれは、コルマベイント王陛下、ブリザリア女王陛下、お待たせいたしまして申し訳ありません。ようこそお越しくださいました。えっと、そちらが?」
まさにダッシュでやってきましたと言わんばかりに息を切らしながら1人の初老の男がやってきて、コルマベイント王と女王に挨拶をしたが、当然俺にはない。なにせ俺がだれかわからないからな。
「新興国家テレスフィリア魔王国魔王、スニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアだ」
新しい国であることを強調しつつ自己紹介をした。
「こ、これは申し訳ありませんま、魔王陛下」
俺が名乗ったことで男は恭しく頭を下げる。
「気にする必要はない。それより案内頼めるか」
「はっ、ではこちらへ」
というわけで、ぞろぞろと初老の男の後をついていったのだった。
案内を受けてやってきたのは控室、ちなみに隣の部屋にコルマベイント王が案内され、その隣が女王の控室となっている。
「こちらでしばしお待ちください」
それから少しの間待っていると、再び先ほどの男が現れて王の準備が整ったので案内するというので俺とジマリートはそのあとに続いたのだった。そうして、やってきたのは謁見の間、3人の王の中で俺が一番若く王となってからも日が浅いため最初に案内されたようだ。まぁ、俺が到着後すぐに2人の王もやってきたが。
そうして、最後ウルベキナ王国国王が現れて謁見開始である。もちろんジマリートを始め宰相たちは跪き、俺たち3人の王はそのままだ。
「ご無沙汰しております。コルマベイント王陛下、ブリザリア女王陛下、そして、お初にお目にかかりますテレスフィリア魔王陛下、私はウルベキナ王国国王、キャリスポルト・ドエール・ガルド・ウルベキナ5世と申します」
コルマベイント王や女王とは顔なじみのようだが、俺は初めてという挨拶とともに、自己紹介をしてきた。これは、俺だけではなく王としては初めて会う2人に対してのものでもある。
「ご立派になられたな。ウルベキナ王、そして、まずは先代および兄君のご冥福をお祈りする」
「ありがとう存じます。コルマベイント王」
「本当に、以前お会いしたのは、まだ貴君が10の時でしたか、ご立派になられてさぞご先代もお喜びのことでしょう。そして、名君であらせられたご先代とお兄君のご冥福を」
「ありがとうございます。ブリザリア女王陛下、若輩者ですが今後もご指導をお願いします」
コルマベイント王と女王の挨拶が終わり、いよいよ俺の挨拶となる。
「お初にお目にかかりますウルベキナ王陛下、。テレスフィリア魔王国魔王、スニルバルド・ゾーリン。テレスフィリアと申します。見ての通り私もまた若輩であり未熟、御迷惑をおかけすることがあるやもしれんがご指導いただけたらと思います。また、ご先代と兄君のご冥福をお祈りいたします」
「ありがとうございます。魔王陛下とは年も近いと聞きます。そして私は近頃王となった身、王としては貴君が先輩となります故、こちらこそご指導を願います」
とまぁ、こうしてお互いの挨拶を終えたのであった。
「それでは会談の準備をいたします」
ウルベキナ王はそういうと、すぐさま執事たちやメイドが動き出し、あっという間に机などが用意され、まずは年長者であるコルマベイント王が座ったことでブリザリア女王、俺ときて最後、といってもほぼ俺と同時にウルベキナ王が座る。
「それではコルマベイント王国、ブリザリア王国、テレスフィリア魔王国、ウルベキナ王国の4か国首脳会談を始めさせていただきます」
ウルベキナ王の背後に控えているひげ面のおっさん、基ウルベキナ宰相がそう宣言したことで会談が始まったのだった。さて、これもまた正念場、出来ることならさっさと終わらせたいところだが、そうもいかないんだよなぁ。
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主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
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