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第11章 戦争
17 西側諸国への対応
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那奈の参戦により教会への対応は大方決まったが、この先は俺ではなくアリシエーラ枢機卿はじめとした教会関係者の話であり、俺があまりかかわるべきではない。下手にかかわるとそれが枢機卿の足かせとなりえるからだ。
そんなわけで、俺は西側諸国に集中できるというわけだ。
「西側諸国への対応ですが、どうすればいいのか、意見などあればお聞かせ願えますか」
まずは3国の王たちの意見を聞くことにした。
「ふむ、難しい問題ではあるが」
「ええ、ですが結界がある以上、ある程度は持ちこたえることが出来るのでしょう?」
「はい、あの結界を敗れるのは大賢者のみであり、その大賢者も私がいる以上脅威ではありません。また、たとえ大賢者が結界を破った隙に兵が怒りこまれたとしても我が国の兵たちによって追い返すことが出来ます」
「でしたら、今しばらくは時間稼ぎをされてはいかがです。そうなればいずれ教会がアリシエーラ様によって掌握されれば」
ウルベキナ王の言う通り、教会がアリシエーラ枢機卿に掌握されれば、西側諸国も目的を失う可能性がある。
「しかし、現在の教会の主流は西側なのでしょう、姉上」
「その通りです。現在の教皇聖下であるコルブラース様は大陸西側の国、ハリアータルド王国の出身でありかの国の枢機卿でもありました」
そして、その取り巻きもまた同じく西側の出身者だそうだ。
「厄介ですわね」
ブリザリア女王の言う通りかなり厄介で、たとえアリシエーラ枢機卿が教皇になったとしてもその言うことを聞くとは思えず、下手したらそのまま俺の討伐に向かってくるかもしれない。
「魔王陛下、申し訳ありませんがなるべく西側の方々に犠牲を出さないようにしていただけませんか」
ここでアリシエーラ枢機卿からの頼みが入った。
「なぜでしょう?」
すでに敵対し、敵認定した西側に対してなぜ犠牲を出さないようにしなければならないのか?
「この戦いにおいて西側に犠牲が出れば、それこそ陛下の討伐という、旗を掲げることに疑問を抱くものが少なくなってしまいます」
「ふむ、犠牲が出ればその敵としてテレスフィリア王の討伐に意味を載せてしまうか」
「ええ、陛下を恨むものも出てきましょう。ですがもし、陛下が何の犠牲も出さなければ」
「そうなれば、テレスフィリア魔王陛下のお言葉に信ぴょう性が出ますわね」
「その通りです。ブリザリア女王陛下」
俺は常々安心安全な魔王であると公言している。そこに敵対しているからと人族を殺してしまえば、そこに偽りが生じてしまう。だからこそこちらは向こうに犠牲が出ないようし、その言葉の信頼を勝ち取る必要があるという。
ふむ、確かにそれは納得だな。いわゆる撃たれても撃つなという日本警察のスタンスで行けと言うわけだな。普通ならふざけるなといいたいところだが、元日本である俺にはごく当たり前のことだ。
「わかりました。しかし、ただ黙って、というわけにはいきませんから、ある程度は抵抗はさせてもらいます。尤も、それによる被害は最小限にとどめましょう」
「ありがとうございます」
俺の言う最小限というのは、本当の意味での最小限で、人死には出す気はないが、けが程度ならさせるつもりだ。それも、再起不能レベルの者にするつもりもない。
「では、それで、あとは兵ですが」
「もちろん我が国からは出しましょう、つい先日お助けいただきましたから、そのお返しです」
「ふむ、我が国も出す、何せ貴殿は我が国の民であったのだ。また、王家としての貸しもある。否やなどあろうはずがない」
「我が国も出しましょう。わが国にはいまだ貸しはありませんが、せっかく同盟を結んだのです。今後のためにもここで出さないという選択肢はありませんわ」
こうして、3国すべてが兵を出してくれることとなった。
それから具体的な話し合いをしていき、4か国会議は幕を閉じたのであった。
会議から3日後、俺は再び西側諸国の様子を見に現地へとやってきた。
「どうだ?」
「おう、スニルか、やっこさん相変わらずだぜ」
ダンクスの言うように結界の向こうでは大賢者が大魔法をぶっ放していた。
「いい加減無理だってあきらめて帰ってくれたらいいんだけどな」
俺だったら2・3発で帰るな。
「そこまでして俺たちを根絶やしにしたいんだろ」
「それが分からないよな」
魔族憎しというが、一万年も前のことを言われてもこちらも困るというものだ。
「んで、そっちは?」
「こっちは3国が兵を出してくれるそうだ。一応ダンクスがその総大将になるからな」
「おいおい、俺がか?」
「そりゃぁ、ダンクスはうちの総大将だから当然だろ」
「まじかぁ」
ダンクスはそういって肩を落とす。ダンクスは元騎士、といってもその地位は低く、見習いからようやく出たようなものであった。それが、今じゃ一国の軍の最高幹部なんだからどうしようもないな。
「あと、教会の方は枢機卿と那奈たちが担当することになったからな。こっちはそれが終わるまで時間稼ぎになる」
「那奈が、よく許可を出したな」
ダンクスにも俺が那奈たちにこうした戦争に参加させないことや、その経緯を話してある。
「そりゃぁ、こっちみたいな戦争にかかわらせるわけにはいかねぇけど、今回那奈たちがやるのは政戦だからな。これは向こうでも当たり前にあることだから、別に問題はないんだよ。それに本人がやる気だしな」
「そうなのか、よくわからねぇけど、まスニルがいいならいいか。それで、あとの2人もやんのか」
あとの2人とは麗香と孝輔姉弟のことだ。
「ああ、さすがに那奈だけってわけにもいかないだろ、というかあの姉弟がそれをさせると思うか」
「思わねぇな」
麗香は基本那奈を妹のようにかわいがっているし、孝輔は那奈の恋人でもある。その2人が那奈を危険かもしれないことを1人でさせるわけはない。
てなわけで、現在教会対応は、アリシエーラ枢機卿と伯母さん、麗香、孝輔、那奈、そして枢機卿と伯母さんの護衛として父さんと母さんが加わっている。
「ヒュリックとミリアが護衛か、でもよあの2人って子供じゃねぇか」
両親が護衛として参加すると話すとダンクスがそういって苦言を言った。確かに俺の両親といっても今現在は子供でしかない。そんな子供が護衛はちょっと無理がある。
「まぁ、確かにな。だから、助っ人でワイエノ小父さんとシエリル小母さんに頼んだんだよ」
「あの2人か、それなら問題ないな。でも、店はいいのか?」
ワイエノ小父さんたちは冒険者は引退しその冒険者向けの店をやっている。そして、そこで製造販売されているフリーズドライはとんでもなく売れている商品である。2人はその管理や販売などでかなり忙しい。そんな2人がどうして護衛に加わったのか。
「店はほかにも任せられる奴が増えたらしいし、なにより今はウルベキナでもフリーズドライが販売されてるし、何とか落ち着いているそうだ。それに、2人は父さんと母さんと組んでた2人だからな。久しぶりに組めるってことで喜んで協力してくれたよ」
これについては父さんと母さんも同じように喜んでいた。
「なるほどなぁ。まっ、あの2人が加わったのなら問題ないだろ」
そんなのんきに話をしている目の前では大賢者が幾度か目の大魔法を結界にぶつけていた。ほんと飽きずによくやるよ。
「ここまで来たし、とりあえず向こうにも顔出しておくか」
「おう、俺も行くぜ」
というわけで、せっかく現場に来たのだから、ちょっと西側諸国の連中に顔を見せて軽く挑発しておこうと思う。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「魔王!」
俺が姿を現すとその場にいた兵士たちが一斉に剣を抜く。
「相変わらずの敵意だな」
「殺気が痛てぇぐらいだな」
あいにくと俺には殺気を感じる能力が薄く、ダンクスほどは感じていない。それでも、多少は感じるので居心地はあまりよくはない。
「そろそろ、あきらめて帰る気はないか」
「黙れ、邪悪な魔王、出てきたことを後悔させてやる」
そう言っていきなり斬りかかってくる兵士たち。
「なんで、こいつらこんなに士気が高いんだ」
「いや、俺が聞きたいよ」
向かってくる兵士たちに嘆息しつつ結界を張る。
「くっ、結界は、卑怯な」
「いや、いきなり斬りかかった来る奴に言われたくないんだが、まぁいいや。そんなことより、何度も言うが俺は人族と争う気はないってことをいい加減理解してもらいたいんだが」
「黙れ、我らをたばかるきか」
兵士たちは全く聞く耳を持たず、さらに斬りかかってくる。ほんと、一体この士気は何なんだろうか、正直不気味ですらある。
「まっ、こんなもんか」
「だな。さっさと戻ろうぜ」
というわけでさっさと戻ることにした。
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「ふぅ、いつもいつもなんなんだろうなあいつら」
帰ってくるなりダンクスがそういってため息をつく。実はこれまでも幾度となくこうしてあちらと接触を図ってきた。しかし、連中は毎回同じ反応をしてくる。
「”洗脳”はされてないんだよな」
ダンクスが言う”洗脳”というのは闇魔法の1つで、これをかけられるとあんなふうになる。
「いや、何度か鑑定はしたけど、その様子はないな」
俺もダンクスの言うように”洗脳”を疑い何度か鑑定を使い確認してみた。
しかし、連中は誰一人”洗脳”状態ではなかった。
「それじゃ、なんなんだ」
「おそらくだが、いや、間違いなくこれは洗脳だな」
「ん? いや、今スニルが違うって」
「ああ、魔法の”洗脳”じゃなくて、違う洗脳だ」
俺が言った洗脳は地球でもよく聞いた宗教がらみのあれだ。おそらく西側諸国の連中はその状態にあると見て言いと思う。魔法ではないから鑑定でも表示が出ないと言ったところだ。
「しかし、そうなると厄介だな。一応麗香たちにも伝えておくか」
この洗脳が教会関係とすると、教会対応にもかかわってくるので麗香たちにも伝える必要がある。どうして麗香たちなのかというと、伯母さんや枢機卿に伝えたところで2人は魔法の”洗脳”は知っていても今回のような洗脳は知らない。逆に麗香たちなら洗脳のことはそれなりに分かっているはずだ。
というわけで、さっそくアベイルに戻り麗香たちへと伝えた。
「……というわけで、敵兵の様子があまりにもおかしい、おそらく大規模な洗脳を受けている可能性が高い」
「洗脳ですか? それって、魔法じゃなくて、ですよね」
「そうだ。鑑定でも洗脳状態ではなかったから、間違いないだろ」
「そ、それは、厄介ですね」
麗香を始め孝輔も那奈もしみじみという、日本人であれば洗脳がいかに厄介か知っているからな。
「この世界は魔法の”洗脳”があるから、洗脳という知識はないんだ。でも、経験則からどんなふうにすればいいかはわかっているのかもしれない」
一番厄介な点はこの洗脳を行っている奴が、洗脳であるという自覚がないという点だ。なにせ、知識がないんだからな。
「宗教ってやつは得てして洗脳に近いものだからな。ほら、地球でも昔キリスト今日が天動説を唱えていただろ」
「あっはい」
「あれって、誰もそれが正しいという証拠もなく真実であると信じ切っていた。だから地動説を唱えたガリレオがさんざんな目にあったわけだが、あれも洗脳の一種だろ。それと同じで連中は魔王が悪であるということをしっかりと信じさせてる。こうなると人間そう簡単に覆らないから厄介なんだよなぁ」
「そうですよね」
そう言って日本人勢で一斉にため息をついたのだった。
「まぁ、そういうわけだからそっちも気を付けてくれ」
「わかりました」
さて、そうなると西側の連中はどうやるかとなるが、魔法の”洗脳”であれば”解呪”で解くことが可能だ。しかし、思い込みによる洗脳となると、解くことが出来ない。もちろんそれが間違いであるという真実と証拠、そしてじっくりの話し合いによって解くことは可能。しかし、これを成すには相当な時間がかかる。これは先ほどの天動説から地動説に切り替えさせる時と同じだろう。俺たちは歴史などの授業で悶着の後結局切り替わったと習っただけだだが、当時の人たちからしたら、まさに青天の霹靂だったに違いない。つまり、今回の魔王悪、ということや我が国の民に対する認識もそう簡単に修繕はできないだろう。
とはいえ、まったく手がないわけでもない。幸いにしてキリエルタが残した碑文があり、それさえ読むことが出来ればそれが証拠となる。まぁ、それはあくまで獣人族が敵でドワーフとエルフは交流すべきであると書いてあるだけではあるが、それでも今と全く違いちゃんと他種族として扱っているから足がかりに張ると思う。そこから、うまく魔族も同じ種族であるという事実をわからせればいい。
そして、それを成すためには洗脳の元であるキリエルタ教を変える必要があり、アリシエーラ枢機卿が教皇になることを願うしかない。
つまり、結局はまだまだ俺は動けないというわけだ。
「こっちはこっちで、何度も顔出しするしかないか」
つまりはそういうことである。
そんなわけで、俺は西側諸国に集中できるというわけだ。
「西側諸国への対応ですが、どうすればいいのか、意見などあればお聞かせ願えますか」
まずは3国の王たちの意見を聞くことにした。
「ふむ、難しい問題ではあるが」
「ええ、ですが結界がある以上、ある程度は持ちこたえることが出来るのでしょう?」
「はい、あの結界を敗れるのは大賢者のみであり、その大賢者も私がいる以上脅威ではありません。また、たとえ大賢者が結界を破った隙に兵が怒りこまれたとしても我が国の兵たちによって追い返すことが出来ます」
「でしたら、今しばらくは時間稼ぎをされてはいかがです。そうなればいずれ教会がアリシエーラ様によって掌握されれば」
ウルベキナ王の言う通り、教会がアリシエーラ枢機卿に掌握されれば、西側諸国も目的を失う可能性がある。
「しかし、現在の教会の主流は西側なのでしょう、姉上」
「その通りです。現在の教皇聖下であるコルブラース様は大陸西側の国、ハリアータルド王国の出身でありかの国の枢機卿でもありました」
そして、その取り巻きもまた同じく西側の出身者だそうだ。
「厄介ですわね」
ブリザリア女王の言う通りかなり厄介で、たとえアリシエーラ枢機卿が教皇になったとしてもその言うことを聞くとは思えず、下手したらそのまま俺の討伐に向かってくるかもしれない。
「魔王陛下、申し訳ありませんがなるべく西側の方々に犠牲を出さないようにしていただけませんか」
ここでアリシエーラ枢機卿からの頼みが入った。
「なぜでしょう?」
すでに敵対し、敵認定した西側に対してなぜ犠牲を出さないようにしなければならないのか?
「この戦いにおいて西側に犠牲が出れば、それこそ陛下の討伐という、旗を掲げることに疑問を抱くものが少なくなってしまいます」
「ふむ、犠牲が出ればその敵としてテレスフィリア王の討伐に意味を載せてしまうか」
「ええ、陛下を恨むものも出てきましょう。ですがもし、陛下が何の犠牲も出さなければ」
「そうなれば、テレスフィリア魔王陛下のお言葉に信ぴょう性が出ますわね」
「その通りです。ブリザリア女王陛下」
俺は常々安心安全な魔王であると公言している。そこに敵対しているからと人族を殺してしまえば、そこに偽りが生じてしまう。だからこそこちらは向こうに犠牲が出ないようし、その言葉の信頼を勝ち取る必要があるという。
ふむ、確かにそれは納得だな。いわゆる撃たれても撃つなという日本警察のスタンスで行けと言うわけだな。普通ならふざけるなといいたいところだが、元日本である俺にはごく当たり前のことだ。
「わかりました。しかし、ただ黙って、というわけにはいきませんから、ある程度は抵抗はさせてもらいます。尤も、それによる被害は最小限にとどめましょう」
「ありがとうございます」
俺の言う最小限というのは、本当の意味での最小限で、人死には出す気はないが、けが程度ならさせるつもりだ。それも、再起不能レベルの者にするつもりもない。
「では、それで、あとは兵ですが」
「もちろん我が国からは出しましょう、つい先日お助けいただきましたから、そのお返しです」
「ふむ、我が国も出す、何せ貴殿は我が国の民であったのだ。また、王家としての貸しもある。否やなどあろうはずがない」
「我が国も出しましょう。わが国にはいまだ貸しはありませんが、せっかく同盟を結んだのです。今後のためにもここで出さないという選択肢はありませんわ」
こうして、3国すべてが兵を出してくれることとなった。
それから具体的な話し合いをしていき、4か国会議は幕を閉じたのであった。
会議から3日後、俺は再び西側諸国の様子を見に現地へとやってきた。
「どうだ?」
「おう、スニルか、やっこさん相変わらずだぜ」
ダンクスの言うように結界の向こうでは大賢者が大魔法をぶっ放していた。
「いい加減無理だってあきらめて帰ってくれたらいいんだけどな」
俺だったら2・3発で帰るな。
「そこまでして俺たちを根絶やしにしたいんだろ」
「それが分からないよな」
魔族憎しというが、一万年も前のことを言われてもこちらも困るというものだ。
「んで、そっちは?」
「こっちは3国が兵を出してくれるそうだ。一応ダンクスがその総大将になるからな」
「おいおい、俺がか?」
「そりゃぁ、ダンクスはうちの総大将だから当然だろ」
「まじかぁ」
ダンクスはそういって肩を落とす。ダンクスは元騎士、といってもその地位は低く、見習いからようやく出たようなものであった。それが、今じゃ一国の軍の最高幹部なんだからどうしようもないな。
「あと、教会の方は枢機卿と那奈たちが担当することになったからな。こっちはそれが終わるまで時間稼ぎになる」
「那奈が、よく許可を出したな」
ダンクスにも俺が那奈たちにこうした戦争に参加させないことや、その経緯を話してある。
「そりゃぁ、こっちみたいな戦争にかかわらせるわけにはいかねぇけど、今回那奈たちがやるのは政戦だからな。これは向こうでも当たり前にあることだから、別に問題はないんだよ。それに本人がやる気だしな」
「そうなのか、よくわからねぇけど、まスニルがいいならいいか。それで、あとの2人もやんのか」
あとの2人とは麗香と孝輔姉弟のことだ。
「ああ、さすがに那奈だけってわけにもいかないだろ、というかあの姉弟がそれをさせると思うか」
「思わねぇな」
麗香は基本那奈を妹のようにかわいがっているし、孝輔は那奈の恋人でもある。その2人が那奈を危険かもしれないことを1人でさせるわけはない。
てなわけで、現在教会対応は、アリシエーラ枢機卿と伯母さん、麗香、孝輔、那奈、そして枢機卿と伯母さんの護衛として父さんと母さんが加わっている。
「ヒュリックとミリアが護衛か、でもよあの2人って子供じゃねぇか」
両親が護衛として参加すると話すとダンクスがそういって苦言を言った。確かに俺の両親といっても今現在は子供でしかない。そんな子供が護衛はちょっと無理がある。
「まぁ、確かにな。だから、助っ人でワイエノ小父さんとシエリル小母さんに頼んだんだよ」
「あの2人か、それなら問題ないな。でも、店はいいのか?」
ワイエノ小父さんたちは冒険者は引退しその冒険者向けの店をやっている。そして、そこで製造販売されているフリーズドライはとんでもなく売れている商品である。2人はその管理や販売などでかなり忙しい。そんな2人がどうして護衛に加わったのか。
「店はほかにも任せられる奴が増えたらしいし、なにより今はウルベキナでもフリーズドライが販売されてるし、何とか落ち着いているそうだ。それに、2人は父さんと母さんと組んでた2人だからな。久しぶりに組めるってことで喜んで協力してくれたよ」
これについては父さんと母さんも同じように喜んでいた。
「なるほどなぁ。まっ、あの2人が加わったのなら問題ないだろ」
そんなのんきに話をしている目の前では大賢者が幾度か目の大魔法を結界にぶつけていた。ほんと飽きずによくやるよ。
「ここまで来たし、とりあえず向こうにも顔出しておくか」
「おう、俺も行くぜ」
というわけで、せっかく現場に来たのだから、ちょっと西側諸国の連中に顔を見せて軽く挑発しておこうと思う。
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「魔王!」
俺が姿を現すとその場にいた兵士たちが一斉に剣を抜く。
「相変わらずの敵意だな」
「殺気が痛てぇぐらいだな」
あいにくと俺には殺気を感じる能力が薄く、ダンクスほどは感じていない。それでも、多少は感じるので居心地はあまりよくはない。
「そろそろ、あきらめて帰る気はないか」
「黙れ、邪悪な魔王、出てきたことを後悔させてやる」
そう言っていきなり斬りかかってくる兵士たち。
「なんで、こいつらこんなに士気が高いんだ」
「いや、俺が聞きたいよ」
向かってくる兵士たちに嘆息しつつ結界を張る。
「くっ、結界は、卑怯な」
「いや、いきなり斬りかかった来る奴に言われたくないんだが、まぁいいや。そんなことより、何度も言うが俺は人族と争う気はないってことをいい加減理解してもらいたいんだが」
「黙れ、我らをたばかるきか」
兵士たちは全く聞く耳を持たず、さらに斬りかかってくる。ほんと、一体この士気は何なんだろうか、正直不気味ですらある。
「まっ、こんなもんか」
「だな。さっさと戻ろうぜ」
というわけでさっさと戻ることにした。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「ふぅ、いつもいつもなんなんだろうなあいつら」
帰ってくるなりダンクスがそういってため息をつく。実はこれまでも幾度となくこうしてあちらと接触を図ってきた。しかし、連中は毎回同じ反応をしてくる。
「”洗脳”はされてないんだよな」
ダンクスが言う”洗脳”というのは闇魔法の1つで、これをかけられるとあんなふうになる。
「いや、何度か鑑定はしたけど、その様子はないな」
俺もダンクスの言うように”洗脳”を疑い何度か鑑定を使い確認してみた。
しかし、連中は誰一人”洗脳”状態ではなかった。
「それじゃ、なんなんだ」
「おそらくだが、いや、間違いなくこれは洗脳だな」
「ん? いや、今スニルが違うって」
「ああ、魔法の”洗脳”じゃなくて、違う洗脳だ」
俺が言った洗脳は地球でもよく聞いた宗教がらみのあれだ。おそらく西側諸国の連中はその状態にあると見て言いと思う。魔法ではないから鑑定でも表示が出ないと言ったところだ。
「しかし、そうなると厄介だな。一応麗香たちにも伝えておくか」
この洗脳が教会関係とすると、教会対応にもかかわってくるので麗香たちにも伝える必要がある。どうして麗香たちなのかというと、伯母さんや枢機卿に伝えたところで2人は魔法の”洗脳”は知っていても今回のような洗脳は知らない。逆に麗香たちなら洗脳のことはそれなりに分かっているはずだ。
というわけで、さっそくアベイルに戻り麗香たちへと伝えた。
「……というわけで、敵兵の様子があまりにもおかしい、おそらく大規模な洗脳を受けている可能性が高い」
「洗脳ですか? それって、魔法じゃなくて、ですよね」
「そうだ。鑑定でも洗脳状態ではなかったから、間違いないだろ」
「そ、それは、厄介ですね」
麗香を始め孝輔も那奈もしみじみという、日本人であれば洗脳がいかに厄介か知っているからな。
「この世界は魔法の”洗脳”があるから、洗脳という知識はないんだ。でも、経験則からどんなふうにすればいいかはわかっているのかもしれない」
一番厄介な点はこの洗脳を行っている奴が、洗脳であるという自覚がないという点だ。なにせ、知識がないんだからな。
「宗教ってやつは得てして洗脳に近いものだからな。ほら、地球でも昔キリスト今日が天動説を唱えていただろ」
「あっはい」
「あれって、誰もそれが正しいという証拠もなく真実であると信じ切っていた。だから地動説を唱えたガリレオがさんざんな目にあったわけだが、あれも洗脳の一種だろ。それと同じで連中は魔王が悪であるということをしっかりと信じさせてる。こうなると人間そう簡単に覆らないから厄介なんだよなぁ」
「そうですよね」
そう言って日本人勢で一斉にため息をついたのだった。
「まぁ、そういうわけだからそっちも気を付けてくれ」
「わかりました」
さて、そうなると西側の連中はどうやるかとなるが、魔法の”洗脳”であれば”解呪”で解くことが可能だ。しかし、思い込みによる洗脳となると、解くことが出来ない。もちろんそれが間違いであるという真実と証拠、そしてじっくりの話し合いによって解くことは可能。しかし、これを成すには相当な時間がかかる。これは先ほどの天動説から地動説に切り替えさせる時と同じだろう。俺たちは歴史などの授業で悶着の後結局切り替わったと習っただけだだが、当時の人たちからしたら、まさに青天の霹靂だったに違いない。つまり、今回の魔王悪、ということや我が国の民に対する認識もそう簡単に修繕はできないだろう。
とはいえ、まったく手がないわけでもない。幸いにしてキリエルタが残した碑文があり、それさえ読むことが出来ればそれが証拠となる。まぁ、それはあくまで獣人族が敵でドワーフとエルフは交流すべきであると書いてあるだけではあるが、それでも今と全く違いちゃんと他種族として扱っているから足がかりに張ると思う。そこから、うまく魔族も同じ種族であるという事実をわからせればいい。
そして、それを成すためには洗脳の元であるキリエルタ教を変える必要があり、アリシエーラ枢機卿が教皇になることを願うしかない。
つまり、結局はまだまだ俺は動けないというわけだ。
「こっちはこっちで、何度も顔出しするしかないか」
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