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15.夜会2
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本当に、どこまでも慎ましい姉思いの妹だ。姉の心境を思い胸を痛めているようにしか見えない。
ノエルがいる手前、侯爵の弟は何も言えないだろう。だけどもしもここにノエルがいなかったら、口は出さなくても非難の目ぐらいは向けてきたかもしれない。
傷心に至る原因がそもそもアニエスにあることすら忘れて。
こぼれそうなため息を堪え、大粒の涙を流してもおかしくないアニエスを見下ろす。
何を言っても逆効果だろう。そんなことはないと否定しても、強がっているとかなんとか言われて終わる。
「……あなたのほうこそ、何か勘違いしているんじゃないですか?」
淡々とした、揺らぐことのない声が横から聞こえた。
見上げると、ノエルがいつもと同じ、変わらない眼差しをアニエスに向けている。
「僕と彼女はしっかりと話し合ったうえで、結婚を前提としたお付き合いをはじめました。心配には及びません」
「で、ですが……分不相応とは、思わないのですか?」
「まったくと言っていいほど思いませんね」
きっぱりはっきりと言われ、アニエスが胸の前で両手を組む。懇願しているようにも祈るようにも見えるが、手にこもる力が苛立ちを物語っている。
本当に、いい加減にしてほしい。
ドレスや髪飾りまでは許そう。
学園の件も、百歩譲って許してもいい。
だけど私の将来までアニエスに決められたくはない。
「ねえ、アニエス。あなたが心配するようなことはないわ。だって私、この人のことが好きで告白したんだもの。気が触れたとか、そういうことでもなく、心の底からこの人がいいって、そう思ったのよ。だから、安心してちょうだい」
微笑んで、妹を労わる姉を演じる。
傍からみれば、美しい姉妹愛に見えなくもないだろう。互いの心のうちはともかくとして。
「ええ、そうですね。僕も以前ミュラトール領を訪れた時から彼女のことを慕っていました。ですが僕が彼女と話をできる間柄になれた頃にはすでに婚約者がいて諦めていたのですが……あなたのおかげで、こうして愛ある恋人になれました。感謝していますよ」
告白まがいの言葉に、感情を微塵も感じさせない態度。あいかわらずのちぐはぐさに見る人の頭を混乱させないかと心配になったが、アニエスが下唇を噛んで悔しそうに体を震わせているので、無用な心配だったようだ。
ここまではっきりと言われたら、アニエスも引き下がるしかない。
そう思って、ノエルの腕に手を添える。この場から立ち去るために。
「そんな――そんなはずが、ありません」
引き際だと、アニエスにもわかっていたはず。
これ以上食い下がれば、無粋な妹として周囲に認識される。慎ましい妹を演じてきたアニエスなら、これで終わりだったはずだ。
だけど、どうしても認めることができなかったのだろう。悔しさで歪んだ顔は、絶対に引かないという固い意思を感じさせた。
ノエルがいる手前、侯爵の弟は何も言えないだろう。だけどもしもここにノエルがいなかったら、口は出さなくても非難の目ぐらいは向けてきたかもしれない。
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