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第1話 婚約者殺人事件~上編~
第1話 婚約者殺人事件~上~
しおりを挟む「みんなぁ!!今日は俺と、梓の為にお祝いにきてくれて、ありがとう!!!飲んで遊んで、楽しんでってくれ!!
あ!相手いない奴はこの中から探してな!恋活恋活ぅ!!」
おどけたようにそう言ったのは
「鈴木 勇次郎」(すずき ゆうじろう)
藍里達と同い年で、高校の同級生だ。
今日は浮かれまくってるコイツの婚約披露宴という名の集まりだ。
会場は、都内にあるペンション。
勇次郎の婚約者である、
金沢 梓(かなざわ あずさ)
の父親が管理しているのだという。
「浮かれてんな。あいつ。」
そう言って、エビピラフを頬張りながらやってきたのは藍里の幼なじみ、哲也だ。
「そりゃあね。タイムラインとかSNSで、彼女の自慢ばっかり載せてたもん。」
そう呟いた藍里は、梓の肩を抱いたまま、友達と談笑している勇次郎をみる。
「しっかし、あんなご令嬢みたいなべっぴんとどこで知り合ったんだろうな?」
聖人が頭をかきながら呟いた。
そう言いたくなるのも無理はない。
梓という女性は、黒い髪にフェミニンな格好がとてもよく似合っていた。
手に填めている真っ白な手袋が、さらに彼女の優雅さを表している。
はっきり言うと、チャラい外見の勇次郎とは不釣り合いである。
「アイツの通ってる大学で、毒物を調べるサークルがあるんだってさ。そこで知り合ったのが梓さんで、そのまま交際に至ったみたい。」
輝がジュースを飲みながら苦笑いして答えた。
なるほど。ていうか、なぜ毒物を調べようと思ったんだろう?
と、思わずにはいられなかった藍里だった。
「あ、あの!笠原さん……ですよね!?」
突然、茶髪のショートヘアの女性が、輝に話しかけてきた。「はい?」と答えた輝は、キョトンとしている。
「あ、あの、私、如月 佑香(きさらぎ ゆうか)といいます!
あなたが学会で発表した『未来での医学のメリットとデメリット』とてもよかったです!!」
「ああ……ありがとうございます。でも、父親からは『あんなのは猿でもできる』と言われてしまったので、まだまだですよ。」
「そんな…!とんでもない!」
佑香と名乗った子は、輝に気があるのだろうか…上目遣いをして少しぶりっこのようにも感じる。
邪魔してもいけない。
藍里は、少し離れようと食事が並んでるテーブルへと向かった。
「あ!このケーキ美味しそう…!」
そう言って藍里が手にしたのは、テーブルに並べられたカップケーキだ。ホイップクリームとスプレーチョコで可愛らしくデコレーションされている。パクリと口に含むと、しっとりしたスポンジに、まろやかな生クリームが絡む。さらに、スポンジの中にはイチゴジャムが入っていて、イチゴの甘酸っぱさが口の中に広がる。
(ん、おいし…。)
カップケーキの美味しさを堪能していると、
「梓さん。いいですか?」
という声が聞こえてきて、そちらを向く。セミロングの髪の毛の女性が、梓に気まずそうに声をかける。
「八重(やえ)?どうしたの?」
「私……毒薬室に忘れ物してしまって……でも、鍵を家に忘れてきてしまって……お借りしてもいいですか?」
「ええ。いいわよ。」
「すみません!」
受け取った八重と呼ばれた女性は、複雑な作りをした鍵を受け取ると、タタタッ!と走り去っていった。
「本当に梓は優しいなぁ!!」
「うふふ。そうでもないわよ。…失礼。少し御手洗に……。」
一言断ると、梓はカバンから白いポーチを取り出すと、それを持って廊下へ出て行った。
「……猫かぶり………シネよ。」
ふと、不穏な声が聞こえて、振り返ると藍里はギョッとして思わず持っていたケーキを落としそうになった。
金髪にガン黒肌。濃いアイシャドウに真っ白な唇。
言わば『一昔前のギャル』だ。
「瑠璃~……そんなに睨むなよ。梓の妹だろ?」
「うるせぇわ!竜也!」
瑠璃と呼ばれた一昔前のギャルは、隣に座ったさわやか系イケメンである竜也と呼んだ男に、噛みつくように言った。
(猫かぶり…?)
「よぉ!!藍里!!」
「うわっ!!」
瑠璃と呼ばれた人と竜也のやり取りを見ていた藍里に、勇次郎が突然後ろから首に腕を回してきて、藍里は声を上げた。
「例の事件を解決したんだってな?ニュース見たぜ?いやぁ、同級生に名探偵がいるなら、俺も鼻が高い!」
うんうん!と勝手に納得してる勇次郎。
藍里は、ジトッと勇次郎を見るとため息をつきながら答える。
「ねぇ、勇次郎……周りに『アレ、俺の同級生だぜ?』なんて言ってないよね?」
「そんなの………
言うに決まってるだろ?」
「ころすよ?」
親指を立てて目を輝かせている勇次郎に、藍里は顔面パンチを喰らわせたい気持ちをグッと堪えた。
「てゆか、ねぇ。あれ、勇次郎の婚約者さんの妹なの?」
「ん?あ~!瑠璃のことか?そうだぜ?めちゃくちゃ以外だったろ?」
確かに以外だけど、梓さんがあなたを選んだことも以外だ。
とは言わなかった藍里だった。
これ以上話を続けたらよけいなことを口走りそうになった藍里は、話題を思いっきり変えることにした。
「……ところでさ、梓さんはなんで手袋してるの?」
そういうオシャレかもしれないが、他にふる話題が見つからず、精一杯の話題がこれである。
「あー。それな。梓は肌が弱くって、この時期になると手がすぐに荒れるそうなんだ。今日だって、痛々しい手してて、みんなが見るならって事で、はめてたんだ。」
「へぇ。」
「さっき、トイレに行った時にな?梓はポーチ持ってっただろ?あれは、手を洗う度にクリームを塗るからなんだよ。」
「なるほど……。」
「てゆか藍里。おまえよく見てたな。」
「まぁね。」
勇次郎の言葉に、ヘラリと笑った藍里。
「…私もトイレ行ってくるね……。」
「おう!そこの廊下の突き当たりがトイレ!」
「ありがと。」
藍里が一言断って教えられた廊下を歩く。
「あ、あの!笠原さん!」
突如聞こえてきた声。そっちを向くと輝と輝に話しかけていた女性…佑香さんがいた。
その様子を見て、思わず身を隠して見守る藍里。
「あ、あの、一目見たときから好きでした!!その、と、友達からお願いします!」
佑香さんの告白。
別に珍しくもなんともない。
輝は確かに、有名な病院の医者の跡取り息子であり、頭脳明晰で運動もそこそこできる。爽やかな笑顔が魅力的で、高校の頃からモテてはいた。(それは、大学生でもそうなのだが…。)
輝は告白されたら決まって
「ゴメン。友達としてしかみれない。」
と、かなり苦しそうに断るのだ。
「……ごめんなさい。」
ああ。今日もか。
藍里は、それを見て「またか。」と心の中で呟いた。
「……僕、好きな人がいるから…………。」
「!」
意外な言葉に、藍里は目を見開く。
あの、輝に好きな人。
それは、藍里は女子の気質として気になるところではあった。
「…そう…なんだ……。」
佑香は、ショボンとして今にも泣きそうだった。
(…まぁ…そうなるよね…。)
様子を見守った藍里は、トイレに行きたいのを思い出して、タタタッ!と駆け出す。
藍里が立ち去ったあとも、2人は深刻な顔で話を続けていた。
「……ごめんね。」
「……好きな人って……あの藍色の髪の子…?」
「………。」
「……そっかぁ。」
「………ごめん。」
「………。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時間はあっという間に過ぎて、気がつけばもう夜の9時を回っていた。
「…お風呂、先いただきました。」
八重と呼ばれた女性が現れて、出てきた。
別荘のお風呂は小さいため、最大でも2人ずつ入ることになったのだ。
「では、今度は私たちがいただきますわ。瑠璃。いっしょに入りましょ?」
「…ぜってーやだし。」
梓の声に、瑠璃はチッと舌打ちをして答えた。やれやれと言わんばかりに梓は一言断ってから、お風呂場へと向かった。
「さてさて!残ってる奴らで、人狼ゲームしよう!!」
勇次郎が、手をたたいてそういうと、皆が喜んで参加した。
~~~~~一時間後~~~~~~~
「うわぁ~~!!!竜哉が人狼だったのかよ~!!!」
勇次郎が、頭を抱えて唸る。
「おまえが単純なんだよ。勇次郎。」
竜哉と呼ばれたさわやか君は、あははと笑いながら答えた。
「……ねぇ。もう一時間経つよ?梓、遅くない?」
佑香が、時計を見て答えた。長風呂する人ならこのくらいはかかるが、梓はそんなに長風呂はしないと、勇次郎から聞いていた。
「……あたし行ってくる。」
めんどくさいなぁ。とでも言いたげにそう言った瑠璃は、立ち上がるとのっそりのっそりと風呂場へと向かっていった。
「ふわぁ~~………眠い。あたし、明日お風呂にしてもらおうかな……?」
陽菜が眠たそうに目をこすっている。
それを聞いた藍里は、ハッと納得する。
(なるほど。明日というてもあったか。確かに、もう遅いし場合によっては………。)
「ギャアアアアアアアアァァァアアアアアッ!!!!!!!」
突然、空気を割るような悲鳴が聞こえてきた。
さっき様子を見に行った瑠璃の物だろうか。
驚いて、誰もが目を見開く。そんな中、藍里はバッと廊下へ出て、風呂場へと向かう。
バン!!
「瑠璃さん!?」
脱衣所の扉を開けると、瑠璃が腰を抜かして、ガタガタと震えている。
「どうしたの!?」
「あ………あれ…………!」
震える指で瑠璃が、目の前にある物を指さした。藍里もつられてそっちを見ると、緊迫した空気に包まれるのと同時に、顔をしかめる。
そこには、体を折るように上半身を湯船に預けてグッタリとしている梓の変わり果てた姿があった………。
現場に行き着いて、その光景見た人達も驚きの声と悲鳴を上げていた。
「梓!!梓ー!!」
勇次郎が、半狂乱の状態で梓に近づこうとしたが、哲也と聖人に止められる。
「落ち着け!!とにかく!警察呼ぶぞ!!それと、救急車!!」
騒ぎ出す中、藍里は、梓に近づき首筋に指を押し当てる……。
(……ダメだ。亡くなってる……。)
唇をかみしめる藍里。
その様子を、信じられないというような表情でオロオロしていたのは、
佑香であった………。
続く
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