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12話 マロンside
しおりを挟むまさかアリスがあんな人だったとは......。
俺は従業員を大切にしているつもりでいる。
いくら商会をやっていたとしても人がいなければ成り立たないからね。
うちの従業員は全員平民の人達だ。
もちろん、人によってはお金に苦労をしている人もいるし、毎日洗濯をしたくても出来ない人も、それどころかお風呂にも入れない人だっている。
商会の中にシャワールームを作ってあるからそういう人達は皆仕事終わりに綺麗にしてから帰る人が多い。
そんな人に対して、
「汚い」
という一言を言ったアリスに対して、信じられない思いでいっぱいだった。
いや...でもアリスはそれを知らないから平気でそんなことを言ったのか?
でもオリビアは1回もそんなことを言わなかったよな......。
前の婚約者と比べるなんてアリスに失礼だとわかっているけど、頭の中ではずっと『オリビアだったら』と考えてしまう。
アリスを客室に案内してから、さっき話しかけてきた従業員のところに行くと思った通り凄く落ち込んでいた。
「マロン様......すみません。俺が安易に握手なんて求めたから......」
俺にそう謝ってきた彼に申し訳ない気持ちで
「いや、こちらこそすまなかった。まさかアリスがあんなことを言うなんて思ってもいなかった......」
少し言い訳っぽくなってしまったが、そう言うと、必死に首を横に振りながら
「いえ...っ!マロン様は悪くないです...!」
と言ってくれてホッとした。
確かに俺は悪くないが、連れてきた俺の責任でもある。
だから、そう言ってもらえて安心していると
「でもあの人が夫人になると思うと......」
そう言ってまた顔を暗くしてしまった。
「本当にすまなかったな。アリスには俺から言っておくから」
「......よろしくお願いします...っ」
涙目になりながらそう言って頭を下げたのを見ていると、心が痛む。
でも、たまたまだよな?
貴族として育ったから平民の格好を見て驚くのも仕方ない。
まぁ、そのうち慣れるだろう。
そう思いながら客室へと戻った。
☆★☆
客室が近づくと、中から怒鳴り声が聞こえてきた。
アリスか?
一体何があったんだ?
そう思って耳を澄ませて聞いてみると
「汚い格好でここにいないでくれる?早く出ていって!」
アリスの怒鳴り声が聞こえてきた。
中からは、いつも商談の時にお茶を出してくれる女性が涙目で出てきた。
女性は俺に気付くと
「あ......マロン様...」
とだけ呟いた。
「大丈夫か?」
「あ、あの......はい、大丈夫です」
アリスにされたことを言わずにグッと我慢してくれた彼女を見ると、なぜアリスを連れてきたのか、という後悔が強くなった。
俺が連れてこなければ......皆嫌な思いをしなかっただろうに。
そう考えると、胸が締め付けられるような感覚に陥る。
それを気付かれないように
「お茶を出してくれたんだな。ありがとう」
そう言って微笑むと、女性は静かに頷いた後に
「.........あの人が夫人になるんですか?」
と言いずらそうに聞いてきた。
「...わからない。良い子だと思っていたんだが.........」
「差し出がましいかも知れませんが、あの人は...やめた方がいいです。オリビア様の方が絶対に良いです」
「......それは、今日の様子を見てわかった」
確かにオリビアが皆に慕われていたのは気に食わなかったが、オリビアも混ざって皆、笑顔で仕事をしていた。
俺が間違えていたのか......?
「私はあの人が夫人になるならここには居る気になれません......」
そう言われた俺は
「そうか......」
としか言えなかった。
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