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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第117話・戦いの余韻と安堵の抱擁
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――戦闘中、結界の内側。
ルナフィエラは守られているはずなのに、体を小さく震わせていた。
(……数が多い……牙も、爪も、怖い……)
けれど、その手をずっと握り締めてくれる温もりがあった。
「大丈夫。僕がいるよ」
フィンの声は明るくて、結界に流れ込む魔力も心地よく調和していく。
不安で揺れていた魔力は、彼のおかげで静かに落ち着きを取り戻した。
「……フィン……ありがとう」
「うん。ルナはちゃんとできているよ。だから自信もって!」
恐怖はまだ完全には消えない。
それでも――
前方で戦う三人の姿を見ているうちに、胸の奥に別の感情が芽生えてきた。
(……みんな、強い……これなら、きっと大丈夫……)
恐怖に押し潰されそうになっても、仲間の背中がそれを払いのけてくれる。
ルナフィエラは深く息を吸い込み、揺るぎなく結界を支え続けた。
最後の一体が断末魔を上げ、森の奥へと崩れ落ちた。
辺りに広がっていた唸り声も掻き消え、ただ重い静寂だけが残る。
シグが大斧を肩に担ぎ、ヴィクトルとユリウスと共に結界の内へ戻ってきた。
血の匂いを纏いながらも、その眼差しに曇りはない。
「……終わったぞ」
シグが短く告げる。
ルナフィエラは胸の前で組んでいた手をゆっくりと解き、結界を解除した。
薄い光が霧散し、圧迫していた空気がふっと軽くなる。
「みんな……怪我は……!」
彼女はすぐに駆け寄り、ひとりひとりを見上げる。
ヴィクトルの外套、ユリウスの袖、そして――シグの全身が赤く濡れていた。
「っ……こんなに……!」
紅い瞳が揺れ、不安が滲む。
だが、返ってきたのはシグの落ち着いた声だった。
「……心配すんな。かすり傷ひとつねぇよ。全部、返り血だ」
シグは大斧を肩に担ぎ直し、淡々と答える。
ユリウスがそっと微笑み、ルナフィエラの紅い瞳を見つめた。
「君が結界を張ってくれたおかげで、背後を気にせず戦えた。……とても助かったよ」
「ルナ様のご判断は的確でした。結界を維持し続けられる力……お見事です」
ヴィクトルは深く頷き、真剣に褒め称える。
「ルナ、すごいよ! 本当にすごかった! よしよし!」
フィンは抱きつくように彼女を抱え、頭を撫でて甘やかす。
胸がじんと熱くなり、ルナフィエラは小さく笑みを零した。
(……本当に、誰も……無事でよかった……)
ユリウスが森の奥へ視線を向け、静かに告げる。
「返り血は川で落とした方がいい。この先に水音が聞こえる」
シグが頷き、5人は森の道を並んで歩き出した。
血の匂いはまだ濃いが、彼らの歩みは揺るぎなく、確かに前へと続いていた。
澄んだ川のせせらぎが耳に心地よく響く。
戦いの返り血を流すために、皆それぞれ水辺で衣服や武具を洗っていた。
シグは無造作に上着を脱ぎ、川でざぶざぶと布を洗い、血を落とすと岩の上に広げて干す。
裸の上半身に冷たい風が当たっても、彼は気にも留めない様子で腰を下ろした。
それを見ていたルナフィエラが、恐る恐る声をかける。
「……シグ、寒くないの?」
彼は一瞬だけ視線を向けると、短く答える。
「ああ、問題ない」
それきり黙っていたが、ルナフィエラの表情がまだ強張っていることに気づいたのだろう。
シグは大きな腕を伸ばし、ためらいなく彼女の体を抱き寄せた。
「……っ」
不意の抱擁に驚いたルナフィエラは、思わず瞬きを繰り返す。
無骨な腕に包まれ、背中に感じる体温は大きく、力強い。
森の冷え込みと、先ほどまでの戦いの余韻で張り詰めていた心が、少しずつほぐれていく。
(……あったかい……)
胸の奥に渦巻いていた緊張が、シグの腕の中で静かに解けていった。
ルナフィエラは小さく息を吐き、彼の胸に身を預ける。
シグはそれ以上何も言わず、
ただ、彼女の小さな体をしっかりと抱き込み、川のせせらぎを聞きながら動かなかった。
シグの腕に抱き込まれたまま、ルナフィエラはしばし迷ってから小さな声を漏らした。
「……シグって、やっぱりすごいね」
彼は目を逸らしながら、いつもの調子で短く返す。
「当たり前だ。……お前を守るのが俺の役目だ」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
ルナフィエラは少し照れながらも、頬を赤らめて続けた。
「……なんだか、シグに甘えてばかりで」
今度はわずかな沈黙のあと、低い声が返ってくる。
「気にすんな。……ルナに甘えられるのは嫌いじゃねぇ」
「……えっ」
驚いて顔を上げると、彼の横顔はいつも通り無骨で表情の変化はほとんどない。
けれどその腕の力強さと体温が、言葉以上に優しさを伝えていた。
ルナフィエラは胸の奥がふわりとほどけるのを感じ、小さく微笑む。
そしてそっと彼の胸へ身を預けた。
ルナフィエラは守られているはずなのに、体を小さく震わせていた。
(……数が多い……牙も、爪も、怖い……)
けれど、その手をずっと握り締めてくれる温もりがあった。
「大丈夫。僕がいるよ」
フィンの声は明るくて、結界に流れ込む魔力も心地よく調和していく。
不安で揺れていた魔力は、彼のおかげで静かに落ち着きを取り戻した。
「……フィン……ありがとう」
「うん。ルナはちゃんとできているよ。だから自信もって!」
恐怖はまだ完全には消えない。
それでも――
前方で戦う三人の姿を見ているうちに、胸の奥に別の感情が芽生えてきた。
(……みんな、強い……これなら、きっと大丈夫……)
恐怖に押し潰されそうになっても、仲間の背中がそれを払いのけてくれる。
ルナフィエラは深く息を吸い込み、揺るぎなく結界を支え続けた。
最後の一体が断末魔を上げ、森の奥へと崩れ落ちた。
辺りに広がっていた唸り声も掻き消え、ただ重い静寂だけが残る。
シグが大斧を肩に担ぎ、ヴィクトルとユリウスと共に結界の内へ戻ってきた。
血の匂いを纏いながらも、その眼差しに曇りはない。
「……終わったぞ」
シグが短く告げる。
ルナフィエラは胸の前で組んでいた手をゆっくりと解き、結界を解除した。
薄い光が霧散し、圧迫していた空気がふっと軽くなる。
「みんな……怪我は……!」
彼女はすぐに駆け寄り、ひとりひとりを見上げる。
ヴィクトルの外套、ユリウスの袖、そして――シグの全身が赤く濡れていた。
「っ……こんなに……!」
紅い瞳が揺れ、不安が滲む。
だが、返ってきたのはシグの落ち着いた声だった。
「……心配すんな。かすり傷ひとつねぇよ。全部、返り血だ」
シグは大斧を肩に担ぎ直し、淡々と答える。
ユリウスがそっと微笑み、ルナフィエラの紅い瞳を見つめた。
「君が結界を張ってくれたおかげで、背後を気にせず戦えた。……とても助かったよ」
「ルナ様のご判断は的確でした。結界を維持し続けられる力……お見事です」
ヴィクトルは深く頷き、真剣に褒め称える。
「ルナ、すごいよ! 本当にすごかった! よしよし!」
フィンは抱きつくように彼女を抱え、頭を撫でて甘やかす。
胸がじんと熱くなり、ルナフィエラは小さく笑みを零した。
(……本当に、誰も……無事でよかった……)
ユリウスが森の奥へ視線を向け、静かに告げる。
「返り血は川で落とした方がいい。この先に水音が聞こえる」
シグが頷き、5人は森の道を並んで歩き出した。
血の匂いはまだ濃いが、彼らの歩みは揺るぎなく、確かに前へと続いていた。
澄んだ川のせせらぎが耳に心地よく響く。
戦いの返り血を流すために、皆それぞれ水辺で衣服や武具を洗っていた。
シグは無造作に上着を脱ぎ、川でざぶざぶと布を洗い、血を落とすと岩の上に広げて干す。
裸の上半身に冷たい風が当たっても、彼は気にも留めない様子で腰を下ろした。
それを見ていたルナフィエラが、恐る恐る声をかける。
「……シグ、寒くないの?」
彼は一瞬だけ視線を向けると、短く答える。
「ああ、問題ない」
それきり黙っていたが、ルナフィエラの表情がまだ強張っていることに気づいたのだろう。
シグは大きな腕を伸ばし、ためらいなく彼女の体を抱き寄せた。
「……っ」
不意の抱擁に驚いたルナフィエラは、思わず瞬きを繰り返す。
無骨な腕に包まれ、背中に感じる体温は大きく、力強い。
森の冷え込みと、先ほどまでの戦いの余韻で張り詰めていた心が、少しずつほぐれていく。
(……あったかい……)
胸の奥に渦巻いていた緊張が、シグの腕の中で静かに解けていった。
ルナフィエラは小さく息を吐き、彼の胸に身を預ける。
シグはそれ以上何も言わず、
ただ、彼女の小さな体をしっかりと抱き込み、川のせせらぎを聞きながら動かなかった。
シグの腕に抱き込まれたまま、ルナフィエラはしばし迷ってから小さな声を漏らした。
「……シグって、やっぱりすごいね」
彼は目を逸らしながら、いつもの調子で短く返す。
「当たり前だ。……お前を守るのが俺の役目だ」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
ルナフィエラは少し照れながらも、頬を赤らめて続けた。
「……なんだか、シグに甘えてばかりで」
今度はわずかな沈黙のあと、低い声が返ってくる。
「気にすんな。……ルナに甘えられるのは嫌いじゃねぇ」
「……えっ」
驚いて顔を上げると、彼の横顔はいつも通り無骨で表情の変化はほとんどない。
けれどその腕の力強さと体温が、言葉以上に優しさを伝えていた。
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そしてそっと彼の胸へ身を預けた。
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