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第八章:湯けむりに包まれて
第141話・添い寝当番とぬいぐるみ騒動
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「フィン……?」
驚く間もなく、彼は布団の脇に駆け寄った。
「起きてた! よかったぁ……」
息を弾ませながら、ルナフィエラの隣に座り込む。
「……どうしたの?」
「今日、僕が添い寝当番だから!」
胸を張って言うフィンに、ルナフィエラは小さく瞬きをした。
「うん、そうだね。でも……今日もこの子と一緒に寝ようかなって」
ぬいぐるみを抱きしめるルナフィエラ。
柔らかな笑顔に、フィンの笑顔がぴたりと止まる。
「……その子、今日も一緒なの?」
「うん。ふわふわで気持ちいいんだよ?」
「ふわ……気持ちいい……」
フィンの肩が小さく震える。
「ルナぁ、それ僕の役目じゃなかった!?」
声が廊下まで響いた瞬間、襖の向こうから静かな声が落ちる。
「……騒がしいな」(シグ)
「ついにか」(ユリウス)
「……予想はしていました」(ヴィクトル)
3人が静かに襖を開ける。
そこには――
ぬいぐるみを抱いて笑う彼女と、膨れっ面のフィン。
一瞬の沈黙。
シグが低く唸るように言った。
「……なるほど。完全に寝床を奪われているな」
ユリウスも呆れながら淡々と続ける。
「まさか僕たちからの“贈り物”が、最大のライバルになるとは思わなかったな」
「……本来、あの位置は添い寝当番の特権のはずです」
ヴィクトルの声は静かだが、どこか諦めを含んでいた。
「しかし、ルナ様が嬉しそうに抱かれているのを見れば、咎めることもできません」
ルナフィエラは慌ててぬいぐるみを庇うように抱き寄せた。
「みんな違うの! この子はただ、抱いて寝るだけで——」
「“抱いて寝る”という行為が問題なのです」(ヴィクトル)
「しかも、最近は常に一緒だ」(シグ)
「まるで恋人みたいだね」(ユリウス)
「そ、そんなこと言わないで!」
ルナフィエラの頬が真っ赤になる。
けれど、3人の表情はどこか柔らかかった。
怒っているわけではない。
ただ――“自分たちが買ってあげた”そのぬいぐるみを、どうしても取り上げられないだけ。
ルナフィエラは困ったように笑いながら、ぬいぐるみを見下ろした。
「……でも、この子を抱いてると落ち着くの。あったかくて、優しい気がして」
その言葉に、フィンがぐっと口をつぐむ。
シグも苦笑して肩をすくめた。
「……あったかくて、優しい。まさに俺たちが目指していた形だな」
「素材の敗北、というやつだね」
「……柔らかさでは、さすがに勝ち目がありません」
3人のやり取りに、フィンがぷくっと頬を膨らませる。
「みんなそんな冷静に言わないでよ! 僕、ほんとに悔しいんだから!」
「フィン……」
ルナフィエラが苦笑しながら名前を呼ぶ。
「この子は“抱くと安心する”けど……“フィンたちといると楽しい”よ」
その一言に、全員が一瞬で黙った。
ヴィクトルがわずかに目を伏せ、シグが視線を逸らす。
ユリウスは、静かに笑った。
「……なるほど。安心と楽しさ、両立は難しいらしい」
「難しくてもやる!」と、フィンが即座に反論。
「今日だって僕が添い寝当番なんだからね! この子には悪いけど、ルナの隣は譲れない!」
「……子どもか」
シグの低い声が落ちる。
「子ども、だね」ユリウスが即答する。
「僕から見れば、せいぜい人間の10歳児くらいの感覚だ」
「私も同意です」ヴィクトルが静かに頷く。
「せっかくの可愛げですから、あまり責められませんが」
「ちょ、ちょっと! 僕もう25だよ! ちゃんと大人だから!」
フィンが顔を真っ赤にして抗議する。
「……年齢の桁が足りん」(シグ)
「数百年単位で見れば、まだ“生まれたて”だね」ユリウスがさらりと言う。
「そうですね。言うなれば――まだ飛び方を覚えたばかりの雛鳥、ですかね」(ヴィクトル)
「ひ、雛鳥!? そんな言い方ないでしょ! 全員で僕のこと子ども扱いしないでぇぇ!」
フィンが叫び、ルナフィエラは耐えきれず吹き出した。
「ふふっ……もう、みんな仲良しすぎ」
「仲良しというより、手のかかる弟だな」
とシグが呆れ、
「まったく、落ち着きがない」
とユリウスが息をつき、
「ですが、それも愛らしいものです」
とヴィクトルが柔らかく締めた。
「うわぁぁん! もう知らない!」
フィンが背を向けると、ルナフィエラは笑いながらそっとその腕を取った。
「……ねぇ、フィン。私、フィンが一番元気で明るいところ、好きだよ?」
その一言に、フィンの耳が真っ赤になった。
「……ずるいよ、ルナ」
その呟きを残して、ようやく場が静かになる。
――けれど、笑いを噛み殺す3人の表情は言うまでもなかった。
驚く間もなく、彼は布団の脇に駆け寄った。
「起きてた! よかったぁ……」
息を弾ませながら、ルナフィエラの隣に座り込む。
「……どうしたの?」
「今日、僕が添い寝当番だから!」
胸を張って言うフィンに、ルナフィエラは小さく瞬きをした。
「うん、そうだね。でも……今日もこの子と一緒に寝ようかなって」
ぬいぐるみを抱きしめるルナフィエラ。
柔らかな笑顔に、フィンの笑顔がぴたりと止まる。
「……その子、今日も一緒なの?」
「うん。ふわふわで気持ちいいんだよ?」
「ふわ……気持ちいい……」
フィンの肩が小さく震える。
「ルナぁ、それ僕の役目じゃなかった!?」
声が廊下まで響いた瞬間、襖の向こうから静かな声が落ちる。
「……騒がしいな」(シグ)
「ついにか」(ユリウス)
「……予想はしていました」(ヴィクトル)
3人が静かに襖を開ける。
そこには――
ぬいぐるみを抱いて笑う彼女と、膨れっ面のフィン。
一瞬の沈黙。
シグが低く唸るように言った。
「……なるほど。完全に寝床を奪われているな」
ユリウスも呆れながら淡々と続ける。
「まさか僕たちからの“贈り物”が、最大のライバルになるとは思わなかったな」
「……本来、あの位置は添い寝当番の特権のはずです」
ヴィクトルの声は静かだが、どこか諦めを含んでいた。
「しかし、ルナ様が嬉しそうに抱かれているのを見れば、咎めることもできません」
ルナフィエラは慌ててぬいぐるみを庇うように抱き寄せた。
「みんな違うの! この子はただ、抱いて寝るだけで——」
「“抱いて寝る”という行為が問題なのです」(ヴィクトル)
「しかも、最近は常に一緒だ」(シグ)
「まるで恋人みたいだね」(ユリウス)
「そ、そんなこと言わないで!」
ルナフィエラの頬が真っ赤になる。
けれど、3人の表情はどこか柔らかかった。
怒っているわけではない。
ただ――“自分たちが買ってあげた”そのぬいぐるみを、どうしても取り上げられないだけ。
ルナフィエラは困ったように笑いながら、ぬいぐるみを見下ろした。
「……でも、この子を抱いてると落ち着くの。あったかくて、優しい気がして」
その言葉に、フィンがぐっと口をつぐむ。
シグも苦笑して肩をすくめた。
「……あったかくて、優しい。まさに俺たちが目指していた形だな」
「素材の敗北、というやつだね」
「……柔らかさでは、さすがに勝ち目がありません」
3人のやり取りに、フィンがぷくっと頬を膨らませる。
「みんなそんな冷静に言わないでよ! 僕、ほんとに悔しいんだから!」
「フィン……」
ルナフィエラが苦笑しながら名前を呼ぶ。
「この子は“抱くと安心する”けど……“フィンたちといると楽しい”よ」
その一言に、全員が一瞬で黙った。
ヴィクトルがわずかに目を伏せ、シグが視線を逸らす。
ユリウスは、静かに笑った。
「……なるほど。安心と楽しさ、両立は難しいらしい」
「難しくてもやる!」と、フィンが即座に反論。
「今日だって僕が添い寝当番なんだからね! この子には悪いけど、ルナの隣は譲れない!」
「……子どもか」
シグの低い声が落ちる。
「子ども、だね」ユリウスが即答する。
「僕から見れば、せいぜい人間の10歳児くらいの感覚だ」
「私も同意です」ヴィクトルが静かに頷く。
「せっかくの可愛げですから、あまり責められませんが」
「ちょ、ちょっと! 僕もう25だよ! ちゃんと大人だから!」
フィンが顔を真っ赤にして抗議する。
「……年齢の桁が足りん」(シグ)
「数百年単位で見れば、まだ“生まれたて”だね」ユリウスがさらりと言う。
「そうですね。言うなれば――まだ飛び方を覚えたばかりの雛鳥、ですかね」(ヴィクトル)
「ひ、雛鳥!? そんな言い方ないでしょ! 全員で僕のこと子ども扱いしないでぇぇ!」
フィンが叫び、ルナフィエラは耐えきれず吹き出した。
「ふふっ……もう、みんな仲良しすぎ」
「仲良しというより、手のかかる弟だな」
とシグが呆れ、
「まったく、落ち着きがない」
とユリウスが息をつき、
「ですが、それも愛らしいものです」
とヴィクトルが柔らかく締めた。
「うわぁぁん! もう知らない!」
フィンが背を向けると、ルナフィエラは笑いながらそっとその腕を取った。
「……ねぇ、フィン。私、フィンが一番元気で明るいところ、好きだよ?」
その一言に、フィンの耳が真っ赤になった。
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