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第四章:紅き月の儀式
第51話・紅の結界、刃の叫び
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魔法陣が、咆哮のようなうねりを上げた。
赤黒い魔素が空間を裂き、石床にひび割れが走る。
祭壇の上、ルナフィエラの身体を中心に魔力が渦巻き、
天井から落ちる紅き月の光が、その混乱にさらに力を与えていた。
「――構うな。奴らを始末しろ」
宰相の指が動いた。
その合図に応じるように、周囲の空間に潜んでいた強化兵たちが現れる。
全身から異常な気配を発し、紅く濁った目を光らせていた。
「また、あの研究所の……!」
ユリウスが目を細め、剣を抜いた。
「来いよ……全部、切り伏せてやる!」
シグが真正面から突っ込む。
強化兵が大剣を振り下ろすが、シグはそれを真正面から受け止め――
「うおおおおおっ!!」
火花を散らしながら力で押し返す。
その隙に、ユリウスが精密な魔術を放つ。
「今!」
「了解!」
フィンが素早く敵の背後を取って聖属性魔法を浴びせる。
一撃で沈まぬ相手に対して、連携の技を重ねる三人。
「くっ……!」
ヴィクトルも、気力を振り絞り立ち上がる。
剣を抜いたその手は震えていたが、
視線は決して濁っていなかった。
「お前に……ルナ様の力は渡さない」
ふらつく足で、それでも前へ。
魔法陣が不規則に跳ね、攻撃のように魔素が飛び散る。
「っ――ッ……!」
その奔流を防ぐように、ユリウスが剣を翳して前に出る。
「ヴィクトル、下がってろ!」
「いいや……もう、止める方法は……力で封じるしかない」
三人の動きに合わせ、ヴィクトルが割って入る。
剣を交差させた四人の前に、
宰相の影が、笑みを浮かべて立ちふさがる。
「愚かだな。
この空間すべてが、私の掌の上だとわかっていないのか?」
宰相の手のひらが紅く輝いた。
次の瞬間、魔法陣の一部が雷光のように弾け、
四人の立つ足元を激しく揺らす。
「くっ……!」
「下がれッ!」
爆風が吹き荒れ、
空間が軋み、結界が崩れ始める。
その中――ユリウスが叫んだ。
「もう、長くは持たない! この魔法陣……暴走する!」
「だったら、止めてやるしかねぇだろ……ッ!」
シグが強化兵の胸元に渾身の斬撃を叩き込む。
「ルナを、これ以上利用させてたまるか!」
ユリウスの魔術が、宰相を囲む術式を一つ一つ切り崩していく。
ヴィクトルも、ふらつきながら宰相の前に立つ。
「……あなたが何を望もうと、ここは……通さない」
「ならば――消えてもらおう」
紅の力が、再び放たれた。
そして、その渦の中へ、剣と魔術が交差しながら飛び込んでいく。
紅く輝く魔法陣が、再び震え始めた。
その中心――祭壇の上に横たわるルナフィエラの身体が、
まるで光そのものに変わるかのように、淡く発光を始める。
宰相が静かに両手を広げた。
「――ついに、器は満ちた」
その声とともに、空間がぐらりと歪む。
魔力が、祭壇から宰相の方へと流れ始めていた。
赤黒い光の筋が、糸のように彼の腕に絡みつく。
「やめろ……! ルナ様の力を……!」
ヴィクトルが声を振り絞って叫ぶ。
ユリウスたちも構えを崩さず、一歩でも踏み出そうとするが――
魔法陣から放たれる反撃の魔素が、まるで結界のように彼らをはじいた。
「……もう、止められはしない。
この力は、もはや“意思”を持たぬ。
命を失ってなお、ただ吸い上げられるだけの魔力だ」
黒幕の口元が、冷たい笑みに歪む。
「これを私が取り込み、新たな存在を作る。
血も感情もいらない、純粋な力の体現者をな」
そのときだった。
「――貴様、それでも人間か」
低く、抑えた怒気を帯びた声が場を割った。
ヴィクトルの父。
これまで一歩引いて儀式を見守っていた彼が、
静かに前に歩み出る。
「誇りも、矜持も、命の重さも忘れ、
ただ力に縋るとは……どれだけ浅ましい」
「……高位貴族の御身が、今さら正義面とは滑稽だな」
宰相が嘲るように目を細める。
だが、ヴィクトルの父の目には、一切の揺らぎがなかった。
「――確かに私は、姫様の力を用いて我が種を蘇らせようとした。
だが、それは“我らの誇り”としての意志だった」
彼の手が、ゆっくりと腰の剣にかかる。
「その力を道具としか見ない貴様と、
私は断じて相容れぬ」
瞬間、彼の周囲に黒い魔力が立ち昇る。
鋭く研ぎ澄まされたヴァンパイアの殺気。
この場にいる誰もが、本能的に感じ取った。
「……父上……」
ヴィクトルの目に、わずかに驚きが滲んだ。
「……姫様の力は“お前のもの”ではない。
それだけは、断じて許さん」
彼は、黒幕と結界の狭間に一閃、踏み込む。
「通さぬ。ここから先は、誰にも――」
その動きに呼応するように、ユリウスたちも再び剣を構えた。
「……共闘だな、一時的にでも」
「仕方ねぇ……今はそれでいい」
「ルナを守れるなら、誰とでも組む」
四人と、ヴィクトルの父――
一瞬だけ交わった意志が、
紅き月の下、宰相の野望に刃を向ける。
赤黒い魔素が空間を裂き、石床にひび割れが走る。
祭壇の上、ルナフィエラの身体を中心に魔力が渦巻き、
天井から落ちる紅き月の光が、その混乱にさらに力を与えていた。
「――構うな。奴らを始末しろ」
宰相の指が動いた。
その合図に応じるように、周囲の空間に潜んでいた強化兵たちが現れる。
全身から異常な気配を発し、紅く濁った目を光らせていた。
「また、あの研究所の……!」
ユリウスが目を細め、剣を抜いた。
「来いよ……全部、切り伏せてやる!」
シグが真正面から突っ込む。
強化兵が大剣を振り下ろすが、シグはそれを真正面から受け止め――
「うおおおおおっ!!」
火花を散らしながら力で押し返す。
その隙に、ユリウスが精密な魔術を放つ。
「今!」
「了解!」
フィンが素早く敵の背後を取って聖属性魔法を浴びせる。
一撃で沈まぬ相手に対して、連携の技を重ねる三人。
「くっ……!」
ヴィクトルも、気力を振り絞り立ち上がる。
剣を抜いたその手は震えていたが、
視線は決して濁っていなかった。
「お前に……ルナ様の力は渡さない」
ふらつく足で、それでも前へ。
魔法陣が不規則に跳ね、攻撃のように魔素が飛び散る。
「っ――ッ……!」
その奔流を防ぐように、ユリウスが剣を翳して前に出る。
「ヴィクトル、下がってろ!」
「いいや……もう、止める方法は……力で封じるしかない」
三人の動きに合わせ、ヴィクトルが割って入る。
剣を交差させた四人の前に、
宰相の影が、笑みを浮かべて立ちふさがる。
「愚かだな。
この空間すべてが、私の掌の上だとわかっていないのか?」
宰相の手のひらが紅く輝いた。
次の瞬間、魔法陣の一部が雷光のように弾け、
四人の立つ足元を激しく揺らす。
「くっ……!」
「下がれッ!」
爆風が吹き荒れ、
空間が軋み、結界が崩れ始める。
その中――ユリウスが叫んだ。
「もう、長くは持たない! この魔法陣……暴走する!」
「だったら、止めてやるしかねぇだろ……ッ!」
シグが強化兵の胸元に渾身の斬撃を叩き込む。
「ルナを、これ以上利用させてたまるか!」
ユリウスの魔術が、宰相を囲む術式を一つ一つ切り崩していく。
ヴィクトルも、ふらつきながら宰相の前に立つ。
「……あなたが何を望もうと、ここは……通さない」
「ならば――消えてもらおう」
紅の力が、再び放たれた。
そして、その渦の中へ、剣と魔術が交差しながら飛び込んでいく。
紅く輝く魔法陣が、再び震え始めた。
その中心――祭壇の上に横たわるルナフィエラの身体が、
まるで光そのものに変わるかのように、淡く発光を始める。
宰相が静かに両手を広げた。
「――ついに、器は満ちた」
その声とともに、空間がぐらりと歪む。
魔力が、祭壇から宰相の方へと流れ始めていた。
赤黒い光の筋が、糸のように彼の腕に絡みつく。
「やめろ……! ルナ様の力を……!」
ヴィクトルが声を振り絞って叫ぶ。
ユリウスたちも構えを崩さず、一歩でも踏み出そうとするが――
魔法陣から放たれる反撃の魔素が、まるで結界のように彼らをはじいた。
「……もう、止められはしない。
この力は、もはや“意思”を持たぬ。
命を失ってなお、ただ吸い上げられるだけの魔力だ」
黒幕の口元が、冷たい笑みに歪む。
「これを私が取り込み、新たな存在を作る。
血も感情もいらない、純粋な力の体現者をな」
そのときだった。
「――貴様、それでも人間か」
低く、抑えた怒気を帯びた声が場を割った。
ヴィクトルの父。
これまで一歩引いて儀式を見守っていた彼が、
静かに前に歩み出る。
「誇りも、矜持も、命の重さも忘れ、
ただ力に縋るとは……どれだけ浅ましい」
「……高位貴族の御身が、今さら正義面とは滑稽だな」
宰相が嘲るように目を細める。
だが、ヴィクトルの父の目には、一切の揺らぎがなかった。
「――確かに私は、姫様の力を用いて我が種を蘇らせようとした。
だが、それは“我らの誇り”としての意志だった」
彼の手が、ゆっくりと腰の剣にかかる。
「その力を道具としか見ない貴様と、
私は断じて相容れぬ」
瞬間、彼の周囲に黒い魔力が立ち昇る。
鋭く研ぎ澄まされたヴァンパイアの殺気。
この場にいる誰もが、本能的に感じ取った。
「……父上……」
ヴィクトルの目に、わずかに驚きが滲んだ。
「……姫様の力は“お前のもの”ではない。
それだけは、断じて許さん」
彼は、黒幕と結界の狭間に一閃、踏み込む。
「通さぬ。ここから先は、誰にも――」
その動きに呼応するように、ユリウスたちも再び剣を構えた。
「……共闘だな、一時的にでも」
「仕方ねぇ……今はそれでいい」
「ルナを守れるなら、誰とでも組む」
四人と、ヴィクトルの父――
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