【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第五章:みんなと歩く日常

第80話・やさしさのぬくもりに、包まれて

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朝の光が、そっとカーテンを透かして差し込んでいた。
鳥のさえずりが微かに聞こえる。
けれど、それは遠く、夢の向こう側のようだった。

ルナフィエラは、ふわふわとした毛布にくるまれながら、ぬくもりの中で微かにまどろんでいた。

すぐそばにある体温。
やさしくて、あったかくて、心地いい気配。

「……おはよう、ルナ」

耳元で囁くような声に、まつげがふるりと揺れる。

「ん……ふぃん……?」

寝ぼけた声で名前を呼ぶと、すぐに頬にふわりとキスが落ちた。

「うん、フィンだよ。……よく眠れた?」

「ん……うん……あったかかった……」

うつらうつらしながら返すルナフィエラに、フィンはくすっと笑った。

「そっか。じゃあ、もう少しだけ、ぬくぬくしようか」

言いながら、彼はルナフィエラの髪をそっと梳くように撫で、額にやさしくキスを落とす。

その動きが心地よくて、ルナフィエラは思わず小さく身を寄せた。
ぎゅ、と抱きしめられると、胸元にすっぽり収まる。

「……フィン、ずるい……」

「ん? なにが?」

「こうやって……ふわふわにするの……」

「ふふ、ルナがふわふわになるの、好きだから」

まるで子守歌のような声。
次は頬に、そしてもう一度額に、キスが降ってくる。

(なんでだろう、フィンだと……こんなに、安心する)

ヴィクトルの隣は守られてる感じがして、
ユリウスは少し緊張するようなときめきがある。

でもフィンは――
ただそこにいてくれるだけで、心がほどけていく。

「ねぇ、まだ眠い?」

「ん……まだ……」

「じゃあ、もうちょっとだけ、ぎゅってしててもいい?」

こくん、と小さく頷くと、すぐにフィンの腕がぎゅっとまわってくる。

ぬくもりに包まれながら、
ルナフィエラはそのまま、再びゆっくりとまぶたを閉じた。

さっきより少し落ち着いた息が、フィンの胸に触れる。
フィンはその髪にもう一度キスをして、そっと囁いた。

「……ルナのこと、ほんとに大好きだよ」

返事はなかったけれど、腕の中のルナフィエラが小さくくすぐったそうに動いた。

それが、なによりの答えだった。


ルナフィエラは朝の支度の時間をとうに過ぎても姿を見せなかった。
廊下に立つヴィクトルは、静かに扉を見つめている。

(……いつもなら、この時間には……)

ふと、背後で足音が止まる。

「来てたのか」

淡々とした声。振り返ると、そこにはシグの姿があった。

「……ああ。様子を見に」

「開けるぞ」

それだけ言って、シグは扉に手をかける。
ヴィクトルが止める間もなく、ためらいのない動きでノブが回され、扉が静かに開いた。

そして――

中に広がっていたのは、あまりに穏やかで、あたたかな光景だった。

朝の柔らかな日差しがカーテンを通して差し込み、ベッドの上には、静かに寄り添って眠るルナフィエラとフィンの姿。

ぴったりと抱き合いながら、ルナフィエラは安心しきった顔で眠っていた。
その頬には、うっすらと笑みのような気配さえ浮かんでいる。

フィンの腕が、守るようにルナフィエラの身体を包んでいた。

それを見たヴィクトルの足が、ふと止まる。

「……ルナ様……」

声にならないほど静かな声が漏れた。

その表情が、あまりにも幸せそうだったから。
まるで、何ひとつ不安のない夢の中にいるかのような、無垢な寝顔。

呼びかけるべきか――
起こすべきか――

ヴィクトルの指先が、わずかに揺れる。

けれど。

「……待つか」

ぽつりと落とされたのは、シグのひとこと。

彼はベッドをちらりと見やったあと、何も言わず部屋の奥のソファに向かうと、
そのまま腰を下ろした。

まるで「起きるまで見守る」と言わんばかりに、腕を組んで、目を閉じる。

ヴィクトルもまた、その光景に目を伏せ、
結局、声をかけることなく扉の内側へと足を進めた。

静寂の中に、ルナの小さな寝息だけが響いていた。
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