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第六章:流れる鼓動、重なる願い
第99話・想いを重ねた夜、交わした約束
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血の儀を終えたあとも、ルナフィエラはヴィクトルのそばを離れようとはしなかった。
まるで名残惜しむように身体を寄せると、小さく囁く。
「ヴィクトル……膝、借りてもいい?」
「……ええ、どうぞ。好きなだけ」
小さく頷いた彼女は、ヴィクトルの腕に導かれるまま、そっと彼の膝の上に身を預けた。
彼の胸元に寄りかかり、ゆっくりと目を閉じる。
鼓動が、すぐ耳元で響いている。
静かで、穏やかで、何よりも……あたたかい音。
その温もりだけで、身体の奥からふっと力が抜けていくのがわかった。
「……あったかい……」
囁くような声が、彼の胸元に微かに触れる。
ヴィクトルは何も言わず、ただルナフィエラの細い肩をそっと抱き寄せた。
その動きすら、彼女にとっては心地よい揺りかごのようだった。
ふたりの間に、しばらく言葉はなかった。
静かな寝室に、寄り添う呼吸だけが穏やかに重なっていく。
やがて──
「……すぅ……」
小さな寝息が、ヴィクトルの胸元で静かに漏れた。
ルナフィエラはそのまま眠りに落ちていた。
不安も、孤独も、すべてが溶けて消えていくように。
ただ“ヴィクトルがここにいる”──その事実だけが、彼女を深い安らぎへと導いていた。
ヴィクトルは、微動だにせず、その眠りを守るようにそっと背に手を添える。
「……おやすみなさい、ルナ様」
その声も、囁きも、きっと彼女には届いていない。
けれど、それでいい。
この温もりが、いつか彼女の中に残ってくれれば──
それだけで、騎士としても、男としても、この上ない幸せだった。
ルナフィエラの寝息が、すう……と静かに響く。
その安らかな呼吸に耳を澄ませながら、ヴィクトルは膝の上の彼女を、じっと見つめていた。
(もう、大丈夫だな)
眉間の皺も、唇の震えも、今はもうない。
まるですべての不安が溶けたように、ルナフィエラは静かに、幸せそうに眠っていた。
ヴィクトルはそっと腕をまわし、立ち上がる。
その細く軽い身体を慎重に抱きかかえ、ゆっくりとベッドへ運ぶ。
月明かりが差し込む静かな部屋。
柔らかな布団の上に彼女をそっと寝かせ、毛布をかける。
白銀の髪を指先で整えながら、ヴィクトルはふと息を吐いた。
(……ようやく、伝えられた)
これまで押し殺していた想いを、言葉にして彼女へ届けられたこと。
その証のように、ルナフィエラの瞼の裏には、ほんのりと涙の跡が残っていた。
(もう……迷わせたくない。傷つけたくない)
彼はゆっくりとベッドの反対側へ回り込み、ルナフィエラの隣に身を横たえる。
──添い寝当番として過ごす夜。
けれど、今夜は少しだけ違っていた。
躊躇なくルナフィエラの背に腕をまわし、そっと抱き寄せる。
彼女の身体は、自然とその腕にぴたりと収まった。
まるで、最初からこうなることが決まっていたように。
(愛おしい……)
その小さな体温に、心がじんわりと溶けていく。
ヴィクトルの胸に寄り添ったルナフィエラは、安心しきったように深く息を吐いた。
すっかり委ねられたその寝息ひとつに、満ち足りた想いがにじむ。
「……おやすみなさい、ルナ様」
低く、優しい声で囁きながら、ヴィクトルは彼女の髪にそっとキスをした。
やがて自らも静かに目を閉じる。
ただ寄り添い、互いのぬくもりを分け合うようにして、夜は静かに更けていった。
翌朝。
窓から差し込むやわらかな陽光が、薄いカーテン越しにベッドを淡く包んでいた。
ヴィクトルはすでに目を覚ましていたが、腕の中のルナフィエラがまだ微かな寝息を立てているのを感じ、それ以上動こうとはしなかった。
(……安心しきった寝顔だ)
胸元にすっぽりと収まるその身体は、静かに呼吸を繰り返している。
ヴィクトルはそっと、彼女の髪を撫でた。
白銀の髪が、指先にやさしく触れる。
(……こんな朝が、永遠に続けばいいのにな)
声には出さずに呟いたその願いを、風がさらっていった。
やがて。
「……ん……」
ルナフィエラが、小さく身じろぎした。
頬が彼の胸元に擦れ、温もりに包まれたように、微かに口元が緩む。
「……ヴィ、クトル……?」
眠たげな声が、彼の名を呼ぶ。
ヴィクトルは小さく笑みを浮かべた。
「おはようございます、ルナ様。よく眠れましたか?」
「……うん……あったかくて……ぐっすり眠れた……」
ぼんやりとした声でそう返しながら、ルナフィエラはそのまま彼の胸に顔を埋める。
「……ずっと、こうしてたいな……」
その囁きに、ヴィクトルの腕が自然と強くなった。
「……ヴィクトル、もうちょっとだけ……ぎゅってしてて?」
「ええ、喜んで」
ふたりはしばし、言葉もなくぬくもりを交わし合った。
心臓の音、指先の温度、吐息の優しさ──
そのすべてが、言葉以上の想いを伝えていた。
やがて、ルナフィエラがぽつりと呟く。
「ヴィクトル……あのね」
「はい」
「昨日、ちゃんと気持ちを伝えてくれてありがとう。……嬉しかった」
ヴィクトルは目を閉じ、小さく頷いた。
「……私の方こそ。ようやく、お伝えすることができて……本当に、救われたのは私のほうです」
そして、そっとルナフィエラの額に口づけた。
それは甘くて、静かで──けれど、深く想いのこもったキスだった。
「これからも……どうか、そばにいさせてください。貴女が望む限り、いつまでも」
「……うん。ずっとそばにいてね、ヴィクトル」
ふたりの間に、再び静寂が降りる。
けれどその沈黙は、優しさと安らぎに満ちた、穏やかな幸福そのものだった。
まるで名残惜しむように身体を寄せると、小さく囁く。
「ヴィクトル……膝、借りてもいい?」
「……ええ、どうぞ。好きなだけ」
小さく頷いた彼女は、ヴィクトルの腕に導かれるまま、そっと彼の膝の上に身を預けた。
彼の胸元に寄りかかり、ゆっくりと目を閉じる。
鼓動が、すぐ耳元で響いている。
静かで、穏やかで、何よりも……あたたかい音。
その温もりだけで、身体の奥からふっと力が抜けていくのがわかった。
「……あったかい……」
囁くような声が、彼の胸元に微かに触れる。
ヴィクトルは何も言わず、ただルナフィエラの細い肩をそっと抱き寄せた。
その動きすら、彼女にとっては心地よい揺りかごのようだった。
ふたりの間に、しばらく言葉はなかった。
静かな寝室に、寄り添う呼吸だけが穏やかに重なっていく。
やがて──
「……すぅ……」
小さな寝息が、ヴィクトルの胸元で静かに漏れた。
ルナフィエラはそのまま眠りに落ちていた。
不安も、孤独も、すべてが溶けて消えていくように。
ただ“ヴィクトルがここにいる”──その事実だけが、彼女を深い安らぎへと導いていた。
ヴィクトルは、微動だにせず、その眠りを守るようにそっと背に手を添える。
「……おやすみなさい、ルナ様」
その声も、囁きも、きっと彼女には届いていない。
けれど、それでいい。
この温もりが、いつか彼女の中に残ってくれれば──
それだけで、騎士としても、男としても、この上ない幸せだった。
ルナフィエラの寝息が、すう……と静かに響く。
その安らかな呼吸に耳を澄ませながら、ヴィクトルは膝の上の彼女を、じっと見つめていた。
(もう、大丈夫だな)
眉間の皺も、唇の震えも、今はもうない。
まるですべての不安が溶けたように、ルナフィエラは静かに、幸せそうに眠っていた。
ヴィクトルはそっと腕をまわし、立ち上がる。
その細く軽い身体を慎重に抱きかかえ、ゆっくりとベッドへ運ぶ。
月明かりが差し込む静かな部屋。
柔らかな布団の上に彼女をそっと寝かせ、毛布をかける。
白銀の髪を指先で整えながら、ヴィクトルはふと息を吐いた。
(……ようやく、伝えられた)
これまで押し殺していた想いを、言葉にして彼女へ届けられたこと。
その証のように、ルナフィエラの瞼の裏には、ほんのりと涙の跡が残っていた。
(もう……迷わせたくない。傷つけたくない)
彼はゆっくりとベッドの反対側へ回り込み、ルナフィエラの隣に身を横たえる。
──添い寝当番として過ごす夜。
けれど、今夜は少しだけ違っていた。
躊躇なくルナフィエラの背に腕をまわし、そっと抱き寄せる。
彼女の身体は、自然とその腕にぴたりと収まった。
まるで、最初からこうなることが決まっていたように。
(愛おしい……)
その小さな体温に、心がじんわりと溶けていく。
ヴィクトルの胸に寄り添ったルナフィエラは、安心しきったように深く息を吐いた。
すっかり委ねられたその寝息ひとつに、満ち足りた想いがにじむ。
「……おやすみなさい、ルナ様」
低く、優しい声で囁きながら、ヴィクトルは彼女の髪にそっとキスをした。
やがて自らも静かに目を閉じる。
ただ寄り添い、互いのぬくもりを分け合うようにして、夜は静かに更けていった。
翌朝。
窓から差し込むやわらかな陽光が、薄いカーテン越しにベッドを淡く包んでいた。
ヴィクトルはすでに目を覚ましていたが、腕の中のルナフィエラがまだ微かな寝息を立てているのを感じ、それ以上動こうとはしなかった。
(……安心しきった寝顔だ)
胸元にすっぽりと収まるその身体は、静かに呼吸を繰り返している。
ヴィクトルはそっと、彼女の髪を撫でた。
白銀の髪が、指先にやさしく触れる。
(……こんな朝が、永遠に続けばいいのにな)
声には出さずに呟いたその願いを、風がさらっていった。
やがて。
「……ん……」
ルナフィエラが、小さく身じろぎした。
頬が彼の胸元に擦れ、温もりに包まれたように、微かに口元が緩む。
「……ヴィ、クトル……?」
眠たげな声が、彼の名を呼ぶ。
ヴィクトルは小さく笑みを浮かべた。
「おはようございます、ルナ様。よく眠れましたか?」
「……うん……あったかくて……ぐっすり眠れた……」
ぼんやりとした声でそう返しながら、ルナフィエラはそのまま彼の胸に顔を埋める。
「……ずっと、こうしてたいな……」
その囁きに、ヴィクトルの腕が自然と強くなった。
「……ヴィクトル、もうちょっとだけ……ぎゅってしてて?」
「ええ、喜んで」
ふたりはしばし、言葉もなくぬくもりを交わし合った。
心臓の音、指先の温度、吐息の優しさ──
そのすべてが、言葉以上の想いを伝えていた。
やがて、ルナフィエラがぽつりと呟く。
「ヴィクトル……あのね」
「はい」
「昨日、ちゃんと気持ちを伝えてくれてありがとう。……嬉しかった」
ヴィクトルは目を閉じ、小さく頷いた。
「……私の方こそ。ようやく、お伝えすることができて……本当に、救われたのは私のほうです」
そして、そっとルナフィエラの額に口づけた。
それは甘くて、静かで──けれど、深く想いのこもったキスだった。
「これからも……どうか、そばにいさせてください。貴女が望む限り、いつまでも」
「……うん。ずっとそばにいてね、ヴィクトル」
ふたりの間に、再び静寂が降りる。
けれどその沈黙は、優しさと安らぎに満ちた、穏やかな幸福そのものだった。
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