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第60話・似合う、の魔法
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試着室の前で、両手に抱えた服を見下ろし、琴葉は小さく息をのんだ。
「ほんとに……これ、わたしに似合うのかな……」
膝上丈のワンピースや、鮮やかな色のニット。
これまでの琴葉は、体調を優先して、体を締めつけず、肌を隠す服ばかりを選んできた。
けれど今、腕の中にあるのは、綾花と真奈が「絶対かわいいって!」と笑顔で差し出してくれた服たち。
――自分ひとりなら、きっと手に取らなかった。
そう思うのに、不思議と胸の奥は温かい。
「似合うよ」と言われたことが、思っていた以上に嬉しくて。
それなら、少しだけ挑戦してみたい、と思えた。
着替え終えて、そっとカーテンを開ける。
途端に、綾花と真奈の視線がぱっと集まった。
「わあ……! めっちゃ似合ってる!」
真奈が両手を叩きながら声を上げる。
「うん、上品なのに可愛いね。ファーがあると冬っぽくて華やかだし、写真映えすると思うよ」
綾花も頷いて目を細めた。
頬が一気に熱くなる。
膝上丈のスカートなんて、これまで一度も履いたことがない。
落ち着かない気持ちは確かにあるのに――鏡に映る自分が、いつもより少し“大人っぽく”見えることに気づいて、胸の奥がざわりと揺れた。
続けて、赤のニットと黒のフリルスカートに着替えて出ると、2人のテンションはさらに上がった。
「やばい、それ! めっちゃかわいい!」
「赤が映えるね。普段の琴葉ちゃんよりちょっと大胆で、いい意味でドキッとする」
琴葉は思わずスカートの裾を指でつまむ。
――こんなの、そうちゃんに見せてもいいのかな。
胸の奥に、小さな不安が芽生える。
けれど同時に、誰かに「似合う」と言われている今の自分を、少し誇らしく思っていることにも気づいてしまった。
「……どっちも可愛くて、決められない……」
鏡の前で肩をすくめると、綾花と真奈が顔を見合わせた。
「それなー!」
「ほんと、可愛いと綺麗、どっちも捨てがたいね」
そう言われるほど、余計に迷ってしまう。
琴葉は唇を噛み、少し考えてから、小さく笑った。
「……じゃあ、両方……買っちゃおうかな」
「えっ、大丈夫なの!?」
真奈が目を丸くし、綾花も思わず笑みをこぼす。
琴葉は服を抱えたまま、少し照れたように視線を落とした。
「……今日、友達と洋服を見に行くって言ったら、お小遣いくれて……。だから大丈夫なの」
「うわ、優しい~!」
真奈が素直に声を上げ、綾花も頷く。
「やっぱり社会人彼氏は違うね。余裕あるし、ちゃんと考えてくれてる感じ」
褒められるたびに胸がくすぐったくなる。
――そうちゃんのおかげで、今ここにいる。
友達と並んで服を選び、笑っている。
その事実が、改めて嬉しかった。
一通り服を見終えたところで、近くのベンチに腰を下ろす。
「ちょっと休もっか」と綾花が言ってくれて、琴葉は小さく頷く。
少し休憩してから、3人はそのまま大型雑貨店へと足を運んだ。
コスメコーナーは、季節限定のパッケージであふれている。
雪の結晶が描かれたボックスや、ラメがきらめくアイシャドウ。
眺めているだけで気分が華やぎ、胸がふわりと浮き立った。
「見て! この限定シャドウ、ラメがすごく綺麗」
真奈が指先で試し塗りをして、光にかざす。
「クリスマスっぽいし、デートにピッタリだよね。彼氏、絶対可愛いって言ってくれると思うよ」
「うんうん、目元が少し華やかになるだけで雰囲気変わるもんね」
綾花も頷きながら、隣のチークを手に取る。
「私は彼とレストラン行くから、こういう上品なカラーにしようかな……。さりげなく大人っぽく見えたらいいなって」
その言葉に、琴葉もそっとチークを試してみる。
頬にふわりと色がのっただけなのに、鏡の中の自分が、いつもより柔らかく微笑んでいるように見えた。
「……すごい。雰囲気、変わった……」
「でしょ? 琴葉ちゃん、そういうの似合うよ」
真奈が目を輝かせ、綾花も優しく微笑む。
「ボディクリームもあるよ。これ、いい匂い!」
真奈がテスターを手に塗り、甘くてやわらかな香りを漂わせる。
「これつけてたら、絶対抱きしめたくなるやつだよね」
「そうそう。さりげなく香るのがいいの。彼氏に“あれ、いい匂いする”って思われたい」
弾む2人の声に、琴葉の胸も静かに高鳴る。
(……そうちゃんも、気づいてくれるかな。
少しでも、“可愛い”って思ってもらえたら……)
そう思った瞬間、胸の奥が、くすぐったくあたたかくなった。
「ほんとに……これ、わたしに似合うのかな……」
膝上丈のワンピースや、鮮やかな色のニット。
これまでの琴葉は、体調を優先して、体を締めつけず、肌を隠す服ばかりを選んできた。
けれど今、腕の中にあるのは、綾花と真奈が「絶対かわいいって!」と笑顔で差し出してくれた服たち。
――自分ひとりなら、きっと手に取らなかった。
そう思うのに、不思議と胸の奥は温かい。
「似合うよ」と言われたことが、思っていた以上に嬉しくて。
それなら、少しだけ挑戦してみたい、と思えた。
着替え終えて、そっとカーテンを開ける。
途端に、綾花と真奈の視線がぱっと集まった。
「わあ……! めっちゃ似合ってる!」
真奈が両手を叩きながら声を上げる。
「うん、上品なのに可愛いね。ファーがあると冬っぽくて華やかだし、写真映えすると思うよ」
綾花も頷いて目を細めた。
頬が一気に熱くなる。
膝上丈のスカートなんて、これまで一度も履いたことがない。
落ち着かない気持ちは確かにあるのに――鏡に映る自分が、いつもより少し“大人っぽく”見えることに気づいて、胸の奥がざわりと揺れた。
続けて、赤のニットと黒のフリルスカートに着替えて出ると、2人のテンションはさらに上がった。
「やばい、それ! めっちゃかわいい!」
「赤が映えるね。普段の琴葉ちゃんよりちょっと大胆で、いい意味でドキッとする」
琴葉は思わずスカートの裾を指でつまむ。
――こんなの、そうちゃんに見せてもいいのかな。
胸の奥に、小さな不安が芽生える。
けれど同時に、誰かに「似合う」と言われている今の自分を、少し誇らしく思っていることにも気づいてしまった。
「……どっちも可愛くて、決められない……」
鏡の前で肩をすくめると、綾花と真奈が顔を見合わせた。
「それなー!」
「ほんと、可愛いと綺麗、どっちも捨てがたいね」
そう言われるほど、余計に迷ってしまう。
琴葉は唇を噛み、少し考えてから、小さく笑った。
「……じゃあ、両方……買っちゃおうかな」
「えっ、大丈夫なの!?」
真奈が目を丸くし、綾花も思わず笑みをこぼす。
琴葉は服を抱えたまま、少し照れたように視線を落とした。
「……今日、友達と洋服を見に行くって言ったら、お小遣いくれて……。だから大丈夫なの」
「うわ、優しい~!」
真奈が素直に声を上げ、綾花も頷く。
「やっぱり社会人彼氏は違うね。余裕あるし、ちゃんと考えてくれてる感じ」
褒められるたびに胸がくすぐったくなる。
――そうちゃんのおかげで、今ここにいる。
友達と並んで服を選び、笑っている。
その事実が、改めて嬉しかった。
一通り服を見終えたところで、近くのベンチに腰を下ろす。
「ちょっと休もっか」と綾花が言ってくれて、琴葉は小さく頷く。
少し休憩してから、3人はそのまま大型雑貨店へと足を運んだ。
コスメコーナーは、季節限定のパッケージであふれている。
雪の結晶が描かれたボックスや、ラメがきらめくアイシャドウ。
眺めているだけで気分が華やぎ、胸がふわりと浮き立った。
「見て! この限定シャドウ、ラメがすごく綺麗」
真奈が指先で試し塗りをして、光にかざす。
「クリスマスっぽいし、デートにピッタリだよね。彼氏、絶対可愛いって言ってくれると思うよ」
「うんうん、目元が少し華やかになるだけで雰囲気変わるもんね」
綾花も頷きながら、隣のチークを手に取る。
「私は彼とレストラン行くから、こういう上品なカラーにしようかな……。さりげなく大人っぽく見えたらいいなって」
その言葉に、琴葉もそっとチークを試してみる。
頬にふわりと色がのっただけなのに、鏡の中の自分が、いつもより柔らかく微笑んでいるように見えた。
「……すごい。雰囲気、変わった……」
「でしょ? 琴葉ちゃん、そういうの似合うよ」
真奈が目を輝かせ、綾花も優しく微笑む。
「ボディクリームもあるよ。これ、いい匂い!」
真奈がテスターを手に塗り、甘くてやわらかな香りを漂わせる。
「これつけてたら、絶対抱きしめたくなるやつだよね」
「そうそう。さりげなく香るのがいいの。彼氏に“あれ、いい匂いする”って思われたい」
弾む2人の声に、琴葉の胸も静かに高鳴る。
(……そうちゃんも、気づいてくれるかな。
少しでも、“可愛い”って思ってもらえたら……)
そう思った瞬間、胸の奥が、くすぐったくあたたかくなった。
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