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第95話・煌めく夜に、あなたと
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ホテルのエントランスをくぐった瞬間、外の喧騒とは異なる、静かで洗練された空気がふたりを包んだ。
煌びやかなロビーには、すでに正月を意識した装飾が施され、行き交う人々もどこか品のある装いをしている。
その中に、澪と崇雅も自然と溶け込んでいた。
目的のレストランは、ホテル最上階にある高級ダイニング。
予約名を告げると、ふたりは係の案内に従い、エレベーターで上階へ。
エレベーターの扉が開くと、足音が沈み込むほど厚みのある絨毯が敷かれたフロアが広がっていた。
個室ではないが、窓際の席はゆったりと仕切られ、落ち着いた空間が保たれている。
その席に腰を下ろした瞬間、澪は大きなガラス越しに広がる夜景に目を奪われた。
東京の街が、宝石を散りばめたように煌めいている。
「……すごい。こんな景色、初めて見ました」
思わず漏れた澪の声に、崇雅が穏やかに微笑む。
「ここの夜景は、俺も気に入ってる。……澪と一緒に見たくてここを選んだ」
「……ありがとうございます。連れてきてくださって……」
テーブルには、すでにナプキンと前菜、そしてスパークリングウォーターが整えられていた。
ディナーは、和のエッセンスを取り入れた創作フレンチのコース。
素材のひとつひとつに繊細なこだわりが感じられ、目にも美しい品々が次々と運ばれてくる。
ふと、澪がナプキンの上で指を絡めながら、小さく切り出した。
「……今日は、その……すごく素敵なレストランに連れてきていただいたうえに……プレゼントまでいただいて……」
「……気にしすぎだ」
「……でも、本当に嬉しかったです。このブレスレットも……ずっと大切にします」
崇雅はナイフを置いて、グラスを手にした。
「澪がつけてくれてるだけで、俺は充分」
「……あの、それで……」
言い淀んだ末、澪はバッグの中から小さな箱を取り出す。
「さっき、選んだネクタイピン……あらためて、今日のお礼として受け取ってください」
崇雅は静かに箱を受け取り、ふたを開ける。
中には、つい先ほど選んだ、上質なシルバーのネクタイピンが丁寧に収められていた。
「……ありがとう、澪」
「気に入っていただけたなら……嬉しいです」
「もちろん。ちゃんと使うよ。これを見るたびに、今日を思い出すだろうな」
テーブル越しに微笑み合うふたりの間に、穏やかな時間が流れていく。
煌めく夜景の中、その温度だけが確かに心を満たしていた。
料理が進むにつれ、テーブルには最後のメインが運ばれてきた。
崇雅はスパークリングウォーターのグラスを手に取りながら、ちらと澪の方を見る。
彼女のグラスには、淡いロゼのスパークリング。
少しだけ口にして、ふわっとした笑みを浮かべている。
「……こういう時間って、なんだか不思議ですね」
「ん?」
「最初は緊張してたのに……今は、すごく落ち着いてて。楽しくて……気づいたら、ずっと笑ってる気がしてます」
その言葉に、崇雅の表情がやわらぐ。
「……それならよかった。澪が緊張してたなんて、気づかなかったけどな」
「……ちょっとだけ震えてましたよ、最初」
「そうか? ……なら、今は?」
「今はもう……すっかり安心してます」
恥ずかしそうに伏し目がちになる澪。
頬がほんのり赤いのは、ワインのせいか、それとも――。
「澪が楽しめているなら、それでいい。……でも、酔ってないか?」
「すこーしだけ……でも大丈夫です。ほら、まだメインもデザートも残ってますし……」
澪はそう言って、ナイフとフォークを持ち直した。
(……ちゃんと楽しみにしてくれてたんだな)
崇雅は内心で自分の焦りを戒める。
甘えたような目で見上げられるたびに理性は揺れるが、今夜は澪のための時間だ。
だからこそ、彼女が心ゆくまで楽しめるように。
スパークリングウォーターを口にしながら、静かに料理を味わい始める。
「……食後のデザートも、きっと気に入ると思う」
「ほんとですか? 楽しみ……!」
崇雅の一言に、澪はぱっと顔を明るくし、ふわりと笑う。
(……この時間を、ちゃんと最後まで守りきろう)
彼女の幸せそうな顔が、何よりのプレゼントだから。
レストランの照明が少し落ち着き、テーブルに運ばれてきたのは、鮮やかなベリーソースが添えられたガトーショコラと、淡いピンクのルビーグレープフルーツのジュレ。
「……わあ、きれい……」
澪は目を輝かせてスプーンを手に取る。
アルコールで火照った頬に、デザートの冷たさが心地よかった。
「甘すぎなくて、すっごくおいしいです……」
「よかった」
その無邪気な笑顔に、崇雅は思わず目を細める。
澪が笑うたびに、どれだけの理性が削られていくのか――もう、数え切れなかった。
食後、ふたりが席を立ったとき、澪の足取りにほんのわずかなふらつきが混じっていた。
「澪、大丈夫か?」
「ん……だいじょうぶです……ふわふわするだけ……」
そう言いながらも、澪は崇雅の腕に自然に寄りかかる。
華やかな装いに、柔らかな香りがふわりと混ざって、崇雅の本能をじわりと刺激する。
彼はそっと腰に手を回し、低く息を吐いた。
「ほら、もうちょっとしっかり。……転けて泣いても知らないぞ」
「転けませんよ……。崇雅さんが、いるから……」
「……そうだけどな」
こんなときまで全幅の信頼を向けてくる彼女に、崇雅は笑うしかなかった。
ふらふらと歩く澪の身体をしっかりと抱き寄せながら、人気のない駐車場の奥へとゆっくりと進んでいく。
「……帰ったら、すぐ横になれ。俺が全部やるから」
「……ぜんぶ……?」
「言わせるな」
澪のふわりと笑った声に、崇雅の眉がわずかに跳ねた。
(家まで絶対離さない)
そう思いながら、崇雅は澪を抱き寄せた腕に、少しだけ力をこめた。
煌びやかなロビーには、すでに正月を意識した装飾が施され、行き交う人々もどこか品のある装いをしている。
その中に、澪と崇雅も自然と溶け込んでいた。
目的のレストランは、ホテル最上階にある高級ダイニング。
予約名を告げると、ふたりは係の案内に従い、エレベーターで上階へ。
エレベーターの扉が開くと、足音が沈み込むほど厚みのある絨毯が敷かれたフロアが広がっていた。
個室ではないが、窓際の席はゆったりと仕切られ、落ち着いた空間が保たれている。
その席に腰を下ろした瞬間、澪は大きなガラス越しに広がる夜景に目を奪われた。
東京の街が、宝石を散りばめたように煌めいている。
「……すごい。こんな景色、初めて見ました」
思わず漏れた澪の声に、崇雅が穏やかに微笑む。
「ここの夜景は、俺も気に入ってる。……澪と一緒に見たくてここを選んだ」
「……ありがとうございます。連れてきてくださって……」
テーブルには、すでにナプキンと前菜、そしてスパークリングウォーターが整えられていた。
ディナーは、和のエッセンスを取り入れた創作フレンチのコース。
素材のひとつひとつに繊細なこだわりが感じられ、目にも美しい品々が次々と運ばれてくる。
ふと、澪がナプキンの上で指を絡めながら、小さく切り出した。
「……今日は、その……すごく素敵なレストランに連れてきていただいたうえに……プレゼントまでいただいて……」
「……気にしすぎだ」
「……でも、本当に嬉しかったです。このブレスレットも……ずっと大切にします」
崇雅はナイフを置いて、グラスを手にした。
「澪がつけてくれてるだけで、俺は充分」
「……あの、それで……」
言い淀んだ末、澪はバッグの中から小さな箱を取り出す。
「さっき、選んだネクタイピン……あらためて、今日のお礼として受け取ってください」
崇雅は静かに箱を受け取り、ふたを開ける。
中には、つい先ほど選んだ、上質なシルバーのネクタイピンが丁寧に収められていた。
「……ありがとう、澪」
「気に入っていただけたなら……嬉しいです」
「もちろん。ちゃんと使うよ。これを見るたびに、今日を思い出すだろうな」
テーブル越しに微笑み合うふたりの間に、穏やかな時間が流れていく。
煌めく夜景の中、その温度だけが確かに心を満たしていた。
料理が進むにつれ、テーブルには最後のメインが運ばれてきた。
崇雅はスパークリングウォーターのグラスを手に取りながら、ちらと澪の方を見る。
彼女のグラスには、淡いロゼのスパークリング。
少しだけ口にして、ふわっとした笑みを浮かべている。
「……こういう時間って、なんだか不思議ですね」
「ん?」
「最初は緊張してたのに……今は、すごく落ち着いてて。楽しくて……気づいたら、ずっと笑ってる気がしてます」
その言葉に、崇雅の表情がやわらぐ。
「……それならよかった。澪が緊張してたなんて、気づかなかったけどな」
「……ちょっとだけ震えてましたよ、最初」
「そうか? ……なら、今は?」
「今はもう……すっかり安心してます」
恥ずかしそうに伏し目がちになる澪。
頬がほんのり赤いのは、ワインのせいか、それとも――。
「澪が楽しめているなら、それでいい。……でも、酔ってないか?」
「すこーしだけ……でも大丈夫です。ほら、まだメインもデザートも残ってますし……」
澪はそう言って、ナイフとフォークを持ち直した。
(……ちゃんと楽しみにしてくれてたんだな)
崇雅は内心で自分の焦りを戒める。
甘えたような目で見上げられるたびに理性は揺れるが、今夜は澪のための時間だ。
だからこそ、彼女が心ゆくまで楽しめるように。
スパークリングウォーターを口にしながら、静かに料理を味わい始める。
「……食後のデザートも、きっと気に入ると思う」
「ほんとですか? 楽しみ……!」
崇雅の一言に、澪はぱっと顔を明るくし、ふわりと笑う。
(……この時間を、ちゃんと最後まで守りきろう)
彼女の幸せそうな顔が、何よりのプレゼントだから。
レストランの照明が少し落ち着き、テーブルに運ばれてきたのは、鮮やかなベリーソースが添えられたガトーショコラと、淡いピンクのルビーグレープフルーツのジュレ。
「……わあ、きれい……」
澪は目を輝かせてスプーンを手に取る。
アルコールで火照った頬に、デザートの冷たさが心地よかった。
「甘すぎなくて、すっごくおいしいです……」
「よかった」
その無邪気な笑顔に、崇雅は思わず目を細める。
澪が笑うたびに、どれだけの理性が削られていくのか――もう、数え切れなかった。
食後、ふたりが席を立ったとき、澪の足取りにほんのわずかなふらつきが混じっていた。
「澪、大丈夫か?」
「ん……だいじょうぶです……ふわふわするだけ……」
そう言いながらも、澪は崇雅の腕に自然に寄りかかる。
華やかな装いに、柔らかな香りがふわりと混ざって、崇雅の本能をじわりと刺激する。
彼はそっと腰に手を回し、低く息を吐いた。
「ほら、もうちょっとしっかり。……転けて泣いても知らないぞ」
「転けませんよ……。崇雅さんが、いるから……」
「……そうだけどな」
こんなときまで全幅の信頼を向けてくる彼女に、崇雅は笑うしかなかった。
ふらふらと歩く澪の身体をしっかりと抱き寄せながら、人気のない駐車場の奥へとゆっくりと進んでいく。
「……帰ったら、すぐ横になれ。俺が全部やるから」
「……ぜんぶ……?」
「言わせるな」
澪のふわりと笑った声に、崇雅の眉がわずかに跳ねた。
(家まで絶対離さない)
そう思いながら、崇雅は澪を抱き寄せた腕に、少しだけ力をこめた。
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