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第104話・涙の先にある、たしかな愛
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料理が進み、メイン、デザートを終え、食後のコーヒーが運ばれたそのタイミングで、崇雅は椅子からゆっくりと立ち上がる。
「澪」
呼ばれた名前に、澪が少し不思議そうに顔を上げた。
その瞬間。
崇雅はテーブル越しではなく、澪の隣に膝をつき、まっすぐその瞳を見つめた。
「……前に、一度だけ言ったことがあったな。
“俺は澪と結婚したい”って。――でも、あれは俺の想いを口にしただけだった」
澪の瞳が、ゆっくりと見開かれていく。
「……改めて、言わせてくれ。結婚しよう、澪。これから先の人生、全部――澪と一緒に歩いていきたい」
「……受け取ってくれるか?」
そう言って差し出されたのは、小さなベルベットの箱。
中には、大粒のダイヤモンドが中央にあしらわれた婚約指輪が収められていた。
その周囲にも小さな石がちりばめられているが、石の高さは最小限で、日常使いを考慮した繊細なデザイン。
職場でもつけられるよう配慮されているのが、崇雅らしかった。
澪の目に、涙がじんわりと滲んでいく。
「……前に言ってくれたこと、ちゃんと覚えてます。
でも、あのときは……なんだか、夢みたいで……。
でも今は――ちゃんと、全部が実感として、胸に届いてきて……」
涙が込み上げ、澪は口元を押さえながら微笑む。
「私でよければ……これからも、そばにいさせてください」
「……よろしくお願いします」
その言葉を聞いて、崇雅はゆっくりと指輪を取り出し、澪の左手の薬指にそっとはめる。
ピタリと吸いつくようなサイズは、ずっと傍で見守ってきた証でもあった。
「これ……すごく、綺麗ですけど……」
「仕事のときでも邪魔にならないデザインにした。着けたままでも支障ない」
「……でも、ちょっと、豪華で……」
「だからいいんだ。俺のだとわかる“目印”なんだから」
指先から、心の奥にまで染み込んでくるような、温かくて強い気持ち。
崇雅の手が澪の手を包み、目線が合う。
「泣くなって」
「……泣かせたの崇雅さんです……」
「……そうか。じゃあ、責任は取らないとな」
唇に触れるよりも少し手前、額に優しいキス。
それだけで、澪の涙はまたひと粒、頬を滑り落ちた。
帰宅後。
澪はそっとドレスの裾を摘みながら部屋に入った。
ヒールを脱ぎ、ソファへと歩いていく。
ふと振り返ると、崇雅はいつものように後ろから見守っていた。
「……着替える前に、ちょっとだけ、座ってもいいですか?」
崇雅は黙ってうなずき、澪の隣に腰を下ろす。
間接照明に照らされたリビングが、夜の静けさに包まれていた。
しばらく言葉もなく、澪は両手を膝の上に置いたまま、ぽつりと呟く。
「……なんだか、夢みたいです」
その言葉に、崇雅が隣に座りながら笑う。
「夢じゃない。ちゃんと現実だ。指に残ってるだろ」
そう言って、崇雅が澪の左手を取り、薬指の指輪に親指をそっと沿わせる。
そのぬくもりに、澪の胸がきゅっと熱くなる。
「……でも、こんな素敵な指輪……つけたまま寝たら、落ち着かないかも」
「すぐ慣れる。それに……外すなよ」
「え?」
「寝るときも、仕事のときも、ずっと着けていろ。俺が贈ったものだって、ちゃんと見えるように」
そう言って、崇雅は澪の手の甲に、静かにキスを落とす。
「……ほんと、わかりやすい“目印”ですね」
「目印なんだ。わかりやすいほうがいいだろ」
崇雅の低い声が、照れ隠しのように少しだけ掠れる。
「……嬉しかったです。すごく」
声が少しだけ震えていた。
けれどそのまま、澪は静かに身を寄せ、崇雅の胸元に頬をあずける。
しばらくそうして寄り添っていると――
澪はそっと顔を上げて、崇雅の瞳を見つめた。
そして自分から、ゆっくりと唇を重ねる。
一瞬、驚いたように崇雅の目が揺れた。
けれどすぐに、彼の大きな手が澪の頬に添えられ、深く息を吐くように言った。
「……澪」
その声音には、抑えていたものがにじんでいる。
澪は軽く目を伏せながら、そっと呟いた。
「……今日は、崇雅さんに触れていたいです。……だめ、ですか?」
返事の代わりに、崇雅が澪を優しく抱き上げる。
そのまま寝室へと連れていく腕の中で、澪は崇雅の胸に顔を埋める。
そこから先は、ただ静かに、甘く、
互いの想いを確かめ合うような夜が続いた。
眠りにつく直前、澪はふと崇雅の胸元で小さく笑った。
「……指輪、朝起きて、夢になってたらどうしようって、ちょっと思いました」
「夢じゃない。何度でも言ってやる」
低く囁かれた声に、澪はもう一度だけ指輪を見つめてから、そっと目を閉じた。
「澪」
呼ばれた名前に、澪が少し不思議そうに顔を上げた。
その瞬間。
崇雅はテーブル越しではなく、澪の隣に膝をつき、まっすぐその瞳を見つめた。
「……前に、一度だけ言ったことがあったな。
“俺は澪と結婚したい”って。――でも、あれは俺の想いを口にしただけだった」
澪の瞳が、ゆっくりと見開かれていく。
「……改めて、言わせてくれ。結婚しよう、澪。これから先の人生、全部――澪と一緒に歩いていきたい」
「……受け取ってくれるか?」
そう言って差し出されたのは、小さなベルベットの箱。
中には、大粒のダイヤモンドが中央にあしらわれた婚約指輪が収められていた。
その周囲にも小さな石がちりばめられているが、石の高さは最小限で、日常使いを考慮した繊細なデザイン。
職場でもつけられるよう配慮されているのが、崇雅らしかった。
澪の目に、涙がじんわりと滲んでいく。
「……前に言ってくれたこと、ちゃんと覚えてます。
でも、あのときは……なんだか、夢みたいで……。
でも今は――ちゃんと、全部が実感として、胸に届いてきて……」
涙が込み上げ、澪は口元を押さえながら微笑む。
「私でよければ……これからも、そばにいさせてください」
「……よろしくお願いします」
その言葉を聞いて、崇雅はゆっくりと指輪を取り出し、澪の左手の薬指にそっとはめる。
ピタリと吸いつくようなサイズは、ずっと傍で見守ってきた証でもあった。
「これ……すごく、綺麗ですけど……」
「仕事のときでも邪魔にならないデザインにした。着けたままでも支障ない」
「……でも、ちょっと、豪華で……」
「だからいいんだ。俺のだとわかる“目印”なんだから」
指先から、心の奥にまで染み込んでくるような、温かくて強い気持ち。
崇雅の手が澪の手を包み、目線が合う。
「泣くなって」
「……泣かせたの崇雅さんです……」
「……そうか。じゃあ、責任は取らないとな」
唇に触れるよりも少し手前、額に優しいキス。
それだけで、澪の涙はまたひと粒、頬を滑り落ちた。
帰宅後。
澪はそっとドレスの裾を摘みながら部屋に入った。
ヒールを脱ぎ、ソファへと歩いていく。
ふと振り返ると、崇雅はいつものように後ろから見守っていた。
「……着替える前に、ちょっとだけ、座ってもいいですか?」
崇雅は黙ってうなずき、澪の隣に腰を下ろす。
間接照明に照らされたリビングが、夜の静けさに包まれていた。
しばらく言葉もなく、澪は両手を膝の上に置いたまま、ぽつりと呟く。
「……なんだか、夢みたいです」
その言葉に、崇雅が隣に座りながら笑う。
「夢じゃない。ちゃんと現実だ。指に残ってるだろ」
そう言って、崇雅が澪の左手を取り、薬指の指輪に親指をそっと沿わせる。
そのぬくもりに、澪の胸がきゅっと熱くなる。
「……でも、こんな素敵な指輪……つけたまま寝たら、落ち着かないかも」
「すぐ慣れる。それに……外すなよ」
「え?」
「寝るときも、仕事のときも、ずっと着けていろ。俺が贈ったものだって、ちゃんと見えるように」
そう言って、崇雅は澪の手の甲に、静かにキスを落とす。
「……ほんと、わかりやすい“目印”ですね」
「目印なんだ。わかりやすいほうがいいだろ」
崇雅の低い声が、照れ隠しのように少しだけ掠れる。
「……嬉しかったです。すごく」
声が少しだけ震えていた。
けれどそのまま、澪は静かに身を寄せ、崇雅の胸元に頬をあずける。
しばらくそうして寄り添っていると――
澪はそっと顔を上げて、崇雅の瞳を見つめた。
そして自分から、ゆっくりと唇を重ねる。
一瞬、驚いたように崇雅の目が揺れた。
けれどすぐに、彼の大きな手が澪の頬に添えられ、深く息を吐くように言った。
「……澪」
その声音には、抑えていたものがにじんでいる。
澪は軽く目を伏せながら、そっと呟いた。
「……今日は、崇雅さんに触れていたいです。……だめ、ですか?」
返事の代わりに、崇雅が澪を優しく抱き上げる。
そのまま寝室へと連れていく腕の中で、澪は崇雅の胸に顔を埋める。
そこから先は、ただ静かに、甘く、
互いの想いを確かめ合うような夜が続いた。
眠りにつく直前、澪はふと崇雅の胸元で小さく笑った。
「……指輪、朝起きて、夢になってたらどうしようって、ちょっと思いました」
「夢じゃない。何度でも言ってやる」
低く囁かれた声に、澪はもう一度だけ指輪を見つめてから、そっと目を閉じた。
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