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また妾を迎えた男
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【 アルファス・ブレイズの視点 】
レイシアを愛していた。
彼女の控えめな優しい性格も美しい顔も好きだった。
父が急逝して忙しくて、あまり一緒にいられなかった。不在中のことを母に聞くと、公爵夫人の務めを学ぼうとせず何もせず引きこもっているという。どうしても行かなければならないパーティがあっても、レイシアは具合が悪いと母に押し付ける。そんな日々を過ごしていくに連れてレイシアへの苛立ちが芽生えていった。
それにブレイズ家は男児が生まれにくい。結婚から3年が経ち、母上がタウンハウスに妾を用意した。母方の親戚の伯爵家の三女マリアだった。私の好みはレイシアだ、マリアも悪くはないが好きではない。だがレイシアへの不満と当主の義務が私をマリアの待つ寝室に足を運ばせた。レイシアとは違う体と初々しい反応に最初は夢中になったが、レイシアより体の相性は良いとは言えなかった。
マリアはすぐに妊娠したので領地に戻ったときにレイシアを抱いた。やはりレイシアとの相性は抜群だ。
また仕事に出たが、その間にレイシアの妊娠も判明した。安定期に入ったマリアと腹の子のことを打ち明けねばならないが、レイシアがショックを受けて流産するといけないと思い黙っていた。
マリアが産んだのは女児エリザベスで私にそっくりだった。母も喜んでいた。領地の屋敷の侍女からレイシアが男児を出産したという手紙が届いたが、綴られた内容に目を疑った。
“不義密通の疑いが濃厚”“色が合わない”
血の気が引いた。誰にあの体を許して誰の子を産んだのか。
母は“時々こっそり外出していたみたいで、誰と会っているのか聞いても学生時代の友人としか言わないの。やっぱりおかしいと思ったのよ”と言い出した。
不義密通が事実の場合の対処について話し合った。離婚届と取り決め書を作って署名もして鞄に入れた。
母と領地の屋敷に戻り、ベビーベッドを覗いた。確かにその色は不義の色だった。
血の気が引き まるでナイフを突き刺されたかのように痛みが胸を襲ったが、すぐに沸々と怒りが込み上げた。
「出て行け」
どうして被害者のような態度を取れるんだ!
マリアは私の顔と色を受け継いだエリザベスを産んでいるんだぞ!うちにもロット家にも眩い金髪も青い瞳もいないのに、何故微塵も私に似たところのない子を私の息子だと主張できるんだ!!
許せなかった。
レイシアの顔も見たくないし、浮気相手の色をした赤子も見たくなかった。
公爵令嬢として育ち、結婚後ブレイズ公爵邸でのんびり過ごしてきたレイシアには平民の暮らしは酷だろう。
御者には南へ行くと告げたらしい。浮気相手の出身地が南で、落ち合うつもりなのかもしれない。だが私にはもう関係のない事だ。
レイシアが去って何ヶ月が経とうとも、心に穴が空き体は満たされなかった。マリアはすぐに2人目を産んだがまた女児だった。そのことを受けてまた妾を迎えたが また女児だった。母の勧めでマリアを妻に迎えた。
マリアは母の指導の元、公爵夫人として立ち回ろうと努力していたようだが、何故かそれほど評判は良くなかった。
レイシアと離縁して5年が経った。なんだか疲れが溜まり、長めの休暇をとっていた。
「うちの庭園はこんな感じだったか?」
「公爵様、……前の奥様がいらっしゃった間は手入れを手伝ってくださいました」
「引きこもっていたのでは?」
「引きこもるというよりは……」
「何だ、はっきり言ってくれ」
「大奥様が外出をお許しになりませんでした」
「は?」
「許されたのは庭園の手入れを手伝うことと、馬の世話を手伝うことだけで、それ以外の時間はお部屋で過ごしていらっしゃいました」
「公爵夫人の仕事もせず勝手に外出していたはずだ」
「いいえ、あり得ません。監視がついていましたし、元奥様も大奥様の指示に従順に従っておりましたから。公爵夫人の仕事をしたいと何度かお願いなさっていましたが、大奥様は酷い言葉を浴びせて拒否し続けました。元奥様が追い出されてすぐに辞めたメイドが隣のイストン伯爵邸で働いているはずです。確認なさってみてはいかがでしょう」
まさか母が……
厩舎でも同じことを言われて隣領のイストン伯爵邸を訪ねて、レイシア付きのメイドだった女から話を聞いた。
「私は大奥様のご命令で常にレイシア様を監視しておりました」
「レイシアが外出を許されず、公爵夫人の仕事もさせてもらえず、部屋に押し込められていたのは本当なのか」
「はい。外出は公爵様とご一緒か大奥様がご一緒のときだけ許されました。後は庭園の手入れと馬を世話を手伝うときは建物から出ることを許されましたが門の外へは出ておりません」
元メイドはまだ隠し事があるように見えた。
レイシアを愛していた。
彼女の控えめな優しい性格も美しい顔も好きだった。
父が急逝して忙しくて、あまり一緒にいられなかった。不在中のことを母に聞くと、公爵夫人の務めを学ぼうとせず何もせず引きこもっているという。どうしても行かなければならないパーティがあっても、レイシアは具合が悪いと母に押し付ける。そんな日々を過ごしていくに連れてレイシアへの苛立ちが芽生えていった。
それにブレイズ家は男児が生まれにくい。結婚から3年が経ち、母上がタウンハウスに妾を用意した。母方の親戚の伯爵家の三女マリアだった。私の好みはレイシアだ、マリアも悪くはないが好きではない。だがレイシアへの不満と当主の義務が私をマリアの待つ寝室に足を運ばせた。レイシアとは違う体と初々しい反応に最初は夢中になったが、レイシアより体の相性は良いとは言えなかった。
マリアはすぐに妊娠したので領地に戻ったときにレイシアを抱いた。やはりレイシアとの相性は抜群だ。
また仕事に出たが、その間にレイシアの妊娠も判明した。安定期に入ったマリアと腹の子のことを打ち明けねばならないが、レイシアがショックを受けて流産するといけないと思い黙っていた。
マリアが産んだのは女児エリザベスで私にそっくりだった。母も喜んでいた。領地の屋敷の侍女からレイシアが男児を出産したという手紙が届いたが、綴られた内容に目を疑った。
“不義密通の疑いが濃厚”“色が合わない”
血の気が引いた。誰にあの体を許して誰の子を産んだのか。
母は“時々こっそり外出していたみたいで、誰と会っているのか聞いても学生時代の友人としか言わないの。やっぱりおかしいと思ったのよ”と言い出した。
不義密通が事実の場合の対処について話し合った。離婚届と取り決め書を作って署名もして鞄に入れた。
母と領地の屋敷に戻り、ベビーベッドを覗いた。確かにその色は不義の色だった。
血の気が引き まるでナイフを突き刺されたかのように痛みが胸を襲ったが、すぐに沸々と怒りが込み上げた。
「出て行け」
どうして被害者のような態度を取れるんだ!
マリアは私の顔と色を受け継いだエリザベスを産んでいるんだぞ!うちにもロット家にも眩い金髪も青い瞳もいないのに、何故微塵も私に似たところのない子を私の息子だと主張できるんだ!!
許せなかった。
レイシアの顔も見たくないし、浮気相手の色をした赤子も見たくなかった。
公爵令嬢として育ち、結婚後ブレイズ公爵邸でのんびり過ごしてきたレイシアには平民の暮らしは酷だろう。
御者には南へ行くと告げたらしい。浮気相手の出身地が南で、落ち合うつもりなのかもしれない。だが私にはもう関係のない事だ。
レイシアが去って何ヶ月が経とうとも、心に穴が空き体は満たされなかった。マリアはすぐに2人目を産んだがまた女児だった。そのことを受けてまた妾を迎えたが また女児だった。母の勧めでマリアを妻に迎えた。
マリアは母の指導の元、公爵夫人として立ち回ろうと努力していたようだが、何故かそれほど評判は良くなかった。
レイシアと離縁して5年が経った。なんだか疲れが溜まり、長めの休暇をとっていた。
「うちの庭園はこんな感じだったか?」
「公爵様、……前の奥様がいらっしゃった間は手入れを手伝ってくださいました」
「引きこもっていたのでは?」
「引きこもるというよりは……」
「何だ、はっきり言ってくれ」
「大奥様が外出をお許しになりませんでした」
「は?」
「許されたのは庭園の手入れを手伝うことと、馬の世話を手伝うことだけで、それ以外の時間はお部屋で過ごしていらっしゃいました」
「公爵夫人の仕事もせず勝手に外出していたはずだ」
「いいえ、あり得ません。監視がついていましたし、元奥様も大奥様の指示に従順に従っておりましたから。公爵夫人の仕事をしたいと何度かお願いなさっていましたが、大奥様は酷い言葉を浴びせて拒否し続けました。元奥様が追い出されてすぐに辞めたメイドが隣のイストン伯爵邸で働いているはずです。確認なさってみてはいかがでしょう」
まさか母が……
厩舎でも同じことを言われて隣領のイストン伯爵邸を訪ねて、レイシア付きのメイドだった女から話を聞いた。
「私は大奥様のご命令で常にレイシア様を監視しておりました」
「レイシアが外出を許されず、公爵夫人の仕事もさせてもらえず、部屋に押し込められていたのは本当なのか」
「はい。外出は公爵様とご一緒か大奥様がご一緒のときだけ許されました。後は庭園の手入れと馬を世話を手伝うときは建物から出ることを許されましたが門の外へは出ておりません」
元メイドはまだ隠し事があるように見えた。
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