【完結】愛で結ばれたはずの夫に捨てられました

ユユ

文字の大きさ
5 / 13

治癒の力を持つ母子

【 ダニエル・ オプリーズの視点 】

リリーが連れてきた母子は一目で貴族の血筋だとわかった。

事情を聞くと彼女はロット公爵家の娘で、元ブレイズ公爵夫人、そして不義の子の烙印を押されてしまった2つの公爵家の血を引く赤子。

リリーの夫が居候させて欲しい母子がいると頼みに来て承諾したが、まさかそんな訳ありだとは思わなかった。

不安はあったが今更だ。
レイシアは傲慢なところはなく、むしろ腰が低く礼儀正しいし、貴族なのにある程度のことができるし教わってできるようになろうと一生懸命だ。赤子もほぼ泣かない。

レイシアは植物を育てるのが得意で花は美しく咲くし小さな菜園の野菜も立派に育てるし味もすごく良い。彼女が手入れをしたハーブを使った茶は薬のように効果が高かった。
番犬は初対面で懐き、すぐにレイシアの言うことを聞くようになったし、馬の扱いも上手い。
レイシアが馬の世話をするようになってから、馬達に変化が起きた。怪我をした馬も病気の馬も完治して持ち主に返せたし、心の傷を負った馬も元気いっぱいになった。老馬は毛に艶が戻り生き生きとしている。種馬は見事に全ての繁殖牝馬を妊娠させた。早産も死産も難産もなく産まれ、元気な仔馬達に高値が付いた。

“実は動植物専門の治癒師なのです”
レイシアは苦笑いをしながら告白した。

ロット家は治癒師を輩出することのある家系で彼女の姉が王家に嫁いでいた。
レイシアが実家で疎まれたのは動植物相手の治癒師だったからだと知った。今の代でレイシアだけなら大事にしてもらえたかもしれないが、先に姉が王家に嫁げるほどの人に対する治癒能力を持っていたから不遇を受けてしまったのだろう。

レイシアは努力家で誠実で素晴らしいお嬢さんだ。浮気をして子の血筋を偽るなんてことはするはずがない。似ていないのは神ので、神殿で親子鑑定を受けたら潔白を証明できただろう。

ロット家もブレイズ家も、こんな素晴らしいお嬢さんを捨てるなど愚かだと思った。

オプリーズ家は貴族ではない。セラス子爵に功績を認められて調教士の称号を賜った。
普通、馬を調教する者を調教と呼ぶがセラス子爵が特別に調教という地位を作ってくださった。イメージ的には地方騎士と同じ扱いだ。調教師の中でも秀でた調教として領内で有効な称号を賜った。これはセラス領独自のものだが、おかげでうちで育てた馬を求めて遠くからも買い付けに来てくれる。
レイシアが世話を手伝うようになってからは、ますます繁盛した。


今日はセラス子爵が愛馬を連れてきた。脚に怪我をしたようだと。確かに左後脚が腫れて熱を持っていた。
応接間にお通ししてお茶を出すとお褒めの言葉をいただいた。

「ブレイズに預けるとすぐに元気になると評判だよ。何か特別は治療方法でも見つけたのか?」

「特にはございません」

「そんなことはないだろう。
そういえば外で貴族の令嬢に会ったが」

「レイシアのことでしょうか。彼女は貴族ではございません」

「あのカーテシーは教育係がついた貴族令嬢のレベルだ。違うはずはない」

違うのです。やっと母子で落ち着いて暮らし始めたところです。そっとしておいてあげてください」

「母子?子がいるのか」

「これ以上はどうか」

「父親は貴族じゃないのか?何かあれば対応しなくてはならなくなる。今のうちに把握しておきたい」

確かに。そう思って事情を話すことにした。

「実は……」

子爵の驚いた顔、始めて見るな。

「ロット公爵令嬢!?」

「絶縁してロット家の名を名乗れません」

「似てない子か。親子判定をすれば明白だろう」

「レイシアもそう主張したそうですが、あまりの似てなさにブレイズ公爵が神殿で恥をかきたくないと拒否なさったそうです。
我が子にあらず、子の権利も主張せず。そう 取り決め書に明記したそうなので、テオを巡って争うことはないはずです」

「だがな、ブレイズ公爵家は代々男児が生まれにくいと有名な家門だ。二代前のブレイズ公爵は婿養子だった。あの家門は何度も婿養子を迎えている。
そんな家門が男児を手放すなんて、やっぱり、」

「レイシアは本当に良い子なんです。不義密通などあり得ません」

「ロット家の娘の一人は王家に嫁いだな」

「レイシアの姉がそうです」

「わかった。では馬をよろしく頼む」

「お預かりいたします」

なんとか子爵様を帰すと、マーガレットが伏せってるとヘレンから聞いて寝室へ向かった。ドアを開けるとレイシアとテオが顔色の良い妻と話をしていた。

「マーガレット、具合は?」

「お話があります。ドアを閉めてください」

そして妻の口からとんでもないことを聞いた。

「知られたらロット家もブレイズ家も黙っていないだろう」

「ですから隠しましょう。この子が自立できるくらいに育ったら、公表するかどうか決めさせましょう。それまではできるだけ力は使わせないでおきましょう」

「そうだな」

母親レイシアは動植物専門の治癒師、息子テオは2歳で力を操る人間向きの治癒師。
守り切れるだろうか。






あなたにおすすめの小説

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。