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治癒の力を持つ母子
【 ダニエル・ オプリーズの視点 】
リリーが連れてきた母子は一目で貴族の血筋だとわかった。
事情を聞くと彼女はロット公爵家の娘で、元ブレイズ公爵夫人、そして不義の子の烙印を押されてしまった2つの公爵家の血を引く赤子。
リリーの夫が居候させて欲しい母子がいると頼みに来て承諾したが、まさかそんな訳ありだとは思わなかった。
不安はあったが今更だ。
レイシアは傲慢なところはなく、むしろ腰が低く礼儀正しいし、貴族なのにある程度のことができるし教わってできるようになろうと一生懸命だ。赤子もほぼ泣かない。
レイシアは植物を育てるのが得意で花は美しく咲くし小さな菜園の野菜も立派に育てるし味もすごく良い。彼女が手入れをしたハーブを使った茶は薬のように効果が高かった。
番犬は初対面で懐き、すぐにレイシアの言うことを聞くようになったし、馬の扱いも上手い。
レイシアが馬の世話をするようになってから、馬達に変化が起きた。怪我をした馬も病気の馬も完治して持ち主に返せたし、心の傷を負った馬も元気いっぱいになった。老馬は毛に艶が戻り生き生きとしている。種馬は見事に全ての繁殖牝馬を妊娠させた。早産も死産も難産もなく産まれ、元気な仔馬達に高値が付いた。
“実は動植物専門の治癒師なのです”
レイシアは苦笑いをしながら告白した。
ロット家は治癒師を輩出することのある家系で彼女の姉が王家に嫁いでいた。
レイシアが実家で疎まれたのは動植物相手の治癒師だったからだと知った。今の代でレイシアだけなら大事にしてもらえたかもしれないが、先に姉が王家に嫁げるほどの人に対する治癒能力を持っていたから不遇を受けてしまったのだろう。
レイシアは努力家で誠実で素晴らしいお嬢さんだ。浮気をして子の血筋を偽るなんてことはするはずがない。似ていないのは神の悪戯で、神殿で親子鑑定を受けたら潔白を証明できただろう。
ロット家もブレイズ家も、こんな素晴らしいお嬢さんを捨てるなど愚かだと思った。
オプリーズ家は貴族ではない。セラス子爵に功績を認められて調教士の称号を賜った。
普通、馬を調教する者を調教師と呼ぶがセラス子爵が特別に調教士という地位を作ってくださった。イメージ的には地方騎士と同じ扱いだ。調教師の中でも秀でた調教士として領内で有効な称号を賜った。これはセラス領独自のものだが、おかげでうちで育てた馬を求めて遠くからも買い付けに来てくれる。
レイシアが世話を手伝うようになってからは、ますます繁盛した。
今日はセラス子爵が愛馬を連れてきた。脚に怪我をしたようだと。確かに左後脚が腫れて熱を持っていた。
応接間にお通ししてお茶を出すとお褒めの言葉をいただいた。
「ブレイズに預けるとすぐに元気になると評判だよ。何か特別は治療方法でも見つけたのか?」
「特にはございません」
「そんなことはないだろう。
そういえば外で貴族の令嬢に会ったが」
「レイシアのことでしょうか。彼女は貴族ではございません」
「あのカーテシーは教育係がついた貴族令嬢のレベルだ。違うはずはない」
「今は違うのです。やっと母子で落ち着いて暮らし始めたところです。そっとしておいてあげてください」
「母子?子がいるのか」
「これ以上はどうか」
「父親は貴族じゃないのか?何かあれば対応しなくてはならなくなる。今のうちに把握しておきたい」
確かに。そう思って事情を話すことにした。
「実は……」
子爵の驚いた顔、始めて見るな。
「ロット公爵令嬢!?」
「絶縁してロット家の名を名乗れません」
「似てない子か。親子判定をすれば明白だろう」
「レイシアもそう主張したそうですが、あまりの似てなさにブレイズ公爵が神殿で恥をかきたくないと拒否なさったそうです。
我が子にあらず、子の権利も主張せず。そう 取り決め書に明記したそうなので、テオを巡って争うことはないはずです」
「だがな、ブレイズ公爵家は代々男児が生まれにくいと有名な家門だ。二代前のブレイズ公爵は婿養子だった。あの家門は何度も婿養子を迎えている。
そんな家門が男児を手放すなんて、やっぱり、」
「レイシアは本当に良い子なんです。不義密通などあり得ません」
「ロット家の娘の一人は王家に嫁いだな」
「レイシアの姉がそうです」
「わかった。では馬をよろしく頼む」
「お預かりいたします」
なんとか子爵様を帰すと、マーガレットが伏せってるとヘレンから聞いて寝室へ向かった。ドアを開けるとレイシアとテオが顔色の良い妻と話をしていた。
「マーガレット、具合は?」
「お話があります。ドアを閉めてください」
そして妻の口からとんでもないことを聞いた。
「知られたらロット家もブレイズ家も黙っていないだろう」
「ですから隠しましょう。この子が自立できるくらいに育ったら、公表するかどうか決めさせましょう。それまではできるだけ力は使わせないでおきましょう」
「そうだな」
母親レイシアは動植物専門の治癒師、息子テオは2歳で力を操る人間向きの治癒師。
守り切れるだろうか。
リリーが連れてきた母子は一目で貴族の血筋だとわかった。
事情を聞くと彼女はロット公爵家の娘で、元ブレイズ公爵夫人、そして不義の子の烙印を押されてしまった2つの公爵家の血を引く赤子。
リリーの夫が居候させて欲しい母子がいると頼みに来て承諾したが、まさかそんな訳ありだとは思わなかった。
不安はあったが今更だ。
レイシアは傲慢なところはなく、むしろ腰が低く礼儀正しいし、貴族なのにある程度のことができるし教わってできるようになろうと一生懸命だ。赤子もほぼ泣かない。
レイシアは植物を育てるのが得意で花は美しく咲くし小さな菜園の野菜も立派に育てるし味もすごく良い。彼女が手入れをしたハーブを使った茶は薬のように効果が高かった。
番犬は初対面で懐き、すぐにレイシアの言うことを聞くようになったし、馬の扱いも上手い。
レイシアが馬の世話をするようになってから、馬達に変化が起きた。怪我をした馬も病気の馬も完治して持ち主に返せたし、心の傷を負った馬も元気いっぱいになった。老馬は毛に艶が戻り生き生きとしている。種馬は見事に全ての繁殖牝馬を妊娠させた。早産も死産も難産もなく産まれ、元気な仔馬達に高値が付いた。
“実は動植物専門の治癒師なのです”
レイシアは苦笑いをしながら告白した。
ロット家は治癒師を輩出することのある家系で彼女の姉が王家に嫁いでいた。
レイシアが実家で疎まれたのは動植物相手の治癒師だったからだと知った。今の代でレイシアだけなら大事にしてもらえたかもしれないが、先に姉が王家に嫁げるほどの人に対する治癒能力を持っていたから不遇を受けてしまったのだろう。
レイシアは努力家で誠実で素晴らしいお嬢さんだ。浮気をして子の血筋を偽るなんてことはするはずがない。似ていないのは神の悪戯で、神殿で親子鑑定を受けたら潔白を証明できただろう。
ロット家もブレイズ家も、こんな素晴らしいお嬢さんを捨てるなど愚かだと思った。
オプリーズ家は貴族ではない。セラス子爵に功績を認められて調教士の称号を賜った。
普通、馬を調教する者を調教師と呼ぶがセラス子爵が特別に調教士という地位を作ってくださった。イメージ的には地方騎士と同じ扱いだ。調教師の中でも秀でた調教士として領内で有効な称号を賜った。これはセラス領独自のものだが、おかげでうちで育てた馬を求めて遠くからも買い付けに来てくれる。
レイシアが世話を手伝うようになってからは、ますます繁盛した。
今日はセラス子爵が愛馬を連れてきた。脚に怪我をしたようだと。確かに左後脚が腫れて熱を持っていた。
応接間にお通ししてお茶を出すとお褒めの言葉をいただいた。
「ブレイズに預けるとすぐに元気になると評判だよ。何か特別は治療方法でも見つけたのか?」
「特にはございません」
「そんなことはないだろう。
そういえば外で貴族の令嬢に会ったが」
「レイシアのことでしょうか。彼女は貴族ではございません」
「あのカーテシーは教育係がついた貴族令嬢のレベルだ。違うはずはない」
「今は違うのです。やっと母子で落ち着いて暮らし始めたところです。そっとしておいてあげてください」
「母子?子がいるのか」
「これ以上はどうか」
「父親は貴族じゃないのか?何かあれば対応しなくてはならなくなる。今のうちに把握しておきたい」
確かに。そう思って事情を話すことにした。
「実は……」
子爵の驚いた顔、始めて見るな。
「ロット公爵令嬢!?」
「絶縁してロット家の名を名乗れません」
「似てない子か。親子判定をすれば明白だろう」
「レイシアもそう主張したそうですが、あまりの似てなさにブレイズ公爵が神殿で恥をかきたくないと拒否なさったそうです。
我が子にあらず、子の権利も主張せず。そう 取り決め書に明記したそうなので、テオを巡って争うことはないはずです」
「だがな、ブレイズ公爵家は代々男児が生まれにくいと有名な家門だ。二代前のブレイズ公爵は婿養子だった。あの家門は何度も婿養子を迎えている。
そんな家門が男児を手放すなんて、やっぱり、」
「レイシアは本当に良い子なんです。不義密通などあり得ません」
「ロット家の娘の一人は王家に嫁いだな」
「レイシアの姉がそうです」
「わかった。では馬をよろしく頼む」
「お預かりいたします」
なんとか子爵様を帰すと、マーガレットが伏せってるとヘレンから聞いて寝室へ向かった。ドアを開けるとレイシアとテオが顔色の良い妻と話をしていた。
「マーガレット、具合は?」
「お話があります。ドアを閉めてください」
そして妻の口からとんでもないことを聞いた。
「知られたらロット家もブレイズ家も黙っていないだろう」
「ですから隠しましょう。この子が自立できるくらいに育ったら、公表するかどうか決めさせましょう。それまではできるだけ力は使わせないでおきましょう」
「そうだな」
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