【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ

文字の大きさ
11 / 19

頭痛

しおりを挟む
立て続けの失態を謝罪すると皇帝陛下は微笑んだ。

「謝ることはない。愛らしい寝顔だったし、美しい胸だった」

え!?

「……」

頬に触れながら指が唇に触れた。
触れ方がお父様やお兄様とは違う。

「身に付けてくれたのだな、よく似合っているぞ」

そうだ、お礼を言わなければ。

「素晴らしい贈り物をたくさん頂きました。ありがとうございました」

「気に入ってくれているといいのだが」

「素敵な宝飾品にフカフカの寝具、嬉しかったです」

「あの寝具は俺が使っている物と同じ寝具だ。気に入ったなら良かった」

「あの、新月の雫や慈悲の種皮ですが、素晴らしい物を見せていただきましたが皇帝陛下が所有なさるべきかと存じます」

「ユピルピアにやったのだぞ?」

「貴重過ぎます。いざという時に陛下がお使いになる方がよろしいかと…王であれば手に入れられるという品ではございませんので、」

「ユピルピア」

「はい」

「私がユピルピアに贈ったのだ」

「……」

「いざという時はユピルピアがあれらを使って調合してくれたらいいし、その前に使うべき時が来たら好きに使ってくれていい」

「陛下」

「あれだけではないぞ?これからもっと集めてきてやる」

「そんなっ」

「ユピルピア専用の保管棚も作ってやろう」

「陛下…」

「不満か?」

「不満などございません」

「ならば喜んでくれると嬉しい。
さあ、食事にしよう」

全然分からない。入国したとき、謁見さえ無く、人伝に閨の有無を確認して、白い献上品として後宮の最奥へ閉じ込めた皇帝が何故今更?

他の女達に飽きたなら自国の令嬢を召せばいいだけのこと。それとも献上品に衣食住を与えている対価を身体で払わせたくなったというのなら、私を犯せば済む話。
約束の証を飾ってはいるけど、ここは帝国の後宮。いつでも取り上げて燃やしてしまえは済むことだ。

何かプロプルとエテルネル帝国の間で情勢が変わった?

食事中も帝国の観光地についてたくさん聞かせてくださった。

食後は皇帝のエスコートでゆっくり庭園を散歩することになった。

「ユピルピア、近く出掛けてみないか?」

「出かける?別の庭園でしょうか」

「この囲いの外だ。薬草を育てている領地があると言っただろう?その途中にもいい観光地がある。
ゆっくり旅をしないか?」

間違いなく泊まりだわ。
まさか油断させて私を殺して捨てるつもり!?

献上品私たちが後宮の外に出ることは許されておりませんわ」

「後宮の持ち主が求めたことにルールなど関係ない」

「……」

「何が嫌なのだ?」

「捨てて来るつもりなのですよね?でしたら国に帰してください」

「何でそうなるんだ。ユピルピアを捨てに行くのではない。楽しんでもらいたいだけだ。
心配ならモアナとシャンティも連れて行くか?
誘えば大喜びするはずだ」

「4人でですか?」

「仲良くな」

「行きます」

「良かった」

「ですが、モアナ様とシャンティ様の意思を尊重していただきたいのです」

「分かった」

「陛下は頭痛持ちなのですか?」

「そうだ。常に痛みを感じるが今では慣れた。だが時折強くいたむことがある」

「あちらで詳しくお話を聞かせてください」


症状を聞いた後、眼球や瞼の内側、口内、頭皮、手足の爪などを診た後 背中も見せてもらった。
ガゼボで脱がせて悪かったけど、何も言われなかったから大丈夫よね?

さて、どうしよう。心当たりがあるのだけれど、これを主治医が気付かないなんてあるの?
チラッとペルペナを見ると彼女も頷いた。

皇帝陛下と二人きりになるには……

「陛下、お願いがございます」

「聞こう」

「……その」

い、言い辛い…

「ユピルピア、思い切って言葉にしてみろ」

「今夜 私を召してください!」

サイモン後宮長は驚いて私を見た。
他の使用人や兵士達は直ぐに視線を逸らして気配を消した。

「い、いいのか?ユピルピア」

「はい、これは私の大事な務めですので」

「務めなどと言わないで欲しい。ユピルピア…全ては私が悪かった。許して欲しい」

何のこと?
とにかくきてくれたらそれでいい。

「過ぎたことですわ。お待ちしております」

なのだから、ちゃんとしたい。
迎えをやるからユピルピアがこちらに来て欲しい」

医務室に来いってこと?

「お伺いいたします」

「ユピルピア、優しくするし、素晴らしい夜になるよう約束する」

このことに気付けなかった宮廷医おじいちゃんを処刑しないで内密にしてくれるってことよね!良かった!

「はい、絶対に優しくしてください。本には載っていますが、こういうことは経験が無いと分からないことです」

「本を読んだのか?」

「はい、何冊か専門書を読みました」

「…そうか、あらゆる努力をしよう」

「ありがとうございます」


その後は後宮の部屋で過ごして夕食を食べた。
何故か豪華で少なめの食事で、後でクッキーでも食べようとペルペナに頼んでおいた。

ノックがあり、ペルソナがドアを開けるとエルダとサイモン後宮長だった。

「ユピルピア様、お迎えに上がりました」

「今行くわ」

「侍女はお控えください、ユピルピア様のみとなります」

宮廷医おじいちゃんを庇うためね。同席者は少ない方がいいもの。

「ペルペナ、大丈夫。救ってくるわ」

「かしこまりました」

ペルペナを置いて本宮へ向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~

ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。 それが十年続いた。 だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。 そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。 好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。 ツッコミどころ満載の5話完結です。

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。 お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。 ……少なくとも、リオナはそう信じていた。 ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。 距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。 「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」 どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。 “白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。 すれ違い、誤解、嫉妬。 そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。 「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」 そんなはずじゃなかったのに。 曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。 白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。 鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。 「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」 「……はい。私も、カイルと歩きたいです」 二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。 -

婚約を解消したら、何故か元婚約者の家で養われることになった

下菊みこと
恋愛
気付いたら好きな人に捕まっていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

処理中です...