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頭痛
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立て続けの失態を謝罪すると皇帝陛下は微笑んだ。
「謝ることはない。愛らしい寝顔だったし、美しい胸だった」
え!?
「……」
頬に触れながら指が唇に触れた。
触れ方がお父様やお兄様とは違う。
「身に付けてくれたのだな、よく似合っているぞ」
そうだ、お礼を言わなければ。
「素晴らしい贈り物をたくさん頂きました。ありがとうございました」
「気に入ってくれているといいのだが」
「素敵な宝飾品にフカフカの寝具、嬉しかったです」
「あの寝具は俺が使っている物と同じ寝具だ。気に入ったなら良かった」
「あの、新月の雫や慈悲の種皮ですが、素晴らしい物を見せていただきましたが皇帝陛下が所有なさるべきかと存じます」
「ユピルピアにやったのだぞ?」
「貴重過ぎます。いざという時に陛下がお使いになる方がよろしいかと…王であれば手に入れられるという品ではございませんので、」
「ユピルピア」
「はい」
「私がユピルピアに贈ったのだ」
「……」
「いざという時はユピルピアがあれらを使って調合してくれたらいいし、その前に使うべき時が来たら好きに使ってくれていい」
「陛下」
「あれだけではないぞ?これからもっと集めてきてやる」
「そんなっ」
「ユピルピア専用の保管棚も作ってやろう」
「陛下…」
「不満か?」
「不満などございません」
「ならば喜んでくれると嬉しい。
さあ、食事にしよう」
全然分からない。入国したとき、謁見さえ無く、人伝に閨の有無を確認して、白い献上品として後宮の最奥へ閉じ込めた皇帝が何故今更?
他の女達に飽きたなら自国の令嬢を召せばいいだけのこと。それとも献上品に衣食住を与えている対価を身体で払わせたくなったというのなら、私を犯せば済む話。
約束の証を飾ってはいるけど、ここは帝国の後宮。いつでも取り上げて燃やしてしまえは済むことだ。
何かプロプルとエテルネル帝国の間で情勢が変わった?
食事中も帝国の観光地についてたくさん聞かせてくださった。
食後は皇帝のエスコートでゆっくり庭園を散歩することになった。
「ユピルピア、近く出掛けてみないか?」
「出かける?別の庭園でしょうか」
「この囲いの外だ。薬草を育てている領地があると言っただろう?その途中にもいい観光地がある。
ゆっくり旅をしないか?」
間違いなく泊まりだわ。
まさか油断させて私を殺して捨てるつもり!?
「献上品が後宮の外に出ることは許されておりませんわ」
「後宮の持ち主が求めたことにルールなど関係ない」
「……」
「何が嫌なのだ?」
「捨てて来るつもりなのですよね?でしたら国に帰してください」
「何でそうなるんだ。ユピルピアを捨てに行くのではない。楽しんでもらいたいだけだ。
心配ならモアナとシャンティも連れて行くか?
誘えば大喜びするはずだ」
「4人でですか?」
「仲良くな」
「行きます」
「良かった」
「ですが、モアナ様とシャンティ様の意思を尊重していただきたいのです」
「分かった」
「陛下は頭痛持ちなのですか?」
「そうだ。常に痛みを感じるが今では慣れた。だが時折強くいたむことがある」
「あちらで詳しくお話を聞かせてください」
症状を聞いた後、眼球や瞼の内側、口内、頭皮、手足の爪などを診た後 背中も見せてもらった。
ガゼボで脱がせて悪かったけど、何も言われなかったから大丈夫よね?
さて、どうしよう。心当たりがあるのだけれど、これを主治医が気付かないなんてあるの?
チラッとペルペナを見ると彼女も頷いた。
皇帝陛下と二人きりになるには……
「陛下、お願いがございます」
「聞こう」
「……その」
い、言い辛い…
「ユピルピア、思い切って言葉にしてみろ」
「今夜 私を召してください!」
サイモン後宮長は驚いて私を見た。
他の使用人や兵士達は直ぐに視線を逸らして気配を消した。
「い、いいのか?ユピルピア」
「はい、これは私の大事な務めですので」
「務めなどと言わないで欲しい。ユピルピア…全ては私が悪かった。許して欲しい」
何のこと?
とにかくきてくれたらそれでいい。
「過ぎたことですわ。準備をしてお待ちしております」
「初めてなのだから、ちゃんとしたい。
迎えをやるからユピルピアがこちらに来て欲しい」
医務室に来いってこと?
「お伺いいたします」
「ユピルピア、優しくするし、素晴らしい夜になるよう約束する」
このことに気付けなかった宮廷医を処刑しないで内密にしてくれるってことよね!良かった!
「はい、絶対に優しくしてください。本には載っていますが、こういうことは経験が無いと分からないことです」
「本を読んだのか?」
「はい、何冊か専門書を読みました」
「…そうか、あらゆる努力をしよう」
「ありがとうございます」
その後は後宮の部屋で過ごして夕食を食べた。
何故か豪華で少なめの食事で、後でクッキーでも食べようとペルペナに頼んでおいた。
ノックがあり、ペルソナがドアを開けるとエルダとサイモン後宮長だった。
「ユピルピア様、お迎えに上がりました」
「今行くわ」
「侍女はお控えください、ユピルピア様のみとなります」
宮廷医を庇うためね。同席者は少ない方がいいもの。
「ペルペナ、大丈夫。救ってくるわ」
「かしこまりました」
ペルペナを置いて本宮へ向かった。
「謝ることはない。愛らしい寝顔だったし、美しい胸だった」
え!?
「……」
頬に触れながら指が唇に触れた。
触れ方がお父様やお兄様とは違う。
「身に付けてくれたのだな、よく似合っているぞ」
そうだ、お礼を言わなければ。
「素晴らしい贈り物をたくさん頂きました。ありがとうございました」
「気に入ってくれているといいのだが」
「素敵な宝飾品にフカフカの寝具、嬉しかったです」
「あの寝具は俺が使っている物と同じ寝具だ。気に入ったなら良かった」
「あの、新月の雫や慈悲の種皮ですが、素晴らしい物を見せていただきましたが皇帝陛下が所有なさるべきかと存じます」
「ユピルピアにやったのだぞ?」
「貴重過ぎます。いざという時に陛下がお使いになる方がよろしいかと…王であれば手に入れられるという品ではございませんので、」
「ユピルピア」
「はい」
「私がユピルピアに贈ったのだ」
「……」
「いざという時はユピルピアがあれらを使って調合してくれたらいいし、その前に使うべき時が来たら好きに使ってくれていい」
「陛下」
「あれだけではないぞ?これからもっと集めてきてやる」
「そんなっ」
「ユピルピア専用の保管棚も作ってやろう」
「陛下…」
「不満か?」
「不満などございません」
「ならば喜んでくれると嬉しい。
さあ、食事にしよう」
全然分からない。入国したとき、謁見さえ無く、人伝に閨の有無を確認して、白い献上品として後宮の最奥へ閉じ込めた皇帝が何故今更?
他の女達に飽きたなら自国の令嬢を召せばいいだけのこと。それとも献上品に衣食住を与えている対価を身体で払わせたくなったというのなら、私を犯せば済む話。
約束の証を飾ってはいるけど、ここは帝国の後宮。いつでも取り上げて燃やしてしまえは済むことだ。
何かプロプルとエテルネル帝国の間で情勢が変わった?
食事中も帝国の観光地についてたくさん聞かせてくださった。
食後は皇帝のエスコートでゆっくり庭園を散歩することになった。
「ユピルピア、近く出掛けてみないか?」
「出かける?別の庭園でしょうか」
「この囲いの外だ。薬草を育てている領地があると言っただろう?その途中にもいい観光地がある。
ゆっくり旅をしないか?」
間違いなく泊まりだわ。
まさか油断させて私を殺して捨てるつもり!?
「献上品が後宮の外に出ることは許されておりませんわ」
「後宮の持ち主が求めたことにルールなど関係ない」
「……」
「何が嫌なのだ?」
「捨てて来るつもりなのですよね?でしたら国に帰してください」
「何でそうなるんだ。ユピルピアを捨てに行くのではない。楽しんでもらいたいだけだ。
心配ならモアナとシャンティも連れて行くか?
誘えば大喜びするはずだ」
「4人でですか?」
「仲良くな」
「行きます」
「良かった」
「ですが、モアナ様とシャンティ様の意思を尊重していただきたいのです」
「分かった」
「陛下は頭痛持ちなのですか?」
「そうだ。常に痛みを感じるが今では慣れた。だが時折強くいたむことがある」
「あちらで詳しくお話を聞かせてください」
症状を聞いた後、眼球や瞼の内側、口内、頭皮、手足の爪などを診た後 背中も見せてもらった。
ガゼボで脱がせて悪かったけど、何も言われなかったから大丈夫よね?
さて、どうしよう。心当たりがあるのだけれど、これを主治医が気付かないなんてあるの?
チラッとペルペナを見ると彼女も頷いた。
皇帝陛下と二人きりになるには……
「陛下、お願いがございます」
「聞こう」
「……その」
い、言い辛い…
「ユピルピア、思い切って言葉にしてみろ」
「今夜 私を召してください!」
サイモン後宮長は驚いて私を見た。
他の使用人や兵士達は直ぐに視線を逸らして気配を消した。
「い、いいのか?ユピルピア」
「はい、これは私の大事な務めですので」
「務めなどと言わないで欲しい。ユピルピア…全ては私が悪かった。許して欲しい」
何のこと?
とにかくきてくれたらそれでいい。
「過ぎたことですわ。準備をしてお待ちしております」
「初めてなのだから、ちゃんとしたい。
迎えをやるからユピルピアがこちらに来て欲しい」
医務室に来いってこと?
「お伺いいたします」
「ユピルピア、優しくするし、素晴らしい夜になるよう約束する」
このことに気付けなかった宮廷医を処刑しないで内密にしてくれるってことよね!良かった!
「はい、絶対に優しくしてください。本には載っていますが、こういうことは経験が無いと分からないことです」
「本を読んだのか?」
「はい、何冊か専門書を読みました」
「…そうか、あらゆる努力をしよう」
「ありがとうございます」
その後は後宮の部屋で過ごして夕食を食べた。
何故か豪華で少なめの食事で、後でクッキーでも食べようとペルペナに頼んでおいた。
ノックがあり、ペルソナがドアを開けるとエルダとサイモン後宮長だった。
「ユピルピア様、お迎えに上がりました」
「今行くわ」
「侍女はお控えください、ユピルピア様のみとなります」
宮廷医を庇うためね。同席者は少ない方がいいもの。
「ペルペナ、大丈夫。救ってくるわ」
「かしこまりました」
ペルペナを置いて本宮へ向かった。
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