1 / 20
死んだ姉の代わりに花嫁になりました
しおりを挟む
婚姻日和とは言えない雨の日に神の前で夫婦になることを誓わされた。
「リオナード・ソワールとエステル・ベルナードの婚姻を認める。
此度の婚姻は王命ということを忘れずに、同意し署名した契約を履行するように。
それでは血の交換を」
厚いヴェールをあげて、指に針を指す。
新郎新婦が向き合い、相手の額に己の血を付ける。
王命の婚姻のときに用いられる儀式だ。
互いの家門をかけた契約を結ぶことを意味する。
向き合い、彼を見上げると驚いた顔をしていた。
「っ!!」
「……」
私は手を伸ばして彼の額に血を付けた。
彼も我に返り 私の額に血を付けた。
「ソワール夫妻に祝福を」
「「……」」
「確かに、両家の婚姻を見届けました。
私はこれで失礼いたします」
王命が果たされているか見届けに来た国王陛下の遣いが帰っていく。
「エステル、ごめんなさいね」
「お姉様が急に召されてしまっては仕方ありませんわ」
「辛かったらいつでも逃げておいで」
「お父様、王命ですよ?」
「かまうものか」
「お兄様。大丈夫ですわ。この国で一番白い結婚ですもの」
「そうだな。契約違反があれば直ぐに訴えるんだぞ」
「ふふっ」
「クリス、ビビ。頼んだぞ」
「「かしこまりました」」
家族に見送られて専用馬車でソワール邸に向かう。
ここはソワール領。
クリスは専属の護衛。ビビは専属の侍女。
ベルナード家から連れて行く。
志願してくれた2人には感謝だ。
ソワール家は宝石が採れる領地を持つ侯爵家。
ベルナードは希少な薬草が採れる領地を持つ伯爵家。
ソワールとベルナードは隣接していた。
何がきっかけかは分からないが犬猿の仲だ。
昔からなので今では理由を知らない。
国にとってどちらも重要で、仲良くしてもらいたかった。
ずっと年齢がズレていたり、互いの子が同性だったりして婚姻という方法は視野になかったが、今回、
ソワールの一人息子とベルナードの長女が同い歳だったことに目を付けて、国王陛下は二人の婚姻を命じた。
婚約させられた2人は更に相性が悪かった。
だから婚姻の前に互いの要望を 契約書に纏めた。
婚姻生活に関する細かな決め事だ。
そしてやっと婚姻の儀を迎える前夜、新婦になる予定の長女ヴァネッサが階段から落ちて頭を打って天に召された。
婚儀の為に現地入りしていた陛下の見届け人を連れてきて、姉の亡骸に会わせた。
“なんてことだ!”
だけど見届け人は 兄に抱きしめられていた私に目を止めた。
『ご令嬢はデビューは?』
『まさかエステルを!?』
『冗談じゃありませんわ!』
『ヴァネッサは死んだんだ!王命は消えたでしょう!』
『王命書に個人名はございません。
今回避しても王命違反を問われるか、改めてエステル嬢の名で命じるだけです。
参列客のことを考えれば、今済ませた方がよろしいのでは?』
『エステルは16歳になったばかりなのよ!』
『早過ぎる!』
『妹には無理だ!』
『デビュータントは成人を認める行事で婚姻も認められています。
言い換えれば成人としての貴族の義務が発生するということです』
『ですが、先方は私を受け入れるでしょうか』
『確認して参ります。その間にウエディングドレスの調整をできる限りなさってください』
結局、ソワール家は受け入れ、ドレスは裾を切って、ウエストはリボンで締め上げ、胸元にはレースを足した。
そして荷物を急いで纏めて、気が付けば夜が明けていた。
婚姻の儀はあっという間に終わった。
「リオナード・ソワールとエステル・ベルナードの婚姻を認める。
此度の婚姻は王命ということを忘れずに、同意し署名した契約を履行するように。
それでは血の交換を」
厚いヴェールをあげて、指に針を指す。
新郎新婦が向き合い、相手の額に己の血を付ける。
王命の婚姻のときに用いられる儀式だ。
互いの家門をかけた契約を結ぶことを意味する。
向き合い、彼を見上げると驚いた顔をしていた。
「っ!!」
「……」
私は手を伸ばして彼の額に血を付けた。
彼も我に返り 私の額に血を付けた。
「ソワール夫妻に祝福を」
「「……」」
「確かに、両家の婚姻を見届けました。
私はこれで失礼いたします」
王命が果たされているか見届けに来た国王陛下の遣いが帰っていく。
「エステル、ごめんなさいね」
「お姉様が急に召されてしまっては仕方ありませんわ」
「辛かったらいつでも逃げておいで」
「お父様、王命ですよ?」
「かまうものか」
「お兄様。大丈夫ですわ。この国で一番白い結婚ですもの」
「そうだな。契約違反があれば直ぐに訴えるんだぞ」
「ふふっ」
「クリス、ビビ。頼んだぞ」
「「かしこまりました」」
家族に見送られて専用馬車でソワール邸に向かう。
ここはソワール領。
クリスは専属の護衛。ビビは専属の侍女。
ベルナード家から連れて行く。
志願してくれた2人には感謝だ。
ソワール家は宝石が採れる領地を持つ侯爵家。
ベルナードは希少な薬草が採れる領地を持つ伯爵家。
ソワールとベルナードは隣接していた。
何がきっかけかは分からないが犬猿の仲だ。
昔からなので今では理由を知らない。
国にとってどちらも重要で、仲良くしてもらいたかった。
ずっと年齢がズレていたり、互いの子が同性だったりして婚姻という方法は視野になかったが、今回、
ソワールの一人息子とベルナードの長女が同い歳だったことに目を付けて、国王陛下は二人の婚姻を命じた。
婚約させられた2人は更に相性が悪かった。
だから婚姻の前に互いの要望を 契約書に纏めた。
婚姻生活に関する細かな決め事だ。
そしてやっと婚姻の儀を迎える前夜、新婦になる予定の長女ヴァネッサが階段から落ちて頭を打って天に召された。
婚儀の為に現地入りしていた陛下の見届け人を連れてきて、姉の亡骸に会わせた。
“なんてことだ!”
だけど見届け人は 兄に抱きしめられていた私に目を止めた。
『ご令嬢はデビューは?』
『まさかエステルを!?』
『冗談じゃありませんわ!』
『ヴァネッサは死んだんだ!王命は消えたでしょう!』
『王命書に個人名はございません。
今回避しても王命違反を問われるか、改めてエステル嬢の名で命じるだけです。
参列客のことを考えれば、今済ませた方がよろしいのでは?』
『エステルは16歳になったばかりなのよ!』
『早過ぎる!』
『妹には無理だ!』
『デビュータントは成人を認める行事で婚姻も認められています。
言い換えれば成人としての貴族の義務が発生するということです』
『ですが、先方は私を受け入れるでしょうか』
『確認して参ります。その間にウエディングドレスの調整をできる限りなさってください』
結局、ソワール家は受け入れ、ドレスは裾を切って、ウエストはリボンで締め上げ、胸元にはレースを足した。
そして荷物を急いで纏めて、気が付けば夜が明けていた。
婚姻の儀はあっという間に終わった。
480
あなたにおすすめの小説
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~
ともどーも
恋愛
伯爵令嬢シャティアナは幼馴染みで五歳年上の侯爵子息ノーランドと兄妹のように育ち、必然的に恋仲になり、婚約目前と言われていた。
しかし、シャティアナの母親は二人の婚約を認めず、頑なに反対していた。
シャティアナの父は侯爵家との縁続きになるのを望んでいたため、母親の反対を押切り、シャティアナの誕生日パーティーでノーランドとの婚約を発表した。
みんなに祝福され、とても幸せだったその日の夜、ベッドで寝ていると母親が馬乗りになり、自分にナイフを突き刺そうとしていた。
母親がなぜノーランドとの婚約をあんなに反対したのか…。
母親の告白にシャティアナは絶望し、ノーランドとの婚約破棄の為に動き出す。
貴方を愛してる。
どうか私を捨てて下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全14話です。
楽しんで頂ければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の落ち度で投稿途中にデータが消えてしまい、ご心配をお掛けして申し訳ありません。
運営の許可をへて再投稿致しました。
今後このような事が無いように投稿していく所存です。
ご不快な思いをされた方には、この場にて謝罪させていただければと思います。
申し訳ありませんでした。
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
【短編】記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで
夕凪ゆな
恋愛
ある雪の降る日の朝、ヴァロア伯爵家のリディアのもとに、信じられない報せが届いた。
それは、愛する婚約者、ジェイドが遠征先で負傷し、危篤であるという報せだった。
「戻ったら式を挙げよう。君の花嫁姿が、今から楽しみだ」
そう言って、結婚の誓いを残していったジェイドが、今、命を落とそうとしている。
その事実を受け入れることができないリディアは、ジェイドの命を救おうと、禁忌魔法に手を染めた。
公爵令嬢「婚約者には好きな人がいるのに、その人と結婚できないなんて不憫」←好きな人ってあなたのことですよ?
ツキノトモリ
恋愛
ロベルタには優しい従姉・モニカがいる。そのモニカは侯爵令息のミハエルと婚約したが、ミハエルに好きな人がいると知り、「好きな人と結婚できないなんて不憫だ」と悩む。そんな中、ロベルタはミハエルの好きな人を知ってしまう。
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる