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初夜はございません

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父エリオット、母テレサ、兄セヴィアンに別れを告げて到着した屋敷には既に夫が到着していた。

外に出てきた家令やメイド長が挨拶をして、荷物を運ばせていた。 

メイド長のローズは体が大きい。

「別棟にお部屋をご希望とのことですので、改装しております。

客間3つ、使用人部屋7つ、応接間、打合せ室、調理場、洗濯場、食堂、奥様のお部屋などご要望通りとなっております。

先に到着したメイド3名と料理人1名は別棟におります」

「ありがとうございました。
ローズメイド長、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ よろしくお願いいたします」


「奥様、何かございましたらお申し付けください。
リオナード様との共通の予定は、既にメイドに渡しておりますので明日にでもご確認ください。

それと後でリオナード様が挨拶にお伺いします」

「……バート様、挨拶は不要ですわ。教会でお会いしたばかりではありませんか。
リオナード様もお疲れでしょう」

「様は結構です。バートとお呼びください。
リオナード様にお伝えしますが、挨拶をしにいらっしゃると思います」

「そう。分かったわ」



メイド長と家令と別れて別棟に入り、ソファに座った。

着替えたいけど違うドレスに着替えるのも嫌だし、寝巻きになって初夜扱い勘違いされるのも嫌だったので待った。



待った。



待った。



軽食を二口食べて待った。



待った。



「はぁ。時間を聞いておけば良かったわ。
もう待つのは止めるわ。湯浴みをするからお願い」


やっと締め付けられたウエディングドレスを脱いで浴槽に浸かった。

「ふぅ」

無駄に広くない浴槽の淵に頭を乗せた。

疲れた。

すっごく疲れた。

昨日から食事もほとんど手付かずで、眠っていない。そしてずり落ちないように締め付けられたウエディングドレスで疲労困憊だ。


姉のヴァネッサは5つ歳上で私より長身だった。
姉だけじゃない。家族みんな長身だ。そして美形。
私は父方の祖母似だった。普通の身長で美形ではない。
一緒にいると家族と思われないくらい違う。

姉はとても気の強い我儘な人だった。
歳も離れているから関わることのない人だった。
だけど死んだら悲しい。

「お嬢様、リオナード様がいらっしゃったようです」

湯浴みの後では初夜を希望していると勘違いさせちゃうじゃない!

「はぁ。仕方ないわね。ワンピースを出してちょうだい」

ザバッ

立ち上がった瞬間に目の前が暗くなった。

メイドの悲鳴が聞こえたが、音がおかしい。

揉めている声が遠のく………。

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