【完結】王命の代行をお引き受けいたします

ユユ

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「ん……」

目を開けると部屋は明るかった。
ベッド側のカーテンだけが閉められている。

「お嬢様っ」

「ここは何処?ママは?」

「ここはソワール邸の本館の君の部屋でもある」

男の声に顔を向けるとリオナード様が椅子から立ち上がった。

「私、」

勢いよく体を起こしたら視界がふらついた。

「お嬢様、まだ安静にしていてください」

「何故ここに」

「お嬢様は過労で浴槽の中でお倒れになったのです」

「なら別棟にいるはずでは?」

「それは君が湯の中に沈んだし、意識が無いから医者に診せて治療する為に本館こっちに運んだ」

「それはご迷惑をおかけしました。直ぐに戻りますので」

「体調が戻るまでここで過ごすように」

「ですが、」

「メイド達の負担を考えて、安静にして早く治せ」

「……」

「苦くても薬湯をちゃんと飲むんだぞ」

「はい」

リオナード様が退室した。

昨夜の説明を聞いて顔を覆った。

浴槽の中に倒れ湯に沈み、付き添いのメイドが大騒ぎをした。

悲鳴を聞き付けてビビ達が駆け付けたらリオナード様も駆け付けた。

お湯から出そうとするメイドを押し退けて、彼が私を抱き上げ、タオルと毛布で包んで本邸に運んだらしい。

「大丈夫です、お嬢様。大事な部分は見られておりません」

「慰めになっていないわ。

ここは私の部屋と言ったけど、どういうこと?」

「本来のリオナード様とお嬢様の夫婦の間です」

「客間にすればいいのに」

「お医者様を呼んだからではありませんか?」

そうよね。王命の婚姻なのに妻が客間で寝込んでいたら問題だからこっちに運んだのね。

「ビビは?」

「煎じ薬の準備をしています」

「お医者様は処方しなかったの?」

「ビビさんがお医者様の診断の元にベルナードが処方して煎じると言ったので」

お医者様に悪いことをしたわね。

「後でお医者に心付けを届けてもらえる?」

「かしこまりました」

ベルナードが薬草を卸しているのだもの。
お医者様は苦笑いしたでしょうね。




目眩が治るまで本館で世話をされた。
食事も用意してもらった。

何故かリオナード様が時々様子を見に来る。

“新妻に何かあれば暗殺したと思われて騒ぎになるからでは?” というクリスの意見に納得した。

2日後、別棟に戻る支度をしているとリオナード様が来た。

「もう戻るのか」

「はい。お陰様で回復しました。
それと、助けていただいたと伺いました。
ありがとうございました」

「無理をせず よく休み、人を頼るように」

「はい」



何故か別棟の入り口まで送ってくれた。

「君達、必要な物や人があれば遠慮せず申し出てくれ。君達の主人はまだ人に頼るべき歳頃だ。強がっても16歳。こちらで調整してやらねばまた倒れてしまう。

今回は側にメイドがいたから大事にならなかった。
独りなら…倒れたときに打ちどころが悪ければ君達も主人も後悔に囚われる。

どうか意地を張らずにいて欲しい」

「……」

どうしちゃったの!?

「理解できたかな?」

「かしこまりました」

メイド達がそう返事をするとリオナード様は本館に戻って行った。



私達は顔を見合わせた後、何事もなかったかのように別棟で生活を始めた。



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